クラシックについては、演奏会に出かけることを主に楽しんでいます。その際、パンフレットに楽曲の解説も載っていますが、オーケストラの編成をはじめ初歩的なところがわかっていないので、池辺晋一郎著「オーケストラの読み方~スコア・リーディング入門」を読んでみました。
CDが付いていて、譜例の実際の演奏を聴くことができます。これは便利でした。
(著者について)
池辺晋一郎さんは、交響曲やピアノ協奏曲、オペラなどのクラシック作品をはじめ、映画・TVドラマ音楽などの演劇音楽を多数作曲しているほか、NHKテレビのN響アワーの司会を1996年から13年間行い、また、著書も多くクラシック音楽の普及にも尽力されている方です。
(大まかな目次)
第1部 スコアのかたち
スコアって何だろう、楽器の配列、楽器の特徴、楽器の家族、ステージ上の楽器の配置、オーケストラの編成をみてみよう
第2部 スコアを楽しむために
音部記号を知ろう、移調楽器って何、スコアに登場する記号
第3部 スコアを読んでみよう
図形的に見てみよう、メイン・メロディを探してみよう、スコアをタテに読んでみよう、オーケストラの色彩をおう、オーケストレーションの魔術
Let's Try スコア・リーディング ムソルグスキー(ラヴェル編曲) 組曲《展覧会の絵》より「プロムナード」
(感想・面白かった箇所など)
楽器や楽典にあまり詳しくなくても、面白く読めてしまう優れたオーケストラのスコアと管弦楽曲の入門書です。
第3部のスコア全体を図形的に見てみようの箇所のところで、ボロディンの交響詩<中央アジアの草原にて>を例にして解説があります。メロディ、ハーモニー、リズムとベースと整理されると、当たり前かもしれませんが、機能的につくってあるのがわかります。
第3部スコアをタテに読んでみようのところで、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」第4楽章などを例にとり、コントラバスの重要性について重ねてふれているのが印象的でした。チェロとコントラバスは、基本的にはチェロと同じ動きをするようですが、「オーケストラがよく鳴っているかどうか」というのは、「低音の扱い方がうまいかへたかに」かかっていると記されています。
オーケストラの色彩を味わおうのところで、弦楽器同士の組み合わせ例として、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」第4楽章が取り上げれています。この有名なメロディは、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが交互に受け持っているそうで、こういうのは、演奏会でオーケストラの「対向配置」で聴かなければわかりません。チャイコフスキーもすごいなという例です。
最後は、ラヴェルの編曲したムソルグスキー《展覧会の絵》より「プロムナード」です。ラヴェルについては、バレエ《ダフニストとクロエ》は、ラヴェルらしい鮮やかな色彩にあふれたもので、スコアを観ると精緻の極致だと池辺さんが記しています。その譜例が載っていますが、楽器数も多く、見ているとクラクラするほどです。
CD収録の演奏を聴きながら、それぞれの譜例の音符をメロディ中心になんとか追ってみましたが、どこを追っていいか全くかわらなくなってしまったのが、多声部(ポリフォニック)音楽のところでした。バッハの管弦楽組曲やモーツァルトのハフナー交響曲ですが、クラシック音楽の奥深さに触れた思いです。こなれた文章で、すいすい読めますが、実は含蓄が深い入門書です。