実業家堀江貴文(ホリエモン)が出演した7月12日生放送NHK番組「ごごナマ」で着用のTシャツの人物デザインがヒトラーその人なのか、ヒトラーに似せた人物なのか、兎に角ヒトラーに似た肖像が描かれていたということでNHKに苦情なのか、問い合わせなのか、来たのだろう、阿部渉アナウンサーが番組の終盤で謝罪したとマスコミが伝えていた。
このことがネット上で物議を醸しているようだ。「謝罪すべきはアナウンサーではなく、堀江貴文本人」だとか、「やばい奴にはモザイクかけておけよ」、「ヨーロッパでこれやったら普通に逮捕だよ」等々の声が飛び交っている。
阿部渉アナウンサーの謝罪のコメントを「東スポWEB」記事が紹介している。
「Tシャツはご本人が持参されたもので、戦争反対を示す『NO WAR』という文字や反戦のマークが入っていました。しかし、ヒトラーを想起させるというご意見をいただきました。不快な思いを抱かれた方にはおわび申し上げます」
要するに第2次世界大戦を引き起こし、人種優越主義からユダヤ人をホロコースト(大量虐殺)に至らしめた悪名高いヒトラーを逆手に取って反戦を訴えるというユーモアを込めたTシャツの人物デザインということになる。
と言うことは「不快な思いを抱かれた方」は「NO WAR」という文字や反戦マークを読み取らなかったか、読み取った上で、それでも第2次世界大戦のヨーロパの戦場で軍人・一般市民合わせて4000万人近くと言われている死者を生み出した戦争開始のキッカケを作ったヒトラーを反戦の道具に使うことに納得がいかなかったか、いずれかになるのだろうか。
先ずホリエモンがどういったTシャツを来ていたのか、ネットで探して、その画像と「ごごナマ」の画像を載せておいた。
次に反戦のマークがどういうものか知らなかったから、「Wikipedia」で調べてみた。正式名は「ピースマーク」
〈「ピースマーク」(英語: Peace symbols)は平和運動や反戦運動のシンボルとして世界中で使われているマーク。円の中に鳥の足跡を逆さまにしたような形をしている。
起源については諸説あり、平和を象徴するハトの足跡のデザインとされることがあるが、事実ではない[1]。イギリスの平和団体の核軍縮キャンペーン(CND)のためにイギリス人アーティストのジェラード・ホルトム(Gerald Holtom) が1958年にNuclear Disarmament(核軍縮)の頭文字「N」と「D」を手旗信号で(「N」の両腕を斜め45°で下ろした形と「D」の右手を真上に左手を真下にした形を合体させ、これを円で囲んで)表したものをデザインしたものである。1960年代後半のアメリカのヒッピー運動やベトナム反戦運動と共に平和・反戦の象徴として世界中に広まった。〉
このページに「ピースマーク」の画像が載せてあったから、ついでにここに載せておいた。ホリエモンのTシャツのヒトラーの左襟の所に確かに「ピースマーク」が付いているが、私みたいに知らなかった者にしたら、気づかなかったかもしれない。
ホリエモンがNHKの謝罪コメントに関して2017年7月12日の日付で自身のツイッターに一文を寄せている。
「しかしNHKの影響力半端ねーな。ヒトラーがピースマークでNO WAR叫んでるTシャツ何回も着てたけど初めて炎上してる笑。どっからどう見ても平和を祈念しているメッセージTシャツにしか見えないだろこれ笑。」
ホリエモンは何回も着ているとして、NHKの番組に出演した日の着用が初めてではないことを伝えているが、NHKの番組に出演するからと数あるTシャツのうち、わざわざヒトラーのTシャツをチョイスして着用に及んだ、いわば確信犯的着用だったかどうかはこの一文からでは読み取ることはできない。
この後、ホリエモンは「頭悪いな」と一言。
この一言が謝罪をコメントしたNHKに対してなのか、「不快な思いを抱かれた方」に対してなのか、あるいは着用に抗議しているネット民に対してなのか、あるいはそのすべてに対してなのかは分からない。
この一言に対してのリツイート「ツイッター見てると堀江さんがヒトラーを肯定していると思って左翼の人達が必死で騒いでるようです(笑)反戦の風刺Tシャツと理解していないんですよ」
ホリエモンは同じ7月12日に「ZOZOで買ったんだけどこのTシャツバカ売れだろうな。。」とツイートしている
調べてみたら、「ファッション通販ZOZOTOWN」と出ている。要するに自作のTシャツでもなければ、オーダーメイドしたTシャツでもないことになる。たまたま気に入って、その1枚を選んだ。
ヒトラーが襟に「ピースマーク」をつけ、「NO WAR」を口にしている、そのギャク的な逆説性に思わずニヤリとなって面白みを感じ、買い求めて着用しているのか、この面白みと元々あった反戦思想のカケラとがマッチしてチョイスしたということなのだろうか、想像するしかない。
但しホリエモンが着用していたTシャツのヒトラーを見ると、デザインされた人物が実際にヒトラーだったとしたら、反戦のヒトラーという構図自体に逆説的な諧謔性を認めることができるが、ユダヤ人に対するガス室等を使ったホロコーストで600万人は虐殺した冷酷なヒトラーにしては悪の鋭さがどこにもない、似ても似つかない顔をしている。似ているのは口髭だけである。
ついでにヒトラーの画像を載せておくが、比較して欲しい。実際のヒトラーは誰をも畏怖させる必要性から内に情け容赦の無さを秘めた、実際にもユダヤ人に対しては情け容赦がなかったのだろう、鋭い眼光を演出させていて、それが当たり前の表情となった、まさに悪人ヅラそのものの顔つきとなっている。
一方Tシャツのヒトラーは悪の鋭さのカケラもないばかりか、悪人ヅラからも程遠く、顔全体がどこかふっくらとしていて、メタボに入りかかったようなオッサン風情をしている。
Tシャツのヒトラーが実際の冷酷さを備えていない別の人物になっていたなら、「NO WAR」の道具立てに利用したとしても、逆説的な諧謔性が薄れるばかりか、思わずニヤリとしながら、反戦を噛みしめる思いも薄れることになるし、自身の反戦の思いをTシャツを使って周囲に知らしめるインパクトも薄れることになる。
それどころか、どこかのオッサンが「NO WAR」を叫んでいるだけなら、Tシャツにする意味をかなり失う。意味を持たせるためにはヒトラーとは似ていなくても、ヒトラーとしなければならない。
但しヒトラーそっくりにデザイすることなど簡単なはずだという疑問が湧いてくる。
にも関わらず、似ても似つかないということは、そこに何か意味を持たせているのだろうか。
今の日本でこの国の進む方向に懸念を示し、「NO WAR」の思いをぶつけたい中心人物は新安保法制を成立させ、日本を監視社会に陥れかねないテロ等準備罪を成立させ、市民権は得ているものの、実際は憲法違反となっている自衛隊の存在の憲法への明記を狙い、日本をして世界的な軍事大国の地位を獲得せしめようと狙っている国家主義者・天皇主義者の安倍晋三を措いて他には存在しない。
いわば安倍晋三の側に立つ以外の日本人が最も「NO WAR」と言わせたい人物は、百万に一つも言うはずはないと理解していながら、それでも微かな望みをかけて安倍晋三であるはずだ。
Tシャツの安倍晋三が「NO WAR」を言い、左襟に「ピースマーク」を付けている。見事なギャク的な逆説性を取ることになる。
だが、Tシャツのデザインにして商売をし、利益を得るとなると、肖像権の問題が生じるし、安倍晋三が許可を出すはずはない。
Tシャツをデザインした人物はこの中間を取ったのではないだろうか。ヒトラーにしたら、今の日本ではさして意味がない。安倍晋三にして「NO WAR」を口にさせたいが、肖像権の問題が生じる。
そこでヒトラーそっくりではなく、安倍晋三そっくりでもない、思いだけはヒトラーに似せた安倍晋三を描いて、結果的にメタボに入りかかったようなオッサン風情になってしまったが、襟に「ピースマーク」、口に「NO WAR」をデザインしたと解釈すると、意味が通ってくる。
根拠はただ一つ。よくよく見ると、安倍晋三混じりのヒトラーになっているように見えることである。
ヒトラーに似せた安倍晋三であることによって逆説的な諧謔性が増すばかりか、安倍晋三の「NO WAR」とは反対の軍事志向――「YES WAR」を浮きた立たせることになって、却って反安倍闘争の力となるように思える。
ホリエモンがここまで穿った見方をしてこのTシャツを買い求めて、着用しているのかどうかは分からない。