575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

山形1泊の旅 ~ より道 「 奥の細道 」⑵ ~ 竹中敬一

2018年12月15日 | Weblog

芭蕉の旅は寒い時期は避けたものの、梅雨時や夏場の暑い時期に

当たります。

宮城県の塩竈神社に向かう途中、5月2日 ( 今の6月18日 ) 飯坂。

( 今の福島市にある飯坂温泉 )での記述。

まず、門人の曽良の旅日記より、「 飯坂、宿 記載なし。快晴、昼

より曇、夕方より雨降り夜に入り強し。」とあります。

芭蕉の記述 「 其夜 ( そのよ )飯塚 ( いひづか )にとまる。

温泉 ( いでゆ )あれば、湯に入 ( いり ) て宿をかるに、土坐に筵

( むしろ ) を敷 ( しき ) て、あやしき貧家( ひんか ) 也。

灯 ( ともしび ) もなければ、いろりの火 ( ほ )かげに寝所 ( ねところ )

をもうけて臥 ( ふ ) す。夜に入 ( いり ) て、雷鳴 ( かみなり ) 雨しきり

に降 ( ふり )て、臥 ( ふせ ) る上より もり、 蚤 ( のみ ) ・ 蚊 ( か )

にせせられて眠らず。持病( じびやう )さえおこりて、消入( きえいる )

計 ( ばかり )になん。


" あやしき貧家 "ということなら、やめればよかった思いますが、なにか

事情があったのでしよう。

共同風呂のような外湯で湯に入ったまではよかったものの、宿がひど

かった。土間の上にムシロやワラを敷いて 、携帯してきた紙製の着物

に包まって囲炉裏の側で寝ようとすると、雷が鳴って雨が降りだした。

すると、天井から雨漏りがしてくる上 、ノミや蚊に刺されて眠ること

も出来ない。そのうち持病までが …、

芭蕉は散々な目に会い、消え入るような気持ちになったのでしょう。

持病は註釈によると、痔か胆石のようです、

" せせられ "という言い方は今では聞きなれない言葉となっていますが、

私の子供の頃、若狭の田舎では よく耳にしていました。


鳴子温泉 ( 宮城県大崎市鳴子町 ) から出羽の国 ( 山形 ) に抜ける" 尿前

( しとまへ )の関 "で関守に怪しまれ、すったもんだの末、やっとの思い

でこの関所を越える。

もう日も暮れてしまったので、国境を守る役人の家にお願いして泊めて

もらうことにした。


蚤虱 ( のみしらみ )馬の尿 ( しと )する枕もと


ここでの宿では、ノミ、シラミばかりか、馬のする放尿の音にも悩ま

された。

しかし、こんな情景まで俳句に取り入れ、それが、後の世まで名句と

して親しまれています。

その文学的価値はわからなくても、この句をはじめ「 おくのほそ道 」

に出てくる俳句に出会えば、セピア色ではない今のこととして、人

それぞれの脳裏に旅の情景が浮かんでくる。

不易流行ということでしょうか。


写真は山形県酒田市の日和山公園にある松尾芭蕉の銅像。 筆者 撮影。

芭蕉は酒田市の医師の家に逗留して、句を残しています。
  

   暑き日を海にいれたり最上川

コメント (1)
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