映画「浅草キッド」は2021年のNetflix配信
「浅草キッド」はビートたけしが浅草フランス座で下働きをしている時代の物語、座長で師匠の深見千三郎との関係を中心に描かれている。劇団ひとりがメガホンを持ち、ビートたけしを柳楽優弥、深見千三郎を大泉洋が演じる。毒の強いビートたけしの創成期がこんなにナイーブだったのかと思わせる柳楽優弥の演技には調子が狂う。一方で大泉洋演じる大衆娯楽の座長ぶりはうまい。
計算尽くされ洗練された外国映画を観た後で、映画の序盤戦はどこかB級というよりC級の匂いでどこか中途半端な感じがする。ストリップ小屋とはいえ、裸は見せない。でも、中盤からなんとか這い上がろうとするたけしを映し出し良くなっていく。師匠深見千三郎のセリフの数々には重みがあるものも多い。正直70点以上の点数はだせない作品だが、見ておいた方がいい。泣けてくるシーンもある。
北野武(柳楽優弥)は浅草六区のストリップ小屋フランス座のエレベーターボーイである。こんな仕事をやるつもりで入ったわけでないと劇場のおばちゃんに愚痴を言っていると、座長の深見千三郎(大泉洋)が通りかかリ、この子芸人になりたいんでと声をかける。
「お前何か芸あるか?」下を見て黙り込むたけし。「それで芸人になろうというのは甘い」たけしは何も言えない。
しばらく経ってまたたけしを見た時に深見千三郎はタップダンスを見せてやった。「芸というのはこういうもんだ。」
たけしは密かにタップダンスの練習を始める。フランス座のストリッパーには深見千三郎の連れ合い麻里(鈴木保奈美)と歌手志望の千春(門脇麦)がいた。ストリップダンスの合間に演じるつなぎのお笑いで自らの技をみがくのであるが。。。
⒈小林信彦の「日本の喜劇人」と深見千三郎
お笑いコメディアン史には古典ともいうべき名著小林信彦「日本の喜劇人」がある。そこでどのように取り上げられているか気になるので書棚に向かう。ビートたけしについて書かれている項目で深見千三郎のことが書いてあるので引用する。
深見千三郎は戦前派の浅草芸人で,萩本欽一の先生でもあった。萩本の話では,たけしは,深見千三郎の芸風にそっくりだと言う。たけしに言わせると, 「捨て台詞と田舎者を莫迦にするところが似ている」そうだ。(小林信彦 日本の喜劇人p314)
大泉洋はいつものスタイルと変わらない。でも深見千三郎ってこんな人だったんだろうなあというのが映像から伝わってくる。
たけしについて
上昇志向のみの人間には見えない真実を,さりげなく,下町の土着的な笑いのオブラートに包んで言ってのけるところに,たけしの本領がある。ドロップアウトした人間のみに見える真実,と言っても良い。文化的ニセモノ,うさんくささをかぎつける彼の能力,本能は,ちょっと,類がない。(同 pp.315-316)
さすが小林信彦の評価である。そのテイストはこの映画の根本に流れている。
⒉ビートきよし
途中からフランス座でくすぶっているたけしのもとに、辞めて別の道を歩んでいたきよしが一緒にやらないかと訪れる。フランス座では所詮ストリップを見に来た客に、ステージの合間に芸を見せるだけ。誰もちゃんと見てくれない。たけしにはそういうストレスが溜まっていた。しかも、フランス座の懐具合は最悪。そこで親方の逆鱗に触れる覚悟で退団を申し入れるのだ。
強烈なビートたけしの横でいつもボケ役だったビートきよしという存在は昔から気になっていた。とても主役を張れるタマではない。毒舌満開のたけしの横で「やめなさい!」というだけ。ナイツ土屋の柔らかさがいい感じに見えた。
⒊門脇麦
好きな女優だ。特に若松孝二監督の下にいたアシスタントを演じた「止められるか俺たちを」から追いかけている。今回はストリッパーだけど、歌手になる夢を捨てられないという役柄だ。「さよならくちびる」でも歌を唄っていたが、今回も誰もいないステージで弘田三枝子の「人形の家」を披露する。
たけしが気を利かせて歌を披露するタイムを用意する。とりあえず観客は拍手はする。しかし, いつ脱ぐんだいとみんなから言われる。ドロップアウトしていく姿を演じるのは門脇麦には得意技だ。悪くはないが,せっかくのストリッパー役でもう少しサービスして欲しかった。
最後のエンディングロールは桑田佳祐、これがまたいい曲だねえ
「浅草キッド」はビートたけしが浅草フランス座で下働きをしている時代の物語、座長で師匠の深見千三郎との関係を中心に描かれている。劇団ひとりがメガホンを持ち、ビートたけしを柳楽優弥、深見千三郎を大泉洋が演じる。毒の強いビートたけしの創成期がこんなにナイーブだったのかと思わせる柳楽優弥の演技には調子が狂う。一方で大泉洋演じる大衆娯楽の座長ぶりはうまい。
計算尽くされ洗練された外国映画を観た後で、映画の序盤戦はどこかB級というよりC級の匂いでどこか中途半端な感じがする。ストリップ小屋とはいえ、裸は見せない。でも、中盤からなんとか這い上がろうとするたけしを映し出し良くなっていく。師匠深見千三郎のセリフの数々には重みがあるものも多い。正直70点以上の点数はだせない作品だが、見ておいた方がいい。泣けてくるシーンもある。
北野武(柳楽優弥)は浅草六区のストリップ小屋フランス座のエレベーターボーイである。こんな仕事をやるつもりで入ったわけでないと劇場のおばちゃんに愚痴を言っていると、座長の深見千三郎(大泉洋)が通りかかリ、この子芸人になりたいんでと声をかける。
「お前何か芸あるか?」下を見て黙り込むたけし。「それで芸人になろうというのは甘い」たけしは何も言えない。
しばらく経ってまたたけしを見た時に深見千三郎はタップダンスを見せてやった。「芸というのはこういうもんだ。」
たけしは密かにタップダンスの練習を始める。フランス座のストリッパーには深見千三郎の連れ合い麻里(鈴木保奈美)と歌手志望の千春(門脇麦)がいた。ストリップダンスの合間に演じるつなぎのお笑いで自らの技をみがくのであるが。。。
⒈小林信彦の「日本の喜劇人」と深見千三郎
お笑いコメディアン史には古典ともいうべき名著小林信彦「日本の喜劇人」がある。そこでどのように取り上げられているか気になるので書棚に向かう。ビートたけしについて書かれている項目で深見千三郎のことが書いてあるので引用する。
深見千三郎は戦前派の浅草芸人で,萩本欽一の先生でもあった。萩本の話では,たけしは,深見千三郎の芸風にそっくりだと言う。たけしに言わせると, 「捨て台詞と田舎者を莫迦にするところが似ている」そうだ。(小林信彦 日本の喜劇人p314)
大泉洋はいつものスタイルと変わらない。でも深見千三郎ってこんな人だったんだろうなあというのが映像から伝わってくる。
たけしについて
上昇志向のみの人間には見えない真実を,さりげなく,下町の土着的な笑いのオブラートに包んで言ってのけるところに,たけしの本領がある。ドロップアウトした人間のみに見える真実,と言っても良い。文化的ニセモノ,うさんくささをかぎつける彼の能力,本能は,ちょっと,類がない。(同 pp.315-316)
さすが小林信彦の評価である。そのテイストはこの映画の根本に流れている。
⒉ビートきよし
途中からフランス座でくすぶっているたけしのもとに、辞めて別の道を歩んでいたきよしが一緒にやらないかと訪れる。フランス座では所詮ストリップを見に来た客に、ステージの合間に芸を見せるだけ。誰もちゃんと見てくれない。たけしにはそういうストレスが溜まっていた。しかも、フランス座の懐具合は最悪。そこで親方の逆鱗に触れる覚悟で退団を申し入れるのだ。
強烈なビートたけしの横でいつもボケ役だったビートきよしという存在は昔から気になっていた。とても主役を張れるタマではない。毒舌満開のたけしの横で「やめなさい!」というだけ。ナイツ土屋の柔らかさがいい感じに見えた。
⒊門脇麦
好きな女優だ。特に若松孝二監督の下にいたアシスタントを演じた「止められるか俺たちを」から追いかけている。今回はストリッパーだけど、歌手になる夢を捨てられないという役柄だ。「さよならくちびる」でも歌を唄っていたが、今回も誰もいないステージで弘田三枝子の「人形の家」を披露する。
たけしが気を利かせて歌を披露するタイムを用意する。とりあえず観客は拍手はする。しかし, いつ脱ぐんだいとみんなから言われる。ドロップアウトしていく姿を演じるのは門脇麦には得意技だ。悪くはないが,せっかくのストリッパー役でもう少しサービスして欲しかった。
最後のエンディングロールは桑田佳祐、これがまたいい曲だねえ