僕は、もともとクラシックが好きで、そこからジャズを聴きだしているので、クラシックとジャズを橋渡ししている曲には関心があります。ウラジミール・シャフラノフのこのアルバムを聴いていると、ロシア民謡ばかりでなくクラシックの大作曲家のメロディがいくつも出てきて、クラシックのムードも味わえて面白いので取り上げてみました。「ロシアより愛をこめて」とされたタイトルからは、映画音楽集と勘違いしそうです。
VLADIMIR SHAFRANOV (ウラジミール・シャフラノフ)
FROM RUSSIA WITH LOVE (VENUS 2015年録音)
このCDは、ウラジミール・シャフラノフ(P)のライブに出かけた際に会場で購入した彼の最新作です。有名な曲がが多く企画性が強いですが、それぞれモダンジャズ化されています。こういったロシアのメロディは、シャフラノフが慣れ親しんでいたものに違いありませんが、ボサノヴァあり、サンバあり、ストレートな4ビートありと、多様な編曲がされています。
メンバーは、ウラジミール・シャフラノフ(P)、ハンス・バッケンルート(b)、ベント・スタルック(ds)。シャフラノフは、1948年ロシアのセント・ぺテルスブルグの生まれで、フィンランドに渡りジャズをプレイし、1983年から10数年にわたりニューヨークを中心として活動し、フィンランドに帰国後は、オーランド諸島の小さな島に住んでいるそうです。録音は、ストックホルムで行われていて、リズムの二人はスウェーデンのベテランミュージシャン。
曲は、「Midnight in Moscow」(モスクワの夜はふけて)、チャイコフスキー作「Barcarolle(舟歌)」、「霧のカレリア~トロイカ」、ショスタコーヴィッチ作「Valse No.2}、「Dark Eyes」(黒い瞳)、ボロディン作「Baubles, Bangles and Beads」(ビーズと腕輪)、「Vem Kan Segla」、「From Russia With Love」(ロシアより愛をこめて)、ラフマニノフ作「Full Moon And Empty Arms」、「Midnight in Moscow」の11曲。「Vem Kan Segla」は、シャフラノフが住んでいるオーランド地方に伝わる曲。ラフマニノフの曲はポップス化されていますが、元は、ピアノ協奏曲第2番第3楽章です。
知っている原メロディが多く、それが変幻自在に扱われていて、シャフラノフ(p)のピア二スティックな面に触れることが出来たアルバム。ショスタコーヴィッチのジャズ組曲よりワルツが取り上げられたのはびっくりしましたが、ロシア出身のシャフラノフならではの選曲でしょう。「Full Moon and Empty Arms」は、憂いを帯びたラフマニノフのメロディを奏でていきますが、途中からハードな4ビートで変奏が行われ、ダイナミックでよかった。「Dark Eyes」(黒い瞳)や「From Russia With Love」など親しみのあるお楽しみメロディも流れます。
【ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番・第3番】
ラフマニノフのピアノ・コンチェルトを話題にしたので、彼がピアノを弾いている録音を聴いてみました。さすがに音質はよくないですが、ロマン溢れる演奏に聴こえます。
セルゲイ・ラフマニノフ(p)、レオポルド・ストコフスキー(指揮)、ユージン・オーマンディ(指揮)、フィラデルフィア管弦楽団。1929年、1939年録音。ナクソス・ヒストリカルシリーズの一枚。NAXOS 8.110601