安倍晋三の“加計認知今年1月20日”への説明変更のキッカケは前愛媛県知事加戸守行の発言か

2017-08-21 13:06:53 | 政治

 文飾は当方。 

 

 2017年7月24日衆議院予算委員会(加計学園閉会中審査)

 大串博(民進党)「加計理事長は一度も獣医学部をつくりたいということを、申請しているということを安倍総理に言わなかったということを今言われましたけれども、では総理は、この加計理事長、構造改革特区にも十数回、ずっとこの獣医学部新設の申請をされています。あるいは、2年前からは国家戦略特区に移行して申請をされています。

 総理は、加計理事長がこの獣医学部新設に対して、特区において申請をされているというふうに知られたのはいつですか」

 安倍晋三「構造改革特区について加計理事長は申請をしていたわけでございます。安倍政権においても四回申請をされ、民主党政権の最後に申請され、そしてその判断をしたのは、安倍政権であったものを入れると五回でございますが、五回とも我々は事実上認めていないわけでございます。

 そこで、この構造改革特区については説明がございますが、いわば事実上、十数通の申請がございますが、認めていないものでございますので、私はそのときに説明は受けていないものでございます。

 ですから、この加計学園の申請が正式に認められた国家戦略特区諮問会議において、私が知るところに至ったわけでございます」

 大串博「正確にお答えください。いつですか」


 安倍晋三「これは、1月20日に加計学園の申請が正式に決定したわけでございます

 大串博「もう一度お尋ねします。

 加計学園が申請しているということを、ことしの1月に、認められたときに初めて知ったということですか」

 安倍晋三「先ほども申し上げましたように、私は知り得る立場にはあったわけでございますが、しかし、そのことについての具体的な説明は私にはなかったわけでございまして、知った時期については今申し上げたとおりでございます

 玉木雄一郎(民進党)「一番私が驚いたというか納得できないなと思ったのは、総理が加計学園の加計理事長と何度も何度も食事やゴルフをしているという話の中で、ことしの1月20日になるまで申請していたことを知らなかったという話がありました。

 本当かなと思いますが、獣医学部をつくりたいという意思を加計学園が持っていたことは、もうずっとこれは総理も御存じだったと思うんですが、本当にことしの1月20日になるまで、加計学園が、加計理事長が特区で獣医学部をつくりたいという意図を持っていたことも知らなかったということでよろしいですか」

 安倍晋三「それはそのとおりでございます」

 玉木雄一郎「総理、午前中に小野寺議員から、構造改革特区でありますけれども、15回、ずっとこれは構造改革特区で獣医学部の新設を加計学園が求めてきたと。全部これははねられたわけですね、構造改革特区では、民主党政権も含めて。第二次安倍政権になってからも、数え方にもよりますが、15回のうち5回は実は第二次安倍政権ができてから構造改革特区で加計学園が獣医学部の新設を申請してきているんですよ。

 それでも総理、ことしの1月20日になるまで、獣医学部をつくりたいという思いがあること自体も全く知らなかったということでよろしいんですか。もう一度」

 安倍晋三「これは午前中も答弁をさせていただいたところでございますが、構造改革特区につきましては、安倍政権になりまして5回、そのうち1回は野田政権で申請されて安倍政権で結論を出しているわけでございますが、この5回とも認めていないわけでありまして、いわば、数十の構造改革特区があるわけでございまして、多くの特区が認められていないわけでありまして、そのうちの一つでございますので、この件については説明を受けていないということでございます



 2017年7月25日参議院予算委員会(加計学園閉会中審査)

 蓮舫「総理、今年1月20日の諮問会議であなたは加計学園に規制緩和が行われることを初めて知ったと答弁をされました。本当ですか」

 安倍晋三「改めて、今回この閉会中審査が行われるに当たり整理させて説明をさせていただいたところでございますが、この国家戦略諮問会議におきましてもまさに申請しているのは今治市であるわけでございまして、ですから、今治市であるということは私は承知をして、知り得る立場にあり、今治市ということについては知っているわけでございます。

 しかし、加計学園ということについては、これは知り得る立場ではあるということは申し上げてきたわけでございますが、私が、この加計学園ということが決定をした、加計学園、今治市のこの申請が加計学園ということで決定をした1月20日の国家戦略特区諮問会議の直前の説明、事務方による段取りとともに説明をされたときでございます」

      ・・・・・・・・・・

 安倍晋三「今回の閉会中審査に当たりもう一度しっかりと確認をさせていただいたのでここで正確に申し上げますと、まず獣医学部新設の提案者は、構造改革特区でもその後の国家戦略特区でも自治体である今治市であり加計学園ではないわけでありまして、その上で、構造改革特区時代の今治市の提案については十数件、数十件ある案件の一つにすぎず、結果も四度とも提案を事実上認めないものだったので実際には私は全く認識をしていなかったわけでありまして、ただし、その対応方針は私が本部長を務める構造改革特区本部で決定していることから、本件について知り得る立場にあったことをそのような表現で申し上げたわけでございます。

 なお、他の答弁を確認いただければ、構造改革特区本部で対応方針を決定しており、知り得る立場にあったと繰り返し、他の答弁においてはですね、この答弁を申し上げているところでございます」

 安倍晋三は構造改革特区にしても、あるいは国家戦略特区にしても、そのように名付けた規制改革制度を利用した事業提案は特区指定を受けた自治体が行うもので、事業主体が行う仕組みになっていないから、今治市が新設を提案していた獣医学部の事業主体が加計学園であることは知る由もないと答弁している。

 このような関係から、構造改革特区に関して言うと、知り得る立場にあったが、今治市への獣医学部新設が認められなかったことから事業主体が加計学園であることは認識できなかった。

 国家戦略特区に関しては今治市新設の加計学園が事業主体として1月20日の国家戦略特区諮問会議で認められたことから、その日に知ることができたという答弁になる。
 

 2017年5月8日衆議院予算委員会

 宮崎岳志(民進党)「加計孝太郎氏が獣医学部をつくりたがっているということはいつから御存じだったんでしょうか。また、この国家戦略特区の枠組みを使いたがっているということはいつから御存じだったんでしょうか。お答え願えますか」

 安倍晋三獣医学部を新設する主体については、平成19年11月の今治市等による構造改革特区提案において加計学園が候補として記載されていました。

 第2次安倍政権発足後も、内閣総理大臣が本部長である構造改革特区本部においてこの提案に対する政府の対応方針を決定しており、他の多くの案件と同様、本件についても知り得る立場にあったというのは御承知のとおりだろうと思いますが、他方、この加計学園から私に依頼等があったことは一切ないということは申し添えておきたいと思います」

 

 2017年5月9日参議院予算委員会 

 森ゆうこ(自由党)「それで、加計学園についてお聞きをしたいと思います。
 
 国家戦略特区による獣医学部の新設が決定をいたしました。52年ぶりの獣医学部が新設をされることになります。

 総理に伺います。加計孝太郎理事長が今治市で国家戦略特区による獣医学部新設の希望を持っていることを知っていましたか

 安倍晋三この加計学園が、当然これは特区に申請を今治市が出しますから、この特区に申請した段階においてこの説明を受ける、当局から説明を受けるわけでございますので、その段階で当然総理大臣として知り得たと、こういうことでございます

 森ゆうこ「昨年の平成28年8月23日には山本農水大臣と、そして同9月6日には松野文科大臣と、さらには9月7日に加計学園理事長加計孝太郎さんと、そして同行したのは豊田三郎氏、この方は文科省の天下りで大変問題になりました文教協会の専務理事でございますが、一緒に面会をし、そしてこの国家戦略特区についてお話をされたそうでございます。

 総理も、事務方とかほかの大臣から説明を受けるだけではなく、加計孝太郎さんとは腹心の友ということでしょっちゅうお酒を飲んだりゴルフをやったりしているそうですから、直接いろんなお話をされていたんじゃないですか」

 安倍晋三「既に答弁をさせていただいておりますが、獣医学部を新設する主体については、平成19年11月の今治市等による構造改革特区提案において加計学園が候補として記載されていました。

 第二次安倍政権発足後も内閣総理大臣が本部長である構造改革特区本部においてこの提案に対する政府の対応方針を決定しており、他の多くの案件と同様ですね、本件についても知り得る立場にあったわけでございます。

 加計学園から私に依頼があったことは一切ないということは申し添えておきたいと、このように思います」

 宮崎岳志は加計学園理事長の加計孝太郎が国家戦略特区指定の今治市に獣医学部新設を希望していることはいつから知ったのか、森ゆうこは加計孝太郎が獣医学部新設の希望を持っていることを知っていたのかと質問している。

 いわば両者共に加計学園が今治市新設獣医学部の事業主体を希望していることを既定のこととして尋ねている。

 当然、安倍晋三はこの既定に対して肯定、あるいは否定から入らなければならないが、安倍晋三は「獣医学部を新設する主体については、平成19年11月の今治市等による構造改革特区提案において加計学園が候補として記載されていました」と答弁している。

 要するに構造改革特区の規制改革制度を利用した今治市の獣医学部新設提案では加計学園がその事業主体の候補として記載されていたことを承知しているから、国家戦略特区への今治市提案の獣医学部新設の事業主体にしても、少なくとも加計学園であることは承知していたという意味を取ることになって、宮崎岳志と森ゆうこの“既定”を否定せずに肯定したことになる。

 但しどちらに対しても、「この加計学園から私に依頼等があったことは一切ないということは申し添えておきたいと思います」と同じ文言を使って自らの口利きを否定している。

 このような認識に対して2017年7月24日衆議院予算委員会(加計学園閉会中審査)では、獣医学部の事業主体が加計学園だと知ったのは加計学園が事業主体として正式に認定された2017年1月20日だと、答弁が変わった。

 なぜなのだろうか。

 7月24日以前の国会質疑は7月10日に午前中は衆議院、午後は参議院で共に行われた同じく加計学園疑惑に関わる閉会中審査である。そこから安倍晋三が答弁を変えることになったキッカケを探してみた。

 2017年7月10日参議院文教科学委員会・内閣委員会連合審査会

 加戸守行「日本の、少なくとも私が見る限り獣医学部は10年以前と今日まで変化しておりません。アメリカに、あるいはイギリス、ヨーロッパに10遅れていると私は思います。

 今の10年の遅れを取り戻すべき大切な時期だ、そんな思いで今日も参上させていただいたわけでありまして、事柄は、そんな意味での地方再生、東京一極集中ではなくて、地方も頑張るんだ、地方も国際的な拠点になり得るんだよ、そういうもののモデルケースとして愛媛県の今治の夢を託している事業であって、加計ありき、加計ありきと言われますけど、12年前から声を掛けてくれたのは加計学園だけであります。私の方からも東京の有力な私学に声を掛けました、来ていただけませんかと。けんもほろろでした。

 結局、愛媛県にとっては、12年間、加計ありきで参りました。今更、1年、2年の間の加計ありきじゃないんです。それは、愛媛県の思いがこの加計学園の獣医学部に積もっているからでもあります」

 安倍晋三の7月10日以前までのスタンスは「平成19年11月の今治市等による構造改革特区提案において加計学園が候補として記載されていた」ことから、国家戦略特区に於いても事業主体を希望していることは少なくとも承知しているというものであった。

 但し獣医学部新設を議論したどの諮問会議でもワーキンググルークヒアリングでも、新設の獣医学部の事業主体には一言も触れていない。当然、加計学園の名前は一度たりとも出てこない。

 ところが7月24日の衆議院予算委員会になってからは突然、構造改革特区にしても、あるいは国家戦略特区にしても事業提案は特区指定を受けた自治体が行うもので、事業主体が行う仕組みになっていないから、今治市が新設を提案していた獣医学部の事業主体が加計学園であることは知る由もなかった、知ったのは事業主体に正式に認定された2017年1月20日というスタンスに変わった。

 このスタンス変更の理由を前愛媛県知事の加戸守行のいわゆる“12年間加計学園一筋”とした発言にあるのではないかと見たのは不都合が生じるからである。

 加戸守行は現在今治商工会議所特別顧問として2016年3月30日に広島県庁で行われた「広島県・今治市国家戦略特別区域会議」に当時の内閣府特命担当大臣の石破茂、さらに国家戦略特別区域諮問会議のメンバーである有識者議員八田達夫と共に出席して、今治市への獣医学部新設を訴えているからである。      

 この会議の議事録にも「加計学園」という発言は一言も記されていないが、“12年間加計学園一筋”としている加戸守行が出席していながら、加計学園という言葉を一言も発しなかったというのは極めて疑わしい。

 また、2017年7月10日午前中の衆議院閉会中審査では公明党の吉田宣弘が「加戸守行前愛知県知事は教育再生実行会議において、四国の獣医師の不足について、これは三度にわたって訴えておられます」と発言、加戸守行が安倍晋三の私的諮問機関として官邸に設置された教育再生実行会議のメンバーであり、そこで「四国の獣医師の不足について、これは三度にわたって訴えていた」と言うことなら、同じく“12年間加計学園一筋”の加計学園について一言も触れなかったというのは極めて不自然である。

 なぜなら、獣医学部新設は事業主体を想定していなければ、議論は成り立たないからだ。

 但し加戸守行は7月25日の参議院加計学園閉会中審査で加計学園の名前を出さなかったとわざわざ断っている。

 加戸守行「まず冒頭に、参考人としてお呼びいただきましたことを心から感謝申し上げます。
 
私自身が、今御指摘がありましたように、この今治へ獣医学部の誘致に一番先頭を切って旗を振った首謀者でございますだけに、今回こういう形で安倍総理への疑惑あるいは批判というような形で議論が展開されていることを大変悲しく思い、このぬれぎぬを晴らすせめてもの、いささかでも役に立ちたいと思って参上いたしました。

 冒頭に申し上げますが、私は加計理事長が安倍総理との友人であったということは昨年まで全く存じませんでした。そして、今までの間に私は安倍総理を拝見しておりましたけれども、平成13年の2月にえひめ丸事故が起きたときに、当時、安倍首相の下で、官房副長官として危機管理を担当され、国内での調整、アメリカ、在日米軍との関係、あるいは様々な形での総合調整、便宜を計らっていただいた私にとっての大恩人でありますから、それ以来の安倍総理との何十回にわたる様々な会合を通じて加計のカの字も聞いたことはございませんし、私自身も申し上げたことはありません。

 ただ言及したのは、教育再生実行会議の委員になりまして、このデッドロックに乗り上げている状態を側面射撃が、援護射撃ができないかなと思って、場違いではありましたけれどもその場で、愛媛県が獣医の問題でこんなに岩盤規制に面して困っていると、当時、安倍総理の言葉を使いまして、愛媛県の小さなドリルでは穴が空かないから教育再生実行会議のドリルで穴を空けてもらえないかというような発言をいたしました。

 しかし、そのときには、一回目は場所を言いませんでしたが、二回目は愛媛県で用地を準備してという言葉は言いましたけれども、今治という言葉は触れておりません。

 まして加計学園のカの字も出しておりませんから、多分私が発言した趣旨は、そのとき総理がいらっしゃったからこの話は少しは気にしてもらえるかなと思ったんですけど、恐縮ですが、余り関心なさそうにお聞きになっておられまして、それから間もなく提案が下ろされ、また、2回目に発言したときにはまた提案は駄目で全く反応がなかったので、今にして思えば、そんなときの友人だったんだ、だったのか、もし御存じだったら少しは反応が違っていたんだろうななんて今想像しているところであります」

 ネットで調べたところ、教育再生実行会議の議事録を拾うことができなかったが、加戸守行はメンバーであった教育再生実行会議でも獣医学部の新設を訴えていた。

 「私は加計理事長が安倍総理との友人であったということは昨年まで全く存じませんでした」

 えひめ丸「以来の安倍総理との何十回にわたる様々な会合を通じて加計のカの字も聞いたことはございませんし、私自身も申し上げたことはありません」

 但し教育再生実行会議の場で場違いでありながら、獣医学部新設を訴えた。

 このことは“12年間加計学園一筋”の熱い思いからの止むに止まれぬ挙行であったはずだ。

 であるにも関わらず、愛媛県の名前は出したが、今治という名前も加計学園の名前も出していなかった。

 実際に出していなかったなら、出していなかったことをなぜこのように言葉を尽くしてわざわざ断らなければならなかったのだろう。
  
 しかも質問者は自民党の青山繁晴であり、青山繁晴が聞いてもいない教育再生実行会議でのイキサツを自分から答えている。

 この前日の7月24日の加計学園閉会中審査で安倍晋三が獣医学部の事業主体を知ったのは2017年1月20日だと発言したことに合わせて、加戸守行は“12年間加計学園一筋”と公言した手前、名前を出してこそ自然な振舞いを否定して辻褄を合わせる必要が生じたからではないだろうか。

 このような辻褄合わせを加戸守行に迫った事情は、お互いが示し合わせたのかあるいは加戸守行の忖度なのか、いずれにしても安倍晋三が加計学園獣医学部新設に関して加計孝太郎から何も依頼されていない、それゆえに新設認定が口利きでもないことを示すために新設決定に至る全てのプロセスで事業主体が加計学園であることを隠してきたことに対して前愛媛県知事加戸守行が2017年7月10日の参議院閉会中審査で、「結局、愛媛県にとっては、12年間、加計ありきで参りました」と発言してしまったがためにそこから生じる不都合な様々な事実を抹消するためと見るべきだろう。

 大体が事業主体に触れずに獣医学部新設の議論をすること自体が極めて不自然である。事業内容の質は事業主体の経営資金や事業構想によって決まる。今治市という場所に新設を決めればいいという話ではない。

 場所と事業主体をセットで決めなければならない国家戦略特区を使った規制改革案であるはずだ。

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安倍晋三の憲法自衛隊明記は玉城デニーが中谷発言として指摘した“憲法を安保法制に合わせる”ことが狙い

2017-08-19 11:43:20 | 政治

 2017年8月14日のテレビ朝日『橋下×羽鳥の番組』で「自衛隊は違憲か?」と「憲法改正は必要か?」の二つのテーマにもとに安倍晋三が今年5月に表明した憲法9条への自衛隊明記を中心に議論が行われていた。

 3日前の8月17日に同じ番組の 「憲法はアメリカの押しつけ!?」かについて「ブログ」に書いたが、そのとき紹介した出演者と同じく、MCが橋下徹と羽鳥慎一。コメンテーターが自民党総裁特別補佐の柴山昌彦、自由党の玉城デニー、東京大学法学部卒の憲法学者の木村草太(37歳?)、タレント、エッセイストの小島慶子、フリーアナウンサーの新井恵理那、ジャーナリストの堀潤といった面々。    

 自民党は自衛隊を合憲としているが、2015年成立させた安保法制関連法案で集団的自衛権の憲法解釈による行使容認の根拠を安倍晋三始め、当時の中谷元防衛相、高村自民党副総裁等々は「最高裁の判断こそ憲法の番人だから」と砂川事件最高裁判決に置いた。

 だが、砂川最高裁判決が、憲法9条によって〈わが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく〉と認めている「固有の自衛権」とは日米安全保障条約で取り決めた在日駐留米軍に肩代わりさせた日本防衛にかかる「自衛権」を指しているのであって、憲法9条との兼ね合いで日本自身が固有の自衛権を持ち得るとは一言も触れていない。

 砂川最高裁判決(一部抜粋)

 同条(日本国憲法第9条のこと)にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているのであるが、しかしも ちろんこれによりわが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、わが憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではないのである。憲法前文にも明らかなように、われら日本国民は、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようとつとめている国際社会において、名誉ある地位を占めることを願い、全世界の国民と共にひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権 利を有することを確認するのである。

 しからば、わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければな らない。すなわち、われら日本国民は、憲法9条2項により、同条項にいわゆる戦力は保持しないけれども、これによって生ずるわが国の防衛力の不足は、これを憲法前文にいわゆる平和を愛好する諸国民の公正と信義に信頼することによって補ない、もってわれらの安全と生存を保持しようと決意したのである。

 そしてそれは、必ずしも原判決のいうように、国際連合の機関である安全保障理事会等の執る軍事的安全措置等に限定されたものではなく、わが国の平和と安全を維持するための安全保障であれば、その目的を達するにふさわしい方式又は手段である限り、国際情勢の実情に即応して適当と認められるものを選ぶことができることはもとよりであって、憲法9条は、わが国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることを、何ら禁ずるものではないのである。

 〈憲法9条は、わが国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることを、何ら禁ずるものではないのである。〉・・・・・・

 これが憲法9条によって〈わが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく〉の結論である。

 そもそもからして砂川事件とは1957年に基地反対派の学生が基地拡張に抗議して米軍立川基地内に突入、日米安全保障条約に基づく刑事特別法違反で逮捕されたことが発端となって、被告側が日本政府が日本への米軍の駐留を認めているのは9条で武力の不行使、戦力の不保持、交戦権の否認を規定している日本国憲法に違反していると訴えたのに対して原告の国側が日米安全保障条約に基づいた米軍の日本駐留は合憲と主張、そのいずれかを争った裁判であって、集団的自衛権が合憲か否かを争った裁判ではない。

 それ故に上に挙げた判決文も、当然のことだが、裁判の趣旨に添って〈他国に安全保障を求めることを、何ら禁ずるものではない〉と米軍の日本駐留を合憲と判断したのである。

 判決は集団的自衛権について次のように触れている。

 (一部抜粋)

 右(日米)安全保障条約の目的とするところは、その前文によれば、(サンフランシスコ)平和条約の発効時において、わが国固有の自衛権を行使する有効な手段を持たない実状に鑑み、無責任な軍国主義の危険に対処する必要上、平和条約がわが国に主権国として集団的安全保障取極を締結する権利を有することを承認し、さらに、国際連合憲章がすべての国が個別的および集団的自衛の固有の権利を有することを承認しているのに基き、わが国の防衛のための暫定措置として、武力攻撃を阻止するため、わが国はアメリカ合衆国がわが国内およびその附近にその軍隊を配備する権利を許容する等、わが国の安全と防衛を確保するに必要な事項を定めるにあることは明瞭である。

 それ故、右(日米)安全保障条約は、その内容において、主権国としてのわが国の平和と安全、ひいてはわが国存立の基礎に極めて重大な関係を有するものというべきであるが、また、その成立に当っては、時の内閣は憲法の条章に基き、米国と数次に亘る交渉の末、わが国の重大政策として適式に締結し、その後、それが憲法に適合するか否かの討議をも含めて衆参両院において慎重に審議せられた上、適法妥当なものとして国会の承認を経たものであることも公知の事実である。

 この判決の文意にしても日米安全保障が合憲か違憲かの争点に応じて合憲側に添ったもので、決して集団的自衛権を認めている判決とはなっていない。単に〈国際連合憲章がすべての国が個別的および集団的自衛の固有の権利を有することを承認している〉ゆえに、日本が憲法9条の規定によって自衛権の行使が禁止されている暫定措置として日米安全保障条約を取り決め、「個別的および集団的自衛の固有の権利」の肩代わり(いわば日本の防衛)を在日米軍に負うのは何ら憲法に反していないとしているに過ぎない。

 砂川最高裁判決のどこにも個別的自衛権、あるいは集団的自衛権を認めると一言も触れていないが、もし安倍晋三以下が集団的自衛権行使容認を砂川最高裁判決に置くなら、自衛隊の合憲・違憲もこの判決に置かなければならないことになる。

 〈憲法9条の趣旨に即して同条2項の法意を考えてみるに、同条項において戦力の不保持を規定したのは、わが国がいわゆる戦力を保持し、自らその主体となってこれに指揮権、管理権を行使することにより、同条1項において永久に放棄することを定めたいわゆる侵略戦争を引き起こすがごときことのないようにするためであると解するを相当とする。

 従って同条2項がいわゆる自衛のための戦力の保持をも禁じたものであるか否かは別として、同条項がその保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、結局わが国自体の戦力を指し、外国の軍隊は、たとえそれがわが国に駐留するとしても、ここにいう戦力には該当しないと解すべきである。

 日本国憲法9条第2項が〈その保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、結局わが国自体の戦力を指し、外国の軍隊は、たとえそれがわが国に駐留するとしても、ここにいう戦力には該当しないと解すべきである。〉

 ここでも日米安全保障条約に基づいた米軍の日本駐留は憲法に違反しないとう趣旨に添った文意そのものとなっている。

 但し日本国憲法9条第2項が〈その保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、結局わが国自体の戦力を指し〉との文言で自衛隊を9条2項が禁止している戦力に当てている。

 いわば自衛隊違憲説となっている。

 最高裁判決を憲法の番人とする以上、砂川最高裁判決は安倍晋三以下が主張しているのとは反対に集団的自衛権を認めているわけではなく、逆に自衛隊を違憲との主張を全面的に認めなければならない。

 このことを踏まえて『橋下×羽鳥の番組』での自衛隊は合憲か違憲かの議論に絞って、主なところを簡単に拾ってみる。

 橋下徹「国民からすれば、今の僕らの世代からすると、自衛隊は違憲だと思っている人は少ないと思う。ただ正直に言わなければいけないのは、一つは意義があると思うのは自衛隊組織の志気がやっぱり上がりますよ。
 
 政治・行政の世界に於いては自衛隊と言うのは違憲かどうかという話は常に出てきている話で――」

 羽鳥慎一「頑張っている話で、俺は違憲なのかって――」

 橋下徹「そうそう、命を賭けて仕事をしなければいけないときに日本の憲法で、これ疑いの余地があるなんて、飛んでもない話ですよ。だから、統合幕僚長がね、政治的な発言(憲法に自衛隊の根拠規定が明記されるのはありがたいとした発言)だと批判を受けたけども、自衛隊のトップの人が言ったのは素直な気持だと思います。

 こういう意味で(安倍晋三が憲法に自衛隊明記を表明したのは)意義があると思います」

 橋下徹や羽鳥慎一には自衛隊の志気を上げるために合憲を必要とするといった情緒的判断が許されていらしい。憲法は自衛隊員のためにあるのではない。憲法は全国民のためにある。9条に自衛隊を明記するということは国民の判断基準になるということなのだから、情緒的にではなく、厳格に合理性を持たせなければならない。

 当然、合理性を与える議論が求められる。

 橋下徹が「自衛隊は違憲だと思っている人は少ないと思う」と言い、安倍晋三にしても「自衛隊に対する国民の信頼は9割を超えています」と言っているが、その9割の多くは災害救助活動の自衛隊についてであって、戦争する自衛隊に対してではないことは世論調査を見れば一目瞭然である。

 2017年3月《世論調査 日本人と憲法 2017》NHK NEWS WEB/2017年4月29日)

 全国の18歳以上の4800人を対象に電話ではなく、直接会って聞く個人面接方式で実施し、55.1%に当たる2643人の有効回答。

 「憲法改正は必要か」

 「必要」43%
 「必要ない」34%
 「どちらともいえない」17%

 「『戦争の放棄』を定めた憲法9条を改正する必要があると思うか」

 「改正する必要があると思う」25%
 「改正する必要はないと思う」57%
 「どちらともいえない」11%

 回答者の多くが自衛隊や集団的自衛権とは関係しない個所の憲法改正を望んでいる。

 9条に関しての傾向は郵送方式で行い、有効回答2020人となった、「朝日新聞世論調査」(2017年5月2日00時20分)にも現れている。      

 「憲法第9条を変えるほうがよいと思いますか。変えないほうがよいと思いますか」
 変えるほうがよい29%
 変えないほうがよい63%

 前のところで自衛隊に対する信頼の9割の多くは災害救助活動の自衛隊についてであって、戦争する自衛隊に対してではないはずであると書いたが、朝日新聞世論調査の次の回答がこのことを証明している。

 ◆自衛隊が海外で活動してよいと思うことに、いくつでもマルをつけてください。
 災害にあった国の人を救助する92%

 危険な目にあっている日本人を移送する77%

 国連の平和維持活動に参加する62%

 重要な海上交通路で機雷を除去する39%

 国連職員や他国軍の兵士らが武装勢力に襲われた際、武器を使って助ける18%

 アメリカ軍に武器や燃料などを補給する15%

 アメリカ軍と一緒に前線で戦う4%(以上)

 自衛隊の戦争活動への支持は僅か4%に過ぎない。支持は期待と信頼を裏打ちとして成り立つ。

 安倍シンパの「産経新聞社とFNN合同世論調査」を見てみる。     

 「憲法改正について」

 「賛成」52・9%
 「反対」39・5% 

 「賛成52・9%のうち、戦争放棄や戦力不保持を明記した憲法9条改正について」

 「賛成」56・3%
 「反対」38・4%

 この記事には調査方式も回答者数も記載されていない。同じ内容の記事を載せている「政治に関するFNN世論調査」で調べてみた。   

 〈017年4月15日(土)~4月16日(日)に、全国から無作為抽出された満18歳以上の1,000人を対象に、電話による対話形式で行った。〉と書いてある。但し有効回答者数は記載していない。1000人共が有効回答と見て計算してみる。

 憲法改正に賛成は529人。反対は395人。529人の内、9条改正賛成は529✕56・3%≒298人。529人の内、9条改正反対は529人✕38・4%≒203人。

 憲法改正反対39・5%(1000人の内395人)は9条改正反対にそのまま右へ倣えするから、9条改正反対は395人+203人=598人となって、賛成298人よりも300人上回ることになる。

 このように自衛隊に対する9割の信頼の多くは災害活動に対してであり、戦争への役割に対してではないにも関わらず、安倍晋三は9割の多くを戦争する自衛隊への信頼だと道理を捻じ曲げて憲法9条に自衛隊を明文化しようとしている。

 自民党側は自衛隊が合憲か違憲かを合理的な判断に基づいて結論づけてはいない。

 国民の多くは自衛隊の人命救助を含めた災害活動に頼り、信頼を置いている。このような活動組織の存在を違憲と判断することは難しいはずだ。橋下徹たちと同様に情緒的な判断を迫られる。

 橋下徹を含めたこういった傾向は自衛隊合憲の合理的な根拠を示し得ていないからであろう。番組でもタレント、エッセイストの小島慶子が9条に3項を設けて自衛隊を明記したとしても、9条1項、2項が規定している武力の不行使、戦力の不保持、交戦権の否認と矛盾することになり、その矛盾を解消するために今度は1項・2項を変えようとどんどん拡大していくのではないかと懸念を示していたが、安倍晋三の狙いを以前「ブログ」に「着地点」という言葉を使って書いたように自衛隊を憲法に明記することで完璧に合憲の存在とした上で、後は1項2項は手を付けずに成立させた安保法制を駆使して自衛隊海外派兵にしても集団的自衛権行使にしても可能としていくことにあり、1項・2項を削る改憲は国民の世論がそのような改憲に反対している都合上、考えていまい。  

 要するに自衛隊が合憲か違憲かを合理的な判断に基づいて結論づけることは避けて、国民が自衛隊を違憲と決めつけにくい状況を利用していきなり憲法に自衛隊の根拠規定を明記することで合憲へと持っていって、誰もが違憲と言えない環境を作り出しておいて、後は安保法制でやっていこうという魂胆なのだろう。

 このことに関係する政府側の考え方を自由党の玉城デニーが指摘している。

 玉城デニー「安保法制の国会での議論のときに重大な意見と言うか、見逃してはならない政府答弁っていう、そういうのがあったんですよ。中谷防衛大臣が、当時、この法律は憲法違反ではないかと言われたときに、『憲法をこの法律に合わせる』ということを発言したんですね。

 憲法をこの法律に合わせるということは間違いなく法律違反です。憲法で認められている法律しか成立しないですから。そういう考えをどんどん進めて、今みたいに解釈が先に立って、法律の解釈だけ先に成立させて、じゃあ憲法にどう書くかというのは法律擁護になるのか、憲法擁護になるのか、法律論になると思うんですよね」

 柴山昌彦「そこはですね、余りに平和法制のときの議論を蒸し返して、時間はなくなって――」

 玉城デニー「いや、問題じゃないですか」

  柴山昌彦は無視して、自身の発言を進める。

 2015年6月5日平和安全法制特別委員会での中谷元の発言を議事録から取り上げてみる。

 中谷元「やはり政府としては、国民の命とそして平和な暮らしを守っていくために、憲法上安全保障法制はどうあるべきか、これは非常に国の安全にとって大事なことでございますので、与党でこういった観点で御議論をいただき、そして現在の憲法を如何にこの法案に適用させていけばいいのかという議論を踏まえまして閣議決定を行ったわけでございますので、多くの識者の御意見を聞きながら真剣に検討して決定をしたということでございます」

 質問者は民進党の辻元清美だったが、中谷発言の重要性に気づかずに他の質問をしている。

 中谷発言は先に触れた安倍晋三の狙いそのものを現している。

 憲法に自衛隊を明記して合憲化することで憲法学者の誰にも違憲だと言わせないようにして、玉城デニーが言ったようにいわば“憲法を安保法制に合わせる”遣り方で憲法9条の1項・2項を他処にしたまま集団的自衛権の行使を含めた自衛隊の国内外の活動を拡大していく。

 繰返しになるが、後者を可能とする手始めが前者――自衛隊の憲法明記だということである。

 相手部隊の規模に応じた可変性を持たせた、それゆえに最大限に化けることもあり得る「必要最小限の武力行使」を国民納得の大義名分にして自衛隊の活動ばかりか、軍備も拡大していく。

 一つの狙いを成功させることで、頭の中にある次なる狙いも実現させていく。情緒的な議論に任せて自衛隊は違憲か合憲かを言い合っている場合ではない。  

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安倍晋三アベノミクスの機能不全を児童虐待対応件数過去最多が鏡のように映し出している

2017-08-18 08:52:35 | 政治

 18歳未満の子どもを対象とした虐待通報の児童相談所対応件数が昨年度は一昨年度比+1万9292件の12万2578件に上り、過去最多となったと各マスコミが8月17日(2017年)付で報道した。

 この数字は厚生労働省が8月17日に都内で開いた全国の児童相談所の所長会議で公表したものだそうだ。

 厚労省のサイトに「児童虐待の定義」が載っている  

 「身体的虐待」 殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束する など
 「性的虐待」 子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にする など
 「ネグレクト」 家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない など
 「心理的虐待」 言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるう(ドメスティック・バイオレンス:DV)、きょうだいに虐待行為を行う等。

 「NHK NEWS WEB」/2017年8月17日 13時34分)から具体的な内容を見てみる。
  
 虐待の種類別 ()内は2015年度比

 「心理的虐待」6万3187件(+1万4487)
 「身体的虐待」3万1927件(+3306)
 「ネグレクト」2万5842件(+1398)
 「性的虐待」1622件(+101)

 都道府県別

 大阪1万7743件(+1162)
 東京1万2494件(+2585)
 神奈川1万2194件(+599)
 埼玉が1万1614件(+3335)

 記事は、〈都市部で多くなっています。〉と伝えている。

 対応件数が増加した理由として警察庁が昨年4月に全国の警察に対して事実関係が明らかでなくても虐待が疑われる事案は児童相談所に確実に通告するよう求める通知を出したこと、この通知によって夫婦間で起きる家庭内暴力を警察が把握した際、子どもに暴力行為を見せる「心理的虐待」ととらえて児童相談所に通告するケースが大幅に増えたこと、近所の人が虐待行為を直接目撃していなくても、頻繁に激しい泣き声が聞こえるといった理由で児童相談所に通告するケースが増えたことを挙げている。

 要するに警察にしても世間にしても、児童虐待への関心を高めて、罪悪視するようになった。これはストーカーに対する見方と同じ経緯を辿っている。

 精神的に余裕のないことがちょっとしたことでイライラを生み出し、そのイライラを発散するぶつけどころがなく、抑えることができなくなると、身体的・暴力的に支配しやすい子どもにぶつけて、発散することになる。

 最初は誰もが後悔するようだが、イライラが連続すると、それに負けて再び子どもを発散対象とし、そのことを抑えることができなくなって常習化するようだ。

 そして精神的余裕を奪う原因として貧困(経済的困窮)や夫婦間の不和、家庭内や会社内での孤立等挙げられると言う。

 しかしこれらに共通している問題点は経済的な余裕のなさ――経済的困窮であろう。

 児童虐待対応件数が都市部に集中しているのは都市部程、格差が大きいことの反映ではないだろうか。いわば貧困家庭が集中している。

 貧困は断るまでもないことだが、例えば夫婦間の不和は経済的に余裕があれば、離婚という最終手段で対応できるし、離婚までいかなくても、家庭生活の不毛な時間を家庭外の生活を習い事やジム通い、その他で充実させることで代償させれば、限りなくイライラを抑えることができる。

 中には夫婦それぞれが密かに外でパートナーを見つけて、それぞれのパートナーと過ごす時間をこそ、自身の人生だと実感することもできるだろう。

 家庭内の孤立や会社内の孤立にしても、カネが十分にあれば、自身の居場所を別に探すことで孤立からの脱出を図ることができて、イライラの根を断つことも可能となる。

 カネこそが自由を手に入れる元手となる。日々のイライラを無縁とする強力な武器となる。

 児童相談所の虐待通報対応件数がそのまま虐待数に一致するとは限らないが、虐待の実数が増加していることは事実であろう。あるいは警察庁の昨年4月の全国警察への通知や児童虐待への関心の高まりと罪悪視する意識の高まりによる個人の通報が対応件数を増加させる原因となっていたとしても、虐待が年々増加しているという事実に関しては変わりはないはずだ。

 いわば経済的困窮家庭が年々増加している傾向を映し出していることになる。

 この傾向は景気の好循環を機会とした景気回復、いわば国民の生活向上を盛んに謳ったアベノミクス政策に反する状況を示していることになる。

 安倍晋三は6月19日(2017年)に193回国会終了を受けて行った記者会見で次のように述べている。

 文飾は当方。

 安倍晋三「現在、有効求人倍率はバブル時代をも上回る極めて高い水準にあります。この春、高校や大学を卒業した皆さんの98%が無事就職を果たし、社会人人生をスタートさせました。これは調査開始以来最も高い水準であります。

雇用を増やし、所得を増やす。経済の好循環を更に力強く回転させていくため、これからも安倍内閣は経済最優先で取り組んでまいります。

    ・・・・・・・・・・・・・・

 子供たちこそ我が国の未来であります。この通常国会は、正に未来を拓く国会となりました。どんなに貧しい家庭に育っても、希望すれば高校にも、専修学校、大学にも進学できる。子供たちの誰もが夢に向かって頑張ることができる日本でなければなりません。

 そして、若者も、お年寄りも、女性も、男性も、障害や難病のある方も、一度失敗を経験した人も、誰もが生きがいを感じ、その能力を思う存分発揮することができる一億総活躍の日本をつくり上げていかなければなりません。

 その本丸は、あらゆる人にチャンスをつくることであります。

 家庭の経済事情にかかわらず、高等教育を全ての子供たちに真に開かれたものにしていく。リカレント教育を抜本的に拡充し、生涯にわたって学び直しと新しいチャレンジの機会を確保する。これらに応えるため、当然、大学の在り方も変わらなければなりません。

  人づくりこそ次なる時代を切り拓く原動力であります。

 これまでの画一的な発想にとらわれない「人づくり革命」を断行し、日本を誰にでもチャンスがあふれる国へと変えていく。

 そのエンジンとなる有識者会議をこの夏、立ち上げます。いわば「みんなにチャンス!構想会議」であります。そのための体制を来月中に整えます」――

 安倍晋三が宣言していることから除け者にされている人が少なからず存在する。その結果の一つが経済的困窮を共通原因としている虐待の通報に対する児童相談所対応件数2016年度過去最多ということであり、アベノミクスの機能不全を鏡のように写し出している表徴でなくて何であろう。
 
 安倍晋三は倒産件数の縮小や有効求人倍率の高さ、雇用数の増加をアベノミクス成功の指標としているが、「日本を誰にでもチャンスがあふれる国へと変えていく」とご託宣している以上、個人消費額と共に児童相談所対応件数の増減をアベノミクスの成功か否かの指標に加えなければならないはずだ。

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安倍晋三の憲法に関わる情報操作が如何に巧みか再確認できる8月14日テレビ朝日『橋下×羽鳥の番組』

2017-08-17 12:35:28 | 政治

 2017年8月14日、テレビ朝日『橋下×羽鳥の番組』で「終戦の日を前に考える『日本国憲法』SP!!」が放送された。MCが橋下徹と羽鳥慎一。コメンテーターとして8月15日に安倍晋三の代理で靖国神社に玉串料を奉納した自民党総裁特別補佐の柴山昌彦、自由党の玉城デニー、東京大学法学部卒の憲法学者の木村草太(37歳?)、タレント、エッセイストの小島慶子、フリーアナウンサーの新井恵理那、ジャーナリストの堀潤。

 「国民の疑問1」として、「憲法はアメリカの押しつけ!?。GHQ案を当時の日本国民はどう思った?」のテーマが掲げられた。

 先ず日本国憲法の成り立ちが振返られるが、番組でボードで提示されていた成立過程を画像にして載せておいた。

 GHQのマッカーサーが松本烝治憲法改正案を(いわゆる松本試案)を拒否したのは周知のように大日本国憲法とたいして変わらなかたからとの説明がなされる。

 番組では詳しく触れていないが、「憲法改正私案(一月四日稿) 松本丞治」国会図書館)のページに条文が記載されている。  

 大日本帝国憲法第1章天皇 第3条「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」に対して松本試案は第1章天皇第3条「天皇ハ至尊ニシテ侵スヘカラス」、第11条「天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス」に対して松本試案第11条は「天皇ハ軍ヲ統帥ス」と、天皇に付与している絶対性は殆ど変わっていない。

 対して番組はキャプションで、「大日本帝国憲法天皇主権→日本国憲法国民主権」と変遷したことを示す。

 次いで安倍晋三の2016年2月3日衆院予算委国会答弁の映像が流れた。

 安倍晋三「そもそも占領時代に作られた憲法であって、時代にそぐわないものがある。私達の手で憲法を変えていくべきだと――」

 実際の答弁を「国会会議録検索システム」から拾い出してみた。文飾は当方。

 安倍晋三「そもそもこれは占領時代につくられた憲法である、時代にそぐわなくなったものもある、そして、私たちの手で憲法を書いていくべきだという考え方のもとに、私たちは私たちの草案を発表しているわけであります。さきの総選挙においても、憲法改正を目指すことは明確に示しているわけでございます」

 番組はここで街の声を拾う。

 67歳主婦「本当にマッカーサーが作った憲法で、(国民は)本当に何も言えなかったのかということが知りたいですねえ」

 これは少なくても憲法成立過程に否定的な思いを抱いている意見であろう。つまり、「何か言うことができたら、占領憲法にならなかった」という思いが現れている。

 73歳女性介護職「ある程度知ってたんじゃないですか。まるっきり全部が悪いんじゃないけど、日本国憲法ね、負けたからこそ、向こうの意見を聞かざるを得ない立場だったろうかなーって思うんですけどね」

 この意見も占領軍憲法だとの意識があって、否定的な思いを抱いている。

 25歳女性会社員「どうやって日本が受け入れたのとか、反発っていうのがどのくらいあったかということは気になりますよね」

 同じく占領軍憲法ではないのかという意識を持たせている。

 ここで番組は「アメリカの押しつけ?日本が主導?成り立ちから徹底検証!」と字幕で成立過程を問う。

 木村草太「成立過程についてはここ(ボード)に書かれているとおりです。特に誤解されているのは1週間で作ったというところです(画像の赤線括弧してある箇所)。

 GHQの案を作った作ったのが16日間ぐらいだったということで、文案のままでは使えないので、日本政府に渡され、先ず見本の枠を作るのですね、GHQと議論しながら、政府は草案というものを作っていく。

 政府案ができるのが3月6日で、ここで勿論終わりではなくて、帝国議会で半年ぐらい議論を致しまして、11月3日に交付されたという手続きになっていて、流石にマッカーサーが作ったものをただ訳してできたものではないということを先ず押さえておかなければならない」

 羽鳥慎一「当時の国民は好意的に受け止める声が多くいたのですか」

 木村草太「ここは非常に、ちょっと微妙な話があるんですが、2月1日に毎日新聞のスクープというのがるんですが、政府の中で進めていた(松本)試案というのがスクープされちゃうんですね」

 ナレーションが「松本試案が天皇主権の大日本帝国憲法とほぼ代わらない政府案であることが明らかとなり、国民は余りにも保守的、現状維持的と反発したこと、GHQが日本の自主的な憲法に見切りをつけ、独自の草案作成に踏み切るターニングポイントとなった」と解説。

 木村草太「その1カ月後に国民としてはマッカーサーがどうのこうのという経緯を知らないままにいきなり政府案というのが3月6日に出るんですけど、それを見たら、国民主権としか見えないような内容になっているし、戦争を放棄するという条文があるということで、好意的な報道が特に多かったと言われていますね」

 柴山昌彦「今ご紹介があったように毎日新聞のスクープがあって、GHQからダメ出しを喰ってしまった。なので、そういう過程でアメリカの関与が非常に深まったと言うことはやはり認識しておかなければいけないですし、国民主権を訴えておきながら、国民によるオーソライズ(国民による正当化)は1回もないわけですね。

 この二つのことも我々はしっかりと記憶しておかなければならない」

 安倍晋三以下自民党は戦前の天皇主権と殆んど変わらない松本試案がキッカケとなって、「アメリカの関与」が深まり、GHQ案という答を出すことになったということは決して触れない。これも一種の情報操作であろう。

 柴山昌彦はこれ以後日本国憲法が国民投票で最終決定されていないことを以って、その正当性を否定しようとする。

 柴山昌彦「国民投票を経て、決定されるものが本当の意味での憲法だと思います」

 フリーアナウンサーの新井恵理那がGHQが憲法案を1週間で作り上げた、急がなければならない理由に疑問を示す。

 木村草太が松本試案ではポツダム宣言の趣旨に添わないことをまず挙げてから、当時の国際状況を説明する。

 ポツダム宣言の趣旨に添わないと言っていることはポツダム宣言が日本に無条件降伏を求めて占領を終了して日本から撤退する条件として掲げた一つである、「日本国政府ハ日本国国民ノ間ニ於ケル民主主義的傾向ノ復活強化ニ対スル一切ノ障礙ヲ除去スベシ言論、宗教及思想ノ自由並ニ基本的人権ノ尊重ハ確立セラルベシ」としていることを指しているのだろう。

 日本と戦争したアメリカ、イギリス、オーストラリア、中国、ソ連等が全体で日本を統治するための極東委員会(日本を管理するために設けられた再考政策決定機関)ができたことを話してから、

 木村草太「極東委員会の中で日本の憲法をつくりますということになりますと、ソ連とか中国の意向も入ってくるし、当時は天皇制に対して国際社会は非常に厳しい目を注いでいたわけですね。

 天皇のもとに戦われた戦争ですから、天皇に責任を取らせなくてはいけない、天皇制は廃止すべきだとおっしゃってる国々もあった。そうした国々の意向が入ってくる前になんとかアメリカ単独占領中に遣りたかったという意向があって、10日間という非常に短期間でやった」

 橋下徹が「憲法はプロセスの問題と結果の問題をちゃんとわけて考えなければいけない」と前置きしてから、

 橋下徹「重要な点が抜け落ちているのは日本国憲法が交付される直前にGHQの上にある極東委員会がやっぱり日本が自主的に作った憲法とはいえないよねと、極東委員会も分かってるんです。

 極東委員会、どうしたかと言うと、日本人の自主的な憲法にするために憲法改正について検討させるんだ、国会で検証させるんだと言うことを極東委員会で言ってますよね」

 ここで番組はナレーションで橋下徹が言っていることを解説する。

 橋下徹「そこでどうなったかと言うと、マッカーサーも極東委員会も国民投票でやってくださいよと言ってたのに、吉田茂は当時の国会と国民の状況を見て、『要りません』と、国民投票はしない日本国憲法であると言ったんですよ。

 国民投票は絶対にやらなければいけないプロセスに」

 以上の経緯についてネットで探したところ、国会図書館のサイトに記載されていた。

 新憲法の再検討をめぐる極東委員会の動き国立国会図書館
   
 1946(昭和21)年10月17日の極東委員会第30回会議において全会一致で承認された「新憲法の再検討に関する規定」(FEC-031/41)と、それを米国政府に伝える極東委員会事務局長の書簡、及び同封の議事録抄録。上記会議は、極東委員会の政策として、「憲法発効後、1年を経て2年以内に」、国会と極東委員会が新憲法を再検討することを決定した。

 議事録抜粋には、「憲法再検討」決定について、日本国民への公表の時期と方法をめぐる意見交換がみられる。その結果、憲法公布より早い時期には決定を公表すべきでないとの見解を持っていた米国代表の主張が通り、実際に極東委員会の決定が公表されたのは、翌年3月20日のことであった。

 マッカーサーは、1947(昭和22)年1月3日付け吉田首相宛書簡で、連合国は、必要であれば憲法の改正も含め、憲法を国会と日本国民の再検討に委ねる決定をした旨通知している。これに対する吉田の返信(同月6日付)は、「手紙拝受、内容を心に留めました」というだけの短いものであった。

 上記経緯を簡略したものが以下。

 衆憲資第90号 
 「日本国憲法の制定過程」に関する資料衆憲資第90号)  

昭和21年10月17日 極東委員会「日本の新憲法の再検討に関する規定」(昭和22年3月27日公表)
昭和22年1月3日 マッカーサー書簡(施行後1~2年以内の国会による憲法改正の検討・国民投票容認)
昭和24年4月20日 外務委員会における吉田首相答弁
「政府においては、憲法改正の意思は目下のところ持っておりません。」
(参考)・吉田茂『回想十年』資料11

 要するにGHQ案を元にして国会で採決した日本国憲法はそのまま施行し、施行後1~2年以内に憲法改正の検討と改正した場合は国民投票にかけることを容認することで、憲法の当たり前の成立過程を取らせようとした。

 ところが、吉田茂は昭和24年4月20日の外務委員会で憲法改正の意思なしと表明、結果的に国民投票も立ち消えた。

 安倍晋三は番組が紹介した2016年2月3日の衆院予算委での憲法に関わる答弁以外にも様々に国会答弁している。

 2013年4月25日の産経新聞インタビュー

 安倍晋三「憲法を戦後、新しい時代を切り開くために自分たちでつくったというのは幻想だ。昭和21年に連合国軍総司令部(GHQ)の憲法も国際法も全く素人の人たちが、たった8日間でつくり上げた代物だ」   

 2016年2月4日衆議院予算委員会。

 安倍晋三日本が占領下にある中において、まさに当時は、GHQ、連合国の司令部がある中において、いわば当時の日本国政府といえどもこの意向には逆らえないわけでございます。その中においてこの憲法がつくられたのは事実であろう、こう思うわけでございます。そして、極めて短い期間につくられたのも事実でございます」

 2015年3月6日衆院予算委

 安倍晋三「そもそも、占領下において、短い期間において、占領軍の司令部において25名の方々によってつくられたのは間違いのない事実でございます」

 番組の内容も含めてここで取り上げた国会図書館の記事を見る限り、文飾を施した文言は全て安倍晋三の情報操作ということになる。日本国憲法は「全く素人の人たちが、たった8日間でつくり上げた代物」でもないし、「占領軍の司令部において25名の方々によってつくられたのは間違いのない事実」という訳でもない。

 また自民党総裁特別補佐の柴山昌彦が国民投票を憲法成立がオーソライズされる唯一の手続きとする考えから日本国憲法を否定していることも、憲法改正という手続きで国民投票にかける機会がありながら、吉田茂がそれを拒否したことを前提とすると、やはり情報操作の類いに入る。

 安倍晋三は「そもそも占領時代に作られた憲法であって、時代にそぐわないものがある。私達の手で憲法を変えていくべきだ」と言っているが、時代に添う憲法草案が2012年の自民党憲法改正草案であるはずである。

 だが、2015年5月27日の衆議院の平和法制特別委員会で「私たちは私たちの草案を発表しているわけであります」と答弁し、引き続いて、「この改正案については、谷垣総裁の時代に、自民党の多くの議員が参加をして議論を重ね、つくり上げたものでございます」と自民党の総意であるようなことを言っているが、2016年10月3日の衆院予算委ではまるで自身は草案作成に加わっていないようなことを民進党の長妻昭に対して国会答弁している。

 安倍晋三「先ず事実誤認があります。(長妻を指差して)事実誤認がありましたので、それを先ず訂正したい・・・と思います。事実誤認と言うのはですね、(民主党議員席の方向なのか、顔を体ごと斜め左に向けて)私が自民党憲法草案を出された。どこに出したんですか。

 世に出したのは私ではありません。谷垣総裁のときに出した、出されたわけでありまして、私が世に出した、これは事実ではなくて、先ずですね、今あなたが言われたような言い方をしますと、国民から誤解をされるんですね」

 谷垣総裁の時代であっても、当時は前自民党総裁、前首相として、さらに憲法改正意欲豊富な保守政治家として、本人直接ではなくても、代理を遣わして憲法草案作成には深く関わり、世に出すのに一枚加わっていたはずだ。

 安倍晋三の憲法観抜きの改正草案は考えることはできない。

 上記発言は自民党憲法改正草案は9条2項を廃して「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。」としているのに対して安倍晋三はその後9条1項と2項はそのままに3項を加えて、そこに自衛隊明記を謀っているから、その考えがあって自民党憲法改正草案に一歩距離を置く必要があったからだろう。

 実際にはどの総裁時代に世に出そうとも、出した以上はその憲法改正草案に添う改正を行わなければならないはずだが、自身独自の改正を狙うために一種の情報操作を施した「谷垣総裁のときに出した」草案ということなのだろう。

 この見方が穿ち過ぎだとしても、日本国憲法の成立過程を貶めるために様々に情報操作を行っていることに変わりはない。

 巧まずして情報操作しているのか、企んで情報操作しているのか分からないが、どちらであっても、情報操作が得意な一国のリーダというのは極めて気をつけなければならない。

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安倍晋三の戦前国家・戦争・戦死者を等価値に置いた8/15玉串料奉納と日本にのみ顔を向けた歴史認識

2017-08-16 08:08:48 | 政治

 敗戦から72年目の2017年8月15日、安倍晋三が自由民主党総裁特別補佐柴山昌彦を代理人に靖国神社に玉串料を納めたとマスコミが報じた。

 柴山昌彦「安倍総裁の指示を受けて、先の大戦で尊い犠牲を遂げられた先人のみ霊に謹んで哀悼の誠を捧げ、恒久平和への思いを新たにした。私費で安倍総裁と私の分の玉串料を納めた。安倍総裁からは『参拝に行けずに申し訳ない。しっかりお参りをしてほしい』と言われた」(NHK NEWS WEB

 安倍晋三も同じ8月15日に日本武道館で行われた政府主催の全国戦没者追悼式挨拶で、「私たちが享受している平和と繁栄は、かけがえのない命を捧(ささ)げられた皆様の尊い犠牲の上に築かれたものであります」と、戦死を「尊い犠牲」と価値づけている。  

 玉串(=榊)とは昔は榊の枝を神社に供えていたが、それをのし袋に入れた金銭に代えたことから「玉串料」と呼ばれるようになったとか。神社側は木の枝を供えられるよりも金銭が供えられれる方が有り難かったのだろう。

 有り難くないことは遠ざけられる。

 「先の大戦で尊い犠牲を遂げられた」
 
 戦死を“尊い犠牲”と価値づける。例え「自存自衛」と名付けようと、断るまでもなく、日本の戦争は戦前の日本国家が起こした戦争である。日本国家が起こした戦争に於ける戦死という犠牲を“尊い”と価値づけるということは、その戦争を正しい戦争と価値づけていなければ出てこない発想であろう。

 戦争を正しい戦争と価値づけている以上、その戦争を起こした国家を正しい国家だったと価値づけていることになる。

 いわば戦前の国家とその戦争と戦死者を等価値に置いた発想が“尊い犠牲”という価値づけとなって現れている。

 逆に間違った戦争だと価値づけていたなら、“尊い犠牲”という価値づけはどこからも出てきようがない。“悲しい犠牲”、あるいは“哀れな犠牲”、“腹立たしい犠牲”等々としか価値づけようがないはずである。

 実際にも間違った国家による間違った戦争だと歴史認識している多くの日本人はその犠牲を憤りや悲しみの感情で把握している。

 靖国神社に参拝して、そこに祀られている戦死者を追悼するに当たって国家の戦争のために「尊い犠牲を遂げられた」と価値づけるということは参拝する本人が意識していようといまいと戦死者の背後に戦前の日本国家とその戦争を置いていて、追悼を通してその国家と戦争の正しさを再認識しているのである。

 だからこその国家とその戦争と戦死者に対する等価値の価値づけであり、戦死者に対しては、“尊い犠牲”という価値づけが可能となる。

 それは参拝に代えて玉串料を支払う場合に於いても同じである。追悼という精神行為に関しては同じだからである。

 そしてこういった等価値観は日本という国にだけ顔を向けていることによって可能となる。

 このことの理由は不要であろう。

 安倍晋三が8月15日に日本武道館で行われた政府主催の全国戦没者追悼式で天皇が過去の戦争に対する深い反省と不戦の誓いを述べたのに対して〈アジア諸国への加害と反省に5年連続で言及しなかった。〉と「朝日デジタル」が伝えていたが、戦前の日本国家とその戦争を正しいと意義づけている以上、当然な態度と見なければならない。
   
 そして靖国神社を参拝するにしても、玉串料を納めるにしても、真榊を奉納するにしても、戦争で被害を与えたアジア各国に対してではなく、戦前の日本国家と戦争と“尊い犠牲”と価値づけている戦死者のみに、それらと対面する形で心の顔を向けているのであり、そういったことが靖国神社に対する追悼の形となっているのである。

 安倍晋三がこのような歴史認識に立っているからこそ、全国戦没者追悼式で日本の戦前の戦争での加害と反省に触れずに、その結果まるで日本だけが受けたかのような表現となるのだが、既に触れたように同じく日本という国にだけ顔を向けて、「戦争の惨禍を、二度と、繰り返してはならない」と何ら矛盾を感じずに誓うことができる。     

 安倍晋三、その他の戦前の日本国家とその戦争と、その戦争の犠牲者である戦死者を等価値に置き、尚且つ日本という国にだけ顔を向けた「尊い犠牲」、あるいは「戦争の惨禍」は極めて危険な歴史認識と見なければならない。

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安倍加計学園疑惑:今治市への獣医学部新設を確実にする三重のガードは“加計ありき”の有力な証拠

2017-08-15 10:20:02 | Weblog

 改めて戦略特区指定今治市への獣医学部新設という手続きでその事業主体が加計学園に決まった経緯を振返って見る。今治市が国家戦略特区諮問会議に事業主体を加計学園とする獣医学部新設を申請したわけではない。

 国家戦略特区に指定された愛媛県今治市が当初は事業主体を置かずに当市への獣医学部新設申請という手続きを取り、最後の最後になって内閣府がその事業主体を公募、加計学園のみが応募して認定されるという経緯を取っている。

 いわば事業主体は今治市が決めたのではなく、内閣府の応募によって決まるという体裁となっている。最初からそういう形式を取ると決められていたのだろうか。

 関係する国家戦略特区諮問会議や分科会、ワーキンググループ(WG)ヒヤリングの議事要旨の主なところを拾って、経緯を振返って見る。文飾は当方。

 第1回今治市特区分科会 

 1.日時 平成28年9月21日(水)10:27~11:25

 2.場所 内閣府庁舎3階特別会議室

 3.出席者

 <国>
 山本 幸三 内閣府特命担当大臣(地方創生、規制改革)
 佐々木 基 内閣府地方創生推進事務局長

 <自治体>
 菅良二今治市長

 <民間事業者>
 加戸 守行 今治商工会議所特別顧問

 <民間有識者>
 八田 達夫 アジア成長研究所所長
 大阪大学社会経済研究所招聘教授

 <オブザーバー>
 浅野 敦行 文部科学省高等教育局専門教育課長
 林 政彦 農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課調査官
 山下 一行 愛媛県地域振興局長
 渡部 浩忠 越智今治農業協同組合代表理事専務
 西原 孝太郎 公益社団法人今治青年会議所理事長

 <事務局>
 藤原豊 内閣府地方創生推進事務局審議官

 4.議事
 (1)「今治市 分科会」運営規則(案)について
 (2)認定申請を行う特定事業について
 (3)追加の規制改革事項について
 (4)その他 

 ○菅今治市長 それでは、「追加の規制改革事項について」として、獣医師系の国際教育拠点の整備についての提案をいたしております。

 詳細につきましては、後ほど民間代表であります今治商工会議所の加戸特別顧問より御発言をいただきますが、獣医学教育空白地域である四国に大学獣医学部の新設を目指すものでございます。

   ・・・・・・・

 本市は四国の中でも瀬戸内海の中心に位置し、気候が温暖で災害も少なく、世界有数の多島美と緑豊かな山間地域が織りなす美しい自然に恵まれ、古くから農業、畜水産業が盛んな地域であります。獣医学部が本市に新設された暁には、四国のみならず、瀬戸内しまなみ海道でつながる広島県を初め、瀬戸内海沿岸地域への危機管理対応も可能になるものと考えております。

○渡部代表理事専務 今治市にございます、越智今治農業協同組合の渡部でございます。

    ・・・・・・・・

 日本の食を支えていくのは彼ら若い世代ではありますが、国際的に人や動物の移動が盛んになる中、家畜の越境国際感染症が最大の脅威となっています。四国には獣医系大学がないため、食の安全確保、危機管理に対応できる獣医師が不足しています。特区に指定された今治市に獣医系大学ができることで、今治市の畜産振興が図られ、ひいては日本の食糧の安定供給と海外販路拡大に必ずつながるものと考えております。今治市に獣医学部の新設は絶対に必要です。よろしくお願いいたします。

○林調査官 農水省の林でございます。

 農水省としましては、獣医学部の新設は、皆さん御承知のとおりでございますけれども、学校教育法に基づく文科省の告示により規制されているという中で、引き続き獣医師の需給に関する情報等を収集・整理して、必要に応じて文科省等に提供させていただきながら対応してまいりたいと考えております。
今後ともよろしくお願い申し上げます。

○藤原審議官 ありがとうございました。

 本日は都合により御欠席でございますが、お話にもあったように厚生労働省とも非常に密接に関係している分野だと思いますので、よく連携を図っていきたいと思っております。

 一通り皆様より御意見を頂戴したわけでございますが、御質問、御意見、特にございますでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、忌憚のない御意見をいただき、ありがとうございました。この議題(3)追加の規制改革事項につきましては、さらに論点あるいは検討課題を詰めまして、関係省庁とともに次回分科会までに、さらに検討を進めてまいりたいと思います。

 以上で議事は全て終了いたしました。

 (以下、山本幸三の纏めの発言)

 以上取り上げた議論は今治市長や越智今治農業協同組合の渡部浩忠等が四国は「獣医学教育空白地域」であるという理由で国家戦略特区指定の愛媛県今治市への獣医学部新設を求めている内容となっている。

 ここに取り上げなかったが、前愛媛県知事で、今治商工会議所特別顧として出席している加戸守行も同じような趣旨で今治市への獣医学部新設を求めている。

 但し平成28年9月21日の時点ではまだ今治市への獣医学部新設は認められていなかった。

 このことは平成28年9月30日の「広島県・今治市(第2回)国家戦略特別区域会議」でも同じで、その「議事要旨」を見ると、獣医学部新設の要請という形を取っていて、この時点でも今治市への獣医学部新設はまだ認められていなかった。 

 「第24回国家戦略特別区域諮問会議(議事要旨)」

 日時 平成28年10月4日

場所 官邸4階 大会議室
出席議員
議 長 安倍 晋三 内閣総理大臣
議 員 麻生 太郎 財務大臣
同 山本 幸三 内閣府特命担当大臣
同 菅 義偉 内閣官房長
石原 伸晃 内閣府特命担当大臣(経済財政策)兼 経済再生担当大臣
有識者 議員 秋池 玲子 ボストンコンサルティンググループシニア・パートナー&マネージング・ディレクター
同 坂根 正弘 株式会社小松製作所相談役
同 坂村 健 東京大学大学院情報学環教授
同 竹中 平蔵 東洋大学教授 慶應義塾大学名誉教授
同 八田 達夫 アジア成長研究所所長 大阪学社会経済研究所招聘教授
門脇 光浩 秋田県仙北市長
髙橋 浩人 秋田県大潟村長
駒崎 弘樹 認定NPO法人フローレンス代表理事
鈴木 亘 東京都都政改革本部特別顧問

○山本議員 ありがとうございました。

 このほか、先月21日に、今治市の特区の分科会を開催し、「獣医師養成系大学・学部の新設」などについても議論いたしました。

 これまでの報告等について、有識者議員より御意見ございますでしょうか。
(「異議なし」と声あり)

○山本議員 ありがとうございました。

 それでは、速やかに認定の手続きを行います。また、共同事務局についても、有効に活動させていただきたいと思います。

    ・・・・・・・・

○八田議員 今治市は、獣医系の学部の新設を要望しています。「動物のみを対象にするのではなくてヒトをゴールにした創薬」の先端研究が日本では非常に弱い、という状況下でこの新設学部は、この研究を日本でも本格的に行うということを目指しています。さらに、獣医系の学部が四国には全くないのです。このため、人畜共通感染症の水際対策にかかわる獣医系人材の四国における育成も必要です。

 したがって、獣医系学部の新設のために必要な関係告示の改正を直ちに行うべきではないかと考えております。

 ありがとうございました。

○山本議員 ありがとうございました。

 山本幸三が言っている「先月21日」とは「第1回今治市特区分科会」が開かれた平成28年9月21日を指す。

 この9月21日以降から平成28年11月9日の「第25回国家戦略特別区域諮問会議」までの間に開かれた獣医学部新設に関係するワーキンググループヒアリングは10月17日の京都府と京都産業大学に対するヒアリング、「新たな獣医学部・大学院研究科の設置のための抑制解除」についてのみで、他には何も開かれていない。

 山本幸三が言っている「9月21日の第1回今治市分科会で今治市への獣医学部新設について議論した、これまでの報告について異議がないようだから、それでは、速やかに認定の手続きを行います」は今治市への獣医学部新設に関わる「認定の手続き」を行うとの意思表示そのものであろう。

 今治市への獣医学部新設に向けて議論を進めたいという意思表であるなら、「認定の手続き」という言葉は出てこない。

 いわば「第24回国家戦略特別区域諮問会議」で今治市への獣医学部新設を認めたことになる。

 だとすると、八田議員は認定を前提として発言していることになる。「今治市は、獣医系の学部の新設を要望しているが」「獣医系学部の新設のために必要な関係告示の改正を直ちに行うべきではないか」と認定を急ぐように求めたとうことであろう。

 そうでないと、山本幸三の「それでは、速やかに認定の手続きを行います」との文言がおかしなものとなるだけではなく、それ以降の「第25回国家戦略特区諮問会議」は地域条件の変更が行われたのみで、平成28年12月12日開催の「第26回国家戦略特区諮問会議」は今治市への獣医学部新設認定の文言は出てこないし、平成29年1月20日開催の「第27回国家戦略特区諮問会議」はこのブログで最初に触れている内閣府による2017年1月4日の今治市への獣医学部の事業主体公募に対する加計学園の応募を認定する議論が行われていて、その関係から、「第24回国家戦略特別区域諮問会議」で今治市の獣医学部新設が認められたとしなければ、では、どこで決まったのかということになって、疑問が生じることになる。

 「第25回国家戦略特別区域諮問会議(議事要旨)」     

日時 平成28年11月9日(水)17:15~17:53
場所 官邸4階 大会議室

○山本議員 続きまして、資料3を御覧ください。

 前回の会議で、重点課題につきましては、法改正を要しないものは直ちに実現に向けた措置を行うよう総理から御指示をいただきましたので、今般、関係各省と合意が得られたものを、早速、本諮問会議の案としてとりまとめたものであります。

 内容といたしましては、先端ライフサイエンス研究や地域における感染症対策など、新たなニーズに対応する獣医学部の設置、農家民宿等の宿泊事業者による旅行商品の企画・提供の解禁となっております。

    ・・・・・・・・

○松野臨時議員 文部科学省におきましては、設置認可申請については、大学設置認可にかかわる基準に基づき、適切に審査を行ってまいる考えであります。

 以上です。

○山本議員 次に、山本農林水産大臣、お願いします。

○山本臨時議員 産業動物獣医師は、家畜の診療や飼養衛生管理などで中心的な役割を果たすとともに、口蹄疫や鳥インフルエンザといった家畜伝染病に対する防疫対策を担っており、その確保は大変重要でございます。

 近年、家畜やペットの数は減少しておりますけれども、産業動物獣医師の確保が困難な地域が現実にございます。農林水産省といたしましては、こうした地域的課題の解決につながる仕組みとなることを大いに期待しておるところでございます。

     ・・・・・・・・

○麻生議員 松野大臣に1つだけお願いがある。法科大学院を鳴り物入りでつくったが、結果的に法科大学院を出ても弁護士になれない場合もあるのが実態ではないか。だから、いろいろと評価は分かれるところ。似たような話が、柔道整復師でもあった。あれはたしか厚生労働省の所管だが、規制緩和の結果として、技術が十分に身につかないケースが出てきた例。他にも同じような例があるのではないか。規制緩和はとてもよいことであり、大いにやるべきことだと思う。しかし、上手くいかなかった時の結果責任を誰がとるのかという問題がある。
 この種の学校についても、方向としては間違っていないと思うが、結果、うまくいかなかったときにどうするかをきちんと決めておかないと、そこに携わった学生や、それに関わった関係者はいい迷惑をしてしまう。そういったところまで考えておかねばならぬというところだけはよろしくお願いします。

 以上です。

○八田議員 今度は、獣医学部です。

獣医学部の新設は、創薬プロセス等の先端ライフサイエンス研究では、実験動物として今まで大体ネズミが使われてきたのですけれども、本当は猿とか豚とかのほうが実際は有効なのです。これを扱うのはやはり獣医学部でなければできない。そういう必要性が非常に高まっています。そういう研究のために獣医学部が必要だと。

 もう一つ、先ほど農水大臣がお話しになりましたように、口蹄疫とか、そういったものの水際作戦が必要なのですが、獣医学部が全くない地方もある。これは必要なのですが、その一方、過去50年間、獣医学部は新設されなかった。その理由は、先ほど文科大臣のお話にもありましたように、大学設置指針というものがあるのですが、獣医学部は大学設置指針の審査対象から外すと今まで告示でなっていた。それを先ほど文科大臣がおっしゃったように、この件については、今度はちゃんと告示で対象にしようということになったので、改正ができるようになった。

 麻生大臣のおっしゃったことも一番重要なことだと思うのですが、質の悪いものが出てきたらどうするか。これは、実は新規参入ではなくて、おそらく従来あるものにまずい獣医学部があるのだと思います。そこがきちんと退出していけるようなメカニズムが必要で、新しいところが入ってきて、そこが競争して、古い、あまり競争力がないところが出ていく。そういうシステムを、この特区とはまた別にシステムとして考えていくべきではないかと思っております。

○山本議員 御意見をいただき、ありがとうございました。

 それでは、資料3につきまして、本諮問会議のとりまとめとしたいと思いますが、よろしゅうございますか。

 (「異議なし」と声あり)

○山本議員 御異議がないことを確認させていただきます。ありがとうございます。

 それでは、本とりまとめに基づき、速やかに制度改正を行いたいと思いますので、関係各大臣におかれましても、引き続き御協力をお願い申し上げます。
以上で、本日予定された議事は全て終了しました。

 (安倍晋三の挨拶)

 「資料3」が全員一致の「異議なし」で決められた。

 資料3とは「第25回国家戦略特別区域諮問会議」に配布された資料の一つを指す。

 「国家戦略特区における追加の規制改革事項について(案)(資料3)」     

 国家戦略特別区域諮問会議

○ 先端ライフサイエンス研究や地域における感染症対策など、新たなニーズに対応する獣医学部の設置

・ 人獣共通感染症を始め、家畜・食料等を通じた感染症の発生が国 際的に拡大する中、創薬プロセスにおける多様な実験動物を用いた先端ライフサイエンス研究の推進や、地域での感染症に係る水際対策など、獣医師が新たに取り組むべき分野における具体的需要に対応するため、現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う。

 先に触れたように「第25回国家戦略特別区域諮問会議」で、〈現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う。〉地域条件変更の制度改革を行うことを決定した。

 ここに疑問が一つ浮かぶ。平成28年10月4日開催の「第24回国家戦略特別区域諮問会議」で今治市への獣医学部新設を決めていながら、なぜ平成28年11月9日開催の「第25回国家戦略特別区域諮問会議」で地域条件を〈現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り〉〉と変更し、変更を可能とする制度改革を行わなければならなかったのだろう。

 「第25回国家戦略特別区域諮問会議」で決めた地域条件変更に対する「パブリックコメント」(意見募集)を内閣府は2016年11月18日から12月17日の期限で行い、その結果を2017年1月4日に公表、同2017年1月4日、文科省は決定に従って地域条件変更の告示を改正した。

 2017年7月10日午後の参院閉会中審査

 桜井充民進党議員「山本大臣がこれ(文科省案に『広域的に』という文言を入れたこと)の指示を出したとおっしゃっていますが、これ、本当でしょうか。あの、答弁、午前中メチャクチャ長かったので、簡潔にお答え頂けますか」

 山本幸三「全くそのとおりでありまして、私が判断して、そのように指示を致しました」

 桜井充「じゃあ、大臣はどなたと相談して判断して、そのように指示を致しました?」

 山本幸三「藤原審議官に指示をしたわけでありますけども、相談はそれ以前からも民間議員の方々、あー、等の、等、それから、あー、文科省・・・・、等々の遣り取りの中で、えー、獣医師会について、えー、しっかりと、また対応する必要があると言うことを踏まえてですね、えー、最終的には私が判断したわけでありますが、あー、そん中では民間議員との、コミュニケーションもありました」

 山本幸三の答弁はきっぱりとどのような正式な会合で地域条件の変更を決めたと言い切ることができない、やっとの思いの胡散臭さたっぷりの発言となっている。

 2017年7月13日付「東京新聞朝刊」が、〈政府の国家戦略特区制度を活用した学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)の獣医学部新設計画を巡り、特区を担当する内閣府の塩見英之参事官は12日の民進党調査チームの会合で、昨年11月9日の特区諮問会議で示された「広域的に存在しない地域に限る」との新設条件について、特区ワーキンググループ(WG)の場で正式に議論したことがないと明らかにした。〉と伝えている。     

 塩見英之「WGの場ではないが、委員に意見を聞いて了解を得た上で話を進めた」

 要するに独断でも「総理のご意向」でもない、非公式に諮問会議やワーキンググループの委員に諮って決めたことだとしている。

 だとしても、既に今治市への獣医学部新設を決定している上に明らかに「獣医学教育空白地域」である四国を指す、〈現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う。〉として、今治市への獣医学部新設決定へのガードをなぜ更に固めなければならなかったのだろう。

 答を見い出すとしたら、先にちょっと触れたが、平成28年10月4日開催の「第24回国家戦略特別区域諮問会議」平成28年11月9日開催の「第25回国家戦略特別区域諮問会議」の間の平成26年10月17日に京都府と京都産業大学が共同で提出した、「京都産業大学獣医学部設置構想についてWGヒアリング資料」に基づいて、同日、「国家戦略特区ワーキンググループ ヒアリング」を行っていたからだろう。 

 京都府が事業主体を京都産業大学と決めて綾部市への獣医学部新設を申請するために資料を整えて内閣府に提出、資料で示した獣医学部設置構想のヒアリングを内閣の藤原豊審議官や民間議員から受けた。

 そして正式な会議に諮って決めたわけでもない、決定プロセスが不明確な、いわば四国限定だと示唆する内容の、〈現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り〉云々とする地域条件の変更が平成28年11月9日開催の「第25回国家戦略特別区域諮問会議」に突然飛び出してきた。

 だとすると、京都府が事業主体を京都産業大学とする獣医学部新設の構想が優れている内容だったから、今治市への獣医学部新設を二重にガードしなければならなくなって、地域条件の変更を行ったと見る他はない。

 その根拠はこの推測と地域条件の変更を正式な会議で決めていないことである。

 だが、京都府は地域条件の変更が決まっても、撤退しなかった。撤退したのは内閣府地方創生推進事務局が平成28年11月18日から平成28年12月17日を期限として、〈平成30年度の開設に向けた事業の確実な実施が見込まれるものであること〉と条件を付けた「文部科学省関係国家戦略特別区域法第二十六条に規定する政令等規制事業に係る告示の特例に関する措置を定める件の一部を改正する件(案)」に関するパブリックコメント(意見募集)を行い、平成29年1月4日に全てを賛成多数とした結果発表と同時に公布したことによって、〈平成30年度の開設〉では準備期間が不足するという理由でだった。

 この〈平成30年度の開設〉の決定プロセスも正式な会議に諮ったわけでもなく、決定プロセスが至って不明確そのものとなっている。

 だが、加計学園はこの〈平成30年度の開設〉をクリアした。オウンリスクと言いながら、事業主体が加計学園に決定する前に校舎の工事を始め、教員の募集を始めていたからである。

 いずれにしても今治市新設の獣医学部新設決定を揺るぎないものとするためにだろう、地域条件の変更によって二重のガードをかけたばかりか、京都産業大学にはクリアできなかった〈平成30年度の開設〉を加えて三重のガードをかけたことは京都産業大学を蹴落として、“加計ありき”を確実とする策略の有力な証拠となる。

 と言うことは、安倍晋三の政治的関与は限りなくクロに近づけなければならない。

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安倍晋三は将来的な核保有の必要性出来に備えて広島と長崎の原爆犠牲者慰霊の挨拶を行っているものと弁えよ

2017-08-14 12:00:52 | 政治

 唯一の被爆国日本の首相として安倍晋三が2017年8月6日、広島原爆死没者慰霊平和祈念式典で挨拶し、続けて8月9日に長崎原爆死没者慰霊平和祈念式典でも挨拶を行っている。  
    
 安倍晋三の核兵器に関わる姿勢が如実に現れている箇所を取り上げてみる。

  広島

 安倍晋三「今から72年前の、あの朝、一発の原子爆弾がここ広島に投下され、十数万ともいわれる数多(あまた)の貴い命が失われました。街は一瞬にして焦土と化し、一命をとりとめた方々にも、言葉では言い表せない苦難の日々をもたらしました。若者の夢や明るい未来も、容赦なく奪われました。

 このような惨禍が二度と繰り返されてはならない。唯一の戦争被爆国として、『核兵器のない世界』の実現に向けた歩みを着実に前に進める努力を、絶え間なく積み重ねていくこと。それが、今を生きる私たちの責任です。

 真に『核兵器のない世界』を実現するためには、核兵器国と非核兵器国双方の参画が必要です。我が国は、非核三原則を堅持し、双方に働きかけを行うことを通じて、国際社会を主導していく決意です。

 そのため、あの悲惨な体験の『記憶』を、世代や国境を越えて、人類が共有する『記憶』として継承していかなければなりません」

 

 長崎

 安倍晋三「一発の原子爆弾により、一瞬にして、7万ともいわれる数多(あまた)の貴い命が失われたあの日から、72年がたちました。一命をとりとめた方々にも、耐え難い苦難の日々が強いられました。人々の夢や未来も、容赦なく奪われました。
 しかし、長崎の人々は、原子爆弾によって破壊された凄惨な廃墟(はいきょ)の中から立ち上がり、たゆまぬ努力によって、素晴らしい国際文化都市を築き上げられました。

 この地で起きた惨禍が二度と繰り返されてはならない。唯一の戦争被爆国として、『核兵器のない世界』の実現に向けた歩みを着実に前に進める努力を、絶え間なく積み重ねていくこと。それが、今を生きる私たちの責務です。

 真に『核兵器のない世界』を実現するためには、核兵器国と非核兵器国双方の参画が必要です。我が国は、非核三原則を堅持し、双方に働きかけを行うことを通じて、国際社会を主導していく決意です。

 そのため、あの悲惨な体験の『記憶』を、世代や国境を越えて、人類が共有する『記憶』として継承していかなければなりません」

 ほぼ同じ文章となっていて、趣旨も同じ、原爆の悲惨さを語り、「核兵器のない世界」の実現を約束している。そしてその方法として「核兵器国と非核兵器国双方の参画」の必要性を挙げ、「双方に働きかけを行うことを通じて」、「核兵器のない世界」実現に向けて「国際社会を主導していく決意」を明確に示している。

 二つの挨拶を読む限り、どこからどう見ても安倍晋三は強固な核廃絶論者に見える。

 「核兵器国と非核兵器国双方の参画」の主意については既に前外相の岸田文雄が発言しているが、安倍晋三は広島原爆死没者慰霊平和祈念式典出席後に広島市のホテルで行った記者会見でより詳しく触れている。 

 「産経ニュース」/2017.8.6 22:50)

 記者「政府は核兵器禁止条約の署名、批准しない考えは変わらないのか。関連して、非核三原則を法制化する考えは」

 安倍晋三「わが国は唯一の戦争被爆国として『核兵器のない世界』の実現に向けて国際社会の取り組みをリードしていく使命を有している。これは、私の揺るぎない信念であり、わが国の確固たる方針です。

 真に核兵器のない世界を実現するためには、核兵器国の参画を得ることが必要不可欠です。しかし、核兵器禁止条約には、核兵器国は1カ国として参画していません。

 核兵器国と非核兵器国の隔たりを深め、核兵器のない世界の実現を遠ざける結果になってはならない。わが国は核兵器の非人道性および厳しい安全保障環境に対する冷静な認識の下、核兵器国と非核兵器国の双方に働きかけ、核兵器のない世界という理想に向けて一歩一歩着実に近づく現実的なアプローチが必要だと考えます。

 今般、国連で採択された条約は、わが国のアプローチと異なるものであることから、署名、批准は行わないことにしました。この条約の効力はその締約国にしか及ばないというので、日本が条約違反を問われる可能性は全くないということです。

 非核三原則については、核兵器の惨禍を決して繰り返させてはならないとの揺るぎない決意のもと、わが国はこれまでも、そしてこれからも非核三原則を国是として堅持する考えで、改めて法制化する必要はないと考えます」

 要するに2017年7月7日にニューヨークの国連本部で行われた会議で採択された「核兵器禁止条約」の参加国は核非保有国だけで、核保有国は1国も参加していなから、両者の利害の隔たりを埋めることはできない。逆に利害の「隔たりを深め、核兵器のない世界の実現を遠ざける結果になってはならない」から、日本は「核兵器のない世界という理想に向けて一歩一歩着実に近づく現実的なアプローチ」で双方に働きかけていくことが最善と考えているが、そのことに反して「核兵器禁止条約」はそのようなアプローチと異なるゆえに「署名、批准」は行わなかったとの趣旨となっている。

 但し日本が「核兵器禁止条約」の締結国となって、核非保有国の立場から核保有国に核兵器廃絶の働きかけを行ってもいいはずであるし、「核兵器禁止条約」の主要推進国・オーストリアのハイノッチ在ジュネーブ代表部大使が朝日新聞の取材に対して「条約は『核の傘』の下にとどまることを禁じていない」との見解を示したと2017年8月9日付「朝日デジタル」が伝えているから、アメリカの核を日本の安全保障に利用しながら、「核兵器禁止条約」締結国の立場からアメリカやその他の核保有国に核廃絶を求めてもいいはずである。   

 だが、そうしていないのは安倍晋三が実際はアメリカの核を必要としていて、自身も将来的に必要が生じた場合は日本の核の保有を考えているからだろう。

 この思いが次の発言に端なくもポロリと出ている。

 「この条約の効力はその締約国にしか及ばないというので、日本が条約違反を問われる可能性は全くないということです」

 締結していないのだから、当たり前のことであるが、「条約違反」に問われないと言っていることの意味は「核兵器禁止条約」が禁止している各項目を順守する義務は何一つないということの示唆である。

 いわば禁止項目を守らなくても、「日本が条約違反を問われる可能性は全くないということです」と言ったのである。

 決して日本は例え締結に参加しなくても、核非保有国であることを守って、「核兵器禁止条約」が禁止している各項目を順守しますと言ったのではない。

 これをわざわざ口にしたということは、広島と長崎の原爆死没者慰霊平和祈念式典でスピーチしていることの全てをウソにする。「一発の原子爆弾により、一瞬にして数多(あまた)の貴い命が失われた」とか、「『核兵器のない世界』の実現に向けた歩みを着実に前に進める努力」をするとか、「あの悲惨な体験の『記憶』を、世代や国境を越えて、人類が共有する『記憶』として継承していかなければなりません」と言っていることの全てをウソにする。

 このウソは記者会見で記者から「非核三原則を法制化する考え」を問われて、「非核三原則については、核兵器の惨禍を決して繰り返させてはならないとの揺るぎない決意のもと、わが国はこれまでも、そしてこれからも非核三原則を国是として堅持する考えで、改めて法制化する必要はないと考えます」という発言に物の見事に現れている。

 「国是」とは国家としての方針に過ぎない。非核三原則を法律にした場合、国是程には簡単に変えることができい。変えるとなった場合、国是の変更よりも面倒な手続きが必要となる。

 安倍晋三が非核三原則を国是のままにして法制化を避けたのも将来的に必要が生じた場合の日本の核の保有を考えているからだろう。

 このことは内閣法制局長官横畠裕介の国会答弁を通して既に安倍内閣の意思として公にされている。憲法や法律についての内閣の統一解釈は内閣法制局が行い、その長である内閣法制局長官の見解は憲法や法律についての内閣の見解を代弁している以上、安倍晋三の発言として耳にしなければならない。

 2016年3月18日の参院予算員会で民進党になる前の民主党員白真勲が核の保有も使用も憲法違反ではないのかと質問している。

 横畠祐介「もとより、核兵器は武器の一種でございます。核兵器に限らず、あらゆる武器の使用につきましては、国内法上及び国際法上の制約がございます。

 国内法上の制約で申し上げれば、憲法上の制約は、やはり我が国を防衛するための必要最小限度のものにとどめるべきという、いわゆる第三要件が掛かっております。

 また、国際法上の制約といたしましては、いわゆる国際人道法、分かりやすく言えばいわゆる戦時国際法でございますけれども、それを遵守する。例えば軍事目標主義であるとか様々な制約ございまして、それを遵守しなければならないということで、そのことは、国内法で申し上げますれば、自衛隊法第八十八条の第二項に「国際の法規及び慣例によるべき場合にあつてはこれを遵守し、」ということで明記されているところでございます。

 いずれにせよ、あらゆる武器の使用につきましては、国内法及び国際法の許す範囲内において使用すべきものというふうに解しております」

 憲法は核の使用を「必要最小限度」の範囲内を国内法上の制約とするなら、保有も使用も許されるとし、国際人道法等の順守が国際法上の制約となると言っている。

 前後矛盾するようだが、憲法が優先されるから、「必要最小限度」の範囲内の核の保有も使用も許されるとしていることになる。
 
 このことは引き続いての質疑応答で明らかとなる。

 白真勲「使用は憲法違反ではないのかということですか」

 横畠祐介「お尋ねの憲法上の制約について申し上げれば、先ほどお答え申し上げたとおりで、我が国を防衛するための必要最小限度のものに勿論限られるということでございますが、憲法上全てのあらゆる種類の核兵器の使用がおよそ禁止されているというふうには考えておりません」

 「必要最小限度」の範囲内であるなら、「憲法上全てのあらゆる種類の核兵器の使用がおよそ禁止されているというふうには考えておりません」と、核保有と核使用を認めている。

 但し「必要最小限土の実力行使の範囲・内容」について当時無所属で、現自民党の中西健治が質問主意書で尋ねている。

 「政府答弁書」(中西健治サイト)  

 〈新三要件に該当する場合の自衛の措置としての「武力の行使」については、その国際法上の根拠が集団的自衛権となる場合であれ、個別的自衛権となる場合であれ、お尋ねの「必要最小限度の実力行使」の「範囲・内容」は、武力攻撃の規模、態様等に応ずるものであり、一概に述べることは困難である。〉――

 「必要最小限度の実力行使」の「範囲・内容」が相手の「武力攻撃の規模、態様等」に対応するということは、当方の兵員・武器、あるいは部隊編成等の「規模、態様等」が常に相手のそれを上回ることが追求されることになるから、兵員にしても、武器にしても、あるいは部隊編成にしても、兵士の能力や兵器の性能、あるいは兵士と兵器と部隊編成の数量は常にエスカレートしていく方向を目指すことになる。

 つまり相手の「武力攻撃の規模、態様等」に応じて常にそれを上回る、一定であることに留まることのない「範囲・内容」の「必要最小限度の実力行使」であって、このことを「必要最小限度」であるなら、日本国憲法が保有も使用も認めているとしている核兵器に当てはめると、相手の核爆弾数やミサイル数、ミサイルの飛距離等の性能を上回る範囲内の「必要最小限度の実力行使」を可能とする核装備は許されるとしていることになる。

 鈴木宗男の娘の鈴木貴子がこの3月28日の内閣法制局長官横畠祐介の国会答弁を元に2016年3月23日に、〈核兵器不拡散条約の締結国である日本政府として、日本国憲法と日本国が締結した核兵器不拡散条約、どちらが優位に立つか説明を求める〉と質問主意書を提出している。

 政府は同年4月1日に、〈我が国は、核兵器の不拡散に関する条約(昭和五十一年条約第六号)上の非核兵器国として、核兵器等の受領、製造等を行わない義務を負っており、我が国は一切の核兵器を保有し得ないこととしているところである。〉としつつ、横畠長官が答弁したように〈我が国には固有の自衛権があり、自衛のための必要最小限度の実力を保持することは、憲法第九条第二項によっても禁止されているわけではなく、したがって、核兵器であっても、仮にそのような限度にとどまるものがあるとすれば、それを保有することは、必ずしも憲法の禁止するところではない。〉答弁している。

 但しこの答弁書は鈴木貴子が尋ねた〈核兵器不拡散条約の締結国である日本政府として、日本国憲法と日本国が締結した核兵器不拡散条約、どちらが優位に立つかのか〉との質問には満足に答えていない。

 〈核兵器を保有及び使用しないこととする政策的選択を行うことは憲法上何ら否定されていないのであり、現に我が国は、そうした政策的選択の下に、非核三原則を堅持し、更に原子力基本法及び核兵器の不拡散に関する条約により一切の核兵器を保有し得ないこととしているところであって、憲法と核兵器の不拡散に関する条約との間に、お尋ねのような効力の優劣関係を論ずるべき抵触の問題は存在しない。〉で逃げている。

 なぜ逃げているかというと、「核兵器の不拡散に関する条約」(=「核拡散防止条約」)は第10条第1項で、〈各締約国は、この条約の対象である事項に関連する異常な事態が自国の至高の利益を危うくしていると認める場合には、その主権を行使してこの条約から脱退する権利を有する。〉と規定しているからである。

 核拡散防止条約よりも各国それぞれの安全保障を上に置いている。そして変数でしかない、常にエスカレートしていく性格を内に隠している“必要最小限度”の核の保有も使用も憲法は認めていると考えているなら、既に触れたように核兵器不拡散条約よりも日本国憲法の方が優位に立っていることになる。

 この答弁書は副総理の麻生太郎名で閣議決定されているが、単に安倍晋三が出席していなかっただけのことで、横畠裕介の国会答弁も含めて、全て安倍晋三の意思であって、常に将来的に核保有の必要性が生じた場合に備えた核に関わる憲法解釈と見なければならない。

 このような意思のもと、安倍晋三は広島と長崎の原爆死没者慰霊平和祈念式典で、「核兵器のない世界の実現」とか、「非核三原則を国是として堅持」、あるいは「一発の原子爆弾により、一瞬にして数多(あまた)の貴い命が失われた」、「あの悲惨な体験の『記憶』を、世代や国境を越えて、人類が共有する『記憶』として継承していかなければなりません」と毎年のように繰返しスピーチしているのであって、このことを弁えて耳に入れなければならない。

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米朝軍事的緊張:戦争する時代ではないにも関わらず安倍晋三は戦争できる国にする準備を進めている

2017-08-13 11:34:54 | 政治

 米朝関係がかつてない程の軍事的な緊張が高まっているようだ。7月4日(2017年)に続いて7月28日夜遅く発射実験したミサイルはICBM級と言われ、誘導能力や制御能力は未確立ながら、アメリカ本土に到達可能と言われている。

 米朝緊張関係の要因の一つに北朝鮮の対米挑発に向けたトランプの日本海への空母2隻の展開、米韓軍事演習と共に軍事的解決も辞さないとする発言も関わっているようだ。
  
 国連安保理は北朝鮮の7月の二度のミサイル発射実験に対して8月5日、一段と厳しい対北朝鮮制裁決議を全会一致で採択した。北朝鮮はこの決議に反発、北朝鮮の朝鮮人民軍戦略軍報道官は米戦略爆撃機による朝鮮半島周辺での訓練実施を非難し、北太平洋の米領グアム島周辺を中距離弾道ミサイル「火星12」で「包囲射撃する作戦計画」を慎重に検討しているとの8月8日付の声明を発表した。

 「時事ドットコム」   

 声明「「アンダーセン基地を含むグアムの主要軍事基地を制圧・けん制し、米国に厳重な警告メッセージを送るためだ。近く、最高司令部に報告され、金正恩朝鮮労働党委員長が決断すれば、任意の時間に同時多発的、連発的に実行される」

 アンダーセン空軍基地には米爆撃機が配備されていると言う。

 この記事では触れていないが、声明はグアム向けのミサイルの飛行コースに島根県、広島県、高知県の上空を挙げ、グアム島周辺30~40キロの水域に着弾することになると触れていたと言う。

 政府は8月12日、北朝鮮ミサイル発射に備えて中国・四国の4カ所に地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)の配備を行った。

 トランプの方はこのミサイル発射予告に対して8月10日、「彼がグアムに何かしたら、誰も見たことのないようなことが北朝鮮で起きる。これは挑発ではない」と述べたと「NHK NEWS WEB」記事が伝えていた。

 北朝鮮の軍事的威嚇に対するトランプの軍事的威嚇という対応を取っている。お互いの威嚇が威嚇で終わると底が割れてしまい、双方共にオオカミ少年の姿を纏うことになって、オオカミ少年だと冷笑されないために無理やり軍事攻撃をかけない保証はない。

 それがどちらの側からの攻撃であっても、双方共に大きな打撃を負うことになるはずだ。北朝鮮の国力自体はアメリカのそれと遥かに劣っていても、先軍政治の結果、軍事能力が肥大化しているはずで、戦前の日本と同じように国力が遥かに優るアメリカに長期戦には耐えることができなくても、その場任せの短期戦を仕掛けてくる可能性は否定できない。

 当然、アメリカ国民の犠牲をゼロに抑えることはできないだろうし、アメリカが在日米軍基地を北朝鮮本土攻撃の発信基地とするのは分かり切っているから、日本も攻撃対象とすることになって、同じく日本国民の犠牲をゼロに抑えることはできないはずだ。

 誰が考えても、戦争をしたら、国民の生命・財産は守ることはできないことを自明の理としなければならない。

 8月12日に山口県長門市を訪れていた安倍晋三は北朝鮮のグアム周辺ミサイル発射声明に対して「国民の生命と財産を守るために最善を尽くす」と強調したとNHKテレビが放送していた。

 この発言はあくまでもグアム周辺を目標地点としたミサイル発射が無事日本の上空を通過した場合とそのミサイル発射が失敗して日本の本土のどこかに落下する恐れが出た場合の限定となる。

 但し後者であったとしても、パトリオットミサイル(PAC3)が北朝鮮ミサイルを日本の本土上空に達する前に撃墜できた場合に限ることになる。

 もしこの発射をキッカケとしてアメリカが北朝鮮攻撃に踏み切り、両国が戦争をするようになったなら、安倍晋三の言葉は全く以って無効となって、論理矛盾が生じることになる。一国の指導者による「国民の生命と財産を守る」なる言葉はどのようなケースでも機能しなければならないからだ。

 この論理矛盾に整合性を与えるとしたら、「一部の国民の生命と財産を犠牲にして、大多数の国民の生命と財産を守るために最善を尽くす」と言葉を変えなければならないだろう。

 21世紀の今日に至ってもなお戦争をする時代だろうか。戦争をして、「一部の国民の生命と財産を犠牲にして、大多数の国民の生命と財産を守るために最善を尽くす」という時代だろうか。

 アメリカは北朝鮮に対してその核保有を認め、国交締結交渉の用意があると宣言、先ずは米朝が同じテーブルに着くことが先決問題ではないだろうか。国交締結が成立したなら、全ての経済・金融制裁を解除するだけではなく、自由な経済関係を築く。

 米朝がこのような関係となれば、相互に敵国と見做す警戒視は必要なくなって、アメリカは北朝鮮が核を向ける国から外れることになって、アメリカから見た場合、その核は無効化する。

 勿論、北朝鮮にプラスになる条件だけではなく、北朝鮮の核保有は認めても、その核の他国への拡散は禁じる、30年といった時間を区切った独裁政治から民主国家への転換、最悪でも、独裁政治は金正恩政権一代限りとするといった条件は付けなければならない。

 あるいは日本の拉致問題の全面解決を条件の一つとして加えて貰うこともできるはずだ。

 これまでのように北朝鮮は政権の延命だけを目的として果たす気もない約束をし、その約束を破ってきたが、約束を破った場合に備えてテーブルに約束の保証人として中国やロシアを加える必要がある。約束を反故にした場合のツケの支払いを中国やロシアも北朝鮮に対して求めさせるために。

 北朝鮮が約束を破った場合の第1段階の採るべき方法は米中露に日韓を加えた、金正恩独裁体制の壊滅を狙った厳格な対北朝鮮金融・経済制裁の厳格な包囲網の構築であって、その過程で北朝鮮が暴発したなら、そのときは仕方がない、「一部の国民の生命と財産を犠牲にして、大多数の国民の生命と財産を守る」ことになる軍事攻撃を以って報いるしかない。

 但しその軍事攻撃は戦争をしない時代を迎える方法を構築できなかった代償としなければならない。その代償の一類型である多くの国の少なくない国民の生命と財産の犠牲が戦争というものについて多くを学ばせることになるだろうが、学んだことを忘れさせ、風化させることも人間が陥りやすい平和と戦争の時代を循環する代償の一類型と見做さなければならない。

 もし北朝鮮が民主化を約束し、その約束が果たされたときは、金正恩一族が北朝鮮国民から命を狙われる危険が生じた場合はアメリカへの移住を許し、その生命を保護することを条件の一つに加える必要も生じるかもしれない。

 もはや戦争をする時代ではなくなっていても、中東やアフリカで戦争紛いのことが起こっていて、多くの国の決して少なくはない一部国民の生命と財産が犠牲を受けている。

 だとしても、国家の指導者の「国民の生命と財産を守る」という言葉は現在の時代に於いて誰の命一つにしても尊いとする生命の尊厳に厳格に合致していなければ、言葉自体の価値を失うゆえに「一部の国民の生命と財産を犠牲にして、大多数の国民の生命と財産を守る」ことになる、あるいは「大多数の国民の生命と財産を犠牲にして、一部の国民の生命と財産を守る」ことになる可能性が否定できない戦争は回避していって、それを無くす方向に叡智を傾けるべきだろう。

 だが、トランプは北朝鮮の軍事的威嚇に軍事攻撃の選択肢をちらつかせて同じく軍事的威嚇で応じている。

 日本の安倍晋三は北朝鮮の核・ミサイル開発と中国の海洋進出を念頭に日本の安全保障環境が厳しくなっていることを正当化の口実に軍備増強に励み、日本を戦争できる国にする準備を進めている。
 
 その一方で、「国民の生命と財産を守るために最善を尽くす」と言っている。

 戦争は「一部の国民の生命と財産を犠牲にして、大多数の国民の生命と財産を守る」ことになりかねない。あるいは「大多数の国民の生命と財産を犠牲にして、一部の国民の生命と財産を犠牲にしかねない」危険性も孕んでいることに留意しなければならない。

 生命の尊厳を言うなら、あるいは「国民の生命と財産を守る」という言葉を厳格に守るなら、もはや戦争をする時代でないということにしなければならない。戦争は生命の尊厳や国民の生命と財産の尊重に対する逆説としかならない。

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日報問題に見る防衛省・自衛隊内の情報隠蔽に関わる空恐ろしい程の権威主義(=チェック機能不在)の横行

2017-08-12 11:29:27 | 政治

 「権威主義的パーソ ナリティ」(権威主義的人格)について『社会心理学小辞典』有斐閣)に「自己の所属する集団・社会の権威や伝統、さらに上位者や強者に対して無批判に同調・服従し、逆に他集団や下位者・弱者に対して敵意を向け、絶対的服従を要求する傾向を持つ性格特性をいう」と出ている。

 要するに権威主義とは優越的位置にいる上位権威者は劣位的位置にいる下位権威者に対して権威を振り回して無条件・無考えに同調・従属を求める傾向にあり、下位権威者は上位権威者に無条件に同調・従属する傾向にあることを言う。

 簡単に言うと、上は下を従わせ、下は上に従う思考性・行動性を言う。

 当然のことながら、このような同調・従属の権威主義の思考性・行動性に於いてはチェック機能が不在か、麻痺した状況にある。

 南スーダンPKO派遣自衛隊部隊の日報問題を巡って防衛省防衛監察本部が特別防衛監察を行って2017年7月27日に公表した報告書の中にこの権威主義が空恐ろしい程に横行している状況が否応もなしに浮かび上がってくる。その箇所を適宜摘出してみる。

 先ず日報は情報公開制度に基づいた開示請求に対して説明資料に使った後、廃棄したとして非開示扱いしたが、実際は廃棄せずに利用されていた状況について報告書は次のように記載している。

 平成28年7月7日から7月12日(現地時間)、南スーダン派遣施設隊関係職員は、本件日報を作成するとともに、陸自指揮システム(以下「指揮システム」という。)の掲示板に本件日報データをアップロードした。

 

 日報データは、統幕、陸幕、CRF司令部において、モーニング・レポートなどの報告資料の一部として使用されているとともに、関係職員間において現地状況の把握のための情報共有資料として活用されていた。

 「CRF」とは中央即応集団のことで、陸上自衛隊に於ける防衛大臣直轄の機動運用部隊ということだそうだ。

 では、廃棄していないのに廃棄したと偽ることになった経緯。

 (2) 本件日報に関連する開示請求への対応(平成28年7月~9月)

ア平成28年7月19日、内局情報公開・個人情報保護室(以下「内局情個室」という。)は、「2016年7月6日(日本時間)~15日の期間に中央即応集団司令部と南スーダン派遣施設隊との間でやりとりした文書すべて(電子情報含む)」に係る開示請求書を受付した。内局情個室関係職員は、陸幕、統幕、防衛政策局関係職員に対し、開示請求書を送付した。

イ平成28年7月20日以降、CRF司令部関係職員は、陸幕から送付された開示請求書に基づき該当文書の探索を実施した結果、CRF司令部において、行政文書としての日報が含まれた複数の該当文書の存在を確認した。

ウ平成28年8月1日頃、CRF副司令官(国際)は、CRF司令部関係職員から、日報を含む複数の該当文書を探索結果とする旨について報告を受けた際、日報が該当文書から外れることが望ましいとの意図をもって、日報は行政文書の体を成していないと指摘し、日報以外の文書で対応できないか陸幕に確認するよう指導した。

 当該指導を受け、CRF司令部関係職員は、陸幕関係職員に対し、保有している日報は個人資料であると説明した上、日報を該当文書に含めないとする旨について確認し、含めなくてよいとすることで了承された。

 報告書はCRF副司令官(国際)に対する事情聴取に対してなのだろう、〈CRF副司令官(国際)は、部隊情報の保全や開示請求の増加に対する懸念により日報が(開示請求の)該当文書から外れることが望ましいとしている。〉と記載している。

 CRF(中央即応集団)と陸幕との上下関係性は上記文章を読むと、陸幕が上でCRFが下となっている。但しCRF内ではCRF副司令官が〈日報が該当文書から外れることが望ましいとの意図〉を持ち、開示は日報以外ではダメかどうか部下に対して「陸幕に確認するよう指導」し、その指導のまま、陸幕に確認した行動は上位権威者であるCRF副司令官(国際)の意図に下位権威者であるCRF司令部関係職員が無条件に同調・従属する(部下がまずいではないかと「反対」、「再考を促す」、「翻意を求める」といった言葉は報告書から出てこない。)関係性を示していて、両者間に権威主義の力学の作動を見ることができる。

 いわば権威主義の力学下にあったために下位権威者側からチェック機能が何ら働かなかったと言うことができる。

 またCRF司令部関係職員の陸幕に対する確認に対して陸幕が日報を該当文書に含めなくてよいとした“了承”は陸幕の上司の承認を受けた「陸幕関係職員」の承認であって、この経緯にも部下の側からのチェック機能を不在としていたか麻痺させていたか、それが何ら機能しなかった無条件・無考えに同調・従属していく権威主義の力学を見ることができる。

 尤も既に触れたようにCRF副司令官と陸幕の上下関係は陸幕が上位権威に位置していることから日報の非開示が上位権威者である陸幕側から出て、CRF副司令官側が無条件・無考えに同調・従属する権威主義によって決まったものではなく、下位権威者側から出て上位権威者側が「了承」するという権威主義の上から下へとは逆の経路を取っているゆえに権威主義の力学が両者間に作動した非開示決定ではないが、それぞれの内部に於いて無条件・無考えに同調・従属する権威主義の力学が働いていたことと、陸幕が下位権威者に位置した場合は上位権威者に対して無条件・無考えに同調・従属する権威主義の力学に馴染んでいるからこそ、CRF副司令官という下位権威者に対してもチェック機能を不在、あるいは麻痺させて、結果的に日報の非開示という流れをつくってしまったということではないだろうか。

 陸幕運用支援課においては、日報をダウンロードし、報告資料の一部として使用、他部署への共有をしていたことから、日報の存在を認識できる状況であったにも関わらず、陸幕運情部長及び陸幕運用支援課長等は、日報が除かれた文書のみを該当文書とする開示意見の上申を安易に了承したことは、適切ではなかった。

さらに、統幕参事官付においても、日報が共有され、報告資料の一部として使用していたことから、日報の存在を認識できる状況であったにも関わらず、統幕参事官付関係職員は、日報が除かれた文書のみを該当文書とする開示意見の案の意見照会に対し、意見なしと安易に回答したことは、適切ではなかった。

 ここでも「開示意見の上申を安易に了承」、あるいは「意見照会に対し、意見なしと安易に回答」という無条件・無考えな同調・従属が下位権威者であるCRF副司令官から上位権威者である陸幕に働いていたのと同じく権威主義の上から下へとは逆の経路を取っているものの、統幕にしても陸幕同様に上位権威に対しても下位権威に対しても権威主義の思考性・行動性に馴染んでいるからこそのチェック機能を不在、あるいは麻痺させた「安易」さであるはずだ。

 このような無条件承認、あるいは無考え承認は防衛省と自衛隊内部に権威主義の力学が横行・蔓延していることの証明としかならない。

 戦前の日本の軍隊での上官の命令に絶対服従は権威主義の最たる表現であった。その空恐ろしさにまで現在の防衛省・自衛隊が達していなくても、チェック機能が不在、あるいは麻痺しているという点で、その権威主義の横行・蔓延は既に空恐ろしい状況に至っていると見るべきだろう。

 まるで防衛省・自衛隊組織ぐるみの権威主義の思考・行動性に見える。

 安倍晋三の自身の政治関与による加計学園獣医学部新設認定も、安倍晋三を最大の上位権威者とする権威主義が内閣府や文科省に働いていたに違いない。

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8/10日報問題閉会中審査での小野寺五典の答弁に見る国民に対する説明責任の欠如、厳格な事実解明の欠如

2017-08-11 12:00:22 | 政治

 2017年8月10日、PKO自衛隊日報問題解明の閉会中審査が衆参両院で行われたが、参院は外交防衛委員会で行われた。NHKは中継放送をしなかったが、「NHK NEWS WEB」の記事に出ている防衛相の小野寺五典の答弁の一つが国民に対する説明責任よりも次の不祥事に備えることを優先しているようにみえた。

 「NHK NEWS WEB」を案内として、記事では質問者を「民進党」で纏めているが、トップバッターに立った福山哲郎の質疑をYouTubでダウンロードして視聴したところ、うまくヒットさせることができたから、文字起こしして、詳しく見てみることにした。

 福山哲郎はフジテレビが7月25日に入手したと報道した日付が2月13日の、その日の幹部会議の内容を記した「防衛省幹部の手書きメモ」を印刷した紙を手にして、出席に名前を連ねている辰己昌良・前統合幕僚監部総括官に「幹部会議でこのような発言をしたのか」聞いた。

 メモの内容は廃棄したとしていた日報の電子ダータが出てきたことの扱いを稲田朋美に問う内容になっているという。

 特別防衛監察報告書の公表は2017年7月27日で、フジテレビ報道の2日後だが、報告書には記載されていない。

 辰己昌良「特別防衛監察の中で私自身、この調査に誠実に協力し、聴取に対して私の知っていることは真摯にお答えをしてきたところでございます。私の証言も含めまして、今回防衛監察本部が一方面の主張だけではなく、多方面からの主張等を総合的に勘案して事実関係を構築し、客観的な資料等を主軸として事実関係が認定され、『陸自に於ける日報のデータの存在について何らかの発言があった可能性は否定できないものの、陸自における日報の存在を示す書面を用いた報告がなされた事実や、非公表の了承を求める報告がなされた事実はなかった。また、防衛大臣により公表の是非に関する何らかの方針の決定や了承がなされた事実もなかった』と言うことが認定されているものと承知をしておりますので、これ以上のことについて申し上げることは差し控えたいと思っております」

 二重カギ括弧内の文飾を施した発言は特別監察報告書内の文言を丸読みしたものである。

 辰己昌良は「特別防衛監察の聴取に対して真摯にお答えをしてきた」と言っているが、報告書を全てとしてそれ以外は答えない姿勢は国民に対する説明責任に真摯に対応しようとする姿勢の欠如にそのまま繋がっている。

 この姿勢の欠如は事実解明に真摯に応えようとする姿勢の欠如を示していることになる。

 福山哲郎「防衛監察では真摯に答えるけども、国会の場では答えられないということはどういうことですか。防衛大臣、防衛監察では答えられるけども国会では答えられないというのは、それで日報問題の疑惑が晴れるのですか」

 小野寺五典「今回特別監察をするに当たって特別監察本部が様々な形で事情を聴いたということは報告を受けておりますし、それぞれの該当する方々が真摯にお答えされたということなんだと思います。

 ただ監察の内容ということを考えますと、例えばこの監察の中のそれぞれの言い方、証言が外に詳(つまび)らかになることになりますと、今後同じような監察をする場合にしっかりとした証言を得ることが難しくなる可能性も出てまいります。

 これは防衛監査という一つの役割の中で、(辰巳)審議官がお話されたような内容になっていると私は理解をしております」
 
 福山哲郎「全く答えていない。(辰巳の)今の姿勢についてどう思うか聞いてるんです。防衛監察の遣り方を聞いているわけではありません」
 
 小野寺五典は「防衛監査という一つの役割の中で、(辰巳)審議官がお話されたような内容になっていると私は理解をしております」との文言で辰己昌良の答弁は防衛監察での証言そのままを伝えている発言だとする一方で、特別防衛監察の証言が外部に漏れると次の監察で正確な証言を得ることができないと矛盾したことを言っている。

 もしそういう事態が起こり得る可能性を事実としているなら、特別防衛監察の聴取に対して辰己昌良が証言したことを「詳らかに」載せていない体裁の報告書ということでなければならない。

 断るまでもなく、「詳らかに」報告書に載せていたなら、「今後同じような監察をする場合にしっかりとした証言を得ることが難しくなる可能性」が生じることになるなるからである。

 しかしこのことは国会答弁で詳しく話さないことを正当化するための単なる口実に過ぎないはずだ。なぜなら、何よりも優先させなければならないことはしっかりとした国民に対する説明責任であって、それを果たすためにはどのような特別監察であっても、「しっかりとした証言を得ること」、しっかりとした証言をさせることを特別監察本部の役割としなければならないからだ。

 今後の証言獲得の困難を楯に「詳(つまび)らかに」できないという理由で国民に対する説明責任を満足に果たさなくていいとする口実など許されるはずはない。

 口実を設けて国会での詳らかな証言を避けるということは野党追及を防衛省の防衛監察本部が日報問題を巡って設置した特別防衛監察の2017年7月27日公表の報告書の通りで凌ぐということを意味することになる。それが調査した事実の全てだとして。

 この点にこそ、最優先しなければならない国民に対する説明責任の順位を下げた姿勢を窺うことができる。辰己昌良の上記答弁がまさに同じ姿勢となっている。

 と言うことは、既に触れたように特別監察の報告書自体が証言を「詳らかに」載せていない、いわば国民に対する説明責任の順位を下げた姿勢で書かれた内容となっていることを示す。

 この順位降格は厳格な事実解明の順位降格と対を成すのは断るまでもない。前者によって後者は導き出され、後者によって前者を成り立たせることになる密接な相互関係性を両者は築き合う。

 もし特別防衛監察が国民に対する説明責任の順位と厳格な事実解明の順位を同時併行で下げた監察であったなら、いわば事実の厳格な追求を後回しにしていたなら、取調べる側は順位下げの自らの利益に一致させるために手心を加える姿勢で取調べを受ける側に向き合うことになり、取調べを受ける側も手心を加えられることによって(答を用意してくれている場合もある)相手が目指す利益に気づいて、その利益に添おうとする、両者共に忖度を働かせて、程々の取調べとその取調べに対する程々の供述で手を打つという利害の一致を物の見事に完成させるケースが生じる。

 そういったケースに当てはまるはずはなく、特別監察に何の隠し立てもなく誠実に証言したと言うなら、国会での野党の追及に対しても同じように何の隠し立てもなく積極的な姿勢で誠実に答弁できるはずだ。

 逆の展開を取っていること自体が取り調べる側と取調べを受ける側の無難に収めるための両者双方の忖度と利害一致で成り立たせた報告書であり、そのような国答弁という性格を帯びていることになる。

 勿論、国民に対する説明責任の姿勢、厳格な事実解明の姿勢を欠いていることを端緒とした上記姿勢なのは断るまでもない。

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