愚かしいばかりの(?)夕張手作り成人式

2007-01-09 10:48:53 | Weblog

 財政破綻した夕張市。財政再建の目玉策にと造り続けた巨大娯楽施設は当初見込み入場者が捕らぬ狸の皮算用で終わり、閑散とした場内はそのまま沈み行く夕張市の縮図そのものを映し出しているのだろう。

 以前テレビで見せられた光景だが、娯楽施設の入場者よりも施設従業員、それも人件費が安く済むことと若者が逃げ出して採用年齢に拘っていられないという選択の余地のなさからなのだろう、殆どが中高年齢者といった従業員の姿ばかりが目立った。それも忙しく立ち働いているなら少しは救いがあるが、客がいなくて、客が来たら動かすといった動いていないマシーンばかりだからすることがなくて、手持ち無沙汰げにあちこちに佇んでいるだけだから余計にお寂しくさせている光景は市民が逃げ出した人口減と行き場がなく取り残された中高年者によって高齢・過疎化した沈滞都市・夕張とまさしく適応し合っている。

 そして景気が回復しているというものの、経済同友会の北城恪太郎代表幹事が年頭に当たって(07.1.1)、夕張が置かれた状況は先進国中最大規模の公的債務を抱える日本の姿と変わりないと警告を発したが、借金大国日本と財政破綻した夕張、さらに夕張財政の救い主であるはずだったが、逆に足を引っ張った数々の娯楽施設は入れ子構造にあるということではないだろうか。

 そんな夕張市で去年まで支給されていた60万円の補助金が打ち切られて、繰越金の1万円と全国から集まった230万円の寄付金の一部を使って、残りは来年以降の成人式の費用に回すということだが、一度は諦め掛けていた式を新成人自身の手作りでとり行い、無事済ませたという。

 成人式の実行委員代表新成人女性が市の職員と持った会合で補助金の打ち切りと繰越金1万円は支給できることを伝えられて、あまりにもひどいと涙を流して訴えていたが、成人式開催を絶対前提としただけではなく、市のお膳立てをも絶対前提とした抗議であろう。

 絶対前提としていなければ、会合を持つ必要も生じなかったはずである。

 20歳という年齢を迎えたことに対するそれぞれの自覚が重要なのであって、式そのものは所詮形式、あるいは儀式でしかないのに、なぜ絶対前提としなければならなかったのだろう。

 成人した男女は、「地元で迎えられたので、うれしい」とか、「予算が少ない中でやって、手作りで暖かい感じを出せた」、実行委員代表新成人女性は感謝の気持からだろう、泣きじゃくりながら式で、「全国から励ましの言葉やご支援をいただき、今日このような成人祭を迎えることができました」(日テレ)とマイクを前にしてメモを読み上げていた。

 市の対応を泣いてひどいと訴え、では自分たちの手でと寄付を求めて、全国から寄せられた230万円の寄付金の一部を使って手作りだと称して開いた成人式が、テレビで見た限りではおんぶに抱っこの形で市から与えられていたた今までの成人式とたいして変わらない、単なる焼き直しと言ってもいい内容にしか思えなかったが、勘違いだろうか。

多分勘違いでない証拠は、まずは成人女性の殆どが振り袖、成人男性は黒の式服か和服と、どこの成人式でも見かけることができる自治体がお膳立てした従来からの成人式と何ら変わらない光景だったことと、実行委員代表新成人女性自身の式場での上記メッセ-ジである

 「全国から励ましの言葉やご支援をいただき、今日このような成人祭を迎えることができました」――

 これは「親や学校の先生方、地域の人々に温かく見守られてここまで成長することができ、今日このような20歳の成人祭を迎えることができました」と誰もが、どこでも口にしているただでさえありきたで月並みな手垢のついたメッセージと互換可能で、手作りでなしたとするにはまるきりありきたとなって、市主催の焼き直しと言われても仕方がないだろう。

 財政破綻を受けた町に住み、これから生じる様々な負担やジリ貧状態で悪化していくだけかもしれない将来に対する思い・不安という逆境の中での苦労も伴った手作りであるからには、何かもっと別な言葉が生まれていいはずだが、ありきたりの言葉しか創り出せなかったようだ。それは成人式のありきたりな結果性と対応しあったありきたりな表現ということだろう。
例え自分たちで行うことに意味がある、行ったことに意味があるからと言っても、結果が他と似たり寄ったりではたいして意味とは言えない。他と違う、財政破綻を受けた町ならではの内容を目論み、結果を出してこそ、〝自分たち〟のが生きてくる。かけた資金に制約を受けただけの、他の自治体の成人式のミニチュア版であったなら、手作りのどこに意味があるということができるだろうか。違いがあるとしたら、寄付金で賄ったか、市の金で賄ったかの違いとそのことに応じた規模の大小の違いしか見つけることができないのではないだろうか。

 男女それぞれの特別仕立ての着物・式服にしても、単に見た目の様子が他と同じというだけではなく、成人式を記念とし、写真館に寄って撮った写真を記念とする、記念のための儀式という点でも他と何も変わらないことの光景の現出であろう。盛装は自分たち自身の成人式の記念にはなっても、夕張の今と将来の創造に何の役に立つというのだろう。

 将来のなくてはならない人材だと若者を大事にする意識が市にあったなら、何らかの形で応えるべきを補助金は打ち切りです、出せるカネは繰越金の1万円のみですといった将来的な人材に対する事務的で無責任な対応から学ぶべきは市主催のおんぶに抱っこへの決別の恰好の機会であったろうし、当然、その方向性を持った手作りであるべきであったろう。だとしたら、似たり寄ったりであってはならなかったのではないか。

 新成人が仲間を語らって成人式の日に焼酎でもかっ喰らい市役所に雪崩む住居侵入、椅子を投げつける、パソコン・その他を金属バットで叩き壊す器物損壊、祭日であっても警備員ぐらいはいるだろうから、暴行して怪我を負わす暴行・障害を確信犯的に犯すぐらいのことをして、これが財政破綻した町の俺たちの成人式だと宣言したなら、マスコミが取り上げることによって新成人の狼藉が改めて指弾することになる市と市の職員の財政破綻に対する無責任を日本中にぶちまけることができるし、市側にこのような仕打ちも仕方がないとほんの少しぐらいは反省の機会を与えただろうし、確実に手作りの成人式と言えたのではないだろうか。

 尤も何日か臭い飯を食う覚悟をしなければならないが。

 市の方は財政破綻までやらかした無責任集団である。逆に今度からずっと手作りでやってくれ、市も助かるぐらいにしか考えていないだろう。そういった可能性大ということなら、なおさらに手作り成人式は自分たちの役に立ったという自己満足で終わりかねない。「住民サービスの一定水準の維持は政府が約束する。特に子どもと高齢者には配慮したい」と国が救いの手を伸ばすようだから、親方日の丸の依存に慣れきってしまっている責任体質は元々水っぽいだけの味噌汁にさらに水を加えるように自己責任濃度を薄めるだけのことで、国への依存度だけはますます高めていくといった何も変わらない結果で終わるのではないだろうか。

 暴動は過激だというなら、晴れ着に装って出席したことを人生一度の記念とし、勲章とするのではなく、自分が持っている一番の古着を纏い、なければ古着屋から手に入れ、式場から外に出たら寒さで震えるぐらいの薄着を夕張市成人式の盛装として、財政破綻した今の夕張市に合わせましたと宣言したなら、あるいは寄付金など募らず、式場を市役所の駐車場に代えて、そこで焚き火して、それを古着を着た新成人が囲んで暖を取る成人式にしたなら、市側に自分たちが招いた財政破綻の惨状と責任をいやでも痛感させる創造的な手作りの成人式でございますと言えるのではないだろうか。

 成人したという意識・大人としての自覚は成人式によって与えられるものではなく、年齢には関係ない自身の自覚の問題であろう。20歳前に社会性を身につけることができる人間もいるし、20歳を過ぎても、いつまで経っても大人になりきれない人間もいる。50,60になっても、ビン・缶を無神経にポイ捨てできる人間は見かけは大人でも、中身は社会の一員化していない未発達の大人でしかない。そんな日本人がゴマンといる。

成人として行動できる否かは自覚こそを必要条件とするなら、20歳を迎えるに当たって先ずすべきことは、自分が成人としての自覚を持てているかどうか、自らを振返ることだろう。どのような場面でもビン・缶をポイ捨てしない人間であるなら、成人への第一歩を踏み出す初歩的な資格(=初歩的な社会的責任感)を有していると見なすことができる。例え中学や高校のときから野球やサッカーといったスポーツの才能が優秀であっても、ビン・缶を簡単に捨てることができる人間なら、単に自分の運動能力に助けられた運動人間の位置にいるだけのことであって、大人の精神性を備えた社会人とは言えない。

 成人式に出席した新成人が口ではこれからは大人として行動したいとか、自分で考えて行動する人間になりたいとか主体性・自律性(自立性)に言及していたが、そのことに関しては成人式そのものは新成人が身につける振り袖や式服に腕を通すだけの効果しか与えないのではないだろうか。それは参加人間のファッション・服装が自治体がお膳立てした成人式の一律性・規格品化に対応して規格化されていることに表れている。主体性・自律(自立)性とは横並びとは違う自分は自分という独自性へ向かう道を言うのであって、そのことに反する規格品化だからである。

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