明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



何年も前から作ってみたいシリーズがある。ただそれは個展などでの発表はおそらく無理であろう。差し障りがある。発表もできない物は作るな、というのは私の中でもトップクラスの戒めである。子供の頃は、どこかの王様に塔に幽閉され、宿題も何もしないでいいから、ここで好きな物を作っていてよろしい、などという境遇を夢見たものだし、個展を始めた頃はプレッシャーから、親しい友人だけに見せて生きていけたら、どれだけ良いかなどと夢想したものである。発表もせず伝わらない物は存在しないと同じことである。しかしそれは世間に対してであって、私の中には確実に存在していて、こんなことは始めてはいけない、手を着けてはいけない、という理性を押しのけ、腹の底から暗雲にも似た厄介な物が、もくもくと湧いてくるのを感じるのである。先日、久しぶりに会ったO君は、出合った二十代の頃から私が相変わらずの調子なので呆れていたが、それは自動的に湧き出てくる、この黒々とした物が原因である。物心ついたころから、この暗雲に苦しめ続けられてきた私だが、同時にこんな快感をもたらす物もない。かつて友情を持って、私の暴走を止めてくれた友人達も、最近は沿道で旗を振る見物人の如しである。「アッ、お前今余計なこと想いついただろ!」とは良くいわれたものだが、相変わらず、私はそんな顔をするらしい。

01/07~06/10の雑記
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