安倍晋三の6月24日(2017年)神戸ポートピアホテルで開催の神戸「正論」懇話会設立記念特別講演会での「発言」
国家戦略特区指定の今治市への加計学園獣医学部新設認可は加計学園理事長が安倍晋三の友人だから認めてくれと言われて認めたわけではないと断った上で次のようにのたまわっている。
安倍晋三獣医学部の新設も半世紀以上守られてきた堅い岩盤に風穴をあけることを優先し、獣医師界からの強い要望をふまえ、まずは1校だけに限定して特区を認めました。
しかし、こうした中途半端な妥協が、結果として、国民的な疑念を招く一因となりました。改革推進の立場からは、今治市だけに限定する必要はまったくありません。すみやかに全国展開を目指したい。地域に関係なく2校でも3校でも、意欲あるところにはどんどん獣医学部の新設を認めていく。国家戦略特区諮問会議で改革を、さらに進めていきたい、前進させていきたいと思います」――
この発言を6月25日(2017年)の当「ブログ」で、獣医学部新設は獣医に関わる各関係者、国家戦略特区の有識者、関係省庁等々の議論・検討を経なければ認可できないことを、それを無視して安倍晋三の一存で決めようとしていることは加計学園獣医学部新設を「総理のご意向」(=安倍晋三の一存)で決めたからこそできることで、安倍晋三の政治的関与を「語るに落ちる」形で認めてしまったといったことを書いた。
「語るに落ちる」とは「問うに落ちず語るに落ちる」の略で、「問い詰められるとなかなか言わないが、勝手に話させると、うっかり秘密をしゃべってしまう」(「コトバンク」)ことを言う。
安倍晋三のこの「語るに落ちる」加計学園獣医学新設認可政治的関与を特命担当相の山本幸三が同じく「語るに落ちる」形で認める発言をしていることを2017年7月5日付「毎日新聞」、《加計問題 獣医増え万歳?「どんどん新設」閣僚も首相援護》記事が間接的に伝えている。
記事は先ず、〈山本氏は7月4日、閣議後記者会見で熱弁をふるった。年間収入5000万円以上の犬猫診療施設が3割を超えているとする日本獣医師会の2015年の調査結果を引き、ペット獣医の収入が高すぎるとした。〉と、ペット獣医への需要の偏りを問題視した姿勢を紹介している。
どう発言したかは画像で示しているのみである。内閣府サイトにアクセスして記者会見の要旨を覗こうとしたが、山本幸三の記者会見発言はなぜか5月30日止まりとなっている。他の内閣府特命担当相(経済財政政策) の石原伸晃の記者会見要旨は7月4日分まで載っているし、原子力防災の特命担当相の山本耕一の場合は6月30日までの記者会見要旨が紹介されている。
山本幸三の場合、6月分の記者会見が全て抜けているということは、加計学園疑惑で突つかれたら不都合な発言があって、それを隠すための可能性が高い。なぜなら、5月以前の全ての月の記者会見要旨は紹介されているからだ。
仕方なく、7月4日閣議後記者会見の発言を画像の文字から起こしてみた。
山本幸三「公務員(獣医)改善すればいいと獣医師会は言うが、皆がペットに行くのは儲けるから。(診療料金高止まりの原因は)獣医師の供給を制限しているから。
供給が増えれば、(診療料金が下がり、公務員給与と)バランスする。収入5000万円以上の(ペット診療)施設は3割を超えている。
経済論理から言えば、こっちが偏っている」
要するに獣医師の供給増を主張することで安倍晋三の「どんどん獣医学部の新設を認めていく」“総理のご意向”を側面援護し、その意向を正当化している。
但し記事は山本幸三の「収入5000万円以上の(ペット診療)施設は3割を超えている」に異議を唱えている。
〈だが、日本獣医師会によると、この「収入」は一般企業の売り上げに当たり、諸経費を差し引いていない。また、厚生労働省の2016年の賃金構造基本統計調査によると、民間で勤務する獣医の平均年収は約569万円。医師(約1240万円)や歯科医師(約857万円)に及ばない。 〉
とは言っても、獣医師の中でも需給関係から言って、ペット獣医師の収入が高いのは事実だろう。但し、《平成26年獣医師の届出状況(獣医師数)》による「獣医師法第22条の届出状況」を見ると、犬猫関係の個人診療施設のうち開設者は8340人、被雇用者は6865人、計15205人となっていて、半数近くが雇用されている獣医師であって、院長に当たる開設者のような収入を得ていないはずだ。
それに開設者は犬猫病院開設の為の初期投資の負担がある。ネットで調べてみると、場所によって大きく違うだろうが、土地を賃貸として、医療機器や薬等の初期在庫、そして医療消耗品、広告費、人件費等の運転資金などで2000万円から3000万円必要とあった。
当然この開店資金は減価償却していかなければならないが、月々の売上の影響を受けることになるから、雇用される獣医師と違って経営者として使わなければならない神経・気苦労も収入に加算しなければならないはずだが、山本幸三はこういった事実は無視した情報捜査を行っている。
記事は獣医関係者2人の発言を伝えている。
西川芳彦獣医コンサルタント「犬猫病院の臨床医は一般に公務員より勤務時間が長い。病院によって差はあるが、院長や経営者を除き、時給に換算すると公務員より低い」
高井伸二北里大獣医学部長「若いペット獣医は安い給料で頑張っている。山本氏の見解は表面的な数字を見ただけの暴言。現場の獣医たちは怒りまくっている」
山本幸三は東京大学経済学部卒の68歳。それだけの常識を弁えていていいはずだが、安倍晋三の「どんどん獣医学部の新設を認めていく」“総理のご意向”を側面援護し、正当化するために諸経費を含めた犬猫病院の総収入をその開設者の収入として、さも高額の収入を得ているかのような情報操作を平気で行った。
もし加計学園獣医学部新設認可が適正な手続きを経て決まった案件であったなら、いわば“総理のご意向”案件でなかったなら、如何なる情報操作も必要はない。
だが、情報操作を必要とした。そのこと自体が安倍晋三の政治的関与を特命担当相の山本幸三が「語るに落ちる」形で認めたことを意味する。
誤魔化しの情報を用いてまでして適正な手続きだったと思わせようとしているからだ。正当性を言い立てるために様々に言葉を用いているが、用いれば用いる程に「語るに落ちる」ことになる。
山本幸三の安倍晋三政治的関与「語るに落ちる」形を取る情報操作はこれだけではない
先ず《獣医事をめぐる情勢》(農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課/平成28年9月)から、獣医師の診療従事別分野と分野毎の人数、割合を見てみる。
○ 獣医師として、約39,100人(平成26年)が免許を保有。
① 産業動物診療:約4,300人(11%) 家畜や家きん(産業動物)の診療に従事。
② 公務員:約9,500人(24%)家畜伝染病の防疫(国内防疫・動物検疫)、家畜改良技術の研究開発、食肉等の安全の確保(食肉検査)、食品衛生監視・指導、狂犬病等の予
防などの行政に従事。
③ 小動物診療:約15,200人(39%) 犬、猫等のペットの診療に従事。
④ その他の分野:約5,600人(14%) 大学の教員、動物用・人体用医薬品の開発、海外技術協力などに従事。
⑤ 獣医師として活動していない者:約4,600人(12%)
確かに犬、猫等の小動物診療は獣医師免許所有者の約4割もの圧倒的多数が占めている。山本幸三は上記記者会見で獣医師数を増やせば、いわば全国に「どんどん獣医学部の新設を認めて」いけば、小動物診療獣医師給与と公務員給与とのバランスが取れて、小動物診療獣医師数が減って、公務員獣医師数が増えるといったことを主張しているが、この発言に情報操作はないか、同PDF記事のグラフを画像にして添付しておいた。
先ず「家畜の飼養頭数」と「家畜の飼養戸数」と「犬・猫の飼養頭数」を見てみる。
「家畜の飼養頭数」は豚も肉用牛も乳用牛も年々減り続け、「家畜の飼養戸数」は肉用牛を飼養する戸数が急激に減っている状況にあり、乳用牛の戸数も減り、減っている豚の戸数が少し持ち直している状況にあるが、要はそれぞれの飼養頭数が関係する。
現在日欧EPA交渉が大筋合意したことが伝えられているが、もし妥結して欧州産の安いチーズが入ってくるようになると、国内の乳用牛がさらに減る可能性は否定できない。
牛や豚が減っている状況の飼育数に応じて獣医師の需要も減ることになる。いわば牛・豚に関して「どんどん獣医学部の新設を認めて」いい状況にはない。
犬は平成20年の1310万頭が平成27年には992万頭、118万頭も減っている。猫に関しては平成20年1089万頭が平成21年、22年と減って、961万頭、それ以降増えたり減ったりを繰返して、平成26年には少し増えたものの、27年には経るという一進一退の状況で987万頭、全体的には頭数をかなり減らしている。
だとしても、平成26年の豚・肉用牛・乳用牛合計頭数1351万頭に対して平成26年の猫・犬の合計は1979万頭と、628万頭も上回っている。この頭数の違いが犬、猫等の小動物診療に獣医師が集まる理由ともなっているはずだ。
この状況の反映なのだろう、PDF記事は、平成26年から平成27年へと小動物診療分野の就職が増えているが、〈獣医大学の卒業生は、10年前に比べ、小動物診療分野で減少傾向が見られる一方、公務員分野及び産業動物診療分野で増加傾向にある。〉と書いている。
確かに賃金の違いや職場の環境、きれいにしていられるとか、汚くなる、汚れる、あるいは将来的保証といったことがどこに勤めるのかの診療分野の決め手ともなるが、こういったことだけではなく、動物の種類に応じたそれぞれの飼育数もそれぞれの需給関係に影響を与えている診療分野別の獣医師の増減傾向ということでもあるはずだ。
こういったことを無視して、小動物診療への獣医師の一極集中だけを根拠に肉用牛、乳用牛、豚、犬、猫が頭数を減らしている趨勢にあることからして、全国的に「どんどん獣医学部の新設を認めて」いいという状況にはないにも関わらず、山本幸三にしても安倍晋三にしても、獣医学部新設をさも無制限に認めるかのように主張することができるのはそこに情報操作を介在させているからに他ならない。
かくまでも情報操作をしてまで加計学園獣医学部新設認可を正当化しなければならないのは、既に指摘したように認可に安倍晋三の政治的関与が働いていたことの現れであって、政治的関与を隠蔽するための「どんどん獣医学部の新設を認めていく」であり、このような情報操作自体が安倍晋三の政治的関与を山本幸三が「語るに落ちる」形で認めたことを何よりも証明することになる。