GARNET CROW-今宵エデンの片隅で
あれれ・・・・
帰宅しようと扉を開けると、真っ黒な空がゴロゴロ言っている。
自宅の方向に目をやると、「こりゃ~駄目だ、完全に直撃だ」、なんて思っているうちに降ってきた。
「濡れて帰ろうか?」 なんて思うものの、量をみているとそんな気にさせてくれない。
仕方なしにそのまま1時間半ほどやり過ごし、雷と雷の間の切れ目を縫って帰宅する。
これが真夏なら、逆に自分から飛び込んだりするのだろうけど、この季節だとまだそんな気になれない。
完全な春の到来を告げる春雷は、なぜかエネルギーを感じさせてくれるものだ。
しかし・・・・
久しぶりのまともな雨、本当にありがたい。
ピカピカ光るおまけまで付いているが、乾ききった大地で悲痛な叫びをあげていたであろう草花達に潤いをあたえ、
なにより大気中に漂っていた浮遊物質を一緒に洗い流してくれた。
一瞬で空気が洗われると言うのだろうか、明らかに違う。
花粉だか、黄砂だか、それとも土ぼこりだか? いい加減何だか分らないものがわんさか混じった味はうんざりだったけれど、
特に外気と直接触れて走るバイクにはたまらない。
だはは・・・・
梅雨時の雨はうんざりするし、ただただ不快感を感じるもの。
でもどうだろう、同じ水たまりでも 自分から飛び込みたくなる不思議。
エンジンの回転計は2000rpmを指し、洗われてあざやかな新緑に変化した丘の上を走る。
体重をわずかに移動させ、道路の真ん中より少し右、そして左にできている透明な液体を割りながら走る。
わずかに太陽や空とまったく同じ色の面を割り、その破片は白いしぶきとなって左右へ、そして後方へ砕け散る。
ときおりパラパラ落ちてきて、シールドに当たる雨は、マフラーからはき出されるサウンドと一緒にリズムを奏でてくれる。
キラキラ・・・・
ふと気になって、ウインカーを点滅させると、路肩にバイクをよせてエンジンを停止させる。
路面に反射した太陽はすぐに瞳を貫いて網膜を焼きはじめる、少し目を細めてグラブを取り、さらにヘルメットを脱ぎ、
そのままで肩越しに振り返って空を眺める。
何という鳥かは分からない、そのさえずりが耳の奥へそそがれてくる。
幼き日に、友達と傘をさして帰ったあのとき、素直で汚れなきあの頃はあらゆるものに心が躍った。
そして年月は超え、あと半年もすると孫を授かる自分だけど、そのときの自分は まだ此処にいるのだと、
虹を求める心は黙って教えてくれた。