文飾は当方。
2017年7月24日衆議院予算委員会(加計学園閉会中審査) 大串博(民進党)「加計理事長は一度も獣医学部をつくりたいということを、申請しているということを安倍総理に言わなかったということを今言われましたけれども、では総理は、この加計理事長、構造改革特区にも十数回、ずっとこの獣医学部新設の申請をされています。あるいは、2年前からは国家戦略特区に移行して申請をされています。 総理は、加計理事長がこの獣医学部新設に対して、特区において申請をされているというふうに知られたのはいつですか」 安倍晋三「構造改革特区について加計理事長は申請をしていたわけでございます。安倍政権においても四回申請をされ、民主党政権の最後に申請され、そしてその判断をしたのは、安倍政権であったものを入れると五回でございますが、五回とも我々は事実上認めていないわけでございます。 そこで、この構造改革特区については説明がございますが、いわば事実上、十数通の申請がございますが、認めていないものでございますので、私はそのときに説明は受けていないものでございます。 ですから、この加計学園の申請が正式に認められた国家戦略特区諮問会議において、私が知るところに至ったわけでございます」 大串博「正確にお答えください。いつですか」 安倍晋三「これは、1月20日に加計学園の申請が正式に決定したわけでございます」 大串博「もう一度お尋ねします。 加計学園が申請しているということを、ことしの1月に、認められたときに初めて知ったということですか」 安倍晋三「先ほども申し上げましたように、私は知り得る立場にはあったわけでございますが、しかし、そのことについての具体的な説明は私にはなかったわけでございまして、知った時期については今申し上げたとおりでございます」 玉木雄一郎(民進党)「一番私が驚いたというか納得できないなと思ったのは、総理が加計学園の加計理事長と何度も何度も食事やゴルフをしているという話の中で、ことしの1月20日になるまで申請していたことを知らなかったという話がありました。 本当かなと思いますが、獣医学部をつくりたいという意思を加計学園が持っていたことは、もうずっとこれは総理も御存じだったと思うんですが、本当にことしの1月20日になるまで、加計学園が、加計理事長が特区で獣医学部をつくりたいという意図を持っていたことも知らなかったということでよろしいですか」 安倍晋三「それはそのとおりでございます」 玉木雄一郎「総理、午前中に小野寺議員から、構造改革特区でありますけれども、15回、ずっとこれは構造改革特区で獣医学部の新設を加計学園が求めてきたと。全部これははねられたわけですね、構造改革特区では、民主党政権も含めて。第二次安倍政権になってからも、数え方にもよりますが、15回のうち5回は実は第二次安倍政権ができてから構造改革特区で加計学園が獣医学部の新設を申請してきているんですよ。 それでも総理、ことしの1月20日になるまで、獣医学部をつくりたいという思いがあること自体も全く知らなかったということでよろしいんですか。もう一度」 安倍晋三「これは午前中も答弁をさせていただいたところでございますが、構造改革特区につきましては、安倍政権になりまして5回、そのうち1回は野田政権で申請されて安倍政権で結論を出しているわけでございますが、この5回とも認めていないわけでありまして、いわば、数十の構造改革特区があるわけでございまして、多くの特区が認められていないわけでありまして、そのうちの一つでございますので、この件については説明を受けていないということでございます」 |
2017年7月25日参議院予算委員会(加計学園閉会中審査) 蓮舫「総理、今年1月20日の諮問会議であなたは加計学園に規制緩和が行われることを初めて知ったと答弁をされました。本当ですか」 安倍晋三「改めて、今回この閉会中審査が行われるに当たり整理させて説明をさせていただいたところでございますが、この国家戦略諮問会議におきましてもまさに申請しているのは今治市であるわけでございまして、ですから、今治市であるということは私は承知をして、知り得る立場にあり、今治市ということについては知っているわけでございます。 しかし、加計学園ということについては、これは知り得る立場ではあるということは申し上げてきたわけでございますが、私が、この加計学園ということが決定をした、加計学園、今治市のこの申請が加計学園ということで決定をした1月20日の国家戦略特区諮問会議の直前の説明、事務方による段取りとともに説明をされたときでございます」 ・・・・・・・・・・ 安倍晋三「今回の閉会中審査に当たりもう一度しっかりと確認をさせていただいたのでここで正確に申し上げますと、まず獣医学部新設の提案者は、構造改革特区でもその後の国家戦略特区でも自治体である今治市であり加計学園ではないわけでありまして、その上で、構造改革特区時代の今治市の提案については十数件、数十件ある案件の一つにすぎず、結果も四度とも提案を事実上認めないものだったので実際には私は全く認識をしていなかったわけでありまして、ただし、その対応方針は私が本部長を務める構造改革特区本部で決定していることから、本件について知り得る立場にあったことをそのような表現で申し上げたわけでございます。 なお、他の答弁を確認いただければ、構造改革特区本部で対応方針を決定しており、知り得る立場にあったと繰り返し、他の答弁においてはですね、この答弁を申し上げているところでございます」 |
安倍晋三は構造改革特区にしても、あるいは国家戦略特区にしても、そのように名付けた規制改革制度を利用した事業提案は特区指定を受けた自治体が行うもので、事業主体が行う仕組みになっていないから、今治市が新設を提案していた獣医学部の事業主体が加計学園であることは知る由もないと答弁している。
このような関係から、構造改革特区に関して言うと、知り得る立場にあったが、今治市への獣医学部新設が認められなかったことから事業主体が加計学園であることは認識できなかった。
国家戦略特区に関しては今治市新設の加計学園が事業主体として1月20日の国家戦略特区諮問会議で認められたことから、その日に知ることができたという答弁になる。
2017年5月8日衆議院予算委員会 宮崎岳志(民進党)「加計孝太郎氏が獣医学部をつくりたがっているということはいつから御存じだったんでしょうか。また、この国家戦略特区の枠組みを使いたがっているということはいつから御存じだったんでしょうか。お答え願えますか」 安倍晋三「獣医学部を新設する主体については、平成19年11月の今治市等による構造改革特区提案において加計学園が候補として記載されていました。 第2次安倍政権発足後も、内閣総理大臣が本部長である構造改革特区本部においてこの提案に対する政府の対応方針を決定しており、他の多くの案件と同様、本件についても知り得る立場にあったというのは御承知のとおりだろうと思いますが、他方、この加計学園から私に依頼等があったことは一切ないということは申し添えておきたいと思います」 |
2017年5月9日参議院予算委員会 森ゆうこ(自由党)「それで、加計学園についてお聞きをしたいと思います。 国家戦略特区による獣医学部の新設が決定をいたしました。52年ぶりの獣医学部が新設をされることになります。 総理に伺います。加計孝太郎理事長が今治市で国家戦略特区による獣医学部新設の希望を持っていることを知っていましたか」 安倍晋三「この加計学園が、当然これは特区に申請を今治市が出しますから、この特区に申請した段階においてこの説明を受ける、当局から説明を受けるわけでございますので、その段階で当然総理大臣として知り得たと、こういうことでございます」 森ゆうこ「昨年の平成28年8月23日には山本農水大臣と、そして同9月6日には松野文科大臣と、さらには9月7日に加計学園理事長加計孝太郎さんと、そして同行したのは豊田三郎氏、この方は文科省の天下りで大変問題になりました文教協会の専務理事でございますが、一緒に面会をし、そしてこの国家戦略特区についてお話をされたそうでございます。 総理も、事務方とかほかの大臣から説明を受けるだけではなく、加計孝太郎さんとは腹心の友ということでしょっちゅうお酒を飲んだりゴルフをやったりしているそうですから、直接いろんなお話をされていたんじゃないですか」 安倍晋三「既に答弁をさせていただいておりますが、獣医学部を新設する主体については、平成19年11月の今治市等による構造改革特区提案において加計学園が候補として記載されていました。 第二次安倍政権発足後も内閣総理大臣が本部長である構造改革特区本部においてこの提案に対する政府の対応方針を決定しており、他の多くの案件と同様ですね、本件についても知り得る立場にあったわけでございます。 加計学園から私に依頼があったことは一切ないということは申し添えておきたいと、このように思います」 |
宮崎岳志は加計学園理事長の加計孝太郎が国家戦略特区指定の今治市に獣医学部新設を希望していることはいつから知ったのか、森ゆうこは加計孝太郎が獣医学部新設の希望を持っていることを知っていたのかと質問している。
いわば両者共に加計学園が今治市新設獣医学部の事業主体を希望していることを既定のこととして尋ねている。
当然、安倍晋三はこの既定に対して肯定、あるいは否定から入らなければならないが、安倍晋三は「獣医学部を新設する主体については、平成19年11月の今治市等による構造改革特区提案において加計学園が候補として記載されていました」と答弁している。
要するに構造改革特区の規制改革制度を利用した今治市の獣医学部新設提案では加計学園がその事業主体の候補として記載されていたことを承知しているから、国家戦略特区への今治市提案の獣医学部新設の事業主体にしても、少なくとも加計学園であることは承知していたという意味を取ることになって、宮崎岳志と森ゆうこの“既定”を否定せずに肯定したことになる。
但しどちらに対しても、「この加計学園から私に依頼等があったことは一切ないということは申し添えておきたいと思います」と同じ文言を使って自らの口利きを否定している。
このような認識に対して2017年7月24日衆議院予算委員会(加計学園閉会中審査)では、獣医学部の事業主体が加計学園だと知ったのは加計学園が事業主体として正式に認定された2017年1月20日だと、答弁が変わった。
なぜなのだろうか。
7月24日以前の国会質疑は7月10日に午前中は衆議院、午後は参議院で共に行われた同じく加計学園疑惑に関わる閉会中審査である。そこから安倍晋三が答弁を変えることになったキッカケを探してみた。
2017年7月10日参議院文教科学委員会・内閣委員会連合審査会 加戸守行「日本の、少なくとも私が見る限り獣医学部は10年以前と今日まで変化しておりません。アメリカに、あるいはイギリス、ヨーロッパに10遅れていると私は思います。 今の10年の遅れを取り戻すべき大切な時期だ、そんな思いで今日も参上させていただいたわけでありまして、事柄は、そんな意味での地方再生、東京一極集中ではなくて、地方も頑張るんだ、地方も国際的な拠点になり得るんだよ、そういうもののモデルケースとして愛媛県の今治の夢を託している事業であって、加計ありき、加計ありきと言われますけど、12年前から声を掛けてくれたのは加計学園だけであります。私の方からも東京の有力な私学に声を掛けました、来ていただけませんかと。けんもほろろでした。 結局、愛媛県にとっては、12年間、加計ありきで参りました。今更、1年、2年の間の加計ありきじゃないんです。それは、愛媛県の思いがこの加計学園の獣医学部に積もっているからでもあります」 |
安倍晋三の7月10日以前までのスタンスは「平成19年11月の今治市等による構造改革特区提案において加計学園が候補として記載されていた」ことから、国家戦略特区に於いても事業主体を希望していることは少なくとも承知しているというものであった。
但し獣医学部新設を議論したどの諮問会議でもワーキンググルークヒアリングでも、新設の獣医学部の事業主体には一言も触れていない。当然、加計学園の名前は一度たりとも出てこない。
ところが7月24日の衆議院予算委員会になってからは突然、構造改革特区にしても、あるいは国家戦略特区にしても事業提案は特区指定を受けた自治体が行うもので、事業主体が行う仕組みになっていないから、今治市が新設を提案していた獣医学部の事業主体が加計学園であることは知る由もなかった、知ったのは事業主体に正式に認定された2017年1月20日というスタンスに変わった。
このスタンス変更の理由を前愛媛県知事の加戸守行のいわゆる“12年間加計学園一筋”とした発言にあるのではないかと見たのは不都合が生じるからである。
加戸守行は現在今治商工会議所特別顧問として2016年3月30日に広島県庁で行われた「広島県・今治市国家戦略特別区域会議」に当時の内閣府特命担当大臣の石破茂、さらに国家戦略特別区域諮問会議のメンバーである有識者議員八田達夫と共に出席して、今治市への獣医学部新設を訴えているからである。
この会議の議事録にも「加計学園」という発言は一言も記されていないが、“12年間加計学園一筋”としている加戸守行が出席していながら、加計学園という言葉を一言も発しなかったというのは極めて疑わしい。
また、2017年7月10日午前中の衆議院閉会中審査では公明党の吉田宣弘が「加戸守行前愛知県知事は教育再生実行会議において、四国の獣医師の不足について、これは三度にわたって訴えておられます」と発言、加戸守行が安倍晋三の私的諮問機関として官邸に設置された教育再生実行会議のメンバーであり、そこで「四国の獣医師の不足について、これは三度にわたって訴えていた」と言うことなら、同じく“12年間加計学園一筋”の加計学園について一言も触れなかったというのは極めて不自然である。
なぜなら、獣医学部新設は事業主体を想定していなければ、議論は成り立たないからだ。
但し加戸守行は7月25日の参議院加計学園閉会中審査で加計学園の名前を出さなかったとわざわざ断っている。
加戸守行「まず冒頭に、参考人としてお呼びいただきましたことを心から感謝申し上げます。 私自身が、今御指摘がありましたように、この今治へ獣医学部の誘致に一番先頭を切って旗を振った首謀者でございますだけに、今回こういう形で安倍総理への疑惑あるいは批判というような形で議論が展開されていることを大変悲しく思い、このぬれぎぬを晴らすせめてもの、いささかでも役に立ちたいと思って参上いたしました。 冒頭に申し上げますが、私は加計理事長が安倍総理との友人であったということは昨年まで全く存じませんでした。そして、今までの間に私は安倍総理を拝見しておりましたけれども、平成13年の2月にえひめ丸事故が起きたときに、当時、安倍首相の下で、官房副長官として危機管理を担当され、国内での調整、アメリカ、在日米軍との関係、あるいは様々な形での総合調整、便宜を計らっていただいた私にとっての大恩人でありますから、それ以来の安倍総理との何十回にわたる様々な会合を通じて加計のカの字も聞いたことはございませんし、私自身も申し上げたことはありません。 ただ言及したのは、教育再生実行会議の委員になりまして、このデッドロックに乗り上げている状態を側面射撃が、援護射撃ができないかなと思って、場違いではありましたけれどもその場で、愛媛県が獣医の問題でこんなに岩盤規制に面して困っていると、当時、安倍総理の言葉を使いまして、愛媛県の小さなドリルでは穴が空かないから教育再生実行会議のドリルで穴を空けてもらえないかというような発言をいたしました。 しかし、そのときには、一回目は場所を言いませんでしたが、二回目は愛媛県で用地を準備してという言葉は言いましたけれども、今治という言葉は触れておりません。 まして加計学園のカの字も出しておりませんから、多分私が発言した趣旨は、そのとき総理がいらっしゃったからこの話は少しは気にしてもらえるかなと思ったんですけど、恐縮ですが、余り関心なさそうにお聞きになっておられまして、それから間もなく提案が下ろされ、また、2回目に発言したときにはまた提案は駄目で全く反応がなかったので、今にして思えば、そんなときの友人だったんだ、だったのか、もし御存じだったら少しは反応が違っていたんだろうななんて今想像しているところであります」 |
ネットで調べたところ、教育再生実行会議の議事録を拾うことができなかったが、加戸守行はメンバーであった教育再生実行会議でも獣医学部の新設を訴えていた。
「私は加計理事長が安倍総理との友人であったということは昨年まで全く存じませんでした」
えひめ丸「以来の安倍総理との何十回にわたる様々な会合を通じて加計のカの字も聞いたことはございませんし、私自身も申し上げたことはありません」
但し教育再生実行会議の場で場違いでありながら、獣医学部新設を訴えた。
このことは“12年間加計学園一筋”の熱い思いからの止むに止まれぬ挙行であったはずだ。
であるにも関わらず、愛媛県の名前は出したが、今治という名前も加計学園の名前も出していなかった。
実際に出していなかったなら、出していなかったことをなぜこのように言葉を尽くしてわざわざ断らなければならなかったのだろう。
しかも質問者は自民党の青山繁晴であり、青山繁晴が聞いてもいない教育再生実行会議でのイキサツを自分から答えている。
この前日の7月24日の加計学園閉会中審査で安倍晋三が獣医学部の事業主体を知ったのは2017年1月20日だと発言したことに合わせて、加戸守行は“12年間加計学園一筋”と公言した手前、名前を出してこそ自然な振舞いを否定して辻褄を合わせる必要が生じたからではないだろうか。
このような辻褄合わせを加戸守行に迫った事情は、お互いが示し合わせたのかあるいは加戸守行の忖度なのか、いずれにしても安倍晋三が加計学園獣医学部新設に関して加計孝太郎から何も依頼されていない、それゆえに新設認定が口利きでもないことを示すために新設決定に至る全てのプロセスで事業主体が加計学園であることを隠してきたことに対して前愛媛県知事加戸守行が2017年7月10日の参議院閉会中審査で、「結局、愛媛県にとっては、12年間、加計ありきで参りました」と発言してしまったがためにそこから生じる不都合な様々な事実を抹消するためと見るべきだろう。
大体が事業主体に触れずに獣医学部新設の議論をすること自体が極めて不自然である。事業内容の質は事業主体の経営資金や事業構想によって決まる。今治市という場所に新設を決めればいいという話ではない。
場所と事業主体をセットで決めなければならない国家戦略特区を使った規制改革案であるはずだ。