ドキュメントは「産科医不足の闇・・赤ちゃんが生めない町・・産声が消える」
大垣中央病院を中心に、産婦人科の実態を追ったものだった。産科医不足は深刻なものだ。
なぜ産科医になり手が少ないのか。勤務時間が不規則というだけでなく、他の科に比べて、誤診だ、医療ミスだと、訴訟される件も群を抜いている。
大垣中央病院には4人の産科医がいるが、予定以外に運び込まれる急患の手当てに、ほとんど毎日をこなしていくのがいっぱいといったところ。医師のほうが病気にならないのは不思議なくらいだ。
今まで大学が医師派遣の権利を握っていた。その枠が取り払われたのはいいが、それに伴って格差があらわれた。地方の病院に医師が派遣できなくなってしまったのである。医師もまた都会へ集まっていく。医師としてみれば、当然な志向だろう。
国は政策として産科医の集約を勧めている。ところが集約され、産科医のいなくなった地域で住民は、不安を募らせている。これを具体的に取材している。いや、現実はきびしい。
そこへ持ってきて、医療ミスということで、一人で頑張っていた産科医が逮捕される事件があった。単独でいることに責任を負えないと、医師達は大きな病院へ移っていく。国の政策に期せずして乗らざるを得なくなってしまったのである。
尾鷲病院で産科がなくなった。近くの産科へいくには一時間以上もかかる。しかも災害の起こりやすい場所。市民や地域の人たちで産科復活の署名運動が行われ、市長が苦労して産科医を見つけた。ただし一年契約、2年だけ。その医師報酬に対して議会は高いと非難した。
この点はどこの住民もしっかりと考えなければならないことだ。
高くても住民にとって必要なものがある。昔は医者と教師には白米を食わせるから、ぜひ来てほしいといったものだ。ただ、こういう問題の合意は、当然きちんと話し合われていなければならない。
地域の病院がなくなると、ひとつの病院に集中する。ある都会の産科は、ベッドは満杯、新生児を入れる集中治療室もベッドも介護士も足りない現象が起こっている。ベッドが増えればそれに伴って介護士が必要になる。そういうことは考えられていない。
国の政策が悪いと関係者は言っていた。そうだろう、これに限らず現場より机上の空論でものごとを決めているからだ。
おりしも昨日、政策として出生率を1.4にしたい旨の提案が出されていた。なら、まず安心して生める体制も整えなければ。生んだ後も子育てしやすい社会をつくるのは当然だが。
何も大病院を増やさなくたって、助産婦を身近に置くことは出来ないものなのだろうか。健康な妊婦は日常的に知り合いの助産婦に取り上げてもらえれば、医者の手が必要な妊婦が助かるだろうに。ここんところにもう少しメスをいれて、根本的な改革は出来ないものか。