★内藤好之氏の「みんな俳句が好きだった」東京堂出版という本をめくるのが好きになっている。この本には俳人だけでなく各界から百名を選びその人の俳句を紹介している。
その一端を紹介したい。
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森鴎外は軍医として何回か従軍している。
「うた日記」は日露戦争に従軍していた時の陣中詠をまとめて刊行したものであり、
新体詩、短歌、そして百六十八句が載せられている。
月の下、木枯らしに波立つ天幕の焚火のほとりに、鉛筆して手帳の端に書きつけし・・・
と書かれたこの「うた日記」には次のような俳句が記されている。
埋火の燃え尽くしたる窪みかな
灯火を消すや火桶の薄明かり
行水や甕大にして頭を没す
馬上十里黄なるてふてふ一つ見し
かど松の壕の口にも立てられし
松立てしひとり夜の間に討たれける
一見のどかではあるが、ここは戦場、中にはぎくっとさせられる句も見られる。