後藤和弘のブログ

写真付きで趣味の話や国際関係や日本の社会時評を毎日書いています。
中央が甲斐駒岳で山麓に私の小屋があります。

シリアの全ての世界文化遺産が内戦で危機的状況にある

2013年10月01日 | 日記・エッセイ・コラム

シリア内戦は200万人以上の難民を国外へ追い出しただけではありません。

シリアにある6ケ所の全ての世界文化遺産が盗掘されたり爆撃されたりして危機的な状況にあります。戦争は人間を狂気にするのです。

下に共同通信が伝えるこの危機的状況を示します。

(以下の情報の出典は、http://1topi.jp/curator/toshihiro.takagi/1307/15/261187です。)

共同通信 によると、国立アレッポ博物館のユーセフ・カンジョ館長(人類学)が2013年7月13日、奈良県橿原市の県立橿原考古学研究所で講演し、同国の世界遺産である古都アレッポなどの文化遺産について「爆撃による破壊や紛争に乗じた盗掘などが繰り返されている」と惨状を訴えた。 また、 時事通信 によると、6月20日にカンボジアのプノンペンで開かれた国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会で、内戦が続くシリアにある古都ダマスカス、古代都市ボスラ、古都アレッポなど6カ所の世界遺産をすべて「危機遺産」に登録している。

そして、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産で、シリア西部にある十字軍の城「クラック・デ・シュバリエ」が、シリア軍に空爆され、一部が破壊されたもようだ。7月12日撮影とされる映像がインターネット上に出回っている。 時事通信 が伝えた。 7月13日までに YouTube に掲載された映像では、山上のとりでが空爆を受け火柱が上がった直後、建物の一部が砕け煙とともに飛び散る様子が映っている。また映像には、爆撃したのはアサド政権の戦闘機だと叫ぶ撮影者の声も入っており、城は反政府勢力に使われていたものと見られると NHK は伝えている。

なお クラック・デ・シュバリエ はこの前の記事、内戦が続くシリアとはこんな国のようです の中で上から3番目の写真で紹介しました。

クラック・デ・シュバリエは シリア北西部にある十字軍時代の城塞です。クラック・デ・シュバリエとはフランス語で「騎士の城」という意味だそうです。

下にその爆撃中の城の写真を示します。

Saved_quote_image_2611871


内戦が続くシリアとはこんな国のようです

2013年10月01日 | 写真

内戦が始まる前のシリアという国の様子は、ワールド・ギャラリーhttp://www.travelerscafe.jpn.org/syria/index.htmをご覧になると少し想像がつきます。是非一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。

以下にこの写真集から4枚の写真をお借りして以下にお送りいたします。

Image0031
ウマイヤド・モスク
715年建造の世界最古のモスク。
メッカ、メディナ、エルサレムに次ぐイスラム教4大聖地の1つに数えられており、モスクの規模もメッカ、メディナに次ぐ大きさを誇る。
[1979年/世界文化遺産]

Image0061
・街の市場風景

Image0111
クラック・デ・シュバリエ
11世紀初頭にホムス王によって築かれた砦だが、1099年の十字軍(ヨハネ騎士団)が占領し城砦としての大幅な改築を行い、難攻不落の城砦となる。750mの丘の上に築かれており、イスラムの英雄サラディンの包囲にも耐えた。
[2006年/世界文化遺産]

Image0041
元々この場所には聖ヨハネ教会がが建てられていたため、今も聖ヨハネの墓がる。このヨハネとは洗礼者ヨハネで、イエス・キリストの洗礼者であり、紀元30年ごろヨルダン川南で宗教活動を行っていた預言者。

===シリアの政治体制=================

イスラム圏の国々の政治体制や社会の民主化の程度に関して詳細な研究結果がネット上に発表されています。「中東・イスラーム諸国の民主化」という学術的なホーム・ページがそれで、そのURLは、http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~dbmedm06/me_d13n/database/syria/institution.htmlです。

大部分の国々は首長と呼ばれる王様が治めています。専制君主国家です。しかし西洋の植民地だった国々では政治体制は議会制民主義を形式的に取り入れています。シリアもその一例ですが、実権は大統領が独裁的な王様のように統治しています

その政治体制を「中東・イスラーム諸国の民主化」という学術的なホーム・ページから転載すると以下のようになります。

現在のシリアの政治体制は新家産制的権威主義に分類できる。この体制は、1970年11月のハーフィズ・アサド前大統領による実権掌握(矯正運動)をもって確立し、2000年7月のバッシャール・アサド大統領就任(ジュムルーキーヤ[世襲共和制]の確立)を経て、今日に至っている。 

シリアの政治体制における最大の特徴は「目に見える権力」と「隠された権力」という二つの権力が存在する「権力の二層構造」を持つ点にある。 

「目に見える権力」は、三権分立の法治国家としての体裁をとる現下のシリアの政治体制のもとで合法的に行使される「公法的」権力を意味し、内閣、人民議会など、いわゆる「名目的権力装置」によって担われている。この権力はシリアに「民主的」、「多元的」な外見を付与し、権威主義を隠蔽するために行使されているに過ぎず、何の実体もない。 

これに対し、「隠された権力」こそがシリアの「唯一にして真の権力」であり、「公的生活や公的活動の背後で社会的・政治的諸状況のすべての枝葉末節に密かに浸透している」。この権力はムハーバラート(諜報機関、治安維持警察、武装治安組織の総称)や軍といった「真の権力装置」によって「非公的」に担われている。 

法治国家の体裁をとる今日のシリアにおいて、ムハーバラートと軍の政治への介入は通常法の枠組みのなかで行われるのではなく、戒厳令(ハーリド・アズム内閣[1962年9月~1963年3月]がイスラエルとの戦争状態を理由に1962年12月22日立法第51号[非常事態令]として発令し、1963年3月8日の「バアス革命」直後の軍事令第2号[1963年3月8日]によって継続が確認)によって例外的に認められているに過ぎない。こうしたなかで、「真の権力装置」による合法的な権力行使を可能としているのが支配政党であるアラブ社会主義バアス党である。   

バアス党は人民議会において過半数の議席を占め、主要閣僚ポストを独占することで「名目的権力装置」を統括する一方、「バアス党は社会と国家を指導する党である」という憲法(1973年3月13日施行--アラビア語全文日本語訳全文英語訳全文)第8条の規定に依拠し、超法規的な措置を通じて自らの政治目的を達成できる。またムハーバラートや軍の幹部に党内の責任ある地位を与えることで、「隠された権力」の「合法的」な行使にも寄与している。 

両権力装置の頂点には大統領が君臨する。ハーフィズ・アサド前大統領は「名目的権力装置」において、大将、軍・武装部隊総司令官、バアス党民族指導部書記長、同シリア地域指導部書記長、進歩国民戦線中央指導部書記長を兼務し、権力のピラミッドの頂点を制度的に確保してきた。またバッシャール・アサド大統領も父の公職のうち民族指導部書記長職以外を継承している。しかし彼らの絶対的な指導力はこれらの「公的」な「地位」のみによって付与されているのではなく、ムハーバラートや軍の幹部との個人的関係(地縁・血縁関係、信頼関係、さらには「恐畏」の念(「恐れ」と「畏れ」が相半ばした念)に基づく個人的関係)を通じて得られる「非公的」な「立場」によって与えられている。

ご参考になれば幸いです。(終わり)


イスラム圏の中近東のことはどうでも良いか!自分の生活だけが幸せならそれで良いのか!

2013年10月01日 | 日記・エッセイ・コラム

多くの日本人は、 イスラム圏の中近東のことはどうでも良いと 思っているフシがあります。自分の生活だけが幸せならそれで良いと思って、イスラム圏のことを無視している人もいるかも知れません。

私も昔はそのように思っていました。イスラム圏の国々の実情を理解していなかったからです。

しかし最近、私はイスラム圏の国々を以下の3つの基準で分類しています。そうすると中近東に関するニュースがよく分かり、途端に面白くなってきたのです。

(1)イスラム教に厳格に従って政治を行っている国々。そしてそれとは反対に現実的な(世俗的な)政治を行っている国々。

前者の例がホメイニ革命から30年続いたイランの政治でした。それを新しい大統領のロハニ氏が現実的な(世俗的な)政治を行う方向に転換し出したのです。核兵器の開発も中止しそうな勢いです。これは中近東を揺るがす大ニュースです。

現実的な(世俗的な)政治を行っている代表的な国はトルコです。しかしまだ西欧の民主国とは違う制度が多いので、EUへ加入出来ないのです。

(2)イスラム教の国でアメリカと仲の良い国々。反対にアメリカと敵対している国々。

前者の例が、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、バ-レーンなどなどです。

後者の例がシリアです。アメリカが占領する前のフセイン大統領時代のイラクも激しくアメリカに敵対していました。

このような国をアメリカは許しません。何かキッカケがあれば武力攻撃をしようとします。フセイン大統領も死刑に処せられたのです。リビヤのカダフィ大佐も反政府派によって殺されたのです。

ところがシリアのうしろには大国ロシアがついていたのです。ロシアのプーチン大統領が介入してアメリカの軍事作戦を中止させたのです。

ですから中近東で起きる大きな事件は、その裏でアメリカやロシアのような大国がどのように支援しているかを考えると途端に分かりやすくなります。

(3)イスラム圏の中近東には欧米流の民主主義は絶対に根づきません。

欧米の国がイスラム圏の国々の内戦に介入する場合によく民主化を旗印にして軍事援助をします。しかし民主化はあくまでも旗印だけで本音は親米国家にするために介入するのです。そのように考えれば中近東で起きる事件を気軽に理解出来ます。

アメリカのアフガニスタン占領がこの例です。親米政権が出来ましたが国内は民主国からは程遠ういのです。

そしてシリア内戦の反政府軍は狂信的なイスラム教徒の違った派閥が混とんとして、反政府戦闘をしているのです。

反政府軍がたとえ勝ってもシリアは民主国家には変わりません。イスラムの原理に従った政治が行われます。その政府が親米か親ロシアになるかが問題なのです。現在のシリアの大統領が勝てば親ロシアの国になります。従来よりもっと強く親ロシアの関係が出来ます。

さて世界第三位の軍事力と第二位の経済力を持っている中国は中近東にどのような形で介入するのでしょうか?中国はアフリカの国々に大きな経済援助をしていますから、必ずや中近東に介入してくる筈です。今後のニュースが気になります。

このように私は大雑把に3つの基準を用いて中近東のニュースを理解しています。たとえ間違った理解でも中近東の人々が身近に感じられます。

そうすると200万人以上のシリア難民のこともひとごとではなくなります。

それはそれとして、

今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)

Mohammed_receiving_revelation_from_
天使ジブリールから神の教え(啓示)を受けるムハンマド(14世紀,エディンバラ大学所蔵『集史』「預言者ムハンマド伝」載録の細密画)。出典は、http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%96%E3%83%B3%EF%BC%9D%E3%82%A2%E3%83%96%E3%83%89%E3%82%A5%E3%83%83%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%95です。