●「清武の乱」で終焉を迎えるべき読売の渡辺恒雄老害体制 (会員制経済情報誌『現代産業情報』11月15日号より転載)
『読売新聞』の記者が、率直に反省する。
「最大の問題は、記者が読者に向けて記事を書いていないことです。みんながナベツネ(渡辺恒雄会長)を第一読者に想定、記事を書いているから、
政治部であれ、経済部であれ、社会部であれ、みんな同じような視点、論調になってしまう。
記者それぞれの思いを伝えていないという意味で、読売新聞はマスコミとして責任を放棄している」
誰もが読売新聞社と、そこが発行する『読売新聞』に感じている疑問を、これほどストレートに言い表した言葉はない。
『読売新聞』は、読者を向いていないのである。
得心するのは、「読売の看板記者」と言われる、橋本五郎氏の存在である。
渡辺会長とその側近は、記者が目立つのを嫌う。他のマスコミのようにテレビに出てコメンテーターとなるような記者がいないのだが、橋本氏は別である。
ソツなく仕事をこなし、テレビ局にとっても使い勝手がいい。それが許されるのは、橋本氏が渡辺会長と寸分の違いもない主張の持ち主だからである。
「清武の乱」を起こした清武英利球団代表も、本来、渡辺会長の覚えがめでたい記者であり、渡辺会長のために、粉骨砕身してきた。
清武氏は、『読売新聞』の社会部記者として、その存在感を知らしめてきた。東京地検特捜部や国税を担当、スクープを次々に放ち、他社を悔しがらせた。
東京採用ではなく地方採用の、いわばノンキャリ。そのハンデを持ち前の粘りと、細心の人脈作りで乗り越えてきた。
スクープ記者といっても、遠慮なく非情に切りまくる社会部にありがちなカン違い記者ではなく、「清武に書かれたのでは仕方がない」と、書かれた側に思わせる気配りがあった。
だが、ハンデはつきまとい、社会部長にはなれず、運動部に転じて部長になった。
そして、渡辺氏に取り立てられて巨人軍に転じたのは、次のような“役割”を期待されてのものだったという。
「当時、国税には、日本テレビ株を個人所有の形にするなど、個人と読売との関係があいまいなナベツネを調べようという動きがあった。
国税に強い清武には、その防波堤の役割を期待された」(読売新聞関係者)
清武氏の存在が役立ったかどうかはともかく、国税が渡辺会長を調べなかったのは確かであり、この頃の清武氏は、渡辺会長の意を挺する球団代表であった。
だが、野球に精通、日本のプロ野球界の歪みも課題も明らかになってくると、清武氏にはワンマン体制を続け、思いつきで人事に口を出す渡辺会長が、許せない存在になってきた。
それが、今回のヘッドコーチ問題で火を噴き、思いの丈をぶちまけて巨人ファン、野球ファンに信を問う11月11日の「清武の乱」につながった。
実は、清武氏自身にも問題がないわけではない。次のスポーツ紙記者の批判は、その代表的意見である。
「ワンマンで専横なのは、清武代表も同じ。巨人に批判的なことを書いた記者は、露骨に報復、取材拒否されるのはもちろん、『訴えるぞ!』と脅される。
コンプライアンスは無視、我々にとっては、ナベツネの相似形で、記者会見の時も、『なに言ってやがる』というのが、正直な気持ちでした」
嫌われたものであるが、知らず知らずのうちに独裁となり、「大きな権力」である渡辺会長が邪魔になったと言えなくもない。
とはいえ、彼我の権力の差は圧倒的。清武球団代表は、金正日体制に弓を引いたようなもので、一石を投じたことは評価すべきだろう。
一般紙やスポーツ紙が、今後も巨人軍との関係を良好にしていたいという思いから、清武氏の“自爆テロ”を揶揄しているのに比べると、ネットでは「ナベツネ批判」が圧倒的。
「老害の極み」「いい加減に引退しろ!」といった声が渦巻く。
野球ファンなだけに、それは「一般的な国民の声」と受け止めるべきであり、85歳の老人に左右される新聞を糾弾する声が幹部にも記者にも届かないのであれば、
「1000万部体制」の崩壊と同様、読売グループの黄昏は急ピッチで進みそうだ。
☆渡辺恒雄さんをWikipediaで検索して驚いた。以前に記載されていた東大の学生時代の記述がスッポリと削除されている。
彼は共産党の東大学生細胞である「新人会」の戦後間もなくの有力メンバーだった。こちら
フジサンケイグループの土台を作った財界人水野成夫については、彼の共産党員時代の記述がWikipediaにまだ見ることが出来る。
Wikipediaの記事の便利さと内容の信憑性・信頼性はトレードオフの関係にある。
それはWikipediaそのものが持つ性格から来ている。
一言でいえば、Wikipediaの内容は貴方が書いていいし、私でも書ける。そして記述の削除も出来るからだ。
Wikipediaの内容は特に対象が社会科学の分野では、常に吟味してかかる必要がある。まさにタダより高いものはないの謂いである。
より信頼性の高い情報を取ろうと思えば、定評のある百科事典をwebの有料会員になってネット上で引くか、百科事典を自分で持つか、図書館に行って調べるのが当然だ。☆
|