最近、クラシックを再び聴くようになり、オーケストラのコンサートに出かけています。以前のように土日出勤や平日夜の宴会が多く入るといったことがないので、コンサートに足を運びやすくなりました。管弦楽を聴いていると、指揮者のことが気になるので、長野市立図書館で「オーケストラと指揮者」(音楽之友社)という本を借りてきて読んでみました。
著者のアドリアーノ・バッスィは、この本の出版がされた2000年当時においてイタリア国内外で活躍している指揮者、ピアニストだそうです。内容は副題にあるように「指揮者のスタイルと役割の変遷をたどる」というもので、目次は次のとおりです。
第1部 オーケストラの歴史
オーケストラとは・移りゆくオーケストラ・楽器・舞台の袖から中央へ
第2部 指揮者列伝
指揮者たちの流れ・過去の音楽を再評価した指揮者たち・変化と意欲をもたらし続ける指揮者たち
(感想 気になったところを記します)
オーケストラの歴史や指揮者の登場から現代までを概観できます。オーケストラは、オペラの伴奏から始まったということは知っていましたが、オーケストラが大型化し、楽器編成を整えていくのに、モンテヴェルディ(1567~1632)やリュリ(1632~1687)の役割が大きかったことを初めて知りました。
著者がオーケストレーションで高く評価している作曲家は、ウェーバー(1786~1826)やエクトール・ベルリオーズ(1803~1869)、ワーグナー(1813~1883)などですが、ウェーバーについて言及しているのが新鮮でした。彼は、オーケストラの配置を現在に近いものとしたり、指揮棒を初めて用いたことでも知られていますが、オーケストレーションが優れたものとのことです。
『舞台の袖から中央へ』の章では、指揮者が1600年代や1700年代は、チェンバロやオルガンに座って指揮をとり、しかも配置が端でした。ピアノ協奏曲の弾き振りは現代でもありますが、端にあったのではあまり役に立ちそうにないですね。『オーケストラの指揮者とは』の中では、総譜の重要性と、リハーサルの重視が挙げられています。早さや強さの記号もそれぞれの指揮者で解釈が異なり、そのあたりから同じ曲でも指揮者によって演奏が異なるということが実感として納得させられました。
1786年、ナポリ、サン・カルロ劇場の楽器配置。カぺルマイスター(指揮者)は左端。チェンバロは右端に配置されています。
1791年、ハイドンの作品を演奏するロンドンのオーケストラの配置。全員聴衆に向いています。
現代の配置。先日の大植英次指揮群馬交響楽団の「ブラームス交響曲第1番」では、ベースがこれとは逆に左側に配置されていました。珍しい編成かもしれません。
『指揮者列伝』はいろいろな指揮者の個性などにも言及し、興味深いです。カラヤンやフルトヴェングラー、トスカニーニはもちろん、著者はイタリアの人らしく、自国のヴィクトール・デ・サバタ、ジャナンドレア・カヴァッツェーニ、カルロ・マリア・ジュリーニらを取り上げています。小澤征爾も登場するのが日本人としては嬉しいところです。
大編成だと100人にもなる集団を動かす指揮者の仕事はすごいものだと改めて感じ入りました。