あれだけ問題となった東日本大震災の復興予算の流用が未だ続いていることを次の記事が伝えている。
《復興予算、雇用でも流用 被災地以外に1千億円》(asahi.com/2013年6月3日8時0分)
2011年度の復興予算で2千億円の事業費がついた、臨時や短期間の仕事に就いて貰い、生活を支える目的の厚生労働省担当の「震災等緊急雇用対応事業」。
このうち915億円が東北や関東などの被害が大きかった9県が運営する雇用対策基金に配布、11~12年度に計約6万人が雇用され、その約8割を被災者が占めていて、適正に使用されていたと書いている。
だが、 残る1085億円は被災地以外の38都道府県の基金に配布、朝日新聞による対38都道府県調査で11~12年度の被雇用者数は計約6万5千人にのぼるが、被災者はそのうち3%のみの約2千人。いわば被災者以外が97%の約6万3千人。
記事は、〈「ウミガメの保護観察」や「ご当地アイドルのイベント」など震災と関係のない仕事ばかりで、大切な雇用でも復興予算のずさんな使われ方が続いている。〉と解説しているが、被災地以外での雇用支援となっているのだから、勢い震災と関係のない仕事ばかりとなるのだろう。
事業を計画したものの、全額を被災地での利用で満たすことができず、止むを得ず被災地以外で消化したということは許されないはずだ。官僚は厳格な事業計画の立案、立案した事業計画に対する厳格な予算算出、算出予算の厳格な運用を伴わせた計画事業の厳格な執行を常なる役目としているはずだからだ。
事業計画の立案から事業執行までの一連の流れを厳格に履行できたとき、予算のムダの排除のみならず、官僚の仕事自体のムダも排除できる。有効な予算の利用と有効な役目の執行が可能となる。
だが、それができていなかった。昨年10月に野田政権下で問題が噴出していたにも関わらず、また自民党が国会で厳しく追及していたにも関わらず、依然として流用が続いていたということは官僚が自らの役目を厳格に遂行できていないということであって、この役目の遂行不能は復興予算に限って現れるということはないはずだから、他の予算でも巣食っている遂行不能――官僚による予算のムダな消費とムダな仕事の創出――であり、そうである以上、官僚の悪しき慣習となっていて、その反映として現れている復興予算流用と見なければならない。
但し何よりも問題としなければならないことは官僚に対して監督する立場にある政治が監督できずに是正不能としている官僚の悪しき慣習だということであるはずだ。
政治の側は常にムダの徹底的排除と言いながら、依然としてムダを野放しにしている。
予算のムダは仕事のムダ(労働のムダ)を伴う。前者のみならず、後者も軽視できない。日本のホワイトカラーの労働生産性の低さに貢献している官僚の労働のムダでもあるはずだ。
安倍内閣は年金支給総額の伸び抑制や社会保障費の見直しを言い出しているが、先ず行うことは口にした通りの予算のムダの排除を実現させることだろう。
参考までに。
2012年10月12日ブログ記事――《復興予算流用は復興予算だけのことなのか、一種の錬金術として慣用化していないか - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》