安倍晋三のしっかりとは頭に入っていない「10年後1人当たり国民総所得150万円増」の成長戦略公約

2013-06-10 08:46:49 | Weblog

 安倍晋三は2013年6月5日昼、東京都内のホテルで開かれた内外情勢調査会全国懇談会で「成長戦略スピーチ第3弾」をテーマに講演。

 そこで「女性の活躍」、「世界で勝つ」、「民間活力の爆発」の成長戦略三本柱を掲げ、「達成すべき指標」(=KPI)を次のように掲げた。

 安倍晋三「3年間で、民間投資70兆円を回復します。

 2020年に、インフラ輸出を、30兆円に拡大します。

 2020年に、外国企業の対日直接投資残高を、2倍の35兆円に拡大します。

 2020年に、農林水産物・食品の輸出額を1兆円にします。

 10年間で、世界大学ランキングトップ100に10校ランクインします」・・・・・

 そしてもう一つ公約を「達成すべき指標」(=KPI)に加えた。
 
 安倍晋三「中でも、最も重要なKPI(達成すべき指標)とは何か。それは、『一人あたりの国民総所得』であると考えています。

 なぜなら、私の成長戦略の目指すところが、意欲のある人たちに仕事をつくり、頑張って働く人たちの手取りを増やすことに、他ならないからです。

 つまりは、『家計が潤う』こと。その一点です。

 ・・・・・・・・・・・・・

 海外経済にも恵まれて、この成長シナリオを実現できれば、一人あたりの国民総所得は、足元の縮小傾向を逆転し、最終的には、年3%を上回る伸びとなります。そして、10年後には、現在の水準から150万円以上増やすことができると考えています」――

 揚げ足を取るようだが、言っていることに少々矛盾がある。

 最初に「中でも、最も重要なKPI(達成すべき指標)とは何か」と言って「一人あたりの国民総所得」を最も重要な達成すべき指標に位置づけた。

 と言うことは、「3年間で、民間投資70兆円を回復」だとか、「2020年に、インフラ輸出を、30兆円に拡大」等々の最初に掲げた達成すべき指標の最上位に置いたことになる。

 いわばそれぞれを別々に取り組むべき指標とした上で一人当たりの国民総所得の10年後現在水準からの150万円増を最上位の指標としたのである。
 
 この時点で既に矛盾を来しているのだが、後になって、「海外経済にも恵まれて、この成長シナリオを実現できれば」と、先に列挙した「3年間で、民間投資70兆円を回復」だとか、「2020年に、インフラ輸出を、30兆円に拡大」だとかの実現を前提とした目標だと、いわば別々に取り組むべき指標の一つではなく、当然のことだが、最初に掲げた指標の結果、果実だと矛盾を軌道修正している。

 尤も、「中でも、最も重要なKPI(達成すべき指標)とは何か」と言って、「一人あたりの国民総所得」を挙げた方が、国民の収入を最重要に考えていると国民に思わせる効果はある。

 その言葉(「中でも、最も重要なKPI(達成すべき指標)とは何か」)を使わずに、最初から「海外経済にも恵まれて、この成長シナリオを実現できれば」と条件付きとしたなら、成長シナリオ自体の成功の印象を不確実視させることになるし、思わせの効果は確実に減る。

 安倍晋三は元々巧みなレトリックで実現能力があるかのように思わせる言葉の遣い方をする。意図しないままに自然と出た思わせ効果といったところなのだろう。

 「国民総所得」とは日本企業や国民が国内で得た所得と国外で得た所得の総額だそうで、当然、国外で得た所得は為替レートの影響を受ける。円安になればなる程、国民総所得は増えることになる。

 例え増えたとしても、一般国民の賃金に反映されなければ、意味を成さないし、逆に円安は輸入物価を高くして、その分相殺されることになるから、可能な限りの賃金への反映が第一義となる。

 企業は国際競争力確保の防衛意識から賃金を抑制する傾向にある。「一人あたりの国民総所得」が増えたとしても、賃金に反映する保証はない。

 いずれにしても、「海外経済にも恵まれて、この成長シナリオを実現できれば」という条件付きを当然としたとしても、そのような条件付きで「一人あたりの国民総所得」を「10年後には、現在の水準から150万円以上増やすことができると考えています」と国民に公約した。

 当然、「一人あたりの国民総所得」の公約は頭の中の重要な場所に置いていたはずだ。預金せずに大金を現金で家に置く場合、そういう身になってみたいものだが、家の中の重要な場所に置くようにである。例え押入れの隅っこに隠したとしても、そこは常に気をかけていなければならない重要な場所となる。

 ところが6月8日(2013年)、安倍晋三は東京都内6箇所で参院選の前哨戦と位置づけている都議選の街頭演説を行い、すべての街頭演説で「一人あたりの国民総所得」とは異なる150万円増を公約として訴えたという。

 《平均年収?総所得?首相「150万増」コロコロ》YOMIURI ONLINE/2013年6月9日13時19分)

 東京都葛飾区内の街頭演説。

 安倍晋三「10年間でみなさんの年収は150万円増えます」――

 要するに海外企業や外国人を含めた日本国内で生産されたものやサービスの合計額である国内総生産(GDP)や、日本企業や国民が国内外で得た所得の総額を示す国民総所得(GNI)の影響は受けるとしても、それらの数値に基づかずに年収そのものが10年間で150万円増えると約束したことになる。

 6箇所の街頭演説で、2箇所で「年収」とし、「平均年収」、「1年間の収入」、「国民の平均の所得」、「皆さんの所得」が各1箇所ずつ、計6箇所とも、「国民総所得」とはイコールで結びつかない年収や所得といった表現で説明したと伝えている。

 頭の中の重要な場所に置いておかなければならない「一人あたりの国民総所得」10年後現在水準から150万円増の公約でありながら、実際はしっかりと頭の中に入れていなかった。

 しっかりと頭の中に入れていないままに「年収」や「平均年収」、あるいは「1年間の収入」、「国民の平均の所得」、「皆さんの所得」等々と名前を変えて、これらがさも10年後に現在水準から150万円も増えるかのように熱意を込めて訴え続けた。

 何という滑稽、無責任・無認識な公約の振り撒きなのだろうか。

 菅無能元首相が民主党が敗れた2010年7月参院選前の街頭演説で、自身が打ち上げた消費税増税の低所得者対策として消費税額分の税還付を言い出し、還付対象の年収を街頭演説の行く先々で、「年収300万円とか350万円以下」、「年収200万円とか300万円」、「年収300万~400万円以下の人」などと言うことを違えた無責任を思い出す。

 どちらに無責任・無認識の軍配を上げるべきかというと、どっこいどっこいの勝負ではないだろうか。

 菅無能はその無責任・無認識ゆえに参院選に敗北した。としたら、安倍晋三も今夏の参院選敗北を同運命としてもよさそうなものだが、国民は騙され続けて参院選勝利を贈呈するかもしれない。 

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