福島原発現場視察も、自衛隊派遣も、遅れた場合の批判を恐れる責任回避意識で行った。
菅仮免、国会事故調参考人証言(2012年5月28日午後)
桜井委員「次に総理が福島第1に視察に行かれたことについて伺いますが、津波、その他の被害の所も併せて視察をなさったことは皆さんもご承知で、改めてご説明はいりませんが、福島第1原発をご自分で行かれたということは如何でしょうか」
菅仮免「視察に行く目的は、今言われましたように地震・津波の現状を直接私が見て認識したい。これはかつての阪神・淡路の震災のときに、当時の内閣、私は内閣のメンバーではありませんでしたけど、そういった関係者がいつ行く、いつ行かないで色々と議論があったことを私も覚えております」――
阪神・淡路大震災の自衛隊出動の遅れを教訓とすることはあっても、その遅れを理由として自衛隊の早期出動の基準とはならないはずだ。
あくまでも早期の人命救助・早期の生活支援を基準として決定されるべき出動時期であろう。
だが、菅は阪神・淡路大震災で自衛隊が「いつ行く、いつ行かないで色々と議論があった」ことを出動の基準に組み入れていた。
勿論、出動に如何なる基準を用いたとしても、その判断を誤った場合、責任問題が浮上する。
当然、一国の指導者は責任を覚悟で自衛隊の出動基準を自ら決定しなければならない。
但し菅仮免の場合は最初から阪神・淡路大震災の自衛隊出動遅れの二の舞を演じた場合の責任を恐れ、そのような責任云々を判断基準として早々に自衛隊出動を決定したのであって、純粋に人命救助・生活支援を第一義・最優先を基準とした自衛隊出動ではなかったということであろう。
いわば最初に責任問題ありきの出動決定であった。決定が遅れることの責任を恐れて、早々に決めた。
もし人命を第一義・最優先に考えた自衛隊早期出動等の官邸危機管理であったなら、生活支援や福島の放射能漏洩時の避難指示・避難方法、避難に関わる情報提供に手違いや失態、遅れ等が生じた危機管理機能不全は極力抑えることができたはずだが、そのことに反して人命を第一に考えたとは言えない目に余る機能不全を生じせしめた原因は、そもそもから人命重視を基準としていなかったことの反映としてあったお粗末な体たらくであったはずだ。
菅無能は自衛隊を最初は2万人、次に5万人、最終的に10万人体制で支援に当たらせ、最終的に2万6千人以上の人命を救助したことを後々まで勲章としていたが、その実態は自衛隊の派遣規模でしかない出動と津波による出水で建物の屋上や、交通遮断等によって地理的に隔離された場所に目に見える形で取り残された生存者が殆んどの人命救助であって、そのような勲章と言える程のことではない勲章で以って人命を第一義・最優先で執り行わなければならない生活支援・生活救助の機能不全に置き替えるべく謀ったこと自体、責任を覚悟の積極的姿勢を取ることができずに逆に責任を恐れて大胆な危機管理を狭めた証拠としかならないはずだ。
2011年3月11日東日本大震災発生による福島第1原発事故発生翌日の3月12日、1号機冷却のための真水注入から海水注入に切り替える必要が生じた際、菅仮免は班目原子力安全委員会委員長から、海水注入で「再臨界の可能性はゼロではない」と言われて、海水注入を東電に対して正式に指示するまでに2時間もムダな時間を費やしたが、このことも責任を恐れて逡巡したからだろう。
2011年5月23日衆院震災復興特別委員会。
班目委員長「その場に於いては海水を注入することによる問題点をすべて洗い出してくれという総理からの指示がございました。私の方からは海水を入れたら、例えば塩が摘出してしまって流路が塞がる可能性、腐食の問題等、色々と申し上げた。
その中で、多分総理からだと思うが、どなたからか、再臨界について気にしなくてもいいのかという発言があったので、それに対して私は再臨界の可能性はゼロではないと申し上げた。これは確かなことであります」
同衆院震災復興特別委員会。
班目委員長「私の方からですね、この(海水注入の是非を巡る)6時の会合よりもずうーっと前からですね、格納容器だけは守ってください。そのためには炉心に水を入れることが必要です。真水でないんだったら、海水で結構です。とにかく水を入れることだけは続けてくださいということはずーっと申し上げていた」
2012年5月28日午後の国会事故調菅仮免証言。
菅仮免「再臨界については淡水を海水に代えたら再臨界が起きるということではありません。これは私もよく分かっておりました。
つまり、私も技術的なことは専門家でありませんので、詳しくは申し上げませんが、再臨界が起きる可能性というのは制御棒が抜け落ちたとか、あるいはメルトダウンした後の、その燃料より大きな塊になったとか(手を大きく動かしてゼスチャーたっぷりに話す)、そういう場合に起きる危険性があるわけでありまして、班目委員長の方からは『可能性がゼロではない』というお返事がありました。
まだ時間があるという前提で、それならそういうことも含めて、検討して欲しい。つまりはホウ酸を入れれば再臨界の危険性を抑えることができるということは、その関係者はみんな知っておりますので、そのことも含めて検討して欲しいと、このように申し上げたところであります」
海水注入で再臨界は起きることはないという知識・情報は持っていた。だが一方で、班目委員長から海水注入で再臨界の「可能性がゼロではない」と言われて、「まだ時間があるという前提で、それならそういうことも含めて、検討して欲しい」と議論を求めた。
班目発言から窺うことができる何よりの必要最優先事項は、海水注入で再臨界の可能性はゼロではないにしても、海水であろうと真水であろうと注入によって原子炉を冷却しなければならないということである。
だが、菅は班目のアドバイスを責任を覚悟で直ちに自らに引き受けずに、逆に責任を恐れて、責任を取らずに済む確かな答を求めて、いたずらに時間を費やした。
と言うことは、「再臨界については淡水を海水に代えたら再臨界が起きるということではありません」は後付の知識・情報であって、3月12日当時の知識・情報ではなかったことになる。
このウソも責任を覚悟で行動するのではなく、責任を恐れて行動することの現れとしてある言い逃れであろう。
責任を覚悟して臨機応変の素早い行動を心がける資質を有していたなら、このようなウソ・言い逃れの類いは口をついて出ることなどないだろうからである。
民主党が大勝し、政権を握った2009年総選挙で神奈川県第11区から初出馬、小泉進次郎に大差で破れて比例で当選した横粂勝仁議員は2010年9月の民主党代表選挙で菅直人に投票したものの、2011年6月2日の菅内閣不信任決議案採決では賛成票を投じ、民主党を離党している。
今回の総選挙で、「菅直人を落選させる」として菅と同じ選挙区である東京都第18区から出馬すべく行動している。
責任を恐れて行動した福島原発危機管理無能の責任を取らすには落選を断罪手段としなければならない。
前民主党議員で、2010年9月の民主党代表選挙で菅直人に投票した横粂議員の手による菅落選の刑執行こそが、最も皮肉で嘲笑的な、無能な首相だった菅に相応しい断罪となるに違いない。
当然の報いとしてそうなることを期待して止まない。