
講演会の会場から、天気のいい屋外へ。
薄暗いギャラリーから、糸杉の道へ。
女の気分から、男の気分へ。
レストランの中から、窓の外へ。
鏡の中から、向かい合う人へ。
男の感情から、女の感情へ。
本物から、贋物へ。
生々しい空間と時間を、
観る者の意識と視線が絶え間なく運動する。
この、意識と視線の運動をただ楽しんでいればいい。
「生き物はみな、楽しむために生きている」という、
シメルの言葉通りに。
二人の夫婦としての会話や、カフェのおばちゃんの話は、
夫婦ってそうだよな~、っていうリアリティが濃くて、
思わず苦笑するほど。
この二人も、「あれ?ほんとに夫婦なんだっけ?」と思ってしまう。
ビノシュのワンピースと靴が
トスカーナの景色に完璧に合っていて、
イタリアでは散歩するときでもこの靴か!
と関心していたのだけど、
ビノシュが座りこんで靴を脱ぐシーンで
ちょっとほっとする。
ビノシュはキアロスタミの撮る生々しい画に、
見事なまでにはまっていた。
シメルは、知性とユーモアと色気と、
節度もある素敵な大人の男。
あと、切り替えしショットや、
話題になっているものを映さないところ、
平面的な画作りに、
小津を感じずにはいられない。
そして曲がりくねった糸杉の道、
教会の壁を断ち切った画、
地元の人々の息づかい、
心を揺らす風。
まさしく本物のキアロスタミ、大好き。
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ユーロスペースにて。
1Fカフェのテラスがいい感じ。
余震がつづくなか、
雑居ビルが集まる道玄坂は近寄りたくないけど、
リスクを覚悟してでも見逃せない、
そう思える稀有な監督。
ヒアアフターもそう思える監督の映画だけど、
上映中止になって残念。
いろいろと仕方のないこととはいえ。
帰りに魚信?でご飯。
イサキ塩焼きと毛ガニハーフが美味しかった。