菅首相の何も変わらない消費税増税発言から拉致救出発言

2010-12-12 07:45:12 | Weblog

菅首相が10日(2010年12月)、拉致被害者家族会と面会。記事によっては懇談となっている。

 《首相 拉致被害者救出方法検討》NHK/10年12月11日 0時3分)

 記事は菅首相の発言を三つに分けている。

 菅首相「北朝鮮による砲撃があり、アメリカ軍も含めた一触即発の状況も生まれてきている。万一のときに、北朝鮮にいる拉致被害者をどうすれば救出できるか、準備や心構えなどいろいろなことを考えておかなければならない」

 菅首相「救出に自衛隊が出て行って、韓国を通って行動できるかどうかというルールはきちんと決まっていない」

 菅首相「いざというときに、きちっと救出活動にも携われるように、日本と韓国の間でしっかり決めていきたい。今、いくつかの議論を進めているところだ」

 記事はこの発言を、〈北朝鮮が混乱した場合などの拉致被害者の具体的な救出方法について検討を進める考えを示し〉た発言としている。

 拉致被害者の家族会代表で、田口八重子さんの兄。

 飯塚繁雄氏「北朝鮮がひどい状態のなか、どうやって本気になって被害者を助けるかについて、具体的な方策を検討してもらいたい」

 菅首相の発言に期待したようだ。

 最初の発言は国民の生命・財産を守る日本国家に於ける危機管理の最高責任者として当然の想定であろう。最後の発言も、朝鮮半島に危機が生じた場合の韓国との間の救出活動に関わる確固とした取り決めの必要性とその必要性を満たす話し合いを行っているとしているのだから、当然の措置・備えとすることができる。

 問題は二番目の発言である。

 「救出に自衛隊が出て行って、韓国を通って行動できるかどうかというルールはきちんと決まっていない」――

 拉致被害者の救出活動に関して日本と韓国の間でいくつかの議論を進めている。大いに結構である。結構毛だらけ、ネコ灰だらけ。その主たる一つとして「救出に自衛隊が出て行って、韓国を通って行動できるかどうかというルール」を議論しているが、まだ「きちんと決まっていない」段階である。

 二つの問題点を見い出すことができる。最初に現在の日本国憲法と自衛隊法の制約下で果して「救出に自衛隊が出て行って、韓国を通って行動できるかどうか」である。行動できるなら、韓国との議論は可能となる。できないなら、韓国との話し合い以前に行動できる国内的ルール確立のための国内的議論を最初に持ってこなければならない。

 だが、菅首相の発言は行動できるを前提としている。いわば行動できる国内的ルールが既に確立しているとしている前提に立っている。

 その前提に立った上にさらに「万一のときに」と韓国と北朝鮮の軍事的衝突を前提としている以上、最悪の場合戦争状態に発展する場合も想定しなければならない状況下で、機体に日の丸のマークを付けた「自衛隊が出て行って、韓国を通って行動」したとしても、北朝鮮が目的地まで何ら攻撃せずに無事通過させてくれる保証を要件とした発言となっている。

 日本国憲法は「第2章 戦争放棄 第9条」で、「戦争放棄、軍備及び交戦権否認」を謳っているからである。攻撃を受けないを前提としない場合、交戦を条件としなければ北朝鮮に入ることも出ることも不可能となる。当然、憲法に9条に抵触する。
 

 第2章 戦争放棄

 第9条 戦争放棄、軍備及び交戦権否認

 (1)日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇叉は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。 

 (2)前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 果たして北朝鮮は日の丸のマークを付けた自衛隊機が北朝鮮領空に入っても何らミサイル攻撃も対空砲撃もなく迎え入れてくれて、拉致被害者の生存場所まで案内してくれて、どうぞと搭乗まで手伝ってくれて、韓国までの帰路の無事を保証してくれるのだろうか。

 何ら国を表すマークがついていない場合、国籍不明機として直ちに撃墜攻撃を受けるだろう。

 もし北朝鮮が何ら攻撃しなかったなら、何も「韓国を通って行動」しなくても、直接日本から北朝鮮に向けて飛べばいい。

 攻撃を受けないことを前提としている点、その前提であるなら、「韓国を通って行動できるかどうかというルール」の議論は必要でなくなるにも関わらず、韓国との間で「今、いくつかの議論を進めている」としている前提を裏切る矛盾は実際に想定される事態と遠くかけ離れていることも含めて合理的判断を欠いた発言と言わざるを得ない。

 国民の生命・財産を預かる危機管理の最高責任者である首相に必須の的確な合理的判断能力をその必要性に反して欠いているという逆説は何を物語るのだろうか。

 海外で危機が発生した場合の邦人救出は現在は武力不行使の憲法9条に抵触する危険性が生じる場合を除いて民間機派遣による救出に限定されているが、武力行使の場合でも自衛隊機が派遣できる自衛隊法改正の検討・議論が前々から行われている。この点については特に自民党の石破茂が熱心であった。

 2010年5月17日の当ブログでも取り上げている。2010年5月10日記事――《福島瑞穂の在沖縄米海兵隊抑止力の視野狭窄な矮小化》に寄せられたコメントに対する回答である。短い文章ゆえ、全文再録してみが、上記記事を併せて参考にしていただきたい。
 
 《5月10日記事に対するコメント「疑問」に答える》

 2010-05-15 23:39:54

 素朴な疑問を持ちました。

じゃ 在外日本人が政変に巻き込まれて、生命の危険にさらされた時、誰が救出に行くのでしょうか?
民間機を使うのは難しい状況もあるでしょう。

エンデベ作戦は無理としても、航空自衛隊の輸送機や政府専用機(パイロット・スタッフは自衛官)を飛ばして、自国民を救うのが、国の役目では?

 以下回答

 イラク特措法は武力行使を禁止し、活動地域を非戦闘地域に限定しています。憲法9条に抵触しないための措置のはずです。

イラクに人道復興支援目的で自衛隊を派遣したとき、色々と議論がありました。武力不行使としていながら、自動拳銃、機関拳銃、小銃、機関銃、少し破壊力があるものとして、手動、単発の無反動砲等を携行させています。その矛盾をクリアするために小規模な武器携行だとし、“非戦闘地域”という名目で派遣していますが、地域の治安をイギリス軍やオランダ軍等の多国籍軍が担った、言ってみれば彼らが非戦闘地域としてくれている状況下での派遣です。

憲法9条によって、それが限界ということなのでしょう。戦争状態の外国への自衛隊派遣や海外の邦人救出等に限って言えば、例え自民党の石破が「日本の自衛隊が、今の憲法の範囲内で出来ることがたくさんあるんじゃないんですか」と言っていたとしてもです。

海外の邦人救出に小規模の武器を携行させたとしても、その使用に関しては使用を想定せずに済み、いわば戦闘行為を想定せずに済んで、憲法9条の枠内の武力不行使で自衛隊機を派遣して救出可能なら、民間機でも救出可能のはずです。

 戦闘行為に巻き込まれる危険があるからと民間機の派遣は無謀だと見送られて、自衛隊機を送った場合、既にそこは“非戦闘地域”とは言えなくなり、“非戦闘地域”への派遣だと認めさせるために武器携行を小規模にとどめたとしても、多国籍軍が治安を担っていたイラクのサマーワと違ってそれで戦闘行為に巻き込まれないことが保証されるわけではなく、当然、武力不行使の保証も失う。

救出自衛隊機が攻撃を受けないようにするためには、当該国の軍隊展開地域への前以ての爆撃も必要になる場合も生じます。あるいは敵国戦闘機の直接の攻撃を防御するために救出機掩護の戦闘機を同行させる必要も生じるかもしれません。

自衛隊法をどういじったとしても、憲法9条をクリアできるのですか。

自衛隊オタクの石破は単に自衛隊機を出したいだけでしょう。一旦自衛隊機を出すことができれば、それを突破口として救援機への攻撃阻止を謳って援護の戦闘機をつける。国民の生命・財産を守るためだという口実を設ければ、国民は憲法9条はそのままだ、例外だと認める可能性も期待できる。

要するに憲法9条をクリアするために今までのように自衛隊法でゴマカシゴマカシやっていくということです。但し、憲法9条に手をつけずに、どこまで誤魔化せるかです。

海外邦人の救出に戦闘行為に巻き込まれる危険を冒して、戦闘地域に自衛隊機派遣を可能とする憲法9条のゴマカシが間に合わず、邦人救出ができない事態が生じたとしたら、それは政治がこれまで誤魔化してきたツケでしかないと思います。

私自身は憲法9条を改正し、集団的自衛権も認めるべきだという改憲派です。先進民主国家として世界の平和維持のために戦争地域・紛争地域に自衛隊を派遣し、他の先進国と共に戦い、先進民主国家としての責務を果たすべきだと考えています。

そうしなければいつまで経っても欧米先進国と肩を並べることはできないと思っています。

先進国家としての責務をゴマカシゴマカシ凌いでいくから、欧米から信用されない。日本国民の大多数が9条を守るとするなら、それはそれでいいと思います。但しあの手この手で9条を誤魔化すべきではないと思います。先進国家としての責任を果たせませんとバンザイし、例えどのように蔑まれようと、経済的利益の追求のみに走る。

政治が誤魔化してくれているから、国民は憲法9条に安住していられる。朝鮮戦争にしても、ベトナム戦争にしても、イラク戦争にしても憲法9条下で、実際には日本は参戦しているのです。攻撃基地として、兵站補給基地として、兵士と兵器の輸送基地として。

その上、日本は朝鮮戦争特需の恩恵を受けて戦前の鉱工業生産水準にまで一挙に復活して高度経済成長へのスタートを切り、ベトナム戦争特需で成長を確かなものとしていった。

特需は“準参戦”のご褒美だったのです。

それを象徴するのが世界のトヨタです。当時トヨタは倒産しかかっていて、朝鮮戦争で故障したアメリカ軍のジープや軍用トラックの修理、のちにはライセンス生産等で息を吹き返して世界のトヨタへと発展していった。

靖国の国のために尊い命を犠牲にした英霊たちが日本の戦後復興の礎となったというのは真っ赤なウソ

 この内容の正当性を完璧には程遠いが、ほぼ保証してくれるWEB記事がある。《北朝鮮・拉致問題:被害者救出に自衛隊派遣 菅首相発言、憲法9条抵触の可能性》毎日jp/2010年12月11日)

 〈菅直人首相は10日、北朝鮮による拉致被害者家族との会合で、朝鮮半島有事の際に拉致被害者を含む邦人救出に自衛隊を出動させることを検討していると受け取れる発言をした。現行の自衛隊法84条の3には、自衛隊機や自衛艦による邦人輸送が規定されているが、海外での武力行使を禁じた憲法9条に抵触しないよう「輸送の安全が確保されている」時に限っており、戦闘地域での邦人輸送は想定していない。〉

 菅首相「北朝鮮が韓国領に砲撃する事件が勃発し、即発の状況も生まれてきた。万一のときには北にいる拉致被害者をいかにして救出できるか、いろいろな事を考えておかねばならない」

 菅首相「救出に直接、自衛隊が出て、向こうの国(韓国)の中を通って行動できるルールはきちんと決まっていない。今、議論を進めている」

 〈首相の発言は朝鮮半島で戦闘が行われている状況で、韓国を経由して北朝鮮に自衛隊を派遣することを検討しているとも受け取れ、従来の政府の憲法解釈を大きく逸脱しかねない。防衛省幹部は「自衛隊が北朝鮮に行くなんてあり得ない」と検討の可能性を否定した。【坂口裕彦、倉田陶子】〉――

 菅首相は10日の拉致被害者家族会で発言した件に関して翌11日、首相官邸の記者会見で次のように発言している。《北朝鮮・拉致問題:被害者救出に自衛隊派遣 菅首相発言、憲法9条抵触の可能性》 asahi.com/2010年12月11日14時21分)

 記事は「ジョブサポーター」の件をより重視した取扱いとなっている。
 
 【有事の自衛隊の朝鮮半島派遣】

 ――昨日拉致被害者家族との懇談を総理はされましたけれども、その中で総理が朝鮮半島有事の際、自衛隊を派遣して拉致被害者の救出をするための、日本と韓国の間でルール作りが必要ではないかということについて言及されましたが、例えばすでに韓国側との協議を行うなど、具体的な検討に入られているのでしょうか。

 「これはですね、拉致被害者のみなさんはもちろんですが、一般の邦人がいろんな韓国の中、たとえばソウルとかにたくさん現在滞在したり住んでおられるわけです。で、いざ有事の時にですね、そういう皆さんに日本に帰ってもらおうと思ったときに、飛行機を出そうと思って、例えば民間機で帰れる間はいいんですが、じゃあ民間機が危なくなった時にですね、例えば自衛隊機で救出に向かおうと思った時に、まだ、日韓の間ではそういうルール作りができていないんですね。ですからそういう有事の時に拉致被害者を含めて、一般の邦人の、救出というか帰国を含めて、どういう場合にどういうことができるか。その場合に例えば自衛隊の輸送機などがですね、受け入れてもらえるか、そういうことについて、考えなければいけないという、そういうことを申し上げたんです。これから韓国との間でもですね、今少しずつこの日韓の間でのそういった安全保障に絡む協力関係も進んでいますので、そういう中で、少しずつそういう相談を始められればと。これからの問題です」

 ――自衛隊法の改正についてもじゃぁ、検討にはいるということでよろしいですか。

 「まだ、今すぐにどの法律をどうするということまで、申し上げたわけではなくて、今申し上げたように、従来から邦人救出についてのいろんな整備。これは二国間だけではなくて今言われたような法整備のことも話題に出ていることはよく知っています。ですからそういうことを念頭に置いて、考えなければならないと思っていますから。今すぐ、どの法律をどうするということを指示している段階ではありません」

 拉致被害者を特定とした自衛隊機使用の救出から、韓国在住の邦人まで含める巧妙な微修正を行って、自身の発言の正当性を図っているが、韓国との間で「少しずつそういう相談を始められればと。これからの問題です」、「今すぐ、どの法律をどうするということを指示している段階ではありません」と、家族会で行った「今、いくつかの議論を進めているところだ」の発言を完全撤回、将来的課題だと完全修正している。

 将来的課題で以って拉致被害者家族に自衛隊機使用の救出が何ら成算あってのことではないにも関わらず、さも成算ある方策であるかのように約束した。現時点に於いてはウソを以って実現できるかのように約束したのと変わらない。

 2010年参院選マニフェストの発表時(2010年6月17日)、自身の発言が及ぼす影響を前以て考慮も判断もできず、党内議論の詰めも行わずに消費税増税の話を持ち出し、自民党が掲げている10%を参考にすると増税率まで掲げて参院選大敗という大失敗をしておきながら、その失敗に懲りずに、あるいは何ら学習もできず、再び前以て自身の発言の合理性や発言の影響、さらに前以て議論を行っているわけでもない事柄を持ち出して発言する同じ繰返しを犯す愚かしさは何も変わっていない。

 このように発言のいい加減さ、責任を持って発言できない姿勢。首相としての発言が如何に重いかを認識していない不適格な判断能力。どれ一つをとっても、日本の総理大臣としての資格を失う。民主党執行部は小沢元代表の国会喚問で騒いでいるが、総理大臣としての資格を全く欠く菅首相を交代させることを先ず行うべき問題とすべきであろう。


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