ボラなどの稚魚が水中で群れていた。10日ほど以前より成長していた。
かもめやユリカモメなど水鳥が河畔に群れている理由がよくわかる。Fishs are shot by SM
0419 6853歩 4.3km
ボラなどの稚魚が水中で群れていた。10日ほど以前より成長していた。
かもめやユリカモメなど水鳥が河畔に群れている理由がよくわかる。Fishs are shot by SM
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毎日新聞2020年4月19日 14時26分(最終更新 4月20日 00時50分)
新型コロナウイルスの感染拡大が日本でも勢いを増している。重い肺炎などを引き起こすが、確立した治療法はない。
米国で感染拡大の「震源地」となったニューヨークの医療現場ではどのような治療が行われ、医師は何を感じているのか。
ニューヨーク市のマウントサイナイ病院の集中治療室(ICU)で患者の治療にあたる呼吸器集中治療医、石川源太医師(39)に聞いた。【ニューヨーク隅俊之】
分からないことが多すぎる
――ニューヨークで感染拡大が始まって1カ月以上が過ぎた。治療にあたって実感するのはどんなことか。
分からないことが多い。普段診ているぜんそくや細菌性の肺炎には、治療法がある。細菌性の肺炎なら抗生物質を投与すれば、呼吸状態も良くなる。
「よし、効いたな」という瞬間、医師として納得できる瞬間がある。しかし、新型コロナはそれがない。特効薬がなく、症状が急変して亡くなる人もいる。
私は果たして患者の病気を治せているのだろうかと、もどかしい気持ちになる。悪くなった理由がよく分からないのだから、逆に良くなっても、
なぜ良くなったのか正直よく分からない。ウイルスをコントロールするのが難しい。医者になってからこんな感覚になるのは初めてだ。
――ニューヨークでは重症化して人工呼吸器につながれると、8割が助からないとされる。
理由の一つには、急に炎症が肺全体に広がるため、急いで人工呼吸器をつけても既に治療が難しいということがある。
多いのは、救急で病院に運び込まれて12時間以内に肺炎があっという間に広がり、人工呼吸器が必要になる人だ。
だが、小さな肺炎があるくらいで、1週間ほど一般病棟で診ていたら肺の炎症が急に広がり、ICUに運ばれるという人もいる。
悪くなる時には急変するのだが、なぜそうなるのか分からないことが多い。
また、ICUに入ってから人工呼吸器につながれている期間が長くなっている。肺炎がひどくなると低酸素血症で血中の酸素が低下し、
呼吸回数が多くなるため呼吸筋の疲労が起きる。これらを防ぐために人工呼吸器をつける。だが、人工呼吸器と呼吸のタイミングが
合わなくなることがあり、多量の鎮静剤、時には筋弛緩(しかん)剤を投与せざるをえない。すると、日ごとに呼吸筋が弱ってくる。
人工呼吸器につなぐことで肺炎は改善することが多いが、その間に自力呼吸に必要な筋肉が弱っていくので、人工呼吸器を外すに外せなくなる。
そういう状態が長く続く患者が多い。
――治療の難しさはほかにもあるのか。
肺だけではなく、炎症が全身の他の臓器にも広がる。急性腎不全を併発するケースが多く、人工透析が必要になる。
また血栓ができやすいことも分かっており、肺の血管に血栓が詰まって容体が急変するケースが少なくない。
実際に新型コロナで死亡した患者の肺を調べたところ、細い血管内に微小な血栓が確認されたという報告がある(注1)。
このため、重症化した場合は血をさらさらにする抗凝固薬を投与するようにしている。
――人工呼吸器を使えば大丈夫だというわけではないのか。
人工呼吸器と一言で言っても扱いは難しい。肺炎が悪化すると、人工呼吸器で肺に高濃度の酸素を送るのだが、実は酸素には毒性がある。
高濃度の酸素を長期間にわたって吸入し続けると、肺に障害を引き起こす。とにかく酸素を送ればいいというものではない。
肺炎が進行すると(酸素をとりこむ極小の風船のような)肺胞がしぼんだような状態になる。
ある程度の圧力で肺に空気を送り込んで肺胞が膨らんだ状態にするのだが、圧力が強すぎると逆に肺を傷つける。
また、肺に送る空気量が多すぎると同じように肺に障害を与える。このさじ加減が難しく、ICUでも人工呼吸器を使うには高度な専門知識や経験が必要になる。
ICUの数は日本独自のデータで検討を
――日本では人口当たりのICUの数が少ないと指摘される。課題は何か。
ICUでは、人工呼吸器や治療薬などの専門知識を持つ医師や看護師が対応する。
日本で死亡率が低く抑えられているのは、ICUに入る患者がまだ少なく、現在いるICUの医師や看護師でまかなえているという面があると思う。
ただ、重症者が増えるとICUを増やす必要が出てくる。この時、数だけでなく医療レベルも維持しないと死亡率は上がる。
ニューヨークでは専門の看護師が不足し、一度もICUで仕事をしたことがない看護師が人工呼吸器の警報音に気づかなかったというケースもあると聞く。
米国では、重症化するのは高血圧や糖尿病、肥満など血管系の持病がある人が多い。日本では肥満や糖尿病の人は米国ほど多くはない。
そうした違いもあるので、何でもかんでも米国や欧州のデータを当てはめるのではなく、どれくらいの割合で重症化するのか日本独自にデータをそろえ、
ICUがどのくらい必要になるのか検討することが必要だと思う。
――この感染の広がりはいつまで続くとみるか。
数週間とか数カ月で終わる話ではないと思う。米国では既に2200万人以上が失業しており、経済活動をいつか再開することになる。
それに伴って外出規制をある程度緩めると、新たな感染者が増えて患者が病院にやってくる。そうなれば医療崩壊を防ぐために
今度はまた外出規制を強めることになる。これを繰り返すことになる。米国では分析が進んでおり、ワクチンや特効薬がない現状では2022年までは
外出規制を断続的に続ける必要がある、とするハーバード大研究チームの論文(注2)もある。日本も独自の分析が必要ではないだろうか。
日本は今、感染者が増えている。大変だが、でもここで頑張れば夏には終息すると思っている人もいるかもしれない。
けれども、それはあくまで希望的観測で根拠に乏しい。そもそも従来のコロナウイルスは秋から冬に流行するもので、
今回の新型コロナもそうなる可能性がある。死亡率を下げることにつながる特効薬はできておらず、感染拡大を防ぐワクチンの開発には少なくとも1年はかかる。
実際には1年、2年という戦いになるかもしれない、ということを政府がきちんと見据えて国民に語ることが必要だと思う。私の病院では、
「This may be a marathon, not a sprint (これは短距離走じゃなくてマラソンだ)」と言われている。
注1)Sharon E. Fox, Aibek Akmatbekov, Jack L. Harbert, Guang Li, J. Quincy Brown, Richard S. Vander Heide. Pulmonary and Cardiac Pathology in Covid-19: The First Autopsy Series from New Orleans. https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.06.20050575v1
注2)Stephen M. Kissler, Christine Tedijanto, Edward Goldstein, Yonatan H. Grad, Marc Lipsitch. Projecting the transmission dynamics of SARS-CoV-2 through the postpandemic period. Science 14 Apr 2020: eabb5793 https://science.sciencemag.org/content/early/2020/04/14/science.abb5793.full
◆いしかわ・げんた 2007年、北海道大医学部卒。聖路加国際病院呼吸器内科専門研修修了後、13年に渡米。
17年5月、米エモリー大公衆衛生大学院で修士課程修了。同年7月から現職。日本呼吸器内科専門医、米国呼吸器内科専門医。