お天気がいいから出かけませんか、と息子が誘ってくれたので、papasanを連れてドライブに出かけた。と言ってもいつものコースだ。
毎朝、明け行く山々を眺め、車体を光らせて過ぎていく電車に行ってらっしゃいと手を振り、・・8時近くまでのこの時間はのどかそのもの、思わず「すべて世はこともなし」と詩の一節を口ずさむ。「この詩ね、上田敏の訳で有名なんだよ・上田敏って、ヨーロッパの詩を紹介してくれたんだ。山のあなたの空遠く・・カール ブッセね、これも上田敏だよ。上は英詩だけど、こっちはドイツの詩だよね、語学得意だったんだね」なんて言いながら、昔話をしていた。
小学校6年の教科書に数編の詩が載っていて、すべて世はこともなしの、詩もあった。好きな詩を1篇、暗記する宿題が出された。私はワーズワースの「虹」を選んだ、「私の心は虹を見るとおどる、小さい時もそうでした、大人になった今もそう、歳をとってもそうでしょう・・・」この時のワーズワースの「虹」が、ワーズワースとの生涯の出会いとなった。本棚の半分を占めていたワーズワースの詩集や研究書は先日全部処分してしまった。
ブラウニングは宗教詩で好きじゃないが、「すべて世はこともなし」は「ピパが通る」一節。
- The year's at the spring,
And day's at the morn;
Morning's at seven; - The hill-side's dew-pearl'd;
The lark's on the wing;
The snail's on the thorn;
God's in His heaven—
All's right with the world!
上田敏訳
時は春、
日は朝、
朝は七時、
片岡に 露みちて、
あげひばり、名のりいで、
かたつむり、枝にはひ、
神、空に しろしめす、
すべて世は 事もなし。
世界情勢がひと時でも「すべて世はこともなし」と言えるようになってほしいものだ。