踊りの師匠である女房に合成する日本髪のカツラを出してきた。近々べっ甲製の櫛や笄などが届く。ここまで来たらもうしかたがない。なんとなくベランダに出して陽に当てた。紫外線を当てて人毛の薄気味悪さを少しでも軽減したい。しかし改めて見ると人毛の気味悪さより、額縁だけで肝心の顔がないことが不気味なのであろう。後ろ向きに置いてみたが、それはそれでまた妙なものである。 鴎外像は09年、締切も迫り、どうせ写さないから、と足首から下の部分を作っていなかったので、改めて制作している。右肩にある飾緒という編んだ紐だが、これは三つ編みにしなければならいが、私はまったくこの手の作業が苦手で、T屋にかけこみ、かみさんにお願いした。娘が三人いるので得意だろうと思ったら、あっという間に編みあがった。この時カウンターにいて、かみさんに紐の一方を持たされていたのが、定年を間近に控えたKさんであった。私はまだこのカワウソの皮を被ったマムシの正体を知らず、ただニコニコした小さなオジさんだと思っていたので「すいません」。くらいのことはいったかもしれない。今だったら「ニヤニヤしてかみさん見てないで、ちゃんと持ってよ」。というところである。 腰に下げたサーベルは儀礼用で細い。へたな材料では簡単に折れるだろう。そこで思いついたのが菜箸である。ついでにT屋の使い古しの菜箸をもらって帰り、削ってサーベルを作った。つまり10月18日から11月16日の間、東京大学でT屋の菜箸が展示されることになってしまった。
『鴎外の書斎から-生誕150年記念 森鴎外旧蔵書展-』10/18~11/16(東京大学 附属図書館)
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