九州北部豪雨災害流木20万トン以上:自衛隊その他の途轍もなく非効率・ご苦労な手作業処理

2017-07-24 12:24:04 | 政治
 2017年7月5日から6日にかけて福岡県と大分県を中心として九州北部を襲った豪雨災害は7月18日時点で死者34人・行方不明7人の人的災害のみならず、家屋倒壊や家屋流出、インフラ損壊の大きな被害をもたらし、気象庁によって「平成29年7月九州北部豪雨」と名付けれらた。

 豪雨で流された流木の量は20万トン以上に上ると言う。標準的な50メートルプールで144杯分に相当すると見られると「NHK NEWS WEB」記事が伝えていた。

 10トンダンプで計算すると、2万台。ダンプの荷台に収まりきらない長さの流木もニュースの画面で見かけた。流木は道路に溢れ、川を堰き止め、倒壊した家の周囲に押し寄せ、あちこちで手のつけられない状態で網目状に錯綜し、山を成していた。

 自衛隊員や消防隊員が足場がしっかりとしない流木の山の上に乗って一定の長さにチエンソーで裁断しながら、チエンソー以外は道具を使わずに手で1本1本取り除くと同時に流木の山を全て取り除くために二人一組で丸太状の水を含んで相当に重くなっている流木を1本ずつ胸に抱えるように運び出して行方不明者の捜索を行っていた。

 チエンソーで一人の力で持てる程に流木を短く切ればいいのではないかと考えるかもしれないが、その分切る回数が多くなって、却って時間がかかることになり、切り終わるまでの間、他の隊員が手を遊ばせることになって、余計に非効率になることになるから、画像を載せておいたが、大変でも二人一組で重たい流木を抱えて取り除くことになっていたはずだ。

 テレビのニュースを見ていただけで、満足に捗らないことは目に見えていた。この遣り方だと体力の消耗はひどく、その分、気力を奪う。当然、捜索・救助の効率は悪かったはずだ。効率の悪さは行方不明者捜索の妨げや被害のあった家々の様々な片付けの障害に繋がったに違いない。

 流木の推計量は航空写真に基づいているため土砂に埋まったり、海に流れ出たりした木は含まれていないと言うから、1本残らず処理するには気の遠くなるような時間が必要になるのかもしれない。

 安倍晋三が7月11日午後、関係閣僚会議を首相官邸で開いて、対策と指示行っている。  

 犠牲者に御冥福、御遺族に哀悼の意、被災者・負傷者にお見舞い、そして安否不明者に対する捜索活動に全力を尽くよう要望。避難所の暑さ対策等、被災者のニーズのきめ細かな把握、被災者に寄り添った支援の早急な実施等の約束、更に関係者に対してはそれぞれがリーダーシップを発揮し、時々刻々と変化する情勢に対し先手先手で対策を講じて欲しいと要望。

 そして12日の現地訪問の予定を告げている。

 「私も現地の情勢が許せば明日、福岡県、大分県を訪れ、現場の状況や被災者の方々の生の声に直接触れたいと考えています。この困難な状態を一日でも早く解消するため、被災地の方々に心を寄せて、安倍内閣一丸となって全力を挙げて対策を進めてまいりましょう」

 流木については次のように約束している。

  安倍晋三「捜索活動やライフラインの復旧の支障となっている流木処理や道路等のインフラの復旧を行い、住まいの確保など被災者の皆さんの一日も早い生活再建に向け全力で取り組んでまいります」

 安倍晋三の発言後、主として流木処理対策を議論し、福岡県に政府の流木対策チームを設置したとマスコミが伝えていた。

 重機が入るようになれば、流木は順次片付いていく。一度に何本もの丸太を掴む重機もあれば、丸太を掴むと同時に掴んだ丸太を必要の長さで切り取るチエンソーを備え付けた重機もあるが、台数が少ないのが難点かもしれない。

 問題は自衛隊員や消防隊員による行方不明者捜索時にの流木処理である。錯綜した流木の間や下に行方不明者が閉じ込められている可能性は否定できない。重機で強引に取り除こうとすれば、身体をキズつける危険性は常にある。
                          

 結果的に流木の山から行方不明者の捜索とその処理を同時に行うためには上からチエンソーである程度長めに切った流木を自衛隊員や消防隊員が手で1本1本取り除いていくしか方法がないということになる。

 しかも錯綜した流木の山は非常に足場が悪いから、流木を抱えて慎重に動かなければならないから、時間が余分にかかることにもなる。

 なぜ画像を載せておいた丸太や原木などの移動・運搬・積み上げに使用する鳶口を利用しなったのだろうか。長さ1.5~2メートルの柄は一般的には樫でできていて、金具がついていない反対側の先端は梃子として使い、柄全体は天秤棒の役目を果たす。2人がそれぞれの鳶口で先端の鉄でできた切っ先を流木のどちらか一方の先端に打ち込んで手前に引けば、流木を滑らせる方法で縦に移動させることができるし、同じく2人が横になった流木の左右先端から3分の1ずつの位置に切っ先を打ち込めば、少しぐらい長くて太い丸太でも、上に持ち上げたり、手前方向に移動させることもできる。
     
 流木自体の重量を鳶口の2本の柄の手元のそれぞれの1点に集中させることができるからである。

 鳶口を逆に持って、柄を梃子として利用する場合、2人かそこらで流木を横に転がす方法で移動させることもできるし、縦になった状態でも、1人が尻を梃子にして持ち上げながら押し、頭は切っ先を突き立てた鳶口で引っ張る共同作業によって、簡単に移動できる。

 こういった作業は山となった流木の一番上から山を滑らせる要領で1本1本片付けていく形を取るために流木の間に行方不明者が閉じ込められていたとしても、滅多に押しつぶしてしまうといったことは先ず起こり得ない。

 流木の山から平場に降ろした流木を後処理のために広い場所に纏めておく場合はそこまでの移動に手で抱えて持っていく体力消耗の難儀な仕事とするのではなく、2メートル程度のロープを作業班ごとに10本程度持ち、それぞれを輪にして先端を本結びにし、流木のそれぞれの先端を鳶口を梃子にして持ち上げて輪の中に通し、その輪に鳶口を天秤棒代わりに通せば、4人で担いで体力をそれ程使わずに簡単に短時間で移動させることができる。

 ロープは使わないときは腰にベルト状に巻きつけておけば、他の作業に何も支障は起きない。

 現在でも製材所では鳶口を使っているはずである。例えば丸太が大きな山になっている中からそのとき欲しいと思っている1本を掘り出すためには、フォークリストでその1本のために邪魔になる全ての丸太を移動させると時間がかかるためにホークリストの2本の爪を丸太の山に突き当てて、2人が爪の片方ずつに乗って鳶口で邪魔になる丸太を順番に引き寄せ、フォークリストの爪に乗せていって、乗せきれなくなったら、一旦近くの場所に仮置きして、再び欲しい丸太を掘り起こすことができるまで鳶口で引き寄せるといった作業をすることがある。

 いずれにしても製材所ではフォークリストのない時代は丸太を山にするのも山の中から欲しい丸太を引き出すにも鳶口を利用した。昔、丸太を筏に組んで川を船で引っ張っていくときは柄は長い丸竹でできた鳶口で丸太を集めてロープで結んで筏にし、反対側は筏が川の中央に位置するように保つために川の底に突き立てて竿として利用した。

 鳶口は丸太の長さと太さ全てにかかっている重量に対して力を1点か2点に集中させて、少ない力で転がしたり、縦方向や横方向に滑らせたり、あるいは持ち上げたりする道具である。

 しかも流木の山といった足場の悪いところでも、常識的な運動神経さえ持っていれば、操作できる。行方不明者の捜索といった初期的な流木処理に使わない手はないはずだ。

 政府内や自衛隊内の災害関係者、あるいは地方自治体の災害関係者の誰一人、鳶口の利用に気づかなかったのだろうか。

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