安倍晋三の「外国人旅行者呼び込み、地方創生の起爆剤」は勇ましいが、耳に聞こえのいいデタラメ
《首相 外国人旅行者呼び込み地方創生の起爆剤に》(NHK NEWS WEB/2018年8月31日 18時38分)
安倍晋三が8月31日(2018年)、横浜市で開かれた支援者の集会に出席して講演したという。
安倍晋三「私たちは『三本の矢』という新たな経済政策で挑戦し、昨年はGDP=国内総生産が過去最高になった。正規雇用は78万人も増え、倒産
件数も3割減った結果、史上初めて正社員の有効求人倍率が1倍を超え、まっとうな経済を作り出すことができた。
政権交代前に外国人観光客が800万人と頭打ちだったものが、昨年は3倍を超えて2800万人と3.5倍になった。大変大きなチャンスなので、これを地方創生のエンジンにしていきたい」
記事はこの発言を増加傾向にある外国人旅行者をさらに呼び込み、地方創生の起爆剤にしたいという考えだと解説している。
相変わらず勇ましく、耳に聞こえのいい、欠陥が何一つない言い振り――アベノミクスの自慢話となっている。外国人観光客が増加したのは日銀の異次元の金融緩和によって一気に円安に向かって、自国貨幣を日本円にしたときの割安感が日本旅行を惹きつける要因となっているはずで、この円安が産業や生活を動かす石油や鉄鉱石、生活用品等の輸入価格を上げて回り回って中流階級以下の生活者の生活を窮屈にしている、もしくは圧迫している現実には触れない。
外国人旅行者の更なる呼び込みは結構毛だらけ、猫灰だらけ。だが、増加率と並行してそれが地方に程よい均等な割合で分散しなければ、「地方創生の起爆剤」とはならない。このことに気づいていないとしたら、言葉を勇ましく、耳障りよく踊らせているに過ぎない。気づいていながら言っているとしたら、不都合な情報は隠す小狡さを内側に秘めた発言となる。
外国人観光客の訪問地域格差の大きさは以前から言われていた。少子高齢化で過疎化が進み、活気をなくしている地域には、これといった大衆的人気を博している観光スポットを抱えていなことも手伝っている過疎化でもあるのだから、多くの外国人観光客は訪れないためになくした活気を取り戻すキッカケにもならず、ジリ貧状態が続くことになる。
このような現状を無視して、外国人観光客を増やせば、即「地方創生の起爆剤」になるかのように言う。石破茂が総裁選キャッチフレーズに「公平・公正・正直」を掲げたくなるのも無理はない。安倍晋三の人格を反面教師とせざるを得なかったから、掲げることになったはずだ。
外国人観光客の訪問地域格差がどの程度か、日本政府観光局のサイトにアクセスしてみたが、「Internet Explorerは動作を停止しました」と表示されて強制終了となり、閲覧ができなかったため、以下の記事を探し出して調べてみた。統計値は都道府県別の延宿泊数となっているために正確な訪問人数は出てこないが、同じ外国人が2泊も3泊もすれば、その地方の人気度を見ることができると同時に地方創生の要素ともなり得るから、宿泊数の方が却って好都合かもしれない。
記事題名は訪日アメリカ人と付けられているが、訪日アメリカ人の延宿泊者数けではなく、訪日外国人全体の延宿泊者数も出している。「訪日外国人」とあるから、観光客だけではないだろうが、観光客が最も多人数と見て比較してみることにした。
宿泊者数の単位は「人泊」で、調べてみると、「宿泊人数×宿泊数」のことだそうで、市場規模をより正確に把握することができるだそうだ。観光客の宿泊数が多ければ、その地域の人気度の反映でもあるだろうし、その人気は地域の活況の程度と相互対応することになる。
ここでは上位10位までを転載、ついでに全体の宿泊数に対するパーセンテージ(四捨五入)を出しておいた。数字は読みやすいように漢数字単位を混じえた。
「訪日アメリカ人のトレンド調査」(アウンコンサルティング株式会社/2018年04月04日) 都道府県別訪日外国人(全体)宿泊数上位10県(単位人泊) 2016年延宿泊人数 6千406万6730人 東京 1千645万7420人 25% 大阪府 980万40人 15% 北海道 616万5450人 10% 京都府 414万9930人 6% 沖縄県 352万4440人 6% 千葉県 332万6710人 5% 福岡県 250万6790人 4% 愛知県 225万9730人 4% 神奈川 208万1890人 3% 静岡県 141万4890人 2% 10地域合計 5千168万7290人 |
2016年延宿泊人数6千406万6730人から東京の数字を引くと、1千237万9440人となって、全体の81%も占めているだけではなく、東京が独り占めだから、京都以下の10位までが6%台以下の惨憺たる数字となっている。
いわば日本の人口と同じで、外国人観光客にしても東京一極集中となっている。当然、安倍晋三が外国人観光客を更に誘致して「地方創生のエンジンにしていきたい」
といくら体裁のいい勇ましいことを言っても、素直には「地方創生のエンジン」にはならない。単に東京一極集中に手を貸すことになるだろう。
何日か前にブログに書いたが、安倍晋三が政権を獲った2012年総選挙用のマニフェストで「地域コミュニティの再生」を目標に「地方における人口定住」を掲げた。「地方における人口定住」とは東京一極集中阻止の公約である。
2014年年12月27日閣議決定の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」でも、東京一極集中是正策として、「地方への人材還流、地方での人材育成 、地方の雇用対策」を掲げた。
だが、政権を獲ってから5年半以上の年月が経過しているが、東京一極集中の22年間連続更新中の記録を打ち破ることができないでいる。訪日外国人観光客の東京一極集中も打破できなければ、当たりまえのことだが、「地方創生の起爆剤」とはならない。
当然、人口の東京一極集中の打破が先で、その打破がならないままに訪日外国人観光客を増やしても、人口の東京一極集中の状況に外国人観光客の東京集中が続くことになる。
人口の東京一極集中の打破をベースとした「地方における人口定住」、このことと連動した地方創生を成し遂げれば、訪日外国人観光客も自ずと地方に分散することになって、「地方創生の起爆剤」の可能性は出てくる。
地方創生がならないままに訪日外国人観光客を増やすといくら約束しても、観光客だけが増えて、「地方創生の起爆剤」は湿気た点火線に火をつけた爆薬とさして変わらない、期待外れの不発で終わるだろう。
そしてあとに残るのは東京一極集中の加速といった成果のみのはずだ。
こう見てくると、安倍晋三の言っていることは勇ましく、耳に聞こえがいいが、デタラメばかりである。