塩尻市の東座で先日「ストックホルムでワルツを」を見てきました。既に昨年から全国各地で上映されていて、ご覧になった方が多いと思います。長野県では、この映画館でしか上映されないので、遅いのですが、大きめのスクリーンで見れたことに満足です。パンフレットも買いました。
ストーリーは次のとおりです。公式サイトより転載しましたが、既に見た方、知っている方は飛ばして下さい。
首都ストックホルムから遠く離れた田舎町に両親と5歳の娘と暮らしているシングルマザーのモニカは、電話交換手の仕事をしながら、時折深夜バスでストックホルムまで出向き、ジャズクラブで歌手としてステージに立つ忙しい日々を送っていた。いつか歌で成功し、この町を出て娘と2人で幸せに暮らせる日が来ることを夢見るモニカに、厳格な父は“母親失格”のレッテルを貼り歌の仕事に反対をしていた。そんな時、モニカの歌を聞いた評論家の誘いによりニューヨークで歌うチャンスが与えられる。一世一代のチャンスに、ジャズの聖地に乗り込むモニカだが、ライブは無残な結果となり、さらには憧れの歌手から“誰かのマネより自分らしい歌を歌いなさい”と厳しい批判を受ける。その評判は故郷まで届き、父は歌をやめ母親業に専念するよう言い放つ。落ち込むモニカだが、ある日バンドメンバーの助言により、母国語(スウェーデン語)でジャズを歌うことを思いつく。誰もが予想していなかったこの歌声は、次第にスウェーデン中の人々の心に響くようになり、モニカは夢のステージへの階段を一歩ずつ上り始めていくのだった―。
スウェーデンの歌手、モニカ・ゼタールンドの半生を描いた映画ですが、一言でいって、モニカの奔放で自分の意思を貫く生き方が凄いなと思わされた映画でした。
クリスマスにも家庭にいないモニカを見て、父親は、「頂上を目指すのではなくて、地道に子供の面倒を見て田舎で生きなさい」と、執拗に忠告し、モニカの歌も評価しない設定になっていました。ありそうな話ですが、若干違和感を覚えました。もともと父親のバンドでモニカは歌い始めたので、娘の才能に気がついていないはずがありません。映画の最後にニューヨークにおける成功により、電話で父娘が和解する場面があるのですが、そこに向けての伏線作りのようにも想像しましたが、実際は、どうなのでしょうか。ただ、父親役の男優(シェル・べリィクヴィスト)は、しぶくて存在感があって、素晴らしかったです。
モニカの子供のエヴァ=レナ(俳優は、ナディア・クリスティアンソン)が健気で可愛らしく、大酒飲みで、男性遍歴が多い母親にもかかわらず、母娘の絆は、強いものが感じられました。主演の、エッダ・マグナソンは、美人で歌もいけるし、この映画の成功に随分と寄与したに違いありません。
映画中、スタンダードナンバーやスウェーデン語で流れる歌などもジャズファンとして楽しめました。登場する歌は、「Hit The Road Jack」、「Take Five」、「Walkin' My Baby Back Home」、「Waltz For Debby」などです。また、トミー・フラナガンやビル・エヴァンスなどジャズ・ジャイアントが登場しますが、よく似せてあって、微笑ましかった。
ストックホルムの喫茶店や、街角の風景、そして、ファッションなども含めて美しい映像でした。
これを書きながら、モニカ・ゼタールンド本人の1958年~60年の録音(DIWから出された編集盤「Spring is Here」)を聴いています。彼女は、1937年生まれで、10代から歌っていて、58年には、アルネ・ドムネラス(as)のバンドで歌い、59年には渡米し、スティーヴ・アレン・ショーに出演しています。58年の初録音(「Spring is Here」と「Easy Living」)では、ドナルド・バード(tp)が伴奏をしています。若いころの歌声は魅力があるし、クールな中に可愛らしさのある歌唱です。後年のビル・エヴァンスとの共演では、素晴らしいスイング感を醸し出しているものもあって、ダイナミズムも併せもっていました。