安倍晋三は日本製自動車と自動車部品への追加関税を避けるためにトランプに防衛装備品購入の媚を売った

2018-09-29 09:13:02 | 政治


 安倍晋三は2018年は9月26日午後(日本時間27日未明)、米ニューヨークのパレスホテルでトランプと首脳会談を行った。2018年9月27日21時07分発信の「朝日新聞デジタル」が、《トランプ氏「日本はすごい量の防衛装備品を買うことに」》と題して首脳会談後のトランプの記者会見発言を紹介している。

トランプ「安倍首相と会ってきた。我々は日本と貿易交渉を開始している。日本は長年、貿易の議論をしたがらなかったが、今はやる気になった。私が『日
本は我々の思いを受け入れなければならない。巨額の貿易赤字は嫌だ』と言うと、日本は凄い量の防衛装備品を買うことになった」

トランプの発言趣旨からすると、一見、安倍晋三は2017年で689億ドルにも上る巨額な米国の対日貿易赤字を減らすために昨今の日本の安全保障環境に合わせて「凄い量の防衛装備品」の購入で埋め合わせようとしたかに見える。

 この購入に関して官房長官の菅義偉の9月28日閣議後記者会見発言と防衛相の小野寺五典の同じく閣議後記者会見発言を2018年9月28日付「NHK NEWS WEB」記事が伝
えている。

 菅義偉「日米首脳会談で、安倍総理大臣からトランプ大統領に対し、厳しい安全保障環境に対応するため、今後とも米国の防衛装備品を含め、高性能な防衛装備品の導入が、わが国の防衛力強化にとっては重要であるという旨を伝えた。日米間では、引き続いて緊密に協力していくことで一致しているということだ」

 この発言を見ると、安倍晋三の方から引き続いて米国製を含めた防衛装備品の導入を図っていくことを伝えたように見える。首脳会談での議論の一つは米国の対日貿易赤字削減に関する文脈で日米物品貿易協定締結の話が交わされ、日本製自動車に対する追加関税について話し合いが行われたはずである。このような経緯の中、アメリカからの購入に限ったことではない防衛装備品の導入について話をするだろうか。

 小野寺五典「安全保障環境が一層厳しさを増す中、防衛力について、質および量を、必要かつ十分に確保することが不可欠だ。最新鋭の装備品の導入は非常に重要で、引き続き日米間で緊密な協力を行っていく。自衛隊の装備品は、防衛計画の大綱などに基づき、アメリカ製を含めて計画的に取得していて、今後も主体的な判断のもと、防衛力の強化に努めていく」

 小野寺五典は「防衛計画の大綱などに基づいた」主体的な判断のもとの計画的な防衛装備品の導入だと言っている。いわば菅義偉も小野寺五典も、トランプが「巨額の貿易赤字は嫌だ」と言ったら、安倍晋三が「凄い量の防衛装備品の導入」で応じたとしているストーリーを否定していることになる。トランプのフェイクニュース、もしくはハッタリで片付けたことになる。

 もし安倍晋三が「防衛計画の大綱などに基づいた」引き続いての防衛装備品導入の話をトランプに伝えたのだったら、首脳会談後の「内外記者会見」でなぜこの話をしなかったのだろう。だが、一言も触れていない。

 日米首脳会談後の「日米共同声明」外務省)でも、触れていない。

 〈大統領は、相互的な貿易の重要性、また、日本や他の国々との貿易赤字を削減することの重要性を強調した。総理大臣は、自由で公正なルールに基づく貿易の重要性を強調した。〉との記述はあるが、トランプの貿易赤字削減欲求に対して日本の対米投資の実績や将来的投資、さらに米国製の防衛装備品導入計画で米国の対日貿易赤字の相殺の役目を果たしていることを主張、その主張を日米共同声明に盛り込んでもいいはずだが、どこにも見当たらない。

 対米投資額が大きければ大きい程、アメリカ経済に対する波及効果は大きくなり、対日貿易赤字相殺の役目は大きくなる。

 日米共同声明にあるように首脳会談が米国の対日貿易赤字削減が主要なテーマの一つになっていたことは明らかで、そのテーマに添っている安倍晋三の内外記者会見での発言を見てみる。

 安倍晋三「トランプ大統領が就任してからの1年半、日本企業は、アメリカ国内に新たに200億ドルの投資を決定しました。これにより、3万7,000人の新しい雇用が生み出されます。これは、世界のどの国よりも多い。すべては、自由貿易の旗を高く掲げ、両国が経済関係を安定的に発展させ、成熟させてきた帰結であります」――

 対米投資を一つの方法とした日本のアメリカ経済に対する大いなる貢献を訴えることで、そのことを以って米国の対日貿易赤字と差し引きさせて、赤字額だけで日米関係を律することの不足性を間接的に指摘している。

 当然のこと、実際にもトランプとの首脳会談で日本のこういった対米貢献に触れているはずで、触れていなければならなかった。

 だとすると、アメリカ防衛産業の経営維持や雇用維持の経済的波及効果をプラスさせることになるアメリカからの防衛装備品の導入も、米国の対日貿易赤字を相殺する一方法となるのだから、それが実際に「防衛計画の大綱などに基づいた」導入であるなら、内外記者会見でも日米共同声明でも触れていいはずだが、影形も見えない。

 考えられる理由はトランプ自身の記者会見発言がフェイクニュースでもハッタリでもなく、事実そのものだからだろう。

 トランプの発言を再度ここに上げてみる。

トランプ「安倍首相と会ってきた。我々は日本と貿易交渉を開始している。日本は長年、貿易の議論をしたがらなかったが、今はやる気になった。私が『日
本は我々の思いを受け入れなければならない。巨額の貿易赤字は嫌だ』と言うと、日本は凄い量の防衛装備品を買うことになった」

 トランプは「巨額の貿易赤字」削減の方法として、昨日のブログに書いたが、米国の対日貿易赤字の8割弱(2017年対日貿易赤字額は689億ドル=約7.6兆円)を自動車関連が占めている関係から、米国輸入の外国製自動車や自動車部品に25%の追加関税を課す輸入制限を検討課題の一つとしていた。

 対して日本は追加関税は日本の自動車産業に与える打撃が大きいことから、何としてもその回避に務めなければならない状況に立たされていた。昨日のブログではNHK NEWS WEB記事を引用して、〈トヨタ自動車は関税が25%に引き上げられるとアメリカに輸出する車1台当たりの平均で6000ドル、日本円で67万円程度の負担が増えると試算したほか、民間のシンクタンク「大和総研」は関税が20%になると、日本の自動車メーカーなどの追加負担額は、合わせて1兆7000億円余りになると試算するなど、大きな影響が懸念される。〉と書いた。

 安倍晋三が日本製自動車や自動車部品への追加関税を何としても回避するために米国の対日貿易赤字を相殺させる意味合いで「凄い量の防衛装備品」の導入を申し出たとしても、何の矛盾もない。いや、当然過ぎる申し出と見ることができる。

 但しそれが小野寺五典が言うように「防衛計画の大綱などに基づいた」主体的な判断のもとの計画的な防衛装備品の導入ではなかったとしたら、米国の対日貿易赤字の相殺と言うよりも自動車関連への追加関税回避を目的とした単なる交換条件となって、交換条件のための防衛装備品の導入などは恐ろしい謀(はかりごと)となり、一切の正当性を失う。

 だから、安倍晋三は内外記者会見でも日米共同声明でも触れずに情報隠蔽を謀ることになった。

 要するに安倍晋三は日本製自動車と自動車部品への追加関税を避けるためにトランプに防衛装備品購入の媚を売ったのである。

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