7月9日(2011年)、民主党本部で開催の民主党全国幹事長・選挙責任者会議の挨拶の中で菅仮免は福島第一原発原子炉の溶けた核物質の処理や廃炉に要する年数について次のように挨拶した。
菅仮免「3年、5年、10年、最終的には数十年の単位の時間がかかる」(asahi.com)
この発言に関して7月10日当ブログ記事――《菅仮免は東電福島第一原発廃炉工程案を自身の情報発信とするために公表せずに温存した? - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》で次のように書いた。
〈菅仮免は廃炉の工程を自他の見通し如何に関わらず、「3年、5年、10年、最終的には数十年単位の処理の時間がかかる」とした。だが、数十年という長期に亘る処理の時間に伴って当然影響を与えることになる放射能避難者の生活について何ら言及していない。どの記事もそうで、原子力発電の視点のみに立った発言で終わっている。〉
さらに、〈本来なら細野原発事故担当相等、政府側の誰かが立ち会って原子力委員会と東京電力が正式の記者会見を開いて公表すべき廃炉工程表案でなければならないはずだ。〉と。
だが、細野原発担当相が廃炉問題に放射能避難者の帰宅は関係しないと7月11日の衆院復興特別委員会で答弁したと次ぎの記事が伝えている。
《「廃炉と避難住民の帰宅は別問題」 細野原発相が答弁》(asahi.com/2011年7月11日21時19分)
自民党の吉野正芳氏の質問に対する答弁だそうで、福島第一原子力発電所の廃炉と、「警戒区域」から避難した住民の帰宅時期の関係についての答弁。
細野原発担当相「これは全く別の問題だ。早く帰っていただける努力をしたい」
また、住民が帰宅できる条件を次のように掲げたと言う。
(1)原子炉の状態が安定し、放射能がわずかな部分以外に出ていない状況
(2)地域の放射線量のモニタリングと、除染作業
(3)上下水道など社会インフラの復旧
(4)野積みになっている放射性物質を帯びた廃棄物処理
要するに上記条件がクリアできたなら、廃炉作業の脇で普通の生活は可能だとの認識を示したことになる。
枝野官房長官も同じ趣旨の発言を昨7月11日の記者会見で行っている。《官房長官、被災者帰宅時期「原子炉廃炉と別次元の話」》(日本経済新聞電子版/2011/7/11 19:54)
枝野「(被災者の帰宅時期は)原子炉の廃炉などの最終的な手順の話とは次元が違う」
廃炉には関係のない別問題だと言っている。
枝野(事故収束工程表で示した原子炉の安定的冷温停止予定の「ステップ2」に進めば)「どの地域でどのくらいの時期に元の生活に戻れるか示せる」
例え帰宅と帰宅後の日常生活に廃炉作業が何ら影響しなくても、被災者が何よりも知りたい情報のはずである。一般国民も関心を持って見守ることになる情報であろう。
国会答弁や官房長官の記者会見ではなく、やはりこのことに絞った専門家を交えた国民向けの記者会見を開いて、スリーマイル島やチェルノブイリの廃炉を例に引きながら記者の疑問に答える質疑応答をも加えてより具体的且つ広範囲に疑問を解く方法で説明を尽くすことが被災者を筆頭に国民により多くの安心を与える最善の説明責任となるのではないだろうか。
いわば菅仮免も細野原発担当相も枝野官房長官も「被災者に寄り添う」を復興・復旧にかける一つのキーワードとしていながら、その精神に反して廃炉と被災者の生活に関して説明責任を満足に果たしていないということである。
被災者や国民に安心を与える説明責任を心がけるべき姿勢・誠実さを欠いていることからの不作為に違いない。
朝日新聞とNHKが世論調査を公表しているが、朝日が「菅内閣を支持―15%」。「支持しない―66%」。NHKが「菅内閣を支持―16%」。「支持しない―68%」となっているが、当然の数値と言える。
指導力は例え備えていたとしても国民に対する誠実さを欠いていたなら、十全な形を取り得ないはずだ。
このことを逆説するなら、例え指導力を欠いていたとしても誠実さを失わなければ、その誠実さが不足した指導力を補うことになる。
菅仮免は元々指導力を欠いている上に誠実さをも欠いているから、満足な政権運営ができずに立ち往生することになっている。 |