この映画を観ると痛風のすさまじい病状を知ることになる(笑)、という以外に何の予備知識もなく錦糸町のシネコンに入った。
確かに女王の痛風はとんでもなく悲劇的な症状だった。
映画はイギリスの時代劇だった。だからイギリスの歴史を知らない自分には映画の背景はチンプンカンプンだった。
脚本はデボラ・デイビス。元々、若い頃からイギリス王室やイギリス女王の系譜に強い関心抱いていた人の脚本「Balance of Power」が原作。
確かにこの題名はこの映画にぴったりだ。
脚本は、2008年にラジオドラマ化され、今回の映画化につながっているらしい、と映画を観てから知った。
映画はカメラワークと、映画美術と三人の女優の丁々発止の演技の見事さに寝る暇はなかった。
次はどうなる次はどうなると、このどぎつい英国劇画時代劇をハラハラドキドキしながら画面に見入った。
しかし見ていてここまで気持ちが入らない映画は初めてだったが、イギリス人と英国という国の懐の深さというか恐ろしさを思った。
自国の女王をいくら時代劇仕立てとはいえ、徹底的にコメディ仕立てでここまで面白おかしく表現するか!
女王役の俳優の可哀そうさの演技ったらそれは凄かった(笑)。
かの国の王政はこんな映画くらいではびくともしないという自信があるのか、それとももう抑えが効かないのか??
いずれにせよ、こういう映画を作っても批判もされない。しかも女王役の俳優は今年のアカデミー賞の主演女優賞を与えられた!!
日本の映画界では、例え江戸時代の天皇さまでもこんな風に面白おかしく個性的に人間として描こうとする映画業界人や脚本家はいないだろう。
せいぜい日本のテレビや週刊誌が日本のとある王女様と婚約者の事を、いかにも心配している風を装って、
実は記事のネタになると、内心ほくそ笑んでいつまでも続くように願いながら毎日商品化しているくらいが関の山だ。
日本に戦争で勝った英米などのアングロサクソン国の、日本の皇室つぶしの100年越しの戦略には三島由紀夫は気が付いていた。
皇室の藩屏である華族さんたちが平民化されて、日本に歴史的な貴族階級がいなくなった時に勝負はついたようだ。
宮内庁のたまたま宮内庁に配属された960人のサラリーマン官僚や役人たちに、本気で天皇一族をお守りするのを期待するのが無理なのかも知れない。
が、英米の支配階級の連中は、筋書き通りの日本の天皇制の展開にニヤリとしているんだろうなと、この映画をみている最中に見当はずれのことを思っていた。
それにしても日本の女優さんたちも凄いが、あちらにも刮目すべき、素敵に凄みのある女優さんたちが何人もいることを知っただけでも、この映画を教えてもらった
三人会のMさんありがとうございますと言いたい。
余談ながら神戸では滅多に満員のスクリーンに入ることはなかったが、この映画のスクリーンの観客数はほぼ満員だった。
やはり東京は映画観客人口も多いなと思った。
『予告編』
『フューチャレット映像』