明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



グレコのレスポールタイプのギターEG-420がハードケースに入って届く。ネットオークションとはありがたいもので、捨てるくらいならということか、時に申し訳ないような価格で手に入る。  所有するのは数十年使い続けたギター1本だけで、しかも弾けば上手い。などという、潔くもシンプルなギター弾きがカッコいいにきまっているが、そうなれないなら、せめて友人との酒の肴を一本増やそうというわけである。私の世代でグレコといえば、なんといっても2年前に亡くなった成毛滋である。高中正義、角田ヒロとのフライド・エッグ時代の、EG-420を弾く成毛の姿は焼きついている。手が小さかった彼が、日本人サイズのネックを提案したそうだが、なるほど、特に手が小さいわけでもない私が持つと、手が大きい外人になったかのようである。先駆者にしてユニークな活動をした成毛滋は、是非誰かに伝記を書いてもらいたいところである。 グレコを入手したのは“15歳の頃好きだったことが人間は一番好きらしい”などと聞いたからかもしれない。  十代の終わり頃、専門学校で知り合った、現在日本各地で陶芸家となっている年上の連中は、当時私の将来は大丈夫だろうか、とよけいな心配をしてくれていたそうだが、彼らが知らなかったのは、成長過程にある彼等と会ったとき、すでに私は私として、とっくに完成してしまっていたということである。(とっくに成長が止まっていたともいう)なので何十年ぶりかに会うと、外見はともかく、中身は当時のまま現れるので、相手は数十年の間の日常の諸々を脱ぎ捨てるのに、かなりのアルコールが必要らしい。そもそも私の制作上のネタといえるものは、大半が十代の頃に得たものであり、20歳過ぎてから体験し、知ったことにあまり実のあることは無かったような気がするのである。  一枚のモノクロ写真がある。先年亡くなった、幼稚園からの付き合いの友人が高校の頃撮ったものだが、そこには彼が友人から借りてきたEG-420を、さも自分の物のような顔をして写っている私がいる。

01/07~06/10の雑記
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