安倍晋三と特区民間議員の獣医学部1校限定は獣医師会要請は安倍晋三の「総理のご意向」隠蔽のための強弁

2017-07-09 12:45:06 | 政治

 安倍晋三の2017年6月24日の《神戸「正論」懇話会》での発言。  

 安倍晋三「獣医学部の新設も半世紀以上守られてきた堅い岩盤に風穴をあけることを優先し、獣医師界からの強い要望をふまえ、まずは1校だけに限定して特区を認めました。
 しかし、こうした中途半端な妥協が、結果として、国民的な疑念を招く一因となりました。改革推進の立場からは、今治市だけに限定する必要はまったくありません。すみやかに全国展開を目指したい。地域に関係なく2校でも3校でも、意欲あるところにはどんどん獣医学部の新設を認めていく。国家戦略特区諮問会議で改革を、さらに進めていきたい、前進させていきたいと思います」――

 要するに「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度」を設定して、特区指定の今治市への加計学園獣医学部新設認可が1校となったのは「獣医師界からの強い要望」だったとしている。

 そしてこの1校限定を「中途半端な妥協」と見做しているが、何を言うか今更、「中途半端な妥協」をしたのは国家戦略特別区域諮問会議であり、最終責任はその議長である安倍晋三自身にある。

 「結果として、国民的な疑念を招く一因」となったことも、安倍晋三自身の責任となる。但し「疑惑」は主として二種類ある。事実を勘繰っただけの疑惑なのか、事実を言い当てている疑惑なのか。

 疑惑が常に前者であるとは限らない。国民の多くが後者の「疑惑」と捉えているから、加計学園問題に関する世論調査で政府の説明は「納得できない」が7、8割を超えることになっているのだろう。

 国家戦略特区諮問会議の民間議員も6月26日夜(2017年)に記者会見を開いて、安倍晋三同様に1校限定は日本獣医師会の要望だと発言している。まあ、連携プレーと言ったところなのだろう。

 民間議員の八田達夫大阪大学名誉教授の発言を2017年6月26日付「NHK NEWS WEB」記事が伝えている。

 八田達夫「(国家戦略特区は)あくまで提案したところはどこでも適用できるような条件でやるというのが元来の趣旨だ。ところが、既得権側がさまざまな条件を付けてきた。

 最後に『1校だけに限る』ということを獣医師会が山本地方創生担当大臣に申し入れ。『これをやらなければ何もできないかもしれない』というふうに判断し、引き受けたというのが状況だ。1か所でできれば、ほかのどこでもできるという原則を曲げたのは、むしろ獣医師会の側ではないか」

 改めて国家戦略特区指定の今治市への加計学園獣医学部新設認可までの経緯を振返ってみる。

 2015年6月4日に今治市と愛媛県は第2次安倍政権が進めたアベノミクスの成長戦略の柱「国家戦略特区」に「国際水準の獣医学教育特区」を提案している。

 この提案は名乗りを上げている候補者が存在していなければできない。候補者とは加計学園で決まったのかだら、加計学園を指すことになる。今治市と愛媛県が2007年から2014年までの計15回も獣医師定員増の地域規制解除を提案していることも証拠として挙げることができる。 

 安倍晋三側は否定するかもしれないが、この提案を受けてのことだろう、2015年6月30日に「獣医師養成系大学・学部の新設検討」を盛り込んだ「日本再興戦略」改定を閣議決定し、2015年12月15日の第18回国家戦略特別区域諮問会議で今治市を国家戦略特区に指定。

 但し「内閣府地方創生推進事務局」のサイトには、〈2016年1月、3次指定として、広島県・愛媛県今治市、千葉市(東京圏の拡大)、北九州市(福岡市に追加)を指定。(合計10区域)〉との記述がある。  

 2015年12月15日の第18回国家戦略特別区域諮問会議では今治市に獣医学部新設を想定した議論が行われている。

 そして2016年11月9日、第25回国家戦略特区諮問会議が「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度を直ちに行う」とする案を提出、その案を決定。

 要するに獣医師系養成大学が存在しない四国に獣医学部新設の可能性を高めたことになる。

 この決定を受けて日本獣医師会は2016年12月8日、安倍晋三や諮問会議民間議員が言っている「1校限定」を内閣府に要請したということになる。

 今治市への2017年1月11日までの獣医学部新設応募受付けに対して加計学園岡山理科大学一校のみが応募。

 2017年1月20日、安倍晋三が加計学園岡山理科大学獣医学部を正式に事業者に認定。

 内心、「してやったり」とばかりにニンマリとしたかどうかは本人以外に窺い知ることはできない。

 そしてこの加計学園1校のみの獣医学部新設認定は日本獣医師会の「1校限定」の要望を踏まえた決定だと安倍晋三も諮問会議民間議員も主張しているということになる。

 ここで分かりきったことを断っておくが、定数1校限定は募集数1校限定では決してないということを踏まえておかなければならない。

 今治市が自らの地域に対する国家戦略特区申請を加計学園の獣医学部新設を前提として行っている経緯と募集数1校限定ではないにも関わらず応募校が加計学園1校のみである経緯は相互関連し合っているはずだ。

 そしてこの相互関連は国家戦略特区指定の今治市への獣医学部新設認可が安倍政権の既定路線となっていることを関係者が知っていなければ可能とならない。

 2014年5月1日に関西圏国家戦略特区として京都市全域が国家戦略特区に指定されている。この指定を受けて「京都府」は2016年11月に実施主体を京都産業大学とした獣医学部設置の認可を担当省庁である内閣府、厚生労働省、農林水産省、文部科学省に対して要請している。     

 そして2016年3月24日の第8回関西圏国家戦略特別区域会議で京都府は同じ内容の要請を行っている。

 京都産業大学が撤退した理由は2016年11月9日、第25回国家戦略特区諮問会議が「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度を直ちに行う」とする案を決定したからだろう。

 隣接県の大阪府にある大阪府立大学が獣医学を持っているために上記条件から外れることになって、どう逆立ちしても京都市に獣医学部を設置することは不可能だからだ。

 いわば少なくとも四国と言う地域に関しては「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とする」制度そのものが既に「1校限定」となっている。

 では、なぜ日本獣医師会は「1校限定」を内閣府に要請することになったのだろう。

 2017年6月27日放送のTBSテレビ「ひるおび!がその要請文の画像を画面に写し出して解説していたのをチラッと見たから、その動画がネットに出回るのを待ってからダウンロードし、手書きで文字起こしした文章を今朝パソコンに取り込んでみた。

 ほぼ画像通りの文字の並びとなっているが、文字の大きさの関係で並びがずれる所は読みやすいように行の長さを変えることにした。



                            28日獣発第230号
                                平成28年12月8日

 
    内閣府特命担当大臣
   (地方創生・行政会改革)
      山本幸三様 


                 公益社団法人 日本獣医師会
                  会長    蔵内 勇夫

                国家戦略特区による獣医学部新設に関する要請

            11月9日に開催された第25回国家戦略特別区諮問会議において、「国
           家戦略特別区における追加の規制改革について」の中で「広域的に獣医師系
           要請大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制
           度の改正を直ちに行う。」ことが決定され、11月18日付けで、「文部科学
           省関係国家戦略特別区域法第26条に規定する政令等規正事業に係る告示の
           特例に関する措置を定める件の一部を改正する件(案)に関する意見募集が
           行われています。

            本会は、このような戦略特区による獣医学部の新設は、文部科学省、獣
           医学部系大学等多くの関係者による半世紀に亘る獣医学教育の国際水準達成
           に向けた努力と教育改革に全く逆行するものとして、適当でないと主張して
           きました。

            しかし、今回、獣医学部教育及び獣医師職域の現状及び将来の在り方につ
           いて十分な検証も行われず、また、本会等関係者が意見を述べる機会もない
           まま、一方的に獣医学部の新設が決定されたことは、極めて遺憾であります。

            つきましては、本件に関し下記のとおりに要請いたしますので、ご高配を賜り
           ますようお願い致します。

                 記

           1 仮に国家戦略特区諮問会議の決定に従い地域が指定され獣医学部の設置
            認可申請があった場合には、国際水準の獣医学教育を提供することは勿論、
           当該獣医学教育施設及び体制が、平成27年6月30日に閣議決定された4条
            件を満たすものとなるよう、内閣府、文部科学省、農林水産省等において
            厳しく審査すること。

           2 今回決定された「広域的に獣医師養成系大学等の存在しない地域」とは、
            1カ所かつ1校のみであることを公的に明記すること。
                                            以上
 

  安倍晋三と諮問会議民間議員が言っている「獣医師会の要請を踏まえた1校限定」は、〈2 今回決定された「広域的に獣医師養成系大学等の存在しない地域」とは、1カ所かつ1校のみであることを公的に明記すること。〉と書いてあるところに当たる。

 だが、この文言はどう読んだとしても、「1校限定」の要請を意味していない。もし「1校限定」の要請だったなら、「1カ所かつ1校のみにすること」という言葉の体裁を取った要請となるはずだ。

 「1カ所かつ1校のみであることを公的に明記すること」という要請は獣医師会側が「1カ所」・「1校」が既定となっていることを既に承知していて、既定以上に増えると獣医師会としても困るから、「1カ所」・「1校」であることの“公的な明記”を求めたという意味を取るはずである。

 いわば「1カ所」・「1校」の言質を求める趣旨の要請である。

 日本獣医師会は国家戦略特区を使った獣医学部新設に向けた今治市や安倍政権の動きに対して多方面に亘る様々な関係者からの情報収集によって「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とする」と制度を改正したこと自体が既に「1校限定」の認可を前提とした改正だと気づいていた。

 だが、例え「1校限定」の認可であったとしても、新設そのものを反対していた獣医師会からしたら、危機感を持たざるを得なかったはずだ。そこで「1校」は容認するとしても、それ以上増えては困るからと、「1カ所」・「1校」であることの“公的な明記”を求める要請を出した。

 このように解釈することによって、日本獣医師会が内閣府の山本幸三に出した「要請」は文章としての整合性を持ち得る。

 「1校限定」を求める要請でもないのに安倍晋三と諮問会議民間議員が共々、「1校限定」は獣医師会の要望を踏まえたものだと強弁するのは加計学園獣医学部新設認可に安倍晋三の「総理のご意向」が働いていたからで、それを隠蔽するために強弁がどうしても必要になったからに他ならない。

 もう一つ「1校限定」の要請ではないことの証拠を挙げることができる。獣医師会が「要請」を出した平成28年12月8日以降の国家戦略特区諮問会議で「要請」を決定するについては議論しなければならないはずだが、この提案を何ら議論していないことである。

 「総理のご意向」という安倍晋三の政治的関与が働いていなければ、何も強弁することはない。


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