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2010年06月07日(月)「阿智胡地亭の非日乗」掲載
おもしろうてやがて哀しき映画でした。人は、現実と幻視のあやうい境界線をいったりきたりしながら、周囲の人に頼り頼られすることで何とか生きている。
生きることの哀しみを、このようにスクリーンに留めた映画は北野武の「ハナビ」以来だと思いました。
原作者の西原理恵子という女性は、高校生のとき学校と衝突して退校処分を受けました。
二人の父親とは早くに死に別れ、そして結婚して子供が二人できたあと、旦那も若くしてガンでなくしました。
少女時代から、ある意味じべたを這い回って来て、人はいつも生と死のはざまにいることを知って生きてきた。
そんなことを背景に、生まれ育った土佐の漁師町の、男運の悪い女たちの群像を画いている。
この映画を観てから、4年前に買っていた原作の漫画を読みましたが、絵も美しいけど彼女は詩人でもあったんだと思いました。
「人間は2回死ぬンよ、一回は息を引き取ったとき、もう一回は誰もその人のことをもう思い出さんようになったとき」・・
そんなセリフがありました。
出演者では菅野美穂と彼女の背中の演技に惚れました。小池栄子も、池脇千鶴もほんまもんの演技者になり、夏木マリはもうそのまま土佐の漁師町のパーマ屋のママさんでした。
自分が東予地方にいた時、土地の言葉に耳がなじんだせいか、この映画に流れる土佐弁は心地よい。
同じ四国だからか土佐と伊予の言葉は、アクセントもよく似ている。山内家が土佐に入ったとき、元の殿様である長曽我部家の家臣群は、
みな下士の身分に落とされた。それをよしとしない家臣の中には、土佐から伊予の国へ逃げた連中がいる。恭順の意を表してか、
「長曽我部」の名から“長”を取った「曽我部」さんは、伊予の国に多い。
土地の人が聴くとあんなんは土佐の言葉やないがやで、ということになるのだろうが俳優たちはみなよく練習を重ねたに違いない。
目にも耳にも心地よくドラマは流れ、映画は笑いをまぶしながら哀切な終末に向かいます。
映画の良さを十分味あわせてくれました。
この映画の脚本家・奥寺佐渡子もスグレモノの一人です。
観おわって、余韻が永くながく残る映画でした。
映画の公式サイトはこちら
吉田大八監督が、西原理恵子のコミックを映画化した恋愛ドラマ。離婚の末に一人娘を連れて故郷に出戻ったなおこと、なおこの母・まさ子の2人で営む海辺の町の美容室「パーマネント野ばら」に集まる女性たちの悲喜こもごもの恋愛模様が描かれる。主演は北野武監督作「Dolls(ドールズ)」以来、8年ぶりとなる菅野美穂。共演に江口洋介、夏木マリ、小池栄子、池脇千鶴ほか。
2010年製作/100分/G/日本
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