映画「0.5」を映画館で見てきました。
非常におもしろかったです。ネタばれありになるけど、じっくり語りたい。
評判がいいことは知っていたが、上映時間3時間16分ときいただけで、ちょっと避けていた。それでも「百円の恋」の安藤サクラの演技にショックを受け、何が何でも早めに行かなくてはと思い、時間を見つけて見に行ってきました。
介護の仕事をしていた主人公がクビになり、町にいる老人たちに目を付けて押し掛け女房のようにヘルパー役を引き受けるという話だ。安藤サクラ自体の演技もさることながら、脚本の発想がよく介護される老人たちそれぞれに個性をもたせた。実におもしろい。しかも、坂田利夫、津川雅彦そして本当の義父でもある柄本明いずれもすばらしい演技でこの映画を支えている。安藤桃子女史も原作、脚本、監督とすばらしい活躍を見せたが、今回はまわりのスタッフに恵まれたのかなという印象をもつ。すばらしい映画だ。
津川雅彦の戦争話の一人舞台はちょっと長すぎという印象をもつが、それ以外は凡長に感じる部分は少なく、3時間が長いなあとは感じなかった。私自身は坂田利夫の演技を特に称賛したい。
介護ヘルパーの山岸サワ(安藤サクラ)は、派遣先の奥さん(木内みどり)からおじいちゃん(織本順吉)と一晩過ごしてほしいと依頼される。当日の夜、思いもよらぬ事故が起こり、サワは家も仕事も失ってしまう。
貯金もなく窮地に立った彼女は、駐輪場の自転車をパンクさせる茂(坂田利夫)や、書店で女子高生の写真集を万引きする義男(津川雅彦)ら癖の強い老人を見つけては家に上がり込み、強引に彼らのヘルパーとなる。彼らもはじめは面食らうものの、手際良く家事や介護をこなし歯に衣着せぬ彼女に次第に動かされる。
不器用なため社会や家族から孤立した彼らは懸命にぶつかってくるサワと触れあううちに、生の輝きを取り戻していく……。
(作品情報より)
安藤サクラ演じる主人公サワはまじめだ。しかも、仕事はできる。
介護の仕事ができるだけでなく、料理にしろ、掃除にしても家事一般全部こなす女性である。お嫁さんにするなら一番という女性だが、ある家での事件は運が悪いとしか言いようにない。でもこの事件がなければこのストーリーはないのであるが。
本来介護の派遣先からは禁止されているが、何度も通ううちに情が移り、しかもいいお金をくれると聞き、介護しているおじいさんに添い寝するという話をサワが受けてしまう。でも若い女性が隣にくると、いつもはぐったりしているおじいさんも一変して発情する。主人公サワにキスをしまくり、触りまくる。サワに触った手を離さない。そうしているうちに布団のそばにあるストーブに、布団が火が燃えうつり火事になってしまう。
気がつくと、寮を追い出され職を失う。帰る家もない。
路頭に迷っている時に、あるカラオケ店でそこに泊りたいと店員に言い寄る若干ボケ気味の老人を見つける。
とっさに知り合いのふりをして、一緒にカラオケ店の中に入り一晩老人と過ごす。別にエッチするわけではない。
朝になり別れるが、老人は付き合ってくれたことに感謝して一万円と自分がはおっているオーバーコートをくれる。
失業した主人公が何かに目覚める場面である。
1.坂田利夫の話
1人暮らしだ。自転車を見つけては、自分の小道具でチェーンを外し勝手にに乗り回す。おじいさん(以下坂田とする)がスーパーにおいてある自転車のタイヤをパンクさせているのをサワが見つける。「おじいちゃん何やっているの?」と話しかける。何も知らないと言い張る坂田を脅迫するようにサワが買い物させる。そのあと、サワが付けていく。そうすると、知り合いと称する男(ベンガル)にインチキ投資話を勧められているのだ。でもその際に坂田が大金をもっていることが分かり、サワが近づいていく。うっとうしいと思いながら、弱みを握られた坂田は家に入れる。そして気がつくと、押しかけ女房のようにサワが住み着くのだ。
ヘルパーというわけでもない。「押し掛け女房」という名がピッタリの家事をやる居候のようなものだ。
元自動車整備工だけど、小金をためてきたので1000万円はあるという。でもそのままにしておくと、詐欺に引っかかってしまう。サワは正義感を発揮させる。
ここでの坂田利夫の演技は天下一品だ。ここでお笑い系のオヤジをもってきたこと自体、キャスティング大成功である。本当にうまい。日本映画のさまざまな助演男優賞に若手が選出されているけど、本当は坂田を推すべきだな。ここの坂田利夫は冴えまくる。
この坂田演じる茂には宝物がある。「いすゞ117クーペ」だ。うーん懐かしい!!
一度はこの車をオヤジに買ってもらおうと思っていたこともあったので、思わずのけぞった。
やがてサワと別れる日が来る。そのときにはこの車はサワのものになる。
自分は平成のはじめに5年大阪にいたことがある。大阪というのは貧富の差が激しい。前近代的資本主義のような家内工業を営む人が多く、こういう工員さんのような人は割といた。でも彼らは意外に金をもっていた。見栄えはしないけど、無駄な金を使わないでじっくり貯めるのだ。坂田に金がある話は信憑性あるなと思ったものだ。
でも危なかった。サワが詐欺と見抜いたインチキ投資話に引っかかるところだった。それなのに坂田は詐欺師をかばう。引っかかったんだったらそれでも構わないんだという。こういう人っているよな。結婚詐欺に引っかかって被害届を出さない人たちみたいだ。
いろんな教訓が話に含まれているような気がした。
2.津川雅彦の話
本屋でセーラー服の写真集に見入っている老紳士を見つける。しかも、それを洋服の中に入れて持ち去ろうとしている。
そこに現れるのがサワだ。「オジサン何しているの?」ときたものだ。この近づき方↓おもしろい。
この映画の説明文には書いていないけど、サワは明らかに弱みに付け込んで老人の懐に入る悪いやつだ。
それが家事と介護の腕が天下一品なんで老人たちに好かれていくという構図だ。
教職だという津川の家は家政婦もいて金は大きな家だ。この家には要介護の認知症になっている妻がいる。それを草笛光子が演じる。サワが彼女の介護をするのは手慣れたものだ。すぐに受け入れられる。もともと音楽関係にいたであろうこの妻はぼけても歌だけは忘れない。「光子の窓」はともかく年老いてもミュージカルをずっとやっていた草笛には適役である。
津川雅彦はエロオヤジが得意だ。今から20年くらい前までは、渡辺淳一原作の「不倫の帝王」のような役が得意だった。伊丹十三映画でも常連だった。今回大物の起用だけど、奥田瑛二とその昔女遊びをした仲間って感じだよね。奥さんへの罪滅ぼしに出たのかな?
ずいぶん老けちゃったけど、女子高生のセーラー服に興味をもったり、サワの入浴を覗き見するような役はお手の物だ。ここではかなりの長まわしで、戦争批判の話をするけど、ちょっとよけいだなあ。津川雅彦はさすがの演技をしたと思うけど、この映画で唯一の苦痛だった。でも「0.5ミリ」という題名はその津川雅彦のセリフの中にある。
それでも津川とも別れが来る。姪が面倒をみると言ってくるのだ。
こういう話もよく聞くなあ。自分がお世話になった93歳のおばあさんが昨年亡くなった。まめなおばあさんで随分と30年近くお世話になったが、ご主人とは20年以上前に死別して子供がいなかった。何でも自分でやる人で、2年前に施設に入る前は人の世話を一切借りなかった。どうなるのかな?と思っていたら、突然姪が現れる。あまり縁が強くないのかな?と思っていたら、しっかり財産目当ての人が現れた。このおばあさんには面倒見ている近い人がいたけど、あっさり姪が多額の遺産をさらっていった。そんなものだ。
ここでは浅田美代子がその姪を演じる。身近に似たような話があったので坂田の話同様ありえそうな話だなあと思った。
浅田が演じるのであんまりずうずうしくないタイプの姪だけど、もう少しいやらしい女だったらもっとおもしろかったのかもしれない。
あと柄本明の話があるけど、最初の火事の話とつながる。でもこの話は真のネタばれなんでやめておこう。
ただ、安藤サクラが思いっきり柄本明を蹴っ飛ばすシーンがある。おいおい義理のお父さんじゃない。
そう思いながらも蹴りには力がこもっていた。
それにしても、ファミリーの協力がうらやましい。普通、夫婦両家のお互いの家族がこんなに協力しあうのってあまりないでしょう。
安藤サクラって幸せな人生を歩んでいるんだなあと感じる。
だからこんな傑作ができたんだろうと
非常におもしろかったです。ネタばれありになるけど、じっくり語りたい。
評判がいいことは知っていたが、上映時間3時間16分ときいただけで、ちょっと避けていた。それでも「百円の恋」の安藤サクラの演技にショックを受け、何が何でも早めに行かなくてはと思い、時間を見つけて見に行ってきました。
介護の仕事をしていた主人公がクビになり、町にいる老人たちに目を付けて押し掛け女房のようにヘルパー役を引き受けるという話だ。安藤サクラ自体の演技もさることながら、脚本の発想がよく介護される老人たちそれぞれに個性をもたせた。実におもしろい。しかも、坂田利夫、津川雅彦そして本当の義父でもある柄本明いずれもすばらしい演技でこの映画を支えている。安藤桃子女史も原作、脚本、監督とすばらしい活躍を見せたが、今回はまわりのスタッフに恵まれたのかなという印象をもつ。すばらしい映画だ。
津川雅彦の戦争話の一人舞台はちょっと長すぎという印象をもつが、それ以外は凡長に感じる部分は少なく、3時間が長いなあとは感じなかった。私自身は坂田利夫の演技を特に称賛したい。
介護ヘルパーの山岸サワ(安藤サクラ)は、派遣先の奥さん(木内みどり)からおじいちゃん(織本順吉)と一晩過ごしてほしいと依頼される。当日の夜、思いもよらぬ事故が起こり、サワは家も仕事も失ってしまう。
貯金もなく窮地に立った彼女は、駐輪場の自転車をパンクさせる茂(坂田利夫)や、書店で女子高生の写真集を万引きする義男(津川雅彦)ら癖の強い老人を見つけては家に上がり込み、強引に彼らのヘルパーとなる。彼らもはじめは面食らうものの、手際良く家事や介護をこなし歯に衣着せぬ彼女に次第に動かされる。
不器用なため社会や家族から孤立した彼らは懸命にぶつかってくるサワと触れあううちに、生の輝きを取り戻していく……。
(作品情報より)
安藤サクラ演じる主人公サワはまじめだ。しかも、仕事はできる。
介護の仕事ができるだけでなく、料理にしろ、掃除にしても家事一般全部こなす女性である。お嫁さんにするなら一番という女性だが、ある家での事件は運が悪いとしか言いようにない。でもこの事件がなければこのストーリーはないのであるが。
本来介護の派遣先からは禁止されているが、何度も通ううちに情が移り、しかもいいお金をくれると聞き、介護しているおじいさんに添い寝するという話をサワが受けてしまう。でも若い女性が隣にくると、いつもはぐったりしているおじいさんも一変して発情する。主人公サワにキスをしまくり、触りまくる。サワに触った手を離さない。そうしているうちに布団のそばにあるストーブに、布団が火が燃えうつり火事になってしまう。
気がつくと、寮を追い出され職を失う。帰る家もない。
路頭に迷っている時に、あるカラオケ店でそこに泊りたいと店員に言い寄る若干ボケ気味の老人を見つける。
とっさに知り合いのふりをして、一緒にカラオケ店の中に入り一晩老人と過ごす。別にエッチするわけではない。
朝になり別れるが、老人は付き合ってくれたことに感謝して一万円と自分がはおっているオーバーコートをくれる。
失業した主人公が何かに目覚める場面である。
1.坂田利夫の話
1人暮らしだ。自転車を見つけては、自分の小道具でチェーンを外し勝手にに乗り回す。おじいさん(以下坂田とする)がスーパーにおいてある自転車のタイヤをパンクさせているのをサワが見つける。「おじいちゃん何やっているの?」と話しかける。何も知らないと言い張る坂田を脅迫するようにサワが買い物させる。そのあと、サワが付けていく。そうすると、知り合いと称する男(ベンガル)にインチキ投資話を勧められているのだ。でもその際に坂田が大金をもっていることが分かり、サワが近づいていく。うっとうしいと思いながら、弱みを握られた坂田は家に入れる。そして気がつくと、押しかけ女房のようにサワが住み着くのだ。
ヘルパーというわけでもない。「押し掛け女房」という名がピッタリの家事をやる居候のようなものだ。
元自動車整備工だけど、小金をためてきたので1000万円はあるという。でもそのままにしておくと、詐欺に引っかかってしまう。サワは正義感を発揮させる。
ここでの坂田利夫の演技は天下一品だ。ここでお笑い系のオヤジをもってきたこと自体、キャスティング大成功である。本当にうまい。日本映画のさまざまな助演男優賞に若手が選出されているけど、本当は坂田を推すべきだな。ここの坂田利夫は冴えまくる。
この坂田演じる茂には宝物がある。「いすゞ117クーペ」だ。うーん懐かしい!!
一度はこの車をオヤジに買ってもらおうと思っていたこともあったので、思わずのけぞった。
やがてサワと別れる日が来る。そのときにはこの車はサワのものになる。
自分は平成のはじめに5年大阪にいたことがある。大阪というのは貧富の差が激しい。前近代的資本主義のような家内工業を営む人が多く、こういう工員さんのような人は割といた。でも彼らは意外に金をもっていた。見栄えはしないけど、無駄な金を使わないでじっくり貯めるのだ。坂田に金がある話は信憑性あるなと思ったものだ。
でも危なかった。サワが詐欺と見抜いたインチキ投資話に引っかかるところだった。それなのに坂田は詐欺師をかばう。引っかかったんだったらそれでも構わないんだという。こういう人っているよな。結婚詐欺に引っかかって被害届を出さない人たちみたいだ。
いろんな教訓が話に含まれているような気がした。
2.津川雅彦の話
本屋でセーラー服の写真集に見入っている老紳士を見つける。しかも、それを洋服の中に入れて持ち去ろうとしている。
そこに現れるのがサワだ。「オジサン何しているの?」ときたものだ。この近づき方↓おもしろい。
この映画の説明文には書いていないけど、サワは明らかに弱みに付け込んで老人の懐に入る悪いやつだ。
それが家事と介護の腕が天下一品なんで老人たちに好かれていくという構図だ。
教職だという津川の家は家政婦もいて金は大きな家だ。この家には要介護の認知症になっている妻がいる。それを草笛光子が演じる。サワが彼女の介護をするのは手慣れたものだ。すぐに受け入れられる。もともと音楽関係にいたであろうこの妻はぼけても歌だけは忘れない。「光子の窓」はともかく年老いてもミュージカルをずっとやっていた草笛には適役である。
津川雅彦はエロオヤジが得意だ。今から20年くらい前までは、渡辺淳一原作の「不倫の帝王」のような役が得意だった。伊丹十三映画でも常連だった。今回大物の起用だけど、奥田瑛二とその昔女遊びをした仲間って感じだよね。奥さんへの罪滅ぼしに出たのかな?
ずいぶん老けちゃったけど、女子高生のセーラー服に興味をもったり、サワの入浴を覗き見するような役はお手の物だ。ここではかなりの長まわしで、戦争批判の話をするけど、ちょっとよけいだなあ。津川雅彦はさすがの演技をしたと思うけど、この映画で唯一の苦痛だった。でも「0.5ミリ」という題名はその津川雅彦のセリフの中にある。
それでも津川とも別れが来る。姪が面倒をみると言ってくるのだ。
こういう話もよく聞くなあ。自分がお世話になった93歳のおばあさんが昨年亡くなった。まめなおばあさんで随分と30年近くお世話になったが、ご主人とは20年以上前に死別して子供がいなかった。何でも自分でやる人で、2年前に施設に入る前は人の世話を一切借りなかった。どうなるのかな?と思っていたら、突然姪が現れる。あまり縁が強くないのかな?と思っていたら、しっかり財産目当ての人が現れた。このおばあさんには面倒見ている近い人がいたけど、あっさり姪が多額の遺産をさらっていった。そんなものだ。
ここでは浅田美代子がその姪を演じる。身近に似たような話があったので坂田の話同様ありえそうな話だなあと思った。
浅田が演じるのであんまりずうずうしくないタイプの姪だけど、もう少しいやらしい女だったらもっとおもしろかったのかもしれない。
あと柄本明の話があるけど、最初の火事の話とつながる。でもこの話は真のネタばれなんでやめておこう。
ただ、安藤サクラが思いっきり柄本明を蹴っ飛ばすシーンがある。おいおい義理のお父さんじゃない。
そう思いながらも蹴りには力がこもっていた。
それにしても、ファミリーの協力がうらやましい。普通、夫婦両家のお互いの家族がこんなに協力しあうのってあまりないでしょう。
安藤サクラって幸せな人生を歩んでいるんだなあと感じる。
だからこんな傑作ができたんだろうと