相変わらずのウソつき名人の安倍晋三となっている。ウソで不都合な事実を巧みに切り抜ける。事の発端からこの件に関わる安倍晋三の発言を3本の「朝日新聞デジタル」から取り上げてみる。
《「安倍応援団から辞表を書いてと」 石破派の斎藤農水相》(朝日新聞デジタル/2018年9月14日23時18分)
2018年9月14日、千葉市中央区の石破氏の講演会で。
斎藤健農水相「ある安倍応援団の1人に『内閣にいるんだろ。(総裁選で)石破(茂元幹事長)さんを応援するんだったら辞表を書いてからやれ』と言われた。『石破派だとわかってて大臣にしたんだろ。だったらなぜ大臣にしたんだ。おれが辞めるんじゃなくて、首を切ってくれ』と、そういう風に言い返した。
そういう空気はよくない。圧力とか、そういうことで何とか浮上しようなんていう発想は、総理の発想だとは思わないが、そういう空気が蔓延(まんえん)している。これは打破したい。何でも自由に言える雰囲気を自民党全体に行き渡らせたい。今それをしなければ、いずれ見放される」
《安倍・石破両氏、テレビで論戦 人事やモリカケ問題語る》
2018年9月17日、安倍晋三と石破茂が日本テレビのニュース番組「news every」に出演、総裁選後の人事や森友・加計学園問題などをテーマに論戦を繰り広げた際、斎藤健の暴露発言も取り上げられた。
石破茂「誤った発言だ。党のためにもならない。本当にそうだったとしたら、決していいことだと思わない」
安倍晋三「戦いですから、(田中角栄、福田赳夫両氏による)角福戦争の頃、おやじの秘書をしていたから分かっているが、こんなもんじゃない。激しい戦いだった。私もいいこととは思っていないが、そういう発言が、今までだんだんヒートアップしてきたら、あったのは事実」
総裁選後の人事で「応援しなかった議員は干す」との声が首相陣営から出ているとの指摘について。
石破茂「ポストは個人のためにあるのではなく、国民、天下国家のため。そういう発言をしているとすれば党のあり方を考え違いしている」
安倍晋三(橋本龍太郎、小泉純一郎両氏の一騎打ちとなり、橋本氏が勝利した1995年の総裁選を振り返り)「我々は小泉さんを応援した。『お前ら、干してやるぞ』と言われたと、みんな言っていたし、そう報道された。でも、誰が誰に言ったか、事実はなかった。
今回も誰が誰に言ったかって(いう報道は)ない。そもそも私、そういう(干すような)ことはしていない」
加計学園問題で安倍晋三のお友達である加計孝太郎理事長の国会招致の必要性を問われことへの発言。
安倍晋三「友人を呼ぶかどうか。『総裁だから(招致を)指示しろ』となるかもしれないが、行政府の長が指示していいのか。国会で決める」
石破茂「加計さんも時間制限を設けることなく、記者会見はきちんとした方が良かった。それが友情」
加計学園問題は斎藤健問題とは別問題だが、ここで少し取り上げておく。安倍晋三は加計孝太郎理事長の国会招致に関して相変らず潔くない。国民の不信を解くために国会招致だろうと何だろうとあらゆる手段を講ずるべきで、そうすることが不信解消の最良の方法となるはずだが、そういった姿勢を一切見せずに「ご批判は真摯に受けとめながら、謙虚に丁寧に政権運営に当たっていきたいと考えています」と言葉だけで済ましているのは安倍晋三が潔い人間に仕上がっていないからに他ならない。
安倍晋三と石破茂は昼は日本テレビのニュース番組午後5時前後の「news every」に出演(時事通信の首相動静によると、午後4時50分から同5時25分まで出演となっている)、夜は朝日テレビの「報道ステーション」に出演。そこでの発言を、《首相、農水相への圧力否定 「名前を言って頂きたい」》(朝日新聞デジタル/2018年9月18日00時53分)から見てみる。
安倍晋三「本当にそういう出来事があったのか、陣営に聞いた。みんな『あるはずはない』と大変怒っていた。そういう人がいるのであれば名前を言って頂きたい」
石破茂「斎藤健さんは、作り話をする人では絶対にない。財務省のセクハラ疑惑に似ているような気がする」
記事は「本当にそういう出来事があったのか」以下の発言を次のような解説で紹介している。
〈首相は夕方の日本テレビの番組で「私もいいこととは思っていない」と語っていたが、夜のテレビ朝日の番組では一変。「本当にそういう出来事があったのか、陣営に聞いた。みんな『あるはずはない』と大変怒っていた。そういう人がいるのであれば名前を言って頂きたい」と斎藤氏の発言を否定した。〉
日本テレビ「news every」での安倍晋三発言を改めてここに取り上げてみる。
安倍晋三「戦いですから、(田中角栄、福田赳夫両氏による)角福戦争の頃、おやじの秘書をしていたから分かっているが、こんなもんじゃない。激しい戦いだった。私もいいこととは思っていないが、そういう発言が、今までだんだんヒートアップしてきたら、あったのは事実」
一見この「そういう発言が、今までだんだんヒートアップしてきたら、あったのは事実」の発言は斎藤健の暴露発言自体を事実と認める発言のように見えるが、そうだとしたら、この発言自体の前後の脈絡が相矛盾するだけではなく、「news every」と「報道ステーション」での発言の豹変そのものが許されないことになる。。
この「そういう発言が、今までだんだんヒートアップしてきたら」の「今まで」は今回の総裁選で次第にヒートアップしてきた現況の推移を指す「今まで」ではなく、安倍晋三の言葉の使い方が悪いだけで、角福戦争と擬えられた当時の総裁選で推移してきた状況を指す「今まで」であるはずだ。
もし現況の推移を指す「今まで」であったなら、斎藤健に対して誰かがそう言った事実そのものを認めることになって、報道ステーションでの否定は一旦認めた事実を四、五時間もしないその日のうちに自ら覆すことになって、態度の軽さ・言葉の軽さが問われることになる。
つまり、「角福戦争の頃ははもっとひどかった。こんなもんじゃない」と、その時代の妨害や不当干渉の程度の悪さを言ってから、「ヒートアップしていくと、そういった妨害や不当干渉があったのは事実だから、現在あっても不思議はない」といった趣旨の一般論を口にしたはずだ。
また、「戦いですから、(田中角栄、福田赳夫両氏による)角福戦争の頃、おやじの秘書をしていたから分かっているが、こんなもんじゃない。激しい戦いだった」との形容のもと、その当時の総裁選で妨害や不当干渉が「あったのは事実」とすることで、斎藤健が言われたとしている「石破を応援するなら辞表を書け」程度の発言そのものを擁護し、正当化していることになる。
例え「そういう発言が、今までだんだんヒートアップしてきたら、あったのは事実」の「今まで」が今回の総裁選のヒートアップの推移を指す言葉であったとしても、「あったのは事実」は、角福戦争の頃のよりひどい状況と比較しているのだから、その程度の発言は仕方がないと、発言そのものを擁護し、正当化していることに変わりはない。
当然、擁護し、正当化している以上、発言の事実だけで承知していたのではなく、誰の発言かも承知していたことになる。前者を承知していたなら、後者を首相の立場として確認するはずだからだ。
「報道ステーション」での発言の存在の否定と、「そういう人がいるのであれば名前を言って頂きたい」が、安倍晋三好みの言葉で言うと、「ファクト」そのものであるなら、「news every」で角福戦争当時の妨害や不当干渉と比較して、その程度ことはたいしたことはないとの趣旨で擁護し、正当化する必要性は出てこない。
また、角福戦争当時は億単位の「実弾(現金)」が飛び交っていたと言われていて、田中角栄が福田赳夫に総裁選で勝利した1972年と今とでは時代が全く違うのだから、角福戦争当時の時代を持ち出すこと自体の時代錯誤感は否めない。
だが、わざわざ持ち出して、比較せざるを得なかった。
要するに斎藤健に対する「石破を応援するなら辞表を書け」の発言そのものと発言の主を擁護し、正当化する必要性から、よりひどい時代の妨害や不当干渉と比較した場合、大したことはないと相対化するために角福戦争に言及し、擁護し、正当化するに至った。
このような言及自体が語るに落ちる形で発言の事実も誰の発言かも承知していたことの証明となる。