明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



丸善『人・形展』の初日に、いつも来ていただく方に「今日はKさんは?」と聞かれた。定年以後ヒマなのでいつも搬入を付き合ってもらうのだが、搬入を2日に分けたので、来てもらう必用がなかった。 Kさんは猛暑のせいで夏バテ気味だったし、朝から呑んでしまって一日中ベロベロということがなくなっていたのだが。  当ブログを読んでいる地元の人達にいじられるので、Kさんを妙に喜ばせてしまった。みんなで飲んでいるところへニコニコしながら近づいてきて「こんばんわ」。キャバレーの螺旋階段を降りてきた小林旭か?少々勘違いしている。そんな状態を店の向うで聞いていると、カナカナとしか聴こえない高笑いをしているが、そのうち静かになる。初めこそ“あのKさんだ”ということになるが、特に面白いことをいう訳ではないし、座の中心になって盛り上げられる人ではないので、話題は当然他に移り、かまってもらえないKさんは以降ただ黙っていることになる。それもなんだか可愛そうで、登場回数を減らしていた訳である。 猛暑も終わり、当人は相変わらずニコニコしている。ただニコニコしていれば良い、というものではない。不景気だ、と嘆く店の人の前で、今日は○人しか客がこなかった、と楽しそうに話すので注意をした。別の店では、ご主人が緊急入院した、という奥さんの前で、満面の笑みで何がそんなに嬉しい、という顔をするので、こういう時は惚れた女に「私男なの」といわれてショックを受けた、あの時の顔をすべきだろ、とさらに注意をした。Kさんが最近大人しかったのは、ひとえにこのショックのせいである。もちろんそんなことを信じるのはKさんだけであるが、周囲はいい加減カミナリにでも打たれてしまえ、と思っているので、この冗談に乗っかっている。おかげで河童に尻子玉を抜かれたように大人しくなった。それがKさんならではの独自捜査で、「やっぱり女だった」。と嬉しそうにいっていたのは先日である。と同時に、また朝から呑んでいる。元の木阿弥である。ただ幸いなことに、何パーセントかは男かもしれない、と思っているらしく、二人で撮った待ち受け画面を人に見せては「男に見える?」と聞いている。 人は頭前皮質腹内側部が損傷を受けていると騙されやすくなり、年をとるにつれて悪化することが多いらしい。酔っ払ってぶつけた、32針を頂点とするオデコの数々の傷をつい眺めてしまう。前頭前皮質といえば、どうせこのすぐ裏側であろう。



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