このところマイク・モラスキーさんの本を読んでいて、今度は、「日本の居酒屋文化」(光文社新書)を読みました。日本の居酒屋を、家庭でも、職場でもない、「第三の場」ととらえ、積極的な意義づけをしています。日本全国のお店の紹介もあって、ガイド本の役割も果たしています。モラスキーさんは、日本酒が大好きで、こじんまりとしたお店がお好きなようです。こじんまりとしたジャズクラブで長く歌っていた歌手。
峰 純子 (Junko Mine)
A CHILD IS BORN (TRIO 1975年録音)
高輪プリンス・ホテルのなかにあるナイト・スポット「ミミ・バンソン」で峰純子が歌っているところに、泊まっていたサド・ジョーンズとメル・ルイスが現われて伴奏に加わったセッションが行われ、サド・ジョーンズの目にとまり、このレコーディングが行われもの。峰純子の伴奏に、ジョージ・ムラーツ(b)が参加する予定が体調不良でキャンセルしたので、そのお詫びで、サド=メル楽団の両リーダーが飛び入りするつもりできていたようです。結果的に、彼女のデビュー作が作られることになりました。
メンバーは、峰 純子(vo)、ウォルター・ノリス(p)、渡辺保明(p 2曲のみ)、ジョージ・ムラーツ(b)、サド・ジョーンズ(cornet 3曲参加)、メル・ルイス(ds)。サド・ジョーンズ=メル・ルイス楽団のメンバーが参加した夢のような伴奏陣です。フォーマットは、ピアノだけで伴奏したものなど様々ですが、その良さは特筆もので、峰純子の唄によりそっています。渡辺保明は、「ミミ・バンソン」のハウス・コンボのピアニストです。
曲はスタンダードです。「My Funny Valentine」、「Here's That Rainy Day」、「I Can't Give You Anything But Love」(捧げるは愛のみ)、「My One and Only Love」、「That Old Feeling」、「The Nearness of You」、「A Child Is Born」、「After You've Gone」(君去りし後)、「The Man I Love」、「On The Sunny Side of The Street」(明るい表通りで)、「The Good Life」の11曲。タイトル曲の「A Child is Born」は、サド・ジョーンズ曲、アレック・ワイルダー詞ですが、この歌の吹き込みが決まり、歌詞を急遽アメリカから電話で取り寄せたようです。「The Good Life」も当時の新しい曲で、サッシャ・ディスティルの作曲。
峰純子の豊かでで落ち着いたアルト・ヴォイスにより、原メロディを大事にした歌が聴けます。伴奏も見事なもので、歌と共に聴き惚れます。バラードの「Here's That Rainy Day」や「The Good Life」が心に響いてきます。「A Child is Born」は、いまや名曲の仲間入りをしていますが、作曲者本人が共演した記念すべきトラック。「I Can't Give You Anything But Love」や「On The Sunny Side Of The Street」も、ムラーツ(b)やジョーンズ(コルネット)のソロ入りの、軽くスイングする峰純子の歌がよいです。
【日本の居酒屋文化(光文社)】