森本防衛相の去りゆく者とは言え、政治のゴマ化しここに極まれりの普天間に関わる詭弁発言

2012-12-27 10:34:39 | Weblog



 「MSN産経」が紹介していた、まだ防衛相の首がつながっていた森本氏の記者会見発言だったから、防衛省のHPにアクセス、関係する発言箇所をより詳しく見てみた。 

 森本防衛相記者会見(防衛省HP/2012年12月25日 10時50分~11時16分)
  
 記者「沖縄問題にとてもお詳しい大臣で、今回、半年の間に沖縄の負担軽減に努力されていたと思いますが、1点だけ確認というか。普天間の辺野古移設は地政学的に沖縄に必要だから辺野古なのか、それとも本土や国外に受入れるところがないから辺野古なのか、その1点だけ、考えをお願いします」
 森本防衛相「アジア太平洋という地域の安定のために、海兵隊というのは今、いわゆるMAGTFという、MAGTFというのはそもそも海兵隊が持っている機能のうち、地上の部隊、航空部隊、これを支援する支援部隊、その3つの機能をトータルで持っている海兵隊の空地の部隊、これをMAGTFと言っているのですが、それを沖縄だけはなく、グアムあるいは将来は豪州に2500名以上の海兵隊の兵員になったときにはそうなると思いますし、それからハワイにはまだその態勢がとられていないので、将来の事としてハワイにもMAGTFに近い機能ができると思うのです。こういうMAGTFの機能を、割合広い地域に持とうとしているのは、アジア太平洋のいわゆる不安定要因がどこで起きても、海兵隊が柔軟にその持っている機能を投入して、対応できる態勢をある点に置くのではなくて、面全体の抑止の機能として持とうしているということであり、沖縄という地域にMAGTFを持とうとしているのは、そういうアジア太平洋全体における海兵隊の、いわゆる「リバランシング」という、かつては1997年頃、我々は「米軍再編計画」と言って、「リアライメント」という考え方ではなくて「リバランシング」というふうに言っているのですが、そのリバランシングの態勢として沖縄にもMAGTFを置こうとしているということです。

 これは沖縄という地域でなければならないのかというと、地政学的に言うと、私は沖縄でなければならないという軍事的な目的は必ずしも当てはまらないという、例えば、日本の西半分のどこかに、その3つの機能を持っているMAGTFが完全に機能するような状態であれば、沖縄でなくても良いということだと。これは軍事的に言えばそうなると。

 では、政治的にそうなるのかというと、そうならないということは、かねて国会でも説明していたとおりです。そのようなMAGTFの機能をすっぽりと日本で共用できるような、政治的な許容力、許容できる地域というのがどこかにあれば、いくつもあれば問題はないのですが、それがないがゆえに、陸上部隊と航空部隊と、それから支援部隊をばらばらに配置するということになると、これはMAGTFとしての機能を果たさない。したがって3つの機能を一つの地域に、しかも、その持っている機能というのは、任務を果たすだけではなくて、必要な訓練を行う、同時にその機能を全て兼ね備えた状況として、政治的に許容できるところが沖縄にしかないので、だから、簡単に言ってしまうと、『軍事的には沖縄でなくても良いが、政治的に考えると、沖縄がつまり最適の地域である』と、そういう結論になると思います。というのが私の考え方です」

 以上、ざっと纏めてみる。

 先ず海兵隊の地上部隊、航空部隊、これを支援する支援部隊、その総合機能部隊としての「海兵隊の空地の部隊」=MAGTF(インターネット上では、「米海兵隊空陸任務部隊」と和訳されている)をグアムやオーストラリア、将来的にはハワイを加えて展開させる。

 要するに最近言われ出した、常時駐留ではなく、一定期間ごとの交代制を言う「ローテーション駐留」ということだと思う。

 ローテーション展開の目的は「アジア太平洋のいわゆる不安定要因がどこで起きても、海兵隊が柔軟にその持っている機能を投入して、対応できる態勢をある点に置くのではなくて、面全体の抑止の機能として持」たせるためだと説明している。

 ということは、米側は抑止力を太平洋全地域に亘る「面全体」で機能させる態勢に転換、沖縄はその「面全体」の一点としての、あるいは一部分としての役目を負うことになったということになる。

 それ故に次の発言が出てくる。

 森本防衛相「沖縄という地域でなければならないのかというと、地政学的に言うと、私は沖縄でなければならないという軍事的な目的は必ずしも当てはまらない。

 例えば、日本の西半分のどこかに、その3つの機能を持っているMAGTFが完全に機能するような状態であれば、沖縄でなくても良いということで、これは軍事的に言えばそうなる」


 以上の考えは米側の考えでもなければならない。米側が沖縄の役目をそのように把握していないにも関わらず、森本防衛相が個人的な考えとして述べたでは済まない。日本駐留の米軍を動かしているのはアメリカである。森本ではない。

 発言の前半は米海兵隊駐留は地政学的にも軍事的にも沖縄である必要はないと言いながら、後半の発言で政治的には沖縄でなければならないと主張している。

 森本防衛相「MAGTFの機能をすっぽりと日本で共用できるような、政治的な許容力、許容できる地域というのがどこかにあれば、いくつもあれば問題はない。

 政治的に許容できるところが沖縄にしかない。

 簡単に言ってしまうと、『軍事的には沖縄でなくても良いが、政治的に考えると、沖縄がつまり最適の地域である』と、そういう結論になる」
――

 “政治的に許容可能”とは、日本の側の政治の判斷によって決定された許容可能性を言うはずである。

 いわば軍事的にも地政学的にも沖縄でなくてもいい、だが、政治の判斷は沖縄以外にないという主張になる。

 このような言いくるめを詭弁とは言わないのだろうか。

 民主党政権が掲げてきたように沖縄の「地理的優位性」、あるいは「地理的特性」を言い募って、地政学から見た軍事的優位性という点で沖縄でなければならないという主張なら、まだしも正当性を窺うことができるが、軍事的にも地政学的にも沖縄限定ではなく、「日本の西半分のどこかに、その3つの機能を持っているMAGTFが完全に機能するような状態であれば、沖縄でなくても良いということだ」と言う以上、政治の強力な判斷によって、「政治的な許容力、許容できる地域」をつくり出してもいいわけである。

 つくり出すことによって、全国土0・6%の沖縄県に日本全国駐留米軍基地のうち75%も集中している過重負担に対する根本的な真の負担軽減となるはずである。

 根本的な負担軽減に取り組む強力な政治判断を採らずに、単に軍事的にも地政学的にも沖縄でなくてもいいが、政治的には沖縄でなければならないと片付けている。

 政治の貧困以外の何ものでもないはずだ。

 要するに前者の困難な道よりも日米合意で既に決まったことだと安易な道を選択しているに過ぎないから、以上のような詭弁が生じることになる。

 鳩山元首相の政権を投げ出す一因ともなった、「国外、最低でも県外」の失敗に懲りて、鳩山元首相が米側と取り決めた日米合意を安全弁として唯々諾々と従っているに過ぎない。

 このことは菅無能の2010年12月17、18日沖縄訪問、仲井真県知事と会談、会談後の18日午後記者会見発言が如実に証明している。

 仲井真沖縄県知事は菅無能との会談で、「米軍基地は日本全体で受け止めて考えて頂くことが必要だ」と求めたという。

 菅無能「私は、日本全体の皆さん、この日本の安全保障のために日米安保条約が必要であり、米軍基地の日本国内の存在が必要であると、そういう風に思っておられる方も私含めて多いと思いますので、そういう中でこの問題を全国民の課題として、しっかり受け止めていかなければならないと、こう思っておりますし、こういう形で申し上げることも、いわばそういうことを全国民に、あるいは全47都道府県の、沖縄以外の46都道府県の皆さんにも考えて頂きたいという思いで申し上げさしていただいたところであります」(asahi.com/2010年12月18日19時32分)

 米軍基地は「全国民の課題」だと言いながら、その発言に反して自分が決めたことではなく、鳩山元首相が決めたことだから、最も安全な選択となる日米合意踏襲、普天間の辺野古移設一点張りの姿勢を取り続け、野田首相も右へ倣いをした。

 安倍自民党政権となり、新防衛相に就任した小野寺五典氏が12月26日午後、衆院議員会館で記者会見している。

 小野寺防衛相、「沖縄のアメリカ軍普天間基地の固定化は、絶対にあってはならない。抑止力を維持しつつ、沖縄が、早期の負担軽減を実感できるように努力し、丁寧に説明することに尽きる」(NHK NEWS WEB

 民主党政権と同じ姿勢となっている。既に触れたように森本前防衛相の発言は米側の考えでもあるはずだから、小野寺新防衛相は例え本人が認識していなくても、結果的には森本前防衛相の詭弁をも受け継ぐことになる。

 地政学的にも軍事的にも沖縄でなくてもいい米海兵隊基地を県外に移転させる困難を伴う政治の判斷を行わずに、地政学的にも軍事的にも沖縄でなくてもいい米海兵隊基地を政治的判斷による「政治的な許容」から沖縄に置き続ける口実の詭弁として生き続けることになるだろうということである。

 政治のゴマ化し、ここに極まれりである。

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