明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



コードというものは、なぜこれほど絡み合うのであろうか。陶芸家を目指していた頃、その工房は納屋を改造したものであったが、ズルっと音がして天井の隙間から何匹もの蛇が絡まった、蛇玉とでもいうものが垂れ下がったことがある。絡まったコードを見ているとあれを想い出すのである。解こうとすると、どう考えても人為的に結んだとしか思えず、私が寝ている間に小さなボーイスカウトが活動しているようである。固定カメラを仕掛けて、結ばれていく過程を見てみたいものである。必ず輪のあいだを通って結ばれる瞬間があるはずである。  いよいよ主役の河童をあとなんポーズ作るか検討に入る。それが決まれば、作る表情も決まってくる。くしゃくしゃになってしまったコピーを持って喫茶店へ。私は新聞を読んでもすぐにクシャクシャになり元に戻らない。この『貝の穴に河童の居る事』に関していえば、私はもっとも読んだ回数が多い人間であろう。数ヶ月間、他の小説は一切目にしていない。 河童の三郎という哀れな生き物は、哀れがゆえに可笑しい。三郎は当然オスであるが、こういった点はあきらかに男性の専門分野であり、それに対し哀れな女性は可笑しくなりにくい。それは女性の噺家が少ないことと無縁ではないだろう。なぜそうなのかは知らないが、子宮という器官が笑われることを拒んでいるようである。   『鴎外の書斎から -生誕150年記念 森鴎外旧蔵書展-』10/18~11/16(東京大学 附属図書館)に出品予定の鴎外像であるが、頭部が完成したら、目測でいきなり身体を作り始める私が、珍しく頭と身体のバランスが取れておらず、画像を修正している。さらに展示が目的ではなく、いつも締切ギリギリだったので、写らないところは作っておらず、大分手を入れないとならない。そう思うと、文豪調の姿を一から作った方が早かったかもしれないが、医学部図書館だからこそ軍医総監の姿が良いわけで、死ぬまで脚気菌説を曲げなかった頑固な人物という感じを醸しているわけである。

訂正;医学部図書館⇒総合図書館(=附属図書館)

去の雑記
HOME



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )