優雅な名前を持つのはナデシコ科ミミナグサ属の30~50cmの多年草。花は
直径2cmとこの仲間にしては大きく、ややうつむき加減の白い花は名前にふさわしく優美である。上高地、河童橋付近の堤のあちこちに咲いているが、群生してはいない。賑やかに大勢の人々が行き交うのに誰も見ようとしない。無理もない人々は、足元はあまり見ない、美しい山や川を見にきているのだから。
古今集「色よりも香こそあはれとおもほゆれ誰が袖触れし宿の梅ぞも」からの着想で、衣服の袖の形にした楊枝いれや匂い袋もあったという。また、様々な豪華な女性の衣装を衣桁にかけた図も誰袖といい、屏風絵などに用いたという。
タガソデソウは絶滅危惧Ⅱ類の草で、長野県と山梨県にしか生息しない。と言っても、私は上高地でしか見たことがない。そんな数少ない草にこのような名前を付けた人はどんな人だろう。植物にも文学にも精通していた人かな。
私は写真に撮ると、観察したような気になり、匂いを嗅いだり、触ったりすることが疎かになってしまう。いつも反省するが、そのときはすっかり忘れ果て写真が撮れているかどうかが気になっている。今回も同じでタガソデソウに香りがあるかないかわかっていない。、来年また上高地にこの時期いくことができるように願うばかりである。