財務省近畿財務局(大阪市)は大阪府豊中市野田町に保有する8770平方メートル・不動産鑑定評価額9億3200万円の国有地を森友学園小学校建設工事の過程で土中廃棄物(家庭ごみや廃材など)が出てきたとの報告を受けて、敷地全体の廃棄量の見積もりを国土交通省大阪航空局(大阪市)に依頼、国土交通省大阪航空局は建設敷地5190平方メートルのうち杭を打つ場所は9.9メートル、その他3.8メートルの深さまでを対象に調査、ゴミ混入率47.1%の1万9500トン、ダンプカー4000台分と推計、その撤去・処理費用を8億1900万円と見積もって、この金額を不動産鑑定評価額9億3200万円から引いた約1億3400万で森友学園に格安で売却した。
果たしてそんなに大量の土中廃棄物(家庭ごみや廃材など)が存在していたのか。存在していたとしても、その撤去・処理費用8億1900万円は過大に過ぎないか、あまりにも安過ぎる売却額ではないか、様々な疑問を与えた。
さらに売却先森友学園のその国有地に建設予定の瑞穂の國記念小學院の名誉校長に安倍晋三夫人安倍昭恵が2015年9月5日以来就任していて、森友学園理事長籠池泰典の天皇主義及び国家主義に基づいた教育観に共鳴する名誉校長就任の挨拶を述べていたこと、さらに当初は当該小学校に「安倍晋三記念小学校」との命名を予定していたが、安倍晋三は「政治家を引退したあとなら兎も角」といった趣旨で辞退していた両者の関係性が国有地売却に絡むことになった。
籠池泰典が小学校に安倍晋三の名前を冠することを希望したのは安倍晋三と籠池泰典二人共が天皇を日本の中心に置く共通の思想を有していた、その共通性からであろう。
当然、格安売却には安倍晋三の口利きがあったのではないのかといった疑惑が湧くことになる。野党は売却側の財務省や国交省に安倍晋三に対する忖度があったのではないかと国会で追及したが、忖度ぐらいでは不動産鑑定評価額の14%相当の8億1900万円の値引きは大き過ぎる。
大体が土中廃棄物の見積り量ゴミ混入率47.1%の1万9500トン、ダンプカー4000台分の設定が不透明に過ぎる。売却側の国の国会答弁をそれぞれ見てみる。
佐藤善信国交省航空局長「本件土地の北側や西側については昭和40年代初頭まで沼や池があり、その後昭和42年から43年にかけて埋め立てがなされ、急速に宅地化が進んでいることが確認されているほか、当時は大幅に規制が強化された昭和45年の廃棄物処理法の施行前であり、廃材等の不法投棄などにより、宅地化の過程、あるいはそれ以前から地下の深い層から浅い層にかけて廃材等を含む相当量のゴミが蓄積することになったと考えております。
以上のことから、地下埋設物の撤去・処理費の見積りに当り、杭掘削個所については9.9メートルまでの深さまで廃材等が存在していると設定して見積りを行うことが合理的であると判断したものであります」
例え不法投棄が頻繁な状況にあったとしても、沼や池の底より下にまで不法投棄物は到達することはない。底から上に積み上がってくるはずだ。
いわば水深を主たる目安とすればいいものを、沼や池の水深がどのくらいあったのかを問題とせず、重機に取り付けた螺旋状になったスパイラルオーガで穴を穿って、そのオーガを引き抜いた際にその先端にゴミが付着していたことを以ってゴミの存在を認めて、杭を打つ個所に関しては2個所のみのボーリング調査と上記不法投棄を加味して9.9メートルの深さにまでゴミが存在していると認定した。
このことに関して国交省航空局長の佐藤善信は次のように国会答弁している。
佐藤善信国交省航空局長「そもそも9.9メートルという深い個所から実際にゴミ等が出ている様子を職員が直接確認するのは困難であるというふうに認識しております。
そう認識しておりますから、工事関係者からヒアリングをであるとか、掘削工事実施中の工事写真であるとか、出来る限りのチェックを行った結果、杭掘削個所に於きましては9.9メートルの深さまで廃材等が混在していると設定して見積もりを行うことが合理的であると判断したわけであります」
2個所のボーリング調査とオーガの先端についていたゴミだけで認定したのみなのだから、おおよその見当をつけたに過ぎない。
しかも国側はゴミの撤去を確認していない。ゴミ量の見積りとその撤去・処分費用の見積りだけを行って、国民の税金にかかってくる問題でありながら、ゴミの見積り量とその量に基づいた撤去・処分の見積り額の妥当性を検証することもなかった。
佐川宣寿財務省理財局長「本件は、まさに不動産鑑定価格から、撤去費用を控除しました時価で売却したものであって、実際に撤去されたかどうかにつきましては、契約上も、確認を行なう必要はなく、詳細については承知しておりません」
麻生太郎「既に売却済みだから、実際に撤去されたかどうか契約上も確認を行う必要はないと考えている」
要するに正しい見立てだったのか、間違った見立てだったのか、後は知りません、森友学園側の問題ですと、金額だけつけて一切を丸投げした。何という無責任さだろうか。
ゴミの見積り量とその撤去・処分費用の見積り額の設定自体が不透明な上にもう一つ不透明な設定が加わっている。
佐藤善信国交省航空局長「お答え申し上げます。本件の見積りというものは、本件土地の売買契約におきまして、隠れた瑕疵も含め一切の瑕疵について売主である国の責任を免除する特約が付されることを勘案して、土地の価値を算定するに当たって想定しておくべき地下埋設物の撤去・処分費用を見積もったものでございます」
この発言は新たなゴミが見つかっても、その撤去・処分費用に関しては国は責任は負わないとする瑕疵担保免責特約を結んでいることを指す。
ただでさえ不透明なゴミの見積り量と見積り金額でありながら、新たに地下埋設物が見つかった場合に森友側の負担を想定したその撤去・処分費用まで見積もった8億1900万円の値引き額だとしている。
この経緯は不透明な上に不透明を築き上げるような二重の不透明さしか見えてこない。
要するに新たにゴミが見つかっても、これ以上の値引きはできません、国に撤去費用を求めても応ずることはできませんと言う代わりに前以て値引き幅を大きくしていたということになる。
国民の財産である。だとしたら、国側が業者に委託して撤去・処分を行い、土地の価値を元に戻してから、不動産鑑定評価額9億3200万円で売価約すべきではなかったかだろうか。
少なくとも不透明なことは起きない。
そうしていたなら、ゴミの実際の量とその処分・撤去の実際の経費が明らかとなる。
不透明な点はまだある。国側が自分たちでゴミ量を見積り、その撤去・処分費用見積りながら、全てのゴミを撤去・処分する義務は森友側にないとしていた。
佐川財務省理財局長(土地の不動産鑑定評価書には、『ゴミをすべて撤去する合理性はない』と記載されている」と質問されたのに対して)「『住宅用であれば合理的でない』とされているが、『学校用ということであれば合理的だ』というのが評価書であり、適切な時価で売却した」
言っていることは住宅用ならゴミは全て撤去しなければならないが、学校用であるなら、すべて撤去しなくても合理的とされているとし、そのことを前提とした適切な時価による売却だと主張している。
要するに国がゴミ撤去・処分費用として見積もった、ただでさえ過大に見える8億1900万円を全部使わなくてもいいとしていたことになる。そしてそれを以って8億1900万円値引きした売却額1億3400万を「適切な時価」だとしている。
森友側丸儲けである。
当然、既に触れたように、「実際に撤去されたかどうかにつきましては、契約上も、確認を行なう必要はない」と言うことになる。
厳密に確認する態度に出たなら、すべて撤去しなくてもいいとしていた合理性を自ら破ることになる。
だとしても、見積もりの妥当性の検証ばかりか、実際の工事の確認まで最初から行わないことを決めていたことになる。
この売却元である国側の売却先である森友学園に対する条件の緩さの理由は何なのだろうか。
森友学園が直接的に働きかけて国側が動いた緩い条件には思えない。この両者を介した中間に何らかの力が働いていなければ、このような緩い条件出てくるとは一般的には考えられない。
2017年3月23日の森友学園籠池泰典に対する参院国会証人喚問(産経ニュース/2017.3.23 11:35)
先ず委員長質問。
山本氏委員長「最後にお聞きします。短くお答えください。小学校の認可申請から国有地の買い受け、校舎建設に至る経緯において、政治的な関与があったのか、なかったのか。それについて簡潔にお答えください」
籠池泰典「はい。国有地の収得につきまして、政治的な関与という内容について、あったのだろうというふうに認識しております。さまざまな、えー、長短があろうと思いますが、その都度その都度の場所で、政治的な関与があったのではないかというふうに思っております」
小池晃共産党議員。
小池晃「安倍昭恵さんは塚本幼稚園で3回目の講演をやっているのが平成27年9月5日です。その2日前に安倍首相は財務省の理財局長に東京で会っています。塚本幼稚園での昭恵夫人の講演テーマは『瑞穂の国記念小学院について』というテーマで講演されていると存じますが、あなたに対して財務省が前向きに動いているという話、ありましたでしょうか、そのときに」
籠池泰典「財務省が前向きに動いていると感じましたのは、生活ゴミが出てきた後が一番著しかったのではないかと思います」
「生活ゴミが出てきた」時期は2016年3月11日であって、森友学園は近畿財務局に対して杭打ち工事を行う過程に於いて新たな地下埋設物が発見されたと連絡している。
小池晃「それは、どういう、具体的にいうと、生活ゴミが出てきて、いわゆる8億円の値引きが行われる過程だと思いますが、どういう点で、どういう動きを見て、財務省が前向きだと思われたか」
籠池泰典「私どもの弁護士が入っておりましたから、その動き方、スピード感が非常に速かったと思います」
安倍晋三が財務省の理財局長に面会したのは2015年9月3日。それから約半年後に財務省は前向きに動き出した。
要するに籠池側が財務省を動かしたのではなく、財務省側から動き始めた。財務省が動くについては何らかのキッカケがなければならない。
2017年3月23日の森友学園籠池泰典に対する衆議院国会証人喚問。
宮本岳志共産党議員「あなたは先ほど、午前中の参議院での答弁でも、このときから財務省が前向きに動いていると。非常に、生活ごみが出てきてから、だあっと前向きに動いているということを感じたというふうにおっしゃいました。
これは、一体どういう力がそこに働いたというふうにお感じになりますか」
籠池泰典「私は、そのときは神風が吹いたかなというふうに思ったということですから、何らかの見えない力が動いたのではないかなと思いました」
ゴミ混入率47.1%で1万9500トン、ダンプカー4000台分の土中廃棄物、いわばゴミが存在していたことについても、その処分・撤去費用を8億1900万円と見積もった金額についても国側は合理的な説明をできていない。
しかも1万9500トン、ダンプカー4000台分と見積もったゴミを全て撤去しなくてもいいとしていた。当然、8億1900万円はあやふやな金額となる。
共産党の辰巳孝太郎が2017年3月24日参院予算委で、2箇所のボーリング調査で取得した土を「産業技術総合研究所」に調査して貰ったところ、地表3メートル以下から杭深度9.9メートルまでの間は人の手が加わっていない天然の堆積層であって、人工的なゴミは存在しないという踏査結果を公表していることも、地表3メートル以下から杭深度9.9メートルまでの間にはゴミが限りなく存在していなかったことの傍証としなければならない。
当然、何らかの政治的な力が働かずして、このような数々の不透明な事態が生じることはない。
もし働いていたなら、安倍晋三クラスの大物政治家の口利きでもなければ、8億円余もの値引きはできないはずだ。