安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

シダー・ウォルトン PIT INN

2015-03-01 08:45:51 | ピアノ・トリオ

先日、山梨県北杜市のサントリー白州蒸留所に行ってきましたが、そのサントリーの名を冠しているジャズ・オリジナルがあります。シダー・ウォルトンの書いた「サントリー・ブルース」ですが、本来、別の題名でも演奏しているので、日本のレーベルへの録音だったためにそのような曲名を付けたものでしょうか。もちろん彼もウイスキーが好きなのでしょう。「サントリー・ブルース」はもちろん、シダー・ウォルトン・トリオの快演に酔わずにいられないアルバム。

CEDAR WALTON (シダー・ウォルトン)
PIT INN (EAST WIND 1974年録音)

   

40年ほど前の1974年12月に、シダー・ウォルトン以下のメンバーが来日して、歌手の笠井紀美子の全国ツァーの伴奏を務めました。その間に、トリオで新宿ピットインに出演したときの演奏を記録したのが、このアルバムです。最近、イースト・ウィンド・レーベルの作品が廉価盤CDで復刻されたので、聴いたことはあっても持っていなかったこの作品を、いの一番に注文しました。

メンバーは、シダー・ウォルトン(p)、サム・ジョーンズ(b)、ビリー・ヒギンズ(ds)。ハードバップをお好きな方なら、万難を排してライブ会場に駆け付けたい顔ぶれです。新宿ピット・インは、現在も昼・夜のライブが続けられている日本を代表するジャズ・スポットですが、この録音当時は現在地への移転前で、紀伊国屋書店の裏手付近にありました。そこへ僕も何度か行きましたが、多分その当時もこれだけ熱気溢れるライブは、希有だったに違いないと思います。

曲は、ウォルトンの自作が、「Sweet Sunday」、「Suntory Blues」(サントリー・ブルース)、「Fantasy In "D"」、「Bleeker St. Theme」、ディジー・ガレスピーの「Con Alma」、スタンダードの「Without A Song」、「'Round Midnight」の全7曲。「Suntory Blues」は、「Twilight Waltz」と同じ曲、「Fantasy In "D"」は、「Ugetu」と同じ曲で、契約関係からかどうかわかりませんが、別名が表記されています。 

掛け声、拍手、歓声と、会場の興奮がダイレクトに伝わってくるアルバム。演奏の方も、シダー・ウォルトン(p)が絶好調で、気合十分のこれでもかというアドリブを繰り広げています。特に「Fantasy In "D"」における、ウォルトンの右手から次々と繰り出される、創造力に満ちたラインは素晴らしい。エキゾティックさも心地よい「Con Alma」や、サム・ジョーンズのベースソロが入り、ウォルトンのプレイも華麗な「Suntory Blues」など思わず身を乗り出したくなります。グルーヴィーな「Bleeker St. Theme」で閉じますが、それが惜しくなります。