安倍晋三は今回の地震を国民の命を守るリーダー像の露出機会と捉え、総裁選にプラスと考えているはずだ

2018-09-09 11:40:40 | 政治
 

 北海道胆振東部地震と命名された地震は2018年9月6日3時頃、日本の北海道胆振(いぶり)地方中東部を震源として発生。震度は7。震源地の胆振では2キロ以上の広範囲に亘って山崩れが発生、胆振総合振興局管内勇払郡厚真町では建物10棟が倒壊、多くが生き埋めとなり、9月8日22時34分発信の「NHK NEWS WEB」記事は、「35人死亡、2人心肺停止、3人安否不明」と伝えていたが、「北海道新聞」ネット記事によると、死者35人のうち厚真町の死者は31人にのぼると、被害が厚真町に集中している状況を伝えている。

「時事ドットコム」の首相動静を見ると、安倍政権は地震発生当日の9月6日、午前7時37分から同47分までの10分間、北海道胆振東部地震に関する関係閣僚会議を開いている。以下の冒頭発言は互選中の会議での発言である。

 「9月6日午前関係閣僚会議」(首相官邸)

安倍晋三「胆振地方中東部を震源とする最大震度6強の地震により、これまでに厚真町において家屋倒壊、土砂崩れの発生が多数確認されているほか、安否不明、建物倒壊、土砂崩
れなどに関する多数の110番、119番通報が寄せられています。

 また、札幌市を始め、北海道の全域で大規模な停電が発生しています。

 政府においては、被害状況の把握を進め、人命第一の方針の下、政府一体となって対応に当たっています。

 現地においては、自衛隊部隊が4,000名態勢で救助活動を既に開始しており、今後2万5,000人にまで増強する予定です。自衛隊、警察、消防、海上保安庁の部隊により、救命・救助活動に全力を尽くしてまいります。

 事態は一刻を争います。閣僚各位にあっては被害情報を迅速に把握するとともに、被災市町村等と緊密に連携して、被災者の救命・救助、住民の避難、ライフラインの復旧に全力で当たってください」――

 たった10分間の会議となると、安倍晋三が国土交通省やその外局である気象庁の地震情報と被害状況を纏めた原稿を読み上げる冒頭の挨拶と関係閣僚が行う短い報告のみで10分の殆どが費やされたはずである。

 このような会議の実態からすると、会議の外では防衛省や警察庁、消防庁等の指示の下、自衛隊や警察、消防が派遣の動きや到着後の現場でそれぞれに救助・救援等の動きを見せていて、その
ような活動の有効性自体が実質的には「人命第一」を担うのだから、このこと比較したら、会議自体はさして重要ではなく、一種の儀式と見ることさえできる。

 だが、安倍晋三が役人作成の原稿に書いてある短い挨拶を冒頭に読み上げる中で、「人命第一の方針の下、政府一体となって対応に当たっています」と発言したことがマス
コミによって取り上げられ、広範囲に報道されたことは一種の儀式であることを隠して国民の命を守るリーダー像を演出することに役立ったはずだ。

 「自衛隊部隊が4,000名態勢で救助活動を既に開始しており、今後2万5,000人にまで増強する予定です」も、国民の命を守るリーダー像を演出する発言となる。

 首相の立場としては「人命第一」は一見、当然のように見えるが、会議自体に一種の儀式としての性格を与えている以上、「人命第一」も、同じ儀式としての色合いを否応のなしに帯びることになる。

 この見方が間違っていないことを後で述べる。
  
 安倍晋三は9月6日午後も午後6時3分から同21分まで18分間、関係閣僚会議を開いている。「平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震に関する関係閣僚会議」(首相官邸)

 安倍晋三「最大震度7の平成30年北海道胆振東部地震により、これまでに9名の方が亡くなられ、厚真町を中心に安否不明者が多数に上っているほか、多数の家屋倒壊や土砂崩れを確認しています。お亡くなりになられた方々にお悔やみを申し上げますとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞いを申し上げます。

 政府においては、自衛隊、警察、消防、海上保安庁の部隊が、道外からの応援を含め、2万1,000人、ヘリ51機、艦船12隻の態勢で、救命・救助活動に全力で取り組んでいます。救助部隊の態勢については、更に機動的に強化してまいります。また、2次災害防止のため、土砂災害の専門チームTEC-FORCEを派遣いたしました。引き続き、被災市町村等との緊密な連携の下、災害応急対策に全力で取り組んでまいります。

 北海道全域で発生していた停電については、水力発電所、火力発電所の再稼働を進めた結果、札幌市の一部など、30万戸への送電を再開しています。本日も夜を徹して作業を進め、明朝までに全体の3分の1に当たる、100万世帯を超える皆さんへの供給再開を目指します。1人でも多くの皆さんに電気をお届けするため、供給が再開したエリアでは節電をお願いします。
 
 他方で、全面復旧にはなお時間を要することから、病院、上下水道、通信基地局などの重要施設向けに、300台以上のタンクローリーにより、非常用電源に必要な燃料供給を行うと共に全国の電力会社から150台の電源車を確保しました。今夜中には35台が現地に入り、重要施設への電力供給に万全を期してまいります。
 
 各位にあっては、被災地の状況把握を進め、人命第一の方針の下、被災者の救命・救助に全力を尽くすとともに、食料や生活物資の確保、ライフラインの復旧にあらゆる手を尽くしてください。
 
 揺れの強かった地域の皆様におかれましては、引き続き、家屋の倒壊や土砂災害のおそれがありますので、今後の地震活動や天候の状況に十分注意し、命を守る行動を取ってください」――

 ここでも「人命第一の方針の下」との発言で「人命第一」を前面に出して訴えると同時に発言全体を「人命第一」の趣旨で成り立たせ、国民の命を守るリーダー像を演出している。

 安倍晋三は引き続いて9月7日も9月8日も、それぞれ午前中と午後にどれも20分程度の同じ関係閣僚会議を開いているが、9月6日以降の会議では「人命第一」という言葉は使っていない。但し発言の内容は「人命第一」の趣旨であることに変わりはない。だとしても、救助・救援等の活動の有効性自体はあくまでも関係省庁や自治体の指示と指示を受けて現場で活動する各実働部隊の動きにかかっている、その重要性を忘れてはならない。

 安倍晋三は9月7日午前中の関係閣僚会議での挨拶では、「今回の地震により、これまでに16人の方が亡くなられ、多数の重軽傷者、家屋倒壊や土砂崩れを確認しています。お亡くなりになられた方々にお悔やみを申し上げますと共に被災された全ての方々にお見舞いを申し上げます」と発言している。だが、この「16人」を官房長官の菅義偉が同日午前の記者会見で訂正している。

 「NHK NEWS WEB」(2018年9月7日 16時45分))

 菅義偉「改めて確認をしたところ、政府においてもこれまで死者と心肺停止者数は分けて発表していたが、今回、事務的に集計する段階で両者をまとめて死者数として計上したものを午前の会見で申し上げた。

 厳密にいえば、死者9人、心肺停止者数7人とすべきだったとの報告を受けている。申し訳ないと思っている」  

 要するに菅義偉に伝えられた「死者16人」を関係閣僚会議でもそのまま使ったということなのだろう。例え心肺停止者が限りなく死者に近い状態にあるとしても、これまでの自然災害や大きな事故等でも死者と心肺停止者を分ける習慣になっていたし、マスコミも政府もその習慣に従って報道するなり、公表するなりしていた。特に医者が死亡を宣告して初めて死者の数に入れることができることから、医者が近くにいない現場で心肺停止の状態で発見された被害者は自然災害や大きな事故等で頻繁に存在することになる多くの例を見てきたはずである。

 にも関わらず、心肺停止者の人数への疑問を持つことなく、「これまでに16人の方が亡くなられた」と伝えられたとおりに機械的に反復する。この機会的な反復は安倍晋三が言う「人命第一」が本心から国民の命を思って使っている言葉ではなく、関係閣僚会議自体の儀式性を反映させた、その色合いからの発言であることの何よりの証拠となる。

 証拠は他にもある。9月7日のブログで取り上げたが、2014年8月20日の豪雨によって広島県広島市北部の安佐北区や安佐南区の住宅地等で発生し、関連死3名を含めて死者77を出した大規模な広島土砂災害時の朝、土石流や土砂崩れによる行方不明者の通報が相次いで寄せられ、既に死者が出ているにも関わらず、安倍晋三は首相官邸に直ちに駆けつけることはせずに「人命第一」を他処に置いて遠く離れた山梨県で2時間もゴルフを楽しみ、221人の死者を出した2018年7月6日の西日本豪雨の前日には気象庁が頻繁に発表している大雨警戒情報から、今年も含めて例年頻発している自然災害を例に万が一の被害規模を想定する危機管理意識を働かせることもできずに同じく「人命第一」を他処に置いて、東京・赤坂の衆院議員宿舎内で「赤坂自民亭」と名付けた懇親会名目の酒席で閣僚を含めた出席議員と酒を酌み交わしていた。

 このような心掛けと精神の持ち主である安倍晋三が現場の活動から見たら一種の儀式でしかない関係閣僚会議で「人命第一」を言う。「人命第一」を聞いて呆れない人間はどれ程いるだろうか。あるいはどれ程に信用できる「人命第一」だと見ることができるだろうか。
 
 いわば心にもない「人命第一」としか見えてこない。

 安倍晋三と石破茂が立候補した自民党総裁選は今回の地震で9月7日告示以降、3日間の選挙戦の自粛を決定した。その間に安倍晋三はマスコミに「人命第一」のキーワードで、あるいは「人命第一」を趣旨とした発言で国民の命を守るリーダー像をマスコミに露出させるに至った。

 このことは総裁選にプラスとなっているはずであるし、安倍晋三自身が狡猾なまでに選挙巧者である点を考えると、当然、今回の地震が総裁選にプラスになっていることを意識しているはずだ。

 元々信用できない類いの「人命第一」であり、その関連性から総裁選にプラスを意識した「人命第一」だと断言しても間違いはないはずである。

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