映画とライフデザイン

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映画「ひとよ」 白石和彌&田中裕子&佐藤健

2019-11-10 22:26:36 | 映画(日本 2019年以降主演男性)
映画「ひとよ」を映画館で観てきました。


凪待ちに次ぐ白石和彌監督の新作である。「麻雀放浪記2020」はちょっとどうかと思ったけど、まず外れのない監督である。社会の底辺にいる人たちをクローズアップする。そこには大抵殺人事件がからんでいる。

DVの父親に常に殴られ傷ついていた子供たちを守るために夫を殺した母親が子供たちの前に帰ってくる。そこで起きる出来事を語っていく。ストーリーは単純でない。主要の母子4人だけでなくサブになる登場人物にもストーリーの根幹に絡むエピソードを作る。重層構造であっさりとは終わらせない。

主要4人はいずれも主演級だ。豊富な出演陣は、むしろ多作ともいえる白石和彌監督が世間に認められている証拠だろう。見応えのある作品である。

どしゃぶりの雨降る夜に、タクシー会社を営む稲村家の母・こはる(田中裕子)は、愛した夫を殺めた。それが、最愛の子どもたち三兄妹の幸せと信じて。そして、こはるは、15年後の再会を子どもたちに誓い、家を去った—

時は流れ、現在。次男・雄二(佐藤健)、長男・大樹(鈴木亮平)、長女・園子(松岡茉優)の三兄妹は、事件の日から抱えたこころの傷を隠したまま、大人になった。抗うことのできなかった別れ道から、時間が止まってしまった家族。そんな一家に、母・こはるは帰ってくる。
「これは母さんが、親父を殺してまでつくってくれた自由なんだよ。」
15年前、母の切なる決断とのこされた子どもたち。皆が願った将来とはちがってしまった今、再会を果たした彼らがたどりつく先は—(作品情報より引用)

1.田中裕子
回想シーンでは黒髪だが、真っ白な白髪になって15年ぶりに突然帰ってくる。あれ?普通は出所って家族に知らせるはずなんだろうなあと思いつつ、いきなり帰ってくる。出所の時に迎えに行った娘とタクシー会社の従業員とはすれ違いになったという。子供たちの気持ちは複雑、でも一応はタクシー会社の従業員を含め皆で歓迎し、東京でライターをやっている次男も帰ってくる。普通で言えば、母子再会でハッピーエンドになるシーンがいきなり出るなと思いつつ、これまでの疎遠なときに子供たちが経験したいやな世界を振り返っていく。


最初の再会で見せる田中裕子らしい笑顔をみるのも久しぶりだ。高倉健の遺作あなたへの時は若干やさしい表情を見せていたが、この笑顔ほどではない。自分は傑作だと思ういつか読書をする日で見せたぶっきらぼうな顔以来、田中裕子が出る作品はいずれも表情が暗い。ここでも基本は能面のようだが、いくつかの笑顔は久々に観た。高倉健との共演で妖艶な姿を見せた夜叉や伊豆の娼婦を演じた天城越えなどの若き日の美貌とは遠ざかったが、まだ演技派として存在感を示す。


2.佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優
長男役鈴木亮平は地元の中小企業で働く。家庭内はうまくいっていない。娘もいるが妻から離婚も迫られている。ドモリで自分の意思も伝えるのが不得手で、殺人事件の後はしばらくいじめられていたらしい。妻には父母は幼少からいないと言っているようだ。これが後で尾を引く。

次男役佐藤健は風俗ライターを東京でやっている。しばらく兄妹とは疎遠関係だ。携帯にも出ない。でも母親が帰ってきたとの一報に久しぶりに帰郷する。ただ、動きはどうもおかしい。母親の帰還を喜びつつも、殺人事件の後周囲から受けたいやな出来事をつい思い浮かべる。自分の家の出来事をこっそり綴っている動きが見られる。このあたりの佐藤健演じる次男の動きの真意がよくわからない。


松岡茉優は近くのスナックで働いている。美容師ぽいが免許は持っていないようだ。独身で自由奔放、毎晩のように自分のお店で飲み潰れて、実家が経営しているタクシーで送り迎えしてもらっている。映画ではお水っぽい風貌で現れ、最初は松岡茉優とわからなかった。

3人のためと思い母親が父親を殺し、いずれ戻ってくるから待っていてくれというシーンからスタートする。そして母親が子供たちの前に15年の日々を経て戻ってくる。ところが、この空白の15年では、周囲からのイジメなどでそれぞれに苦い思いもしている。そこがこの映画のポイントである。もっとやさしく迎えればと思うのに、この状況になったらこんな風になるのかしら?


3.佐々木蔵之介、筒井真理子
ここでは助演と言うべきタクシー会社の運転手として雇われた佐々木蔵之介やタクシー会社の従業員である筒井真理子にもエピソードを与える。2人とも主演級で筒井真理子は最近のよこがおの好演が記憶に新しい。酒も飲まない真面目なタクシー運転手佐々木蔵之介が実は反体制社会にいた男で、それを引きずった逸話をからめて最後にむけての逆転は予想外で作り込みがされている。


茨城県が舞台というのはすぐわかる。強く煙が吹き出す煙突は鹿島方面で見る光景だと思ってみていた。父母がひっかかって買った鹿島の土地を持っていたので見たことある。そうしたら大洗のフェリーが出てくる。あれ?やっぱり違うのかな?と思ってエンディングロールのクレジットをみたら神栖市の文字が出てくる。確かに鹿島方面だったなと思い、はっきり地名を指定しているわけではないから、両方の組み合わせでいいんじゃないという感じだ。

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