「からまつ」 北原白秋
一
からまつの林を過ぎて、
からまつをしみじみと見き。
からまつはさびしかりけり。
たびゆくはさびしかりけり。
二
からまつの林を出でて、
からまつの林に入りぬ。
からまつの林に入りて、
また細く道はつづけり。
三
からまつの林の奥も
わが通る道はありけり。
霧雨のかかる道なり。
山風のかよふ道なり。
四
からまつの林の道は、
われのみか、ひともかよひぬ。
ほそぼそと通ふ道なり。
さびさびといそぐ道なり。
五
からまつの林を過ぎて、
ゆゑしらず歩みひそめつ。
からまつはさびしかりけり、
からまつとささやきにけり。
六
からまつの林を出でて、
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
からまつのまたそのうへに。
七
からまつの林の雨は
さびしけどいよよしづけし。
かんこ鳥鳴けるのみなる。
からまつの濡るるのみなる。
八
世の中よ、あはれなりけり。
常なれどうれしかりけり。
山川に山がはの音、
からまつにからまつのかぜ。
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下の4枚の写真は昨年、10月29日に上高地を散策しながら撮った風景写真です。
大正池の向こう側の遠方のカラマツ林をズームで撮りまた。
そして田代橋から梓川の上流に向かって右側の岸辺を歩きながらカラマツ林を撮りました。
梓川の向こう側の遥か上の方には穂高連山が見える筈です。雲が多く、わずかに時々雪山の稜線が見えていました。
河童橋には相変わらず人が沢山いましたので敬遠しました。
このようにカラマツ林が見事に紅葉している風景は何度も上高地に来ていますが初めてです。写真をお楽しみ頂ければ嬉しく思います。
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今日も皆様のご健康と平和をお祈りいたします。後藤和弘(藤山杜人)