小泉・安倍の2002年10月15日の拉致被害者一時帰国の無効性を国内誘拐で譬える

2013-06-17 09:42:11 | 政治

 安倍晋三が6月12日(2013年)自身のフェイスブックで、田中均元外務審議官の安倍政権右傾化批判、飯島訪朝スタンドプレー紛い批判に対して、一時帰国を果たした拉致被害者5人を北朝鮮に返さずに日本にとどめた自身の判断の正しかったことを主張、田中均が北朝鮮当局との約束通りに北朝鮮に戻すべきだと主張したことを間違っていたとし、「彼に外交を語る資格はありません」と逆批判を行った。

 安倍晋三のこの批判を掴まえて細野民主党幹事長が3日後の6月15日、批判している。

 細野豪志「田中氏は一民間人。表現の自由は尊い。最高権力者が持つ強大な権力を考えたときに、あのような発信は自制すべきだった。 

 かつての自民党には権力の恐ろしさを知っている実力者が数多くいた。歴代首相は厳しい批判に耐えてきた。今は安倍首相の発信をいさめる人すらいそうにない」(時事ドットコム

 問題は日本に一時帰国を果たした5人の拉致被害者を北朝鮮に戻すとか戻さないといった決定よりも、第1回日朝首脳会談で日本に戻す、あるいは日本人に戻すという原状回復という形式を選択せずに、なぜ「一時帰国」という形式を選択したかという小泉・安倍コンビの決定――そもそもの原点に間違っていたのではないかという点にあるはずで、このことは6月14日(2013年)の当ブログ記事――《安倍晋三のお門違いな拉致問題、田中均元外務審議官批判 自身の無能を知れ - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に書いたが、細野にしても肝心な問題点から外れたお門違いなことを批判の論点としている。
 
 この細野の安倍批判に対して安倍晋三が6月16日、問題がどこにあったのかも気づかずに性懲りもなく再批判を行なっている。しかも欧州歴訪中立ち寄っていた最初の訪問国ポーランドからである。《細野氏は「的外れ」 ポーランドから首相反論》MSN産経/2013.6.16 23:24)

 安倍晋三「田中氏は外務省元幹部の肩書でメディアに露出している。一個人との認識は全く的外れだ。

 (細野氏の批判は)私の的確な反論を封じようとの意図でしょう。よくあるパターンの攻撃です。

 細野氏は田中氏の当時の行動を問題視していない。田中氏はあの時の(一時帰国当時の)自身の政治家としての行動に対する自省は全くない。だからダメなんです」(解説文を一部会話体に直す)

 問題視すべきは田中均の「当時の行動」ではなく、常識中の常識である原状回復という外交成果を目的として金正日との首脳会談に臨まなければならなかったはずで、あるいは臨んだはずで、目的とした外交成果を獲得せずに、あるいは獲得できずに「一時帰国」という常識では考えられない外交成果を選択したことを自ら問題視すべきであるはずだが、今以てそのことに気づかずに自身が判断した「一時帰国」を正しい選択だったと自己評価の自己満足に浸っている。

 当然安倍晋三の田中均批判は「的確な反論」でもない。

 国内で生まれたばかりの赤ちゃんが病院から誘拐されるという事件が起きることがある。犯人が赤ん坊を産むことができない母親だったり、あるいは流産して生まれてくる子供を失ってしまったりした若い母親だったりする。

 例えば生まれたばかりの赤ちゃんが病院から誘拐された事件が発生したのに対して警察の必死の捜査にも関わらず犯人を探し出すことができずに迷宮入りしたとする。

 誘拐を共に気にかけてくれていた知人がいて、10年後に赤ちゃんを誘拐された母親にそっくりな子供を見かけた、無事成長していたなら、同じくらいの年齢だと必死の形相で知らせてくれ、警察が学校に依頼して本人には気づかれずに髪の毛を1本採取して貰い、DNA鑑定した。

 母親とDNAが一致して、誘拐された子だと断定。30歳過ぎの夫婦を逮捕。犯行の動機は子どもを当時流産して失ったばかりで、それが三度目の流産で、最早妊娠は望めない身体となってしまったことと判明。

 警察が子どもを一刻も早い対面を望んでいる実の父親と母親の元に戻す原状回復を図ろうとしたのに対して犯人の夫婦が子どもは家族の一員として我々にすっかり馴染んで10年もの間共に平和に暮らして、実の親子よりも親子らしく関係を築いている、子どもを取り上げないでくれと訴え、10歳に成長した子どもも、生まれたばかりの頃に誘拐されていたから、実の親のことなど知らず、誘拐犯の夫婦を親と思い、何不自由なく生活し、家族との生活を自分の人生の一部として喜びを味わい、成長していたから、このまま家にいたい、どこにも行きたくないと言ったら、じゃあ、誘拐犯が刑務所に入っている間、一人では暮らすことはできないから、実の両親のところに一時帰宅しよう、一時帰宅している間に実の両親に馴染むかもしれない、誘拐犯が刑務所から出る際に子どもにどちらを親として選択するか、決めさせようという一時帰宅を選択するだろうか。

 子どもにとっては辛い選択だが、法律上も社会的常識から言っても、実の親のところに戻す原状回復を選択をするはずだ。それも直接実の両親のところに戻すのではなく、保護施設に一時預けて、カウンセラーをつけて、誘拐されたという事実及びその事実を知らずに10年もの間実の親ではない両親の元に過ごしたという事実に対する精神的ショックの緩和と実の親と生活するための心の準備の精神的訓練を行い、精神的に落ち着きを取り戻した所で実の親が時々訪ねていって共に過ごす時間を少しづつ増やしていって、親子共々生活していく一連の訓練を施していくという経緯を取って原状回復を図るのが原則的選択であるはずだ。

 勿論、誘拐された実の親にとっても誘拐された子どもにとっても色々な困難は伴うだろうし、原状回復後も様々に困難は持ち上がるだろうが、原状回復の手はいくらでもある。

 ましてや拉致被害者は北朝鮮当局者がいる前ではロでは心にないことを言ったかもしれないが、実際には日本への帰国を望んでいたはずである。にも関わらず小泉・安倍は拉致被害者の原状回復を外交成果とするのではなく、一時帰国を外交成果とし、そのときから10年後の今になって一時帰国後に北朝鮮に戻さないとした安倍自身の判断を正しかったとし、戻すとした判断を今更ながらに批判する。

 肝心要なことはそういったことではないはずで、そのことに今以て気づかないのだから、どこかが狂っているとしか言い様がない。

 第1回日朝首脳会談という基本の所で外交上、当然の選択肢としなければならなかった肝心要なことを抜かすような外交能力だったからこそ、キッカケは金正日が仕掛けた2002年10月15日の5人の拉致被害者一時帰国から2009年8月まで続いた自民党政権の10年間に5人の拉致被害者とその家族の帰国以上に拉致問題を進展させることをできなくしてしまったに違いない。

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