毎年この時期、パレスチナ オリーブからオリーブオイルをとる。といっても使用量が少ないので、ほんとにささやかな協力である。ここのオリーブオイルは、パレスチナ北部、ガリラヤのシンディアナの製品である。一粒一粒手摘みしたオリーブを圧縮し、ろ過せずに沈殿物の沈むのを待って、上澄みを瓶詰した純粋な オイルだ。さっぱりした、美味しいオイルだ。私は今、オリーブオイルはこのオイルしか使っていない。オイルに、皮を剥いたニンニクと赤トウガラシを丸のまま入れて、使いきるまで入れたままにしている。もちろん油漬けしたニンニクやトウガラシはカレーやミートソースを煮込むのに使っている。
ずいぶん昔のことだが、ギリシャのクレタ島で、遊び半分にオリーブの収穫を手伝ったことがある。その時はたたき落としたオリーブを拾い集めたのだが、どこまでも続くオリーブの林、気の遠くなるような作業だった。手摘みがどんなに大変な作業か、想像できる。
イスラエル国内のパレスチナ人は2級市民として、政治活動、教育などすべての面でさまざまな差別がある。農業面でも水の配分に不公平がある。以前読んだところによると、水の配分が少ないから、あまり水を必要としないオリーブの栽培を続けている、とあった。オリーブを育て、オイルを生産することで、パレスチナ人の自立をたかめ、すべての人々が共存できる社会をつくっていきたい、というのが願いであり、目的である。
パレスチナ オリーブ:http://paleoli.org
私がパレスチナに関心を持ったのは30年位前のことだ。広川隆一さんの「パレスチナ」という新書を読んだのがきっかけだった。学生の頃、雑誌で、イスラエルのキブツの紹介があり、その試みを買っていただけに、イスラエルがパレスチナにやっていることはまさに驚きだった。無知であったことを恥じた。無知は罪悪でもある。それはまさに理不尽そのものだった。広川さんから写真を借りて、パレスチナの写真展を開いたり、古居みずえさんを講師のよんだりもした。
パレスチナオリーブの活動をしったのは「パレスチナ子どものキャペーン」に紹介されていたからだった。そこでオリーブオイルは国府津の「ちえのわハウス」においてもらった。その方が多くの人の目にとまるだろうと考えて。そこから私も買っていた。しかし、高齢になって、国府津まで買いに行くのが億劫になったので、自宅に送ってくれるように頼んだ。その「ちえのわ」も長い活動を終えた。
パレスチナ子どものキャンペーン:http://ccp-ngo.jp/
納品書に自筆のコメントが付いていた。
「パレスチナは、この1週間でどんどん状況が悪くなっていて、ガザ地区では、この3日間で80人が空爆で亡くなり、ヨルダン川西岸地区やガリラヤ地方でも、イスラエル軍、警察のに侵攻が続いています。みんな普通に暮らしたいだけなのですが!」
ガザ地区への空爆のニュースは見ている。100人余りが死傷したという報道も読んで心を痛めている。私が生きている間に、パレスチナ問題は解決しないだろう、と悲観しているが、人間のすること、突然、光が洩れることがあるかもしれない。いまはただ、それを願うのみ。
「普通に暮らしたいだけ」
いつも聞く言葉だが、この言葉は重い。誰もがそれを願っているはずだ。紛争地域はもとより、紛争のない、私たちだって、そう願っている。なのに、それを奪っているのは。
紛争地域だけのことだとうそぶかないで、他人事ではないことを知っておいてほしい。