安倍晋三の田中均元外務審議官日朝交渉一部無記録批判は誹謗中傷なのか、事実なのか、明らかにする責任

2013-06-26 08:08:07 | Weblog

 田中均元外務審議官が毎日新聞のインタビューで、安倍内閣は日本の戦争の侵略性や村山談話、河野談話に関する発言で右傾化していると思われ出している、飯島訪朝はスタンドプレーと見られる危険があると批判したのに対して安倍晋三が6月12日の自身のフェエイスブックで2002年当時一時帰国した5人の拉致被害者を安倍晋三が北朝鮮に帰さない判断をしたのに対して田中均元外務審議官が北朝鮮に帰すことを主張したことを批判、さらに田中均元外務審議官が当時の日朝交渉記録の一部を残していなかったとして、全てをひっくるめて「彼に外交を語る資格はありません」と批判し、外交失格者の烙印を押した。

 私自身は田中均元外務審議官の日朝交渉に於ける一部無記録批判は安倍晋三が当時官房副長官として小泉・金正日日朝首脳会談に直接携わった人間が言っていることとして素直に(あるいは単細胞にも?)事実だと受け止めた。

 問題は中身である。記録として絶対的に残しておかなければならない重要な事柄を記録しなかったのか、さして重要でない事柄を記録しておかなかったのか。そのことによって、過ぎたこととは言え、田中均元外務審議官の外交官としての資質は、例えその職を離れているとしても、問われることになる。

 ところが、中身以前に安倍晋三が「そもそも彼は交渉記録を一部残していません」と指摘した事実が事実なのかどうかの問題が浮上した。

 《記録の有無、言及避ける=岸田外相》(時事ドットコム/2013/06/25-11:18)

 6月25日午前の記者会見。

 岸田外相(安倍晋三のフェエイスブックの記載を)官房副長官として当時の経緯を知っている立場で、責任を持って書かれたものだ。

 (事実関係について)公の場でうんぬんすることは国益の観点から適当ではない」――

 「官房副長官として当時の経緯を知っている立場で、責任を持って書かれたものだ」からという理由で以って田中均元外務審議官が交渉記録の一部を残していなかったことは間違いのない事実だとしている。

 彼がそう言うから、事実に決まっていると言うようなものである。

 当然、記録の一部を残していない何らかの事実関係を示して貰わないことには、いくら「責任を持って書かれたもの」だとしても、頭から事実と認めるわけにはない。

 だが、その事実は国益上、公の場では明らかにできないと言っている。

 要するに「官房副長官として当時の経緯を知っている立場で、責任を持って書かれたものだ」とする一事で以って事実と認めよと迫ったことになる。

 相手が安倍晋三でなければ、事実と認めてもいいという気持も働くが、相手が安倍晋三となると、そうは軽々に認めてもいいという気持は働かない。

 外務省のHPにその記者会見が記載されているかどうかアクセスしてみた。載っていたから、関係する箇所だけ引用してみる。

 《岸田外務大臣会見記録》(外務省HP/2013年6月25日(火曜日)10時13分~ 於:本省会見室)    

 山岸朝日新聞記者「安倍総理のフェイスブックに関してお尋ねをいたします。暫く前になりますけれども、安倍総理がフェイスブックの中で、外務省の田中元外務審議官が担当された日朝交渉に関して批判をされまして、その中で田中氏には外交を語る資格ということで厳しく批判をされました。それに関連して、安倍総理は同じフェイスブックの中で、田中氏が当時の外交記録を残していなかったという形で批判をされました。この点に関して、外務省として事実関係をどう把握していらっしゃるのか、田中氏が外交記録を残していなかった事実があるのかないのか、この点をまずお伺いいたします」

 岸田外相「御指摘の田中氏の発言につきましては、報道等を通じて承知しておりますが、安倍総理は当時官房副長官として、当時の経緯を知っている立場であり、総理のフェイスブックのコメントはそうした総理の当時の立場に基づいて、責任を持って書かれたものと考えます。

 ただ、拉致問題につきましては、我が国の主権と国民の生命に関わる重大な問題であり、現在も未解決の案件であります。そして、従来から述べておりますように、総理は自らの内閣でこの問題を解決したいという強い決意を持って取り組んでおります。この拉致問題はまだ未解決の懸案であり、政府として、今、取り組んでいる最中の懸案でありますので、これ以上公の場で本件について云々することは国益の観点から適当ではないと考えます」

 山岸朝日新聞記者「まず、私の聞き方があれだったのかもしれませんけれども、田中さんが外交記録を残していなかったという事実関係はあるのかないのか、その点はいかがなのでしょうか」

 岸田外相「その点も含めて、この問題につきまして、今の時点で公の場で云々することは適当ではないと考えます」――

 拉致問題が現在も未解決の案件であり、現在も取り組んでいる懸案であることと、記録の一部を残しておかなかったと指摘していることの事実関係を明らかにすることとどう関係があるのだろうか。

 また、事実関係を明らかにすることが拉致解決の国益にどう絡んで、その解決をどう困難にしていくと言うのだろうか。

 記録の一部を残しておかなかったことが事実であったとしても、関係者の記憶を総合すれば、残して置かなかった箇所の交渉の概要は後付けの記録で残すことができる。

 残して置かなかったことを事実と前提して言うなら、記録の一部を残して置かなかったと指摘できること自体が、安倍晋三を含めた関係者の記憶があってこその指摘であろう。

 だとするなら、記録の一部を残しておかなかったことが拉致問題の取り組みに取り立てた支障があるとは思えない。残る問題は記録に残して置かなかったと指摘していることが真正な事実かどうかである。

 その事実関係を明らかにすることが国益上、どのような問題があるというのだろうか。

 どうも言っていることに無理がある。

 岸田外相は「これ以上公の場で本件について云々することは国益の観点から適当ではないと考えます」と、「公の場で」という言葉を使っているが、一国の総理大臣が特定多数の第三者に向かってであるなら勿論のことだが、不特定多数の第三者に向かってであっても政治問題・外交問題で発言すれば、そのすべては公の発言となり、発言場所がどこであろうと、「公の場」での発言となる。

 安倍晋三は一国の総理大臣としてフェイスブックという万人が監視可能な「公の場」で外交問題を取り上げて、「記録の一部を残していない」と田中均元外務審議官を批判したのである。

 その発言をまたマスメディアが伝えて、「公の場」での一国の総理大臣の個人批判の発言をより多くの第三者に知らしめることになった。

 あるいは現在安倍晋三のフエイスブックの読者数は350万人以上だそうだが、中には自らのツイッターで安倍発言を拡散する者もいるだろうから、フェイスブックが持つ「公の場」としての役割は決して侮ることはできない。

 当然、批判が不特定大多数の第三者を対象とした総理大臣の「公の場」での公の発言である以上、その正当性は総理大臣としての資質にも関係することになり、拉致問題に支障があるなしに関係なしに問われることになる。

 そしてその正当性は発言したことが事実であるか、事実でないかによってのみ証明される。

 「交渉記録の一部を残していない」が事実であるなら、「公の場」での発言として許される。事実でないなら、謂れのない、事実無根の誹謗中傷となる。

 一国の総理大臣が「公の場」で元外務審議官とは言え、一個人を謂れもなく誹謗中傷することは許されるはずはない。総理大臣としての資質、その人間性に直接関係することになる。

 安倍晋三自身が事実関係を明らかにする責任を負ったことになる。ウソつきでないことを証明するためにも、自ら進んで明らかにすべきだろう。

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