安倍晋三自衛隊9条明記は国民の改正意思を見ない、自身が狙い通りの憲法改正に持っていく狡猾・巧妙な詐術

2018-09-11 11:42:43 | 政治


【お断り】AM9:15に題名を《安倍晋三の自衛隊明記「自衛隊の皆さんが誇りを持って任務を全うできる環境をつくっていきたい」は憲法改正の狡猾・巧妙な詐術》から変更しました。悪しからず。

 昨日9月10日(2018年)、自民党本部で安倍晋三と石破茂の両総裁選立候補者の共同記者会見が行われた。以下の記事から憲法についての議論のみを拾ってみる。

 「自民党総裁選・共同記者会見詳報」産経ニュース/2018.9.10 14:54)

安倍晋三「自衛隊、これは、存在というのは日本の安全保障の根本でありますから、自衛隊の皆さんが誇りを持って任務を全うできる環境をつくっていきたいと考えております。そのために、それは憲法に日本の平和と独立を守ること、そして『自衛隊』としっかりと明記をしていきたいと思っています」

 石破茂「憲法は緊急性のあるもの、国民の理解を得られるもの、そこから先にやってまいります。自衛隊を違憲だと思っている人は今、1割、『自衛隊、ありがとう』と言ってくれる人は9割。むしろ、やらなきゃいけないのは、国内法的には軍隊じゃないが、国際的には軍隊だとか、必要最小限だから戦力ではないとか、そういうようなことを廃止していかないと、自衛隊の献身に報いることはできない。私は、そう思っています」

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 安倍晋三「憲法改正というのは普通の法律と違うわけでありまして、普通の法律は衆院、参院で過半数を取れば成立します。憲法改正は衆院、参院、それぞれ3分の2の発議によって国民投票に付されるわけであり、本番は国民投票です。

 しかし今、憲法が制定されて以来、1回も国民投票がなされていないわけであります。つまり、国民の皆さんにとって、憲法を自ら権利を行使する場が今までなかったんだろう。賛成にしろ、反対にしろですね。その意味におきましては、まさに国会議員が国民の皆様の本来の権利を行使させないということになっているのであれば、それは無責任のそしりは免れないんだろうと思います。

そもそも、自由民主党は憲法改正、党の基本的な方針として掲げて60年以上経っているわけであります。そこで、スケジュールありきじゃないかという批判もあるのは承知をしているんですが、第一党の自由民主党が一番それは大きな責任を担っているんだろうなと思っています。その自由民主党の私は、総裁、党首として一定の目標を掲げなければいけない。でも、それは一定の目標であり、必ずそれをやらなければいけないという指示ではなくて、一つそういう目標で、みんな頑張ろうよと、こういうことを申し上げているわけであり、党において、しっかりと目標を達成することができるかどうかということについても議論していただければと思っております。

 では、いつの国会なんだ。次の国会は、秋の臨時国会を開催するということはまだ決めておりませんが、秋の臨時国会を与党とも相談して開催するということになれば、秋の臨時国会を目指して議論を進めていただきたい。拙速にやるということを全く言っているわけではございません。

そして条文。4項目の条文につきましては、条文イメージについて(憲法改正)推進本部で決定しました。そして、党大会でそれを示したわけでございます。たしかに、まだ総務会決定にはなっておりませんが、今、自公政権においては、ほとんどの法律についてですね、基本的に、公明党と協議をした後に、両党がそれぞれ最終的に検討するということになっておりますので、なるべく多くの公明党、与党はもちろんでございますが、なるべく多くの党の皆さんに賛成していただきたいということで、自民党でガチガチにしたわけではなくて、いわば条文改正のイメージにとどめているということであり、ぜひ、与党をはじめ多くの皆様のご理解をいただければと、こう思っております」

 石破茂「緊急性の高いものからやりたいと申し上げました。来年の参院選に合区の解消は間に合いませんでした。この合区の解消をやるために、わが党として参院が6年の任期が保証されているということ。そして、高い見識を持っているということ。それを最大限に生かす形で、地域の特性あるいは少数意見、この反映の院として、さらに大きな役割を果たすべきだということでなければ、合区の解消はできないことになっています。これ急がないと、4年先に次の参院選は来るわけです。また定数を増やしましょうみたいなことが国民の理解を得られるとは到底思えない。これはものすごく急ぐと私は思っています。それが第1。

 第2は、これも党で決めたことですが、災害対策基本法にある条文が本当にきちんと機能するかというと、いまだに一度も使われたことがない、緊急事態の布告もね。あるいは物資の統制もね。それは、憲法にそれをきちんと保証する条文がないから。個人的な基本的人権は最大限に尊重するということは徹底した上で、そういうものをやっていかないと、大災害に対応できない。

 じゃあ、9条どうなんだって話ですが、私、ずうっと長いこと国会で答弁に立ってきました。自衛隊違憲じゃないかって議論は一度もなかった。むしろ問われたのは、この船、必要最小限度なんですか。この行動は交戦権に当たるんですか。そういう議論は何度も何度もありました。必要最小限度だから戦力じゃないよとか。国内法的には軍隊じゃないけど国外的には軍隊だよって。そんなこと聞いて誰かわかりますか。なんのことだか分かりますか。私は自衛隊という名称はそのままでいい。国民にこれだけ定着しているんだから。きちんと書かなきゃいけないのは、国の独立を守る組織です。国際法にのっとって行動する組織です。このことをきちんと書くべきなのであって、今、違憲だって自衛隊思う人が1割です。自衛隊に良い印象を持っている人は9割です。

 自衛隊の子供たちが、君のお父さん自衛官なんだってね、誇りを持って胸を張る時代です。必要なことは何なのか、そこに向けて丁寧に、丁寧に、丁寧に説明をしていかなければなりません。理解ないまま、国民投票なんかかけちゃいけません。それが自民党のやるべきことだし、あわせて戦争を全く知らない世代だけで9条を改正していいと私は思わない。戦争の惨禍を経験された方がおられるうちにやりたい。誠実な努力を着実にやっていく上で、初めてそれが俎上に上るのだ、私はそう思います」

 石破茂は「憲法は緊急性のあるもの、国民の理解を得られるもの、そこから先にやっていく」と言い、それは憲法への自衛隊明記ではなく、参院選の合区解消や、これまでも主張してきた、災害対策基本法の機能向上を目的とした大規模災害への対処を規定する緊急事態条項の創設だと主張している。

 対して安倍晋三は自衛隊は「日本の安全保障の根本」だからという理由で憲法9条に「日本の平和と独立を守ること」と自衛隊を明記することで「自衛隊の皆さんが誇りを持って任務を全うできる環境をつくっていく」と言っているが、「日本の安全保障の根本」は政治と経済であり、政治と経済がつくり上げる国力である。確かに軍事に限れば、自衛隊が日本の安全保障の根本だとしても、そのプレゼンスや軍事行使に至る以前の問題として自衛隊と言えども、政治と経済とそれらによって構成される国力にコントロールされる。

 例えば自衛隊という軍事組織のみで政治や経済=国力が貧弱な国家に於いて国家の安全保障をより良くコントロールし得るだろうか。自衛隊という組織そのものの規模も装備にしても、国家の政治や経済=国力に負う。国力の規模に不釣り合いな巨大な軍隊を持った国はその軍隊によって支配されることになるだろう。

 要するに自衛隊を「日本の安全保障の根本」に置く発想自体が自衛隊を過大評価する誤った認識でしかない。その過大評価が自衛隊をして自らの力の過信に向かわせない保証はなく、安倍晋三の認識は自衛隊に対する危険な過大評価となりかねない。憲法に自衛隊を明記し、その役割を「日本の平和と独立を守ること」と規定したとしても、自らの力を過信した場合の軍隊が憲法をも踏みにじり、暴走するに至った弊害を日本の戦前に見てきた

 安倍晋三はまた憲法改正は国会が発議するものの、「本番は国民投票」だと言って、憲法改正の最終決定権は国民にあると当たり前のこと一方で口にしているものの、国民投票に持っていく理由を上記理由以外に「憲法が制定されて以来、1回も国民投票がなされていない」こと、憲法に関して「自ら権利を行使する場が今までなかった」ことを挙げ、これらの機会提供のために「国会議員が国民の皆様の本来の権利を行使させないということになっているのであれば、それは無責任のそしりは免れない」として、国会議員が国民本来の権利行使の機会提供を果たすべきだとトンチンカンな発言を弄している。

 憲法改正を政治家が意思したとしても、その意思を最大公約数(種々の意見の間にみられる共通点)として国民が受け入れるかどうかであり、国民の意思が立法府に反映された上での衆参3分の2の発議でなければ、最大公約数の意思が排除されることになって、国民投票で過半数の賛成を得る可能性は限りなく小さくなる。

 要するに国会議員が憲法に関わる国民本来の権利行使の機会をいくら提供したとしても、大多数の国民が憲法改正を望んでいなければ、議会の勢力に頼んで衆参で発議しても、国民投票で否決される可能性の方が大きい。

 当然、「憲法が制定されて以来、1回も国民投票がなされていない」といったことや憲法に関して「自ら権利を行使する場が今までなかった」こと、あるいは国会議員が国民本来の権利行使の機会提供を果たしてこなかったといったことは憲法改正の理由とはならない。安倍晋三が口にしていることは聞こえのいいことを言って国民を憲法改正の気にさせる体のいい詐術に過ぎない。

 例え政治家が憲法改正の必要性に迫られ、そのことを国民に訴えたとしても、国民がそれに応えるかどうかに憲法改正はかかっているのであり、国民が応えているかどうかを知るには世論に目を向ける以外に方法はない。

 NHKが2018年5月3日の憲法記念日を期して4月13日~15日に行った世論調査を見てみる。

 「今の憲法を改正する必要性」

 「改正する必要があると思う」29%
 「改正する必要はないと思う」27%
 「どちらともいえない」39%

 「9条への自衛隊明記」

 「賛成」31%
 「反対」23%
 「どちらともいえない」40%

 「憲法9条への評価」

 「非常に評価する」28%
 「ある程度評価する」42%
 「あまり評価しない」18%
 「まったく評価しない」7%

「憲法改正の議論を進めるべきか」

「憲法改正の議論を進めるべき」19%
「憲法以外の問題に優先して取り組むべき」68%

「9条への自衛隊明記」に関しては賛成が8ポイント上回っているが、「憲法9条への評価」は「非常に評価する」28%+「ある程度評価する」42%で合計70%で、「あまり評価しない」18%+
「まったく評価しない」7%で合計25%。逆に45ポイントも評価が上回っている。このことは憲法の平和主義への強い拘りしめすもので、「9条への自衛隊明記」に関して「どちらともいえない」
が大多数の40%も占めていることを加味すると、この世論調査に限った場合、自衛隊の9条への明記はそれほど強く望んでいないことがわかる。

このことは次の質問に対する回答に如実に現れている。

「憲法改正の優先順位」

「憲法改正の議論を進めるべき」19%
「憲法以外の問題に優先して取り組むべき」68%

憲法改正の優先順位がかくも低い。要するに安倍晋三の憲法改正9条自衛隊明記の意思だけが先走っている。例え国会の与党勢力を以ってして強行採決という名の実力行使を用いたとしても、
国民投票の段階で否定される確率は決して低くはない。

 この優先度はNHKが2018年8月3日から5日までに行った世論調査でも代わりはない。

「自民党総裁選挙で争点として最も議論してほしい政策」

 「経済・財政政策」27%
 「地方の活性化」20%
 「外交・安全保障」17%
 「防災対策」11%
 「政権運営のあり方」9%
 「憲法改正」6%

 「憲法改正」は最下位の6%である。他の世論調査も大勢は変わらず、いわば世論を見る限り、安倍晋三は国民の憲法改正への意思を見誤っていることと、憲法改正9条自衛隊明記の意思だけが先走っている状況とが浮かんでくる。

 にも関わらず、憲法が制定されて以来、1回も国民投票がなされていない」とか、憲法に関して「自ら権利を行使する場が今までなかった」、あるいは国会議員が国民本来の国民投票の権利行使の機会提供を果たすべきだといったトンチンカンなことを得々と喋っている。

 安倍晋三の自衛隊明記に関わるトンチンカンは他にもある。石破茂が9条改正の緊急性のない理由として「今、違憲だって自衛隊思う人が1割」であり、「自衛隊に良い印象を持っている人は9割」もいることを挙げているが、安倍晋三も2017年5月3日の憲法記念日に日本会議系の改憲集会にビデオメッセージを送り、この「9割」に触れて、その「9割」に対して自衛隊違憲の憲法学者や政党が存在することを理由に憲法への自衛隊明記の必要性を訴えている。

 「日経電子版」(2017/5/3 15:19)

 安倍晋三「例えば、憲法9条です。今日、災害救助を含め、命懸けで24時間、365日、領土、領海、領空、日本人の命を守り抜く、その任務を果たしている自衛隊の姿に対して、国民の信頼は9割を超えています。しかし、多くの憲法学者や政党の中には、自衛隊を違憲とする議論が、今なお存在しています。『自衛隊は違憲かもしれないけれども、何かあれば、命を張って守ってくれ』というのは、あまりにも無責任です。

 私は少なくとも、私たちの世代のうちに自衛隊の存在を憲法上にしっかりと位置づけ、『自衛隊が違憲かもしれない』などの議論が生まれる余地をなくすべきである、と考えます」――

 この発言も国民の憲法9条改正に関わる意思には見向きもしていない。

 以下のことはブログに一度取り上げたが、確かに安倍晋三が言うとおりに自衛隊に対する「国民の信頼は9割を超えている」だろう。だが、安倍晋三のこのビデオメッセージ送付前日の2017年5月2日付の朝日新聞世論調査(リンク切れ)が「国民の信頼9割超」の正体を教えることになる。

◆自衛隊が海外で活動してよいと思うことに、いくつでもマルをつけてください。
 災害にあった国の人を救助する92%
 危険な目にあっている日本人を移送する77%
 国連の平和維持活動に参加する62%
 重要な海上交通路で機雷を除去する39%
 国連職員や他国軍の兵士らが武装勢力に襲われた際、武器を使って助ける18%
 アメリカ軍に武器や燃料などを補給する15%
 アメリカ軍と一緒に前線で戦う4%(以上)

 〈災害にあった国の人を救助する92%〉は自国の災害救助への期待と同様の値と見ることができる。自衛隊の直接的な戦争活動への支持は僅か4%に過ぎない。安倍晋三が言っている「国民の信頼9割超」の正体はその9割の多くが災害救助活動の自衛隊に対する「信頼」であって、戦争する自衛隊に対する「信頼」ではないことが見えてくる。

 要するに日本国民が望んでいる自衛隊像は災害救助活動で活躍する自衛隊であって、戦争する自衛隊ではない。国民の多くがそう意思しているにも関わらず、日本憲法の戦争に関係する9条に自衛隊の明記を狙っている。

 国民がこのことに気づけば、自衛隊明記の世論は反対が多数を占める可能性は大きい。

  憲法に関して国民の多くがこのような憲法改正意思にあるにも関わらず、安倍晋三が「自衛隊の皆さんが誇りを持って任務を全うできる環境をつくっていきたい」などと言っている自衛隊9条明記の御託は国民の改正意思を見ずに自身の狙い通りに憲法改正に持っていこうとする憲法改正の狡猾・巧妙な詐術としかならない。

 
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