明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



何度かその気になりながら龍を作るのを止めていた。寒山拾得以来子供時代に戻ったような心持ちになっていたが、怪獣好きだった子供時代を思い出し、そんな不純な動機で作ってはならない、と思い、雲龍図や龍虎図など断念したが、無学祖元が我が姿刻むことあれば龍と鳩を、と言い残したとあれば作らない訳には行かない。なので制作中の龍は何かに転用してやろう、という邪念?を起こさぬよう写る片側だけ作るつもりが、こちら側も良いな、なんて作ってしまい、袖口から顔を出しているだけなので、上半身だけで良い、といいながら中に入る芯は、尻尾の先に合わせている。抗うことの出来ない流れ、というものがあるようである。 三島由紀夫の『仮面の告白』の中に、幼い三島が魅せられた、ある絵本の場面が出てくる。それは西洋の王子がドラゴンに噛み砕れ死ぬ場面である。ドラゴンを手持ちで屋上で撮影しながら、こんな物を作られせてくれる三島に大いに感謝したものである。
個展『椿説男の死』より〝王子の死“

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