8月7日テレビ朝日『橋下×羽鳥の番組』で橋下徹が発言した「閣僚個性無要論」の奇妙な妥当性

2017-08-10 12:00:47 | 政治

 2017年8月7日の夜11時15分からのテレビ朝日『橋下×羽鳥の番組』で橋下徹が閣僚個性無用論なるものを展開していた。この番組は原則事前収録だそうだから、8月7日以前の各出席者の発言ということになる。

 またこの番組はNHK「日曜討論」のようないわゆる硬派な討論番組ではなく、討論バラエティ番組だそうで、お笑い芸人の平成ノブシコブシの吉村崇や、知らない人物だったから、名前からネットで調べてみたのだが、タレントでモデルの、22歳でまだ若い谷まりあなどが出演していて、吉村崇がときどき冗談を突っ込んで笑わせたりしていた。

 主な個所だけを拾ってみた。文飾は当方。

 「緊急放送 安倍内閣国民の疑問SP」と題して第3次安倍改造内閣の点数を尋ねられた各出席者はそれぞれがフリップに点数を記入。

 自民党山本一太95点
 民進党玉木雄一郎40点
 自由党森ゆうこ20点
 慶應大学院教授岸博幸30点
 元NHKでジャーナリストの木村太郎50点
 橋下徹60点

 森ゆうこ(20点)「0点にしたかったけど、余りにも可哀想なので。結果出す『仕事人内閣』と言っていたけど、出す前に記録出せよ、と。資料出せよ、と。

 だって、兎に角記録がない、記憶がない、確認ができない、この一点張り。だから、こんな内閣ありませんよ。早く辞めるべき。加計問題、森友門題、安倍友ファーストの独裁政治。自分の気に入らない人たちはどんな手を使ってでも潰していくという恐怖政治。

 これはやめて頂きたいと思いますが、さすが0点では悪いかなと思って――」

 玉木雄一郎(40点)「内閣支持率ぐらいかなと思う。個々の大臣は優秀な方が多いと思いますし、存じ上げている方も多いのですが、安倍総理が代わらない限り同じです。防衛大臣は防衛省、文科大臣は文科省の隠蔽を引き継ぐなら、ダメです」

 木村太郎(50点)「この内閣は火消し内閣。安倍内閣の尻についた火を消すための内閣。まだ消火活動を始めていないんで、いいとも悪いとも言えない。それで50点だけど、この内閣は色々と不安要素がある。

 凄く気になったのは河野さんの外務大臣。外務大臣というのは代えてはいけない。代える、これはどういったメッセージなのだと外国は考える。こういうメッセージを発信するために代えるわけだから、すぐ隣の韓国では河野談話の息子がなったということは、安倍内閣が違う、慰安婦問題で違うメッセージを出していくんではないかと、そういうふうに受け取られる。

 アメリカも河野さんは凄くアメリカ通で、アメリカの大学を出ていて、英語も凄くうまい。この方の友達は全部民主党なんです。(アメリカの)民主党(寄り)の外務大臣をどうして持ってきたのか、みんな考える。これから大変だと思う」

 橋下徹(60点)「安倍さんを代えるかどうか、勿論野党の人は代えるべきだと言っている。代えるんだったら、玉木さん、今度代表選に出るんでしょ?代えろ、代えろと言ってるんだから、自分が責任を持ってやらないと。

 他の番組で出ないということを聞いて、『えっー』と思った。それダメでしょ」

 玉木雄一郎「原則は執行部だったので、幹事長や代表が辞めた選挙に自分が出るのはちょっと筋ではないと思ったんです」

 橋下徹「そういうことではなくて、今安倍さん代わるべきだと言われたんだったら、責任を取って、自分が代表になって政権交代を目指すんだということではないと、説得力が出てこないと思うし、民進党が新しい若手の人がどんどん声を上げないと変わっていかないと思うので、ちょっと苦言を言いました。

 で、60点としたのは、安倍さんが意識しているか意識していないか、内閣っていうのは変質してきているんですよ。大臣は個性は要りません。大臣は個性は要らない。

 要は行政のトップして決められた大方針を粛々としてこなしていくのが大臣になっていくんです。と言うのは、例えば防衛大臣と言っても、防衛大綱を今度改正するって話になっていますけども、大きな方針は誰がつくるかと言うと、国家安全保障会議の中でも首相が敵基地攻撃能力については検討しないよと。

 防衛大臣の方は敵基地攻撃能力については検討したいと言っているのに、もう総理の方は上から検討しないと決めちゃうわけですよ。教育についてはこれは教育実行再生実行会議というものがあるし、経済については経済財政諮問会議があるし、規制改革については規制改革国家戦略特区会議がある。

 いわゆる総理を中心としたその会議体が大きな方針を決めて、その方針を粛々と実行していくのが大臣の役割になってきているから、僕は個性のない今回の内閣というのは合格点だと。

 今度は色んな会議体の中に僕は民主党が政府と政党と一体化するということに挑戦したけれども、うまくいかなかった。いよいよここでね、経済財政諮問会議とか色んな首相直轄の会議体の中に自民党の、与党の幹部が入って来始めると、政府と国会の一体化というものが完成するのかなと思いますよ。

 内閣に(於ける)各大臣に個性を求める時代ではないと思っている

 山本一太(95点)「私はそうは思っていません。総理は適材適所を貫いた。野田聖子さんと河野太郎さんは高い評価を与えている。私は河野太郎さんは活躍すると思っている」

 橋下徹「個人の発信というのは抑えながら、大方針に従っていくというのが内閣のあるべき姿だと思う。(自信がないからと一旦断ったが、派閥のボスから、派閥の総意だから受けろと言われて、沖縄・北方担当大臣は引き受け、同じ自信がないという理由で国会答弁は役所の答弁書を朗読すると発言した江崎鉄磨を指して)あの姿がこれから求められる大臣の姿と僕は思う」

 玉木雄一郎「総理の指示自体が明確な一貫性とかメッセージがないことが問われている。橋下さん、(閣僚の)打診なかったですか」

 橋下徹「ないですよ。本当にない」

 玉木の質問はバライティー番組としては面白い。

 誰一人、橋下徹の「閣僚個性無要論」なるものそのものについては反論も批判もなかった。山本一太が「私はそうは思っていません」と言っていることは、個性を持った閣僚として野田聖子と河野太郎を挙げたに過ぎない。

 橋下徹は「内閣に(於ける)各大臣に個性を求める時代ではない」と言い、「大臣は個性は要らない」と二度言い、「僕は個性のない今回の内閣というのは合格点だ」と断言している。

 決して、「閣僚は個性を抑えなければならない」と言っているわけではない。あくまでも「閣僚個性無用論」であって、「閣僚個性抑制論」ではない。そして無個性の象徴的代表として江崎鉄磨を挙げた。

 これを妥当な発言とすると、ここに奇妙な矛盾が生じる。個性のない閣僚の中から次期首相を狙う者が出て、次期首相となった場合、個性のない首相と言うことになり、個性のない閣僚と個性のない首相が無個性を基準として循環する奇妙な現象が起きることになる。

 それとも閣僚のとき無個性で、首相になった途端に個性が現れるとでも言うのだろうか。

 閣僚のとき個性を抑えていて、首相になると、個性を全開にすると言うことは可能である。但し全開にすることができる能力があればの話だが。

 また、「総理を中心としたその会議体が大きな方針を決めて、その方針を粛々と実行していくのが大臣の役割になってきている」を各閣僚のルールとするなら、国家安全保障会議という会議体が敵基地攻撃能力の保有を決めていないことに対して小野寺五典が防衛相になったからと言って、8月3日の就任記者会見早々に敵基地攻撃能力保有の検討に言及することは明らかにルール違反となる。

 対して安倍晋三が「現時点で敵基地攻撃能力の保有に向けた具体的な検討を行う予定はない」と否定することである意味ルール違反を明らかにたということになる。

 だが、物事はそう単純ではない。2017年1月26日衆議院予算委員会で小野寺五典は安倍晋三に対して敵基地攻撃能力保有の必要性を訴えている。安倍晋三は2016年の北朝鮮の2回の核実験、20発以上の弾道ミサイル発射等、日本を取り巻く日本の安全保障環境が厳しくなっていることに触れてから、次のように答弁している。

 安倍晋三「議員御指摘のように、我が国自身によるいわゆる敵基地攻撃については、政府として、従来から、法理上の問題として、他に手段がないと認められるものに限り、敵の誘導弾等の基地をたたくことも憲法が認める自衛の範囲に含まれ、可能であると考えているわけでございます」

 その上で、「敵基地攻撃を目的とした装備体系を保有しておらず、また保有する計画もない」と敵基地攻撃能力保有を否定し、「専守防衛を日本の防衛の基本的な方針として堅持していく」ことを約束している。

 問題は安倍晋三自身が「他に手段がないと認められるものに限り」という条件付きながら、敵基地攻撃能力保有を憲法が認める自衛の範囲だとしていることであろう。

 対して小野寺五典は1月26日の衆議院予算委員会から2カ月後の3月29日に自民党安全保障調査会の座長として敵基地攻撃能力の保有を要請する提言を纏めて、翌3月30日に安倍晋三に提出している。

 そして8月3日の就任記者会見で、「今度は提言を受け止める側に回りました。提言で示した観点も踏まえ、問題意識と危機感を持って、わが国の弾道ミサイル防衛に何が必要かということを突きつめ、引き続き弾道ミサイル対処能力の総合的な向上のための検討を進めてまいりたい、そのように思っております」(防衛省)と国家安全保障会議という会議体が敵基地攻撃能力の保有を決めていないにも関わらず、防衛大臣として自身もメンバーバーの一人となるその会議で保有を働きかけていく姿勢を示している。   

 安倍晋三の軍事的な政治姿勢から言っても、憲法が認める自衛の範囲内だとしていることからも、国民に対して「敵基地攻撃能力」という言葉に徐々に慣れさせていって、最終的に保有に持っていく安倍晋三と小野寺五典の連携プレーによる慣らし運転という見方もできる。

 この見方からすると、敵基地攻撃に関する二人の個性はギラギラしていて、「総理を中心としたその会議体が大きな方針を決めて、その方針を粛々と実行していくのが大臣の役割」という個性無用論の従属的な関係性は必ずしも当てはまらないことになる。

 閣僚に於ける個性有用・無用は関係ない。また、政策の一致・不一致も関係ない。個性を持っていようが、持っていまいが、あるいは政策が一致しようが一致しなからろうが、一般的にはある政策に関して首相自身が確固とした方針を持っていた場合、その政策に関係する行政機関の長(=大臣、長官)は首相の方針に従う影響下に置かれることになる。

 しかしこのことは橋下徹がこれからの閣僚は個性は必要ではなく、首相の方針に粛々と従うことだけが役割だと言っている「閣僚個性無用論」とは全く以って異なる。

 行政機関の長だけではなく、政府の様々な会議体に於いても、そこで議論する政策に関して首相自身が確固とした方針を持っていた場合、そこでの議論にしても結論にしても、首相の方針の影響下に置かれて、議論も結論も、その方針に誘導されることになる。

 でなければ、首相の意味はなくなる。誘導できなくなったときは首相としての力を失ったときである。

 首相の支持率が高い程、誘導の力は強まる。国家戦略特区諮問会議で安倍晋三の政治関与によって今治市への獣医学部新設を認めて、その事業主体に加計学園とすることができたのも、諮問会議のメンバーの政府側委員が支持率の高さを背景とした安倍晋三の影響下にあったから、安倍晋三の前以っての方針を認めさせることができて、政府側委員が誘導した結論を民間有識者議員に「異議なし」で機械的に承認させていく、二重に影響を働きかけることができる構図を取っていたからだろう。

 かつて国会同意人事であるNHKの経営委員候補者に安倍晋三寄りの人物を集めて国会に諮って、安倍晋三の巧妙な選挙術で獲ち得た、それゆえに安倍晋三の影響下にしっかりと置くことができた自民党多数という国会の頭数を力に同意を得てNHKに送り込み、その経営委員の選挙で安倍晋三寄りの籾井勝人をNHK会長に選任できたのも、安倍晋三自身の前以っての方針が持つ影響力の作用であるはずである。

 要するに個性が必要とか無用とかは関係しない。

 安倍晋三自身の慰安婦に関わる歴史認識は「日本軍兵士が家に押しいって人を人攫いの如く連れていくと言った種類の狭義の強制性はなく、日本軍の関与は慰安婦所の設置、管理及び慰安婦の移送と業者に対して行った慰安婦の募集のみで、勿論強制売春はない」とする内容となっているが、前外相の岸田文雄と韓国の外相との間で2015年12月28日に結ばれた日韓慰安婦合意は10億円という拠出金も力として安倍晋三のこのような慰安婦に関わる歴史認識の影響下で決着を見たもので、岸田文雄が慰安婦に関してどのような歴史認識を抱えていようとも、それが安倍晋三と同じ内容であったとしても、自身の歴史認識に絡めた決着ではない。

 外相という地位が安倍晋三に任命されている上に日韓との間で慰安婦に関わる歴史認識の決着の付け方に安倍晋三自身が確固とした方針を持っている以上、岸田文雄はその影響下に立たされることになるからだ。

 河野太郎にしても新しく就任したばかりで、その上河野太郎の息子ということで持て囃す動きが内外に見受けるが、2017年8月6日からのASEAN10カ国外相会議に出席、その後も各国を訪れて首脳や外相と次々に会談しているが、発言していることは中国に対しては北朝鮮のミサイル発射や核実験をやめるよう働きかけると同時に中国の南シナ海での一方的な現状変更を伴った海洋進出に対して法の支配に基づく平和的解決の訴え、韓国に対しては日韓慰安婦合意の速やかな履行、その他の外国に対しては国連で決議された北朝鮮のミサイル発射に対する制裁の着実な履行を中国に対して一致して要求するといったところで、これらの言動は安倍晋三の政策の範囲内で、そこから一歩も出ていないものであって、何も河野太郎が外相として新規に打ち出した独特の政策というわけではない。

 河野太郎はいくらハト派を名乗っていても、今後共安倍晋三の外交政策の影響下に置かれて、その範囲内の活動しかできないだろう。安倍晋三の「積極的平和主義外交」と言いつつ、自衛隊の海外進出を強めていく外交政策を外交担当の閣僚として推し進めていく。

 それが任命権者と被任命者の違いである。

 首相と閣僚の関係に於いてこれからの閣僚は個性は必要ではないといったレベルで、その関係を維持していくことは決してない。個性とは関係のない場所で首相が方針とする政策の影響下に置かれて行動しなければならないというだけのことに過ぎない。

 このことは昔も今の変わらない。もし閣僚を首相自身の政策の影響下に置くことができなかったら、それは首相自身のリーダーシップを欠いていた場合のみである。

 もし河野太郎が自身の政治・外交に於ける個性を打ち出したいと思ったら、橋下徹が玉木雄一郎に「安倍晋三を代えるべきだと言うなら、自身が民進党の代表になって政権交代を目指すべきだ」と言ったように自身が首相になって、自らが個性とする政治の影響下に全ての閣僚を置いて、思い通りにどのような政治で今後の日本を形作っていくか、その実現を図るしか道はない。

 首相になったときにこそ、一閣僚の身であるゆえに他の首相が方針としている政策の影響下に立たされることの桎梏から解き放たれる。

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「朝日」WG議事要旨改竄報道への八田達夫の正当化のインチキは安倍晋三の加計学園への政治的便宜が始まり

2017-08-08 12:23:01 | 政治

 昨日のブログに書いたが、8月6日付「朝日デジタル」が2015年6月開催の政府の国家戦略特区ワーキンググループ(WG・座長八田達夫)で獣医学部の新設提案について愛媛県と同県今治市からヒアリングした際、加計学園幹部が出席していたにも関わらず、名前も発言も議事録に記載されていない、無料記事だけでは全体の趣旨は分からないが、多分、改竄による意思決定プロセスの不透明化、あるいはその隠蔽化を批判しているのだろう、そのような記事を配信した。   

 この配信にWG座長の八田達夫(大阪大学名誉教授)がその日のうちに早速反応して、議事録に載せていないことを正当づける“事実関係”なるものを国家戦略特区サイトにPDF記事で説明している。文飾は当方。

 「国家戦略特区WG(平成27年6月5日)の議事要旨について」(国家戦略特区WG座長 八田達夫 2017年8月6日) 

8月6日付朝日新聞で、「特区会議に加計幹部 議事要旨に出席・発言の記載なし」との記事が掲載されていますが、事実関係は以下のとおりです。

1、国家戦略特区WGで自治体等から提案を受けるヒアリングを行う際、提案者の要望により「非公開」と扱うことは、通常の取り扱いとして行っています。

すべて公開を前提とすれば、提案者が十分に情報を示せなくなり、国家戦略特区における提案制度の趣旨にかなわなくなることがあるためです。

平成27年6月5日の特区WGは、提案主体の愛媛県・今治市から、「議会対策、反対派・競合相手との関係上、非公開の希望」があり、非公開の前提で議事進行しました。

しかし、その後、今治市が国家戦略特区に指定され、提案が実現したことから、議論経過をできる限りオープンにすべきと私が考え、提案主体とも再度協議し、本年3月6日に議事要旨を公開しました。その際、当初は非公開を前提としていた経緯も踏まえ、公開する内容を調整しました。

2、6月5日のヒアリングでは、今治市が、独自の判断で、説明補助のために加計学園関係者(3名)を同席させていました。特区WGの提案ヒアリングでは、通常、こうした説明補助者は参加者と扱っておらず、説明補助者名を議事要旨に記載したり、公式な発言を認めることはありません。

6月5日のヒアリングでは、非公開との前提で、提案者以外の者(加計学園関係者)の非公式な補足発言も認めていましたが、議事要旨の公開に際しては、通常どおり、提案者以外の発言は掲載しませんでした。

なお、提案者から、説明補助者の参加・発言について議事要旨に記載してほしい等の特段の要望があった場合は、議事要旨に記載している場合がありますが、今回はこうしたケースにあたりません。

3、以上のとおり、特区WGの議事要旨の公開については、国家戦略特区の制度趣旨にかなうよう運営しているところであり、今回のケースは通常の取扱いどおり行ったものです。

問合せ先 内閣府地方創生推進事務局 TEL 03-5510-2151

 要するに意思決定プロセスは自分たちの思惑次第で如何ようにも操作できるということになる。

 〈平成27年6月5日の特区WGは、提案主体の愛媛県・今治市から、「議会対策、反対派・競合相手との関係上、非公開の希望」があり、非公開の前提で議事進行しました。〉と書いているが、「議会対策、反対派・競合相手との関係上、非公開の希望」は諮問会議委員側についても言うことができる。

 〈6月5日のヒアリングでは、今治市が、独自の判断で、説明補助のために加計学園関係者(3名)を同席させていました。特区WGの提案ヒアリングでは、通常、こうした説明補助者は参加者と扱っておらず、説明補助者名を議事要旨に記載したり、公式な発言を認めることはありません。〉

 いずれにしてもWGに3名の加計学園関係者が出席していたこと、加計学園関係者を「説明補助者」と説明している以上、公式な発言と認めなくても、何らかの発言があったこと、さらに3名を出席者として議事録に載せなかったこと、その発言も議事録に載せなかったことを認めたことになる。

 「朝日デジタル」の無料記事内では加計学園側と政府側委員の遣り取りについて短く触れている。加計学園新学部設置準備室長で加計学園系列千葉科学大教授の吉川泰弘が既存の大学の獣医学教育では、獣医師の新たなニーズを満たしていないなどと述べ、政府側の委員からの教員確保の見通しなどの質問に答えていたと書いている。

 非公開のWGで議論されたことで議事録に記載されていない発言はそのときの出席者しか知り得ないことで、外部の人間である朝日新聞は知り得ることはできない。いずれかの出席者か、出席者から聞いたという形のその関係者からのリークがなければ、知り得ることはできないはずだ。

 要するに直接的にか、間接的にか知り得た事実がリークという形で表に出たと見るべきで、百歩譲って議事録に載せない事実があることに正当性を与えるとしても、「朝日デジタル」が伝えている、いわゆるリークされた加計学園関係者と政府側委員の遣り取りについても、内閣府特区担当の山本幸三と共に民間有識者議員として諮問会議の議論をリードしてきた八田達夫は認めたことになる。

 さらに加計学園の立場を今治市が独自の判断で同席させた「説明補助者」に位置づけていようといなかろうと、両者の関係をも八田達夫は認めたことになる。

 だが、今治市と加計学園の関係は単なる一地方自治体と一学校法人との関係ではない。今治市と愛媛県は2007年から2014年にかけて計15回も構造改革特区を使った獣医師養成系大学の設置を目的に獣医師の定員増規制の地域解除を提案している。

 2008年6月には内閣府に対して「構造改革特区提案申請説明資料」を提出して、「別紙」で事業主体を学校法人加計学園とする獣医師養成系大学設置を願い出ている。     

 2015年12月15日の「第18回国家戦略特別区域諮問会議」で愛媛県今治市が広島県と共に国家戦略特区の第3次指定を受けると、国家戦略特区を方法とした獣医学部の新設を正式に目指している。

 今治市と加計学園は長年、このような密接な関係にあった。八田達夫が2015年6月のWGに於ける加計学園関係者を今治市に対する単なる「説明補助者」に位置づけようとも、今治市から見た加計学園は獣医学部の事業主体としての立場から、あるいはそのことを想定して詳しい説明をさせるために同道したはずだ。

 もし八田達夫が今治市と加計学園の過去からの関係を知識としていなくても、WGに出席した際、加計学園について今治市側から紹介があるだろうし、WGの委員側からも質問することがあったはずで、実際にはもっと前に両者の関係を認識していたかもしれないが、少なくともその時点で加計学園が今治市が計画している獣医学部の事業主体、あるいはそれを想定している関係にあると認識したはずだ。

 つまり最低限、2015年6月5日を含めて、それ以降は国家戦略特区でもWGでも、事業主体が加計学園である可能性を暗黙の前提として加計学園の名前も、事業主体がどこであるかも言葉には出さずに今治市への獣医学部新設という文脈でのみ議論していたことになる。

 実際には言葉に出していたが、議事録の作成の際に「公開する内容を調整」したのかもしれない。

 事業主体がどこであるかも頭に置かずに今治市への獣医学部新設を議論したということの余りの不自然さは少しも変わらない。

 官房長官の菅義偉は議事録は全て公開するわけではないとする八田達夫の主張は通用させることができると判断したものの、今治市が加計学園関係者を出席させたことで今治市が計画している獣医学部新設の事業主体が加計学園だと委員たちが認識していたと解釈された場合、安倍晋三の加計学園が事業主体と知ったのは2017年1月20日だとする発言との矛盾が生じると恐れたのだろう、八田達夫のPDF記事で議事録の正当性を述べたことに対して8月7日(2017年)の記者会見で次のように先手を打っている。

 菅義偉「獣医学部の制度検討は、特定の地域や事業所を念頭に置いていないが、加計学園が参加したのは提案者である今治市が説明の補助のために連れてきたと報告を受けている」

 記者「『すべてを公開している』という安倍総理大臣や菅官房長官の国会答弁の前提が崩れるのではないか」

 菅義偉「崩れるとは思っていない」(NHK NEWS WEB/2017年8月7日 14時41分)
    
 「獣医学部の制度検討は、特定の地域や事業所を念頭に置いていない」との発言には今治市が新設を計画している獣医学部の申請と加計学園の関係を断ち切ろうとする意図がここにはある。

 だが、諮問会議での獣医学教育の空白地域である四国に国際水準の大学獣医学部の新設の必要性の議論も、同じく諮問会議で今治市への獣医学部新設で議論をしてきたことも、「特定の地域」を念頭に置いた取扱いであるはずであり、2016年11月9日の「第25回国家戦略特区諮問会議」で「現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う」とするとした地域条件の改正を2017年1月4日の文科省の告示で決めたことも、「特定の地域」を念頭に置いた議論であったはずだ。

 今治市への獣医学部新設の議論に関しては確かに議事録では「事業所を念頭に置いていない」体裁を取っているが、このこと自体が不自然なのだが、同じく国家戦略特区指定を受けた京都府は獣医学部新設を希望、その事業主体を京都産業大学と決めて、2016年10月17日開催のWGに向けて、同日付けの「京都産業大学獣医学部設置構想について」なる資料を提出しているのは明らかに前以って「事業所を念頭に置い」た措置である。    

 こういった手続きこそが常識的な進め方であるはずだ。

 京都府が様々に協力することはあっても、京都府が構想する獣医学部設置ではなくて、題名どおりに京都産業大学が事業主体として構想する獣医学部設置となっているが、今治市の場合は事業主体を問題とした議論が見当たらないために、異様なことだが、まるで今治市が構想した獣医学部に見える。

 菅義偉が言っていることは八田達夫のWGでの議論は行われたとおりに議事要旨として公開するわけではないとしていることの正当化のためと、今治市への新設で議論を進めている獣医学部の事業主体が加計学園と決まっていたわけではないとすることの正当化のための主張であって、正当化すること自体に誤魔化しがあるから、はっきりと言うと、インチキがあることから、「獣医学部の制度検討は、特定の地域や事業所を念頭に置いていない」といった事実と離れた発言となって現れたのだろう。

 このインチキは八田達夫の朝日新聞の報道に対する正当化自体にインチキがあり、その相互反映としての菅義偉のインチキであるはずだ。

 もし前者に何もインチキがなければ、菅義偉もインチキを働く必要は生じない。同じ仲間として同調作用を起こさざるを得なかった。

 そしてこれらのインチキは加計学園が獣医学部を新設できるように安倍晋三が政治的便宜を図ったインチキから始まっていて、最初のインチキが次のインチキを強いる止むことのない反復性に則っているはずだ。

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安倍晋三「総理のご意向」=“加計ありき”の証明となる記事を8月6日付「朝日デジタル」が報道している

2017-08-07 11:51:10 | 政治

 一部有料記事で無料では最後まで読めないが、2017年8月6日付「朝日デジタル」が2015年6月の国家戦略特区ワーキンググループ(WG)で獣医学部の新設提案について愛媛県と同県今治市からヒアリングした際、学校法人加計学園の幹部が出席していて、学園の教員確保の見通しを巡る質疑等が行われたが、議事要旨には出席していた幹部の名前や発言の記載がないものの、その事実関係を政府側、提案者側双方の出席者が朝日新聞の取材に認めたと報じている。    

 加計学園側の出席者は加計学園系列の千葉科学大の吉川泰弘教授(現・加計学園新学部設置準備室長)などと伝えている。

 〈複数の出席者によると、吉川氏はヒアリングの場で、既存の大学の獣医学教育では、獣医師の新たなニーズを満たしていないなどと述べたという。政府側の委員からは教員確保の見通しなどの質問があり、吉川氏が答えたという。〉・・・・・・

 要するに出席者の中から朝日新聞にリークがあったということなのだろう。リークは秘密裏に加計学園に決められていく安倍晋三の政治的便宜によって行政が歪められることに我慢がならなかったといったことが理由として考えられる。

 無料記事の最後の方に、〈特区WGのヒアリングは非公開で、議事内容はまず、会合後速やかに作られる「議事要旨」で公表される。議事要旨は概要版で、すべてのやりとりが記載されたものではない。議事の詳細が分かる「議事録」の公表はヒアリングから4年後と決められている。〉との解説があるが、「議事要旨」に加計学園側の出席者名とその発言が秘密に付されていたなら、4年後に公表される「議事録」も同じく秘密に付されることになるだろう。

 「議事要旨」に記載されていない出席者とその発言が「議事録」で記載されていたら、前後が矛盾することになるからだ。

 但し問題は記事内容の真偽である。

 朝日デジタル記事が紹介している2015年6月のWGは6月5日と6月8日、なぜか2回開催されている。

 先ず6月5日の「国家戦略特区ワーキンググループ ヒアリング(議事要旨)から見てみる。

 内閣府の役人と獣医学部新設の提案者として愛媛県と今治市の役人が名前を連ねているが、加計学園の吉川泰弘とその関係者の出席は記されていないし、教員確保の見通しを巡る議論も記されていない。

 獣医学部に関する主な議事を抜き出してみる。

 議事は「国際水準の獣医学教育特区」に関して。愛媛県の役人が「添付資料」を示して獣医学教育空白地域である「四国」に国際水準の大学獣医学部を新設の必要性をかなり長い時間、様々に訴えている。 

 山下愛媛県地域振興局長「獣医師養成系大学でございますけれども、現在、全国で16大学、定員は930名となっておりますが、文部科学省告示の大学設置認可基準におきまして、定員増となる大学の設置等は一切認められないことになっておりまして、これまで約50年以上、新設されておりません。

 今回、特区指定を受けることにより、地域を限定して規制を解除し、新たな設置を認めていただきたいという提案でございます」

 そして国際的な防疫体制の強化や時代の要求に沿った国際対応が可能な獣医師の育成の必要性などを訴えている。

 愛媛県の役人が新設する獣医学部の事業内容を詳しく説明していながら、新設を予定している獣医学部の事業主体がどこの誰かは一言も触れていないし、他の誰もが一言も触れていない。

 八田達夫座長「それから、ここの獣医学部新設ということですが、これは大学そのものの新設ですか」

 山下地域振興局長「今のところ、大学新設と学部の新設も考えております」

 八田達夫座長「わかりました。どうもありがとうございました。

 それでは、委員の方から御質問をお願いします」――

 これ以外には次の遣り取りがある。

 阿曽沼委員(医療法人社団滉志会瀬田クリニックグループ代表)「3点ほど確認、質問させて下さい。まず最初に、今回の獣医学部の開設は、公設民営でやられるのですか、それとも私立大学として設置されるということでよろしいですか」

 山下地域振興局長「現状では、民設民営で考えております」

 2008年6月に今治市と愛媛県が構造改革特区に加計学園を事業主体として獣医学部の新設を提案しておきながら、加計学園に触れていないし、加計学園でなくても、事業主体として想定している大学名を一切口にしていない。

 余りにも不自然過ぎる。議論の全体は愛媛県側からの説明とそれに対する僅かな疑問の提示となっていて、何かを決めたということは何もない。

 だが、8月5日のブログで一度取り上げたが、WGのヒアリングに備えて2015年6月4日に内閣府に提出した「今治市国家戦略特別区域提案書」の中の「具体的な事業の実施内容」に書いてある次の説明は新設する獣医学部の事業内容そのもとなっていて、事業主体を想定していなければ、これだけの詳しいことは書くことはできないはずだ。  

 「国際水準の大学獣医学部の新設」

 「これまでの国立大学の研究者養成、私立大学の臨床獣医師養成と異なる公共獣医事を担う第三極の国際水準の大学獣医学部を空白地域の四国に新設する」
 「越境感染症や人獣共通感染症、国際的食の安全、バイオテロ等への危機管理と国際対応の資質を持った人材を育成する」
 「国際貿易自由化に伴う食品流通等で獣医学的支援の必要な水産、畜産、生物資源利用分野等との連携」
 「創薬研究での医獣連携など分野横断型応用ライフサイエンスの研究・教育と人材育成」

 もしこれが愛媛県や今治市が考えた事業内容であるならば、この事業内容に添うことのできる獣医学部を先ず募集しなければならない。だが、そういった手続きを取らずに内閣府が公募した事業主体に加計学園が応募し、採用されるという手続きを採ったのみである。

 要するに上記事業内容は加計学園が事業主体として提案したものであったから、提案書にこれだけの説明ができたのであり、このような事業内容に添う事業主体を募集する手続きも必要なかった。

 但し「提案書」に書いてある事業内容はあくまでも骨格であって、事業に関わる細部を問われた場合、役人では答えることができないはずで、加計学園関係者が出席しないことには間に合わなかったはずである。

 にも関わらず、加計学園関係者は出席していない。朝日デジタルの報道をまるきりのガセネタとすることのできない根拠がここにある。

 もう一つの根拠が2015年6月8日に開かれた関係省庁から聞き取りをするWGヒアリングであり、その「国家戦略特区ワーキンググループ(WG)議事要旨」から見てみる。ここで文科省は今治市への獣医学部新設に反対している。理由は新設の構想自体が“既存並み”であることを挙げている。

 出席者はWG委員3人と内閣府と文科省と農水省の役人合わせて9人。先ず内閣府の役人の発言から。

 2 議事 国際水準の獣医学教育特区(愛媛県・今治市)

 藤原豊内閣府地方創生推進室次長「それでは、始めさせていただきます。『国際水準の獣医学教育特区』ということで、愛媛県・今治市のほうから御提案をいただきまして、かねてから構造特区でもさまざまな提案をいただいていたのですけれども、今回かなりバージョンアップされて提案をいただいたこともありまして、既に成長戦略の成果ということでワーキンググループの先生方の御指示もいただきながら文科省のほうに案文を投げさせていただいているわけでございますけれども、ぜひその方向での議論を深めていただければと思っております」

 内閣府の藤原豊は「今回かなりバージョンアップされて提案をいただいた」と言っている。愛媛県や今治市が「バージョンアップ」できることは資金の提供額や奨学金提供人数やその額の拡大、アクセスの利便性の強化と言ったところで、肝心要の事業内容に関わる「バージョンアップ」は新設を計画している獣医学部の事業主体でなければできないはずで、前者だけの「バージョンアップ」だけで許されるはずはなく、後者の「バージョンアップ」を伴って初めて、より十分な形を取ることになるはずである。

 いわば事業主体が決まっていなければ、全体としての「バージョンアップ」の提案はできない。

 この「バージョンアップ」だけで足りなかったから、大学認可を与る文科省が2016年11月8日に加計学園に対して獣医学部の「構想の現状」について聴取したが、それでは不十分だからと、十分とすべき様々な注意点を箇条書きで書き連ねた「加計学園への伝達事項」なる文書を作成しなければならなかった。

 次の遣り取りを見ると、文科省が獣医学部新設に反対していることが分かる。

 北山浩士文部科学省高等教育局専門教育課長文部科学省専門教育課長の北山でございます。よろしくお願いいたします。

 この獣医系大学の新設についてでございますけれども、昨年夏以来、国家戦略特区ワーキンググループ、このワーキンググループで累次にわたって御説明を申し上げてきたかと存じます。構造改革特区の26次提案の対応方針で文部科学省から回答させていただいておりますが、具体的には、既存の獣医者の需要については、農林水産省さんに確認をしたところ、現時点では獣医師の需給に大きな支障が生じるとは考えにくいとのことでございました。

 このため、愛媛県・今治市が獣医系大学を新設したいということであれば、その既存の獣医師でない構想を具体化していただき、ライフサイエンスなど獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要を明らかにしていただく必要があると考えております。

 文部科学省といたしましては、愛媛県・今治市より、既存の獣医師養成でない構想が明らかになり、そのライフサイエンスなど獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになった場合には、近年の獣医師の需要の動向を考慮しつつ、特定地域の問題としてではなく、全国的見地から検討を行う必要があると考えています。

 この件につきましては、愛媛県・今治市に文部科学省から累次にわたってお伝えするとともに、直接御相談もいただいているところでございます。先日は、下村大臣のところに要望に来られました愛媛県知事に対して、下村大臣からこの旨をお伝えしているところでございます。

 まず提案者のほうで既存の獣医師養成なり構想を具体化していただく必要があって、下村大臣からもそのようにするようにということで指示をいただいているところでございます」

 要するに「既存の獣医者の需要については、農林水産省さんに確認をしたところ、現時点では獣医師の需給に大きな支障が生じるとは考えにくいとのこと」だから「既存の獣医師養成でない構想」、いわば“既存並み”を脱した構想を具体化してから提案して貰いたいと主張、現時点の“既存並み”の構想の獣医学部新設に反対している。

 愛媛県や今治市が構想の骨格に関しては相談に乗ることはできても、構想したことを実際の事業で具体化していくのは獣医学部新設の事業主体なのだから、具体化可能な細部は事業主体が存在しなければデザインできない。

 事業主体が存在しなければ、少なくともこの時点では文科省の要求に対して話は前に進まないことになる。前に進まないことを前に進めるために「総理のご意向」が文科省に対しても発令されることになったとも考えることができる。

 いずれにしても、誰もが「事業主体」と言う言葉も「加計学園」という言葉も一言も発していないが、文科省は事業主体の存在を前提としていなければ、「既存の獣医師養成でない構想」の要求はできないし、内閣府も農水省も事業主体の存在を暗黙の前提としていなければ、文科省のこの要求に対して話を合わせることはできない。

 北山浩士文部科学省高等教育局専門教育課長が「この件につきましては、愛媛県・今治市に文部科学省から累次にわたってお伝えするとともに、直接御相談もいただいているところでございます。先日は、下村大臣のところに要望に来られました愛媛県知事に対して、下村大臣からこの旨をお伝えしているところでございます」と発言したことに内閣府の藤原豊が、その遣り取りは承知していないから、具体的に説明してもらいたいと求めると、北山浩士は次のように発言している。

 北山浩士「公共獣医事を担う第三極の国際水準の大学獣医学部ということで、色々なことをやるということが言われております。例えば動物由来新興感染症の統御ということ、あるいは越境感染症の貿易ということでございますが、国、県において危機管理対応を行う人材の養成というものについては、獣医学教育のモデルコアカリキュラムというものをつくっておりまして、その中で既存の各大学で人獣共通感染症学であるとか、動物感染症学に関する教育研究というものを実施しているところでございます」

 今治市が提案している「食品貿易の安全確保、食料の安定供給、養殖産業振興」に関しても、既存の獣医学部が「モデルコアカリキュラムで食品衛生学あるいは食品衛生学実習というものを実施しておりまして、現在の食品衛生管理者や食品衛生監視員などに卒業生が就職しているところでございます」と、“既存並み”の構想だと排している。

 「ライフサイエンス分野における連携、研究、教育」、あるいはその他についても、「モデルコアカリキュラム」(国立高専のすべての学生に到達させることを目標とする最低限の能力水準・修得内容)として実施していることを理由に“既存並み”の構想に過ぎないと説明している。

 文科省の北山浩士のこのような反論も、今治市や愛媛県の先に事業主体を置いていなければ、このように具体的には説明できない。

 朝日デジタルの記事と安倍晋三や山本幸三の説明のどちらに信憑性を置くかと言ったら、前者に置くしかない。要するに「総理のご意向」=“加計ありき”を隠蔽するために議事録まで操作したと見るべきだろう。

 これまで何度か当ブログに、国家戦略特区諮問会議や国家戦略特区ワーキンググループが獣医学部新設に関しては今治市への新設という体裁でのみ議論し、事業主体がどこであるかは一言も触れていないのは安倍晋三の政治的関与によって加計学園に決めていくプロセスを隠蔽するためだといったことを確信に近い思いで推量してきたが、その政治的関与は確実に介在していたのだろう。

 但し安倍晋三も特区担当の山本幸三も否定するだろうし、リークした側も公に顔を出して証言する保証はない。逃げようとすれば逃げることができるが、「構造改革特区」では
今治市と愛媛県が共同で提出した「構造改革特区提案申請説明資料」には事業主体(当該規制の特例措置の適用を受けようとする者)として学校法人加計学園を挙げておきながら、国家戦略特区では加計学園に一言も触れずに今治市への獣医学部新設の議論のみで進めて、結果的に加計学園に決まったイキサツは余りにも不自然過ぎて、常識外となっている。    

 上記「朝日デジタル」の記事にあるように2015年6月5日の国家戦略特区ワーキンググループ(WG)で加計学園新学部設置準備室長の吉川泰弘が既存の大学の獣医学教育では獣医師の新たなニーズを満たしていないなどと述べ、政府側の委員からは教員確保の見通しなどの質問を受けたということは、京都府が新設獣医学部の事業主体を京都産業大学と決めて内閣府に対して獣医学部新設の資料を提出したように、あるいは構造改革特区での認定を受けるために今治市と愛媛県が内閣府に対して加計学園を事業主体として獣医学部新設の資料を提出したのと同じように国家戦略特区での獣医学部新設を申請するについても今治市は事業主体をどこと決めて、事業の規模や教員の人数、募集定員、獣医学教育の内容等を説明した獣医学部の事業内容の資料を内閣府に前以って提出していたことを示すが、先に挙げた「添付資料」には事業主体という言葉も、加計学園という文言は何一つ記していないにも関わらず、大学獣医学部を新設の必要性を訴えていて、明らかに一般の手続きに反している。

 このことは国家戦略特区諮問会議が今治市への獣医学部新設を決めてから、内閣府が今治市への新設獣医学部の事業主体の公募に対して加計学園のみが応募、応募書類に初めて事業内容が記されている一般の手続きに反していることと符合する。

 万が一不合格となった場合、遣り直さなければならないことになる。遣り直しの失敗を避けるために一般的にはどこがどのような事業内容の獣医学部を今治市に新設を計画しているのか、その事業内容を議論して、その可否を決定するという手順を踏むはずだが、逆の手順を踏んで決定することができたのはやはり加計学園と決まっていたからだろう。

 決まっていたから、そのことを隠蔽するために国家戦略特区諮問会議でもワーキンググループでも事業主体には一言も触れずに今治市への獣医学部新設の議論だけとする議事録を作成することになった。

 そういうことでなければ、全ての辻褄が合わない。

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安倍晋三の今更言うべきことではない「人づくり革命」は第1次安倍政権の「再チャレンジ政策」の焼き直し

2017-08-06 10:54:04 | 政治

 安倍晋三は2017年8月3日、「内閣総理大臣談話」を閣議決定し、公表している。     

 安倍晋三「一億総活躍社会という目標に向かって、デフレからの脱却、地方創生を成し遂げ、日本経済の新たな成長軌道を描く。「積極的平和主義」の旗を高く掲げ、日本を世界の真ん中で輝かせる。人生100年時代を見据え、「人づくり革命」を進めていく。そして、子どもたちの誰もが、家庭の経済事情に関わらず、それぞれの夢に向かって頑張ることができる。

 そうした我が国の未来を拓くため、安倍内閣は新たなスタートを切ります。私たちの次なる挑戦に、国民の皆様の御理解と御協力を改めてお願いいたします」

 「一億総活躍社会」、「デフレからの脱却」、「地方創生」、「積極的平和主義」と例の如くのキャッチフレーズが並び、「人づくり革命」と続けている。

 「一億総活躍社会」は確かに耳障りが良く、聞こえもいいが、以前ブログに書いたが、アベノミクスは格差ミクスの自己否定、逆説そのものであって、実現不可能は目に見えている。

 「一億総活躍」といかない点――いわば格差をそこそこに補うのが給付型奨学金とか教育の無償化といった政策であるはずだ。

 だからと言って、こういった政策が「人づくり革命」に資するというわけではない。このことは後で説明する。

 先ず「デフレからの脱却」、安倍晋三は2014年12月14日の衆院選圧勝を受けた翌日の12月15日、自民党総裁として自民党本部で記者会見を開いている。   

 安倍晋三「15年苦しんだデフレからの脱却を確かなものとするため、消費税の引き上げを延期する。同時に景気判断条項を削除し、平成29年4月から消費税を10%へと引き上げる判断が解散のきっかけでした」

 「デフレからの脱却を確かなものとするため」、2015年10月予定の消費税8%から10%への引き上げを2017年4月に延期することにした。

 2015年9月20日投開票予定の自民党総裁選で無投票再選を果たした安倍晋三が同じく自民党総裁として2015年9月24日に自民党本部で演説している。      

 安倍晋三「アベノミクスによって、雇用は100万人以上増えた。2年連続で給料も上がり、この春は、17年ぶりの高い伸びとなった。中小・小規模事業者の倒産件数も、大きく減少した。

 もはや『デフレではない』という状態まで来ました。デフレ脱却は、もう目の前です」――

 この演説から2年近く経った今年2017年7月20日に開催の大手企業の経営トップが意見を交わす経団連の夏のフォーラムで榊原会長が次のように発言している。

 「日本の最優先課題は、デフレ脱却と経済再生を確実に実現することだ。そのためには成長戦略の推進が不可欠だ」(NHK NEWS WEB

 「日本の最優先課題」と言っている以上、安倍晋三が消費税増税を延期して「もう目の前です」と言っていたデフレ脱却も経済再生も満足な形で成し遂げられていないということであって、だからこそ、今以って「デフレ脱却」を掲げなければならないということであろう。

 つまり自ら行ったアベノミクスは機能していないことの宣言に他ならない。自分で掲げたアベノミクスが機能していないなら、他は推して知るべしである。

 安倍晋三は『談話』発表と同じ日の2017年8月3日に第3次安倍第3次改造内閣を行い、首相官邸で記者会見を開いて「人づくり革命」に少し触れれいる。  

 安倍晋三「茂木大臣には、今回新たに設けることとした『人づくり革命』の担当大臣もお願いしました。

 子供たちの誰もが家庭の経済事情にかかわらず夢に向かって頑張ることができる社会。幾つになっても学び直しができ、新しいことにチャレンジできる社会。人生100年時代を見据えた経済社会の在り方を大胆に構想してもらいたいと思います」

 「子供たちの誰もが家庭の経済事情にかかわらず夢に向かって頑張ることができる社会」とはチャレンジの平等な機会提供を言い、「幾つになっても学び直しができ、新しいことにチャレンジできる社会」とは再チャレンジの平等な機会提供を言っているはずだ。

 2006年9月26日の第1次安倍内閣成立前の2006年9月1日、安倍晋三は自民党総裁選に出馬表明している。

 安倍晋三「イノベーションの力とオープンな姿勢で、日本経済に新たな活力を取り入れていきたい。誰でもチャレンジすることが可能な、再チャレンジ可能な社会をつくっていきたいと思う。成長なくして財政再建なし。まずは無駄遣いをなくし、無駄を排除し、歳出の改革を行っていく」

 「チャレンジ」も「再チャレンジ」も、2006年9月26日発足から2007年8月27日までの第1次安倍政権、そして2012年12月26日発足から今日までの第2次安倍政権の合計5年8カ月の間に実現させることができずに両チャレンジを掲げ続けている。そして「チャレンジ」、「再チャレンジ」を嘲笑うかのように、その否定要素である格差は拡大している。

 安倍晋三は第1次安倍政権時代に「機会の平等を求め、結果の平等は求めない」を自らの政治思想とし、それを口癖としていた。この思想が第1次安倍政権で「チャレンジ&再チャレンジ政策」となって現れたのだろう。

 弱肉強食を存在様式としている人間社会に「機会の平等」の提示がどれ程に大変なことか考えなかったようだ。多くの政治形態が先ず上を富ませて、その富を下に順次に配分していくトリクルダウン形式となっていることを十分に考えなかったようだ。

 つまり常に上が基準となっていた。下が基準とされることはなかった。第2次安倍政権に於いても変わっていない。その結果の格差拡大であって、安倍晋三の「機会の平等を求め、結果の平等は求めない」は「機会の平等は求めるが、結果の不平等は辞さない」が実体となった。

 だとしても、最初に触れたように給付型奨学金や教育の無償化は格差をそこそこに補うことになるだろう。

 だからと言って、それが「人づくり革命」に繋がる保証はない。

 「産経ニュース」記事が「人づくり革命」の5つのテーマを紹介していた。    
  
 「無償化を含む教育機会の確保」
 「社会人のリカレント(学び直し)教育」
 「人材採用の多元化、高齢者活用」
 「人的投資を核とした生産性向上」
 「全世代型の社会保障への改革」

 「人的投資を核とした生産性向上」以外は政府提供型の機会となっていて、そうである以上、ある程度は実現させることはできるかもしれないが、「人的投資を核とした生産性向上」は政府がこのような機会を提供して達成できる目標値ではない。

 但し「人づくり革命」の中心的な課題は「生産性向上」であるはずだ。4つのテーマを実現させて、「人的投資を核とした生産性向上」へと繋げていく。

 その反面、他の4つのテーマの実現が「生産性向上」を実現させる保証はどこにもない。例えば4つのテーマの成果として日本がどこの国にも存在しない新しいコンピューターソフトを使った新しい機械を発明して生産現場に投入し、目覚ましい程の生産性を上げたとしても、そういった機械はすぐに他の国に真似されて、生産性は相対化され、元々の生産性の違いはそのまま残ることになる。

 この逆も同じである。アメリカなりが新しい機械で生産性を上げたとしても、日本はその機械を輸入するか、そのうち自国で作ってしまうだろう。

 と言うことは、生産性は常に人間自体の働き、その能力が基本となる。だから、「人的投資を核とした」と言う形の「生産性向上」を求めることになっているのだろう。

 人間自体の働き、その能力は考える力に負う。と言うことは、「生産性向上」は人それぞれの考える力が決定権を握っていることになる。

 考える力は学歴が保証する能力でもなければ、「社会人のリカレント(学び直し)教育」によって必ず手に入れることができるというものでもなく、「人材採用の多元化、高齢者活用」がそのまま生産性向上となって現れるものではない。

 現れるなら、普通どおりにやっていても日本の労働生産性が経済協力開発機構(OECD)加盟国先進主要7カ国中最下位という状況は招くことはないはずだ。

 学歴が考える力=生産性を保障しないのは東大出の野党国会議員は数多いが、与党を追及する際、相手の言葉を臨機応変に掴まえて逆襲するといった機転もなく、ムダな質問で時間を空費することも多く、質問の生産性が非常に悪い議員がかなりいることが証明している。

 「全世代型の社会保障への改革」は、それが成就した場合は生活の安心を与えるが、このことが考える力や生産性向上に直結するとは考えることはできない。

 考える力とは総合学習で言っていた「自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力」を言う。いわば自主性・自律性を持たせた思考性・行動性を指す。

 そのような自分で考える力を子供の頃から学校教育で身に付くように訓練し、社会に出てからは自身の力でその能力を伸ばしていく。

 だが、基本の考える力が肝心要の学校教育で身に付いていないと言われている。学校側から言うと、学校教育で身に付かせることができていないことになる。全員が全員というわけではないが、基本がないのだから、社会に出てから、種のないところに作物が実らない状況に立ち入ってしまう。

 その結果の日本の労働生産性が経済協力開発機構(OECD)加盟国先進主要7カ国中最下位ということであろう。

 大体が総合学習で「自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力の育成」を掲げなければならなかったこと自体が自分で考える力の欠如を物語って余りある。

 だが、一朝一夕で育つ程簡単な自分で考える力ではない。いくら学校で掲げても、教師が児童・生徒に対して教え学ばせるという姿勢でいる限り、考える力は育たない。児童・生徒に対して自分から学ぶという姿勢へと転換させない限り、考える力は育たないし、育たなければ、当たり前のことだが、自主性・自律性を持たせた思考性・行動性へと次第に発展していくことはない。例え社会に出たからと言って、それが大きく育つことはない。

 勿論、このような姿勢を持たせることは親が子供に対して行う家庭教育・家庭での躾についても言える。

 第1次安倍政権の「チャレンジ」と「再チャレンジ」の平等な機会提供の意味を込めた、それゆえにその焼き直しでしかない今回の「人づくり革命」がそれぞれのテーマに基づいて「人的投資を核とした生産性向上」へと収束させていくためには一人ひとりの自主性・自律性を持たせた考える力に負い、その育みが主として学校教育にかかっている以上、このようなプロセスに重点を置いてこそ、「人づくり革命」と言えるのであって、置かない「人づくり革命」は今更言う程のことなないし、5つのテーマを並べて麗々しく掲げても、さして意味は出てこないはずだ。

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安倍晋三の「獣医学部事業主体が加計学園と知ったのは1月20日」を「加計学園への伝達事項」から読み解く

2017-08-05 12:17:22 | 政治

 8月3日(2017年)にエントリーした「ブログ」と内容が重なるが、なぜ国家戦略特区諮問会でもワーキンググループでも今治市への獣医学部新設に限った議論のみで、その獣医学部の事業主体が加計学園であるとした議論が行われなかったのか改めて取り上げてみることにした。    

 民進党代表の蓮舫が2017年7月25日の家計疑惑閉会中審査の参議員予算委員会で、前日7月24日の同加計疑惑閉会中審査衆院予算委で民進党の大串博志が安倍晋三に対して「総理は加計理事長が特区申請をしていると知ったのはいつですか」と質問したのに対して安倍晋三が今治市の獣医学部新設に応募し、国家戦略特区諮問会議でその応募が認められた「1月の20日」と答弁したことと過去の国会答弁の矛盾を突いた。


 「産経ニュース」  

 蓮舫「総理。これは今年の6月5日、参院決算委員会で我が党の平山佐知子議員の質問、『加計さんがずっと獣医学部を新設したいという思いがあったということは当然ながらご存じでありましたね』ということに対して、総理、あなたは『安倍政権になりましてから国家戦略特区にその申請を今治市とともに出された段階で承知したわけでございます』と答えている。違うじゃないですか」
 (「なにウソ言ってるんだよ」などのヤジが飛ぶ》
 安倍晋三「さきほども、福島委員あるいは平山委員の場合は急にご質問があったので混同したところがあるが、それ以外にも何回か、何回かご質問をいただいているわけだが、その際には『知りうる立場にあった』というふうに答弁させていただいているのは事実です。

 そこで正確に、正確に申し上げれば、私が議長を務める国家戦略特区諮問会議にこの申請がかかるのは申請段階ではなく申請を決定する段階であり、それは10日後の1月20日だった。その意味においては厳密さを欠いていたが、あの答弁で申し上げようとしたことは、申請を今治市とともに決定する段階で私は諮問会議の議長として加計学園の計画について承知したということです」

   ・・・・・・・・・・
 蓮舫「ちょっと整理しますね。つまり総理がおっしゃっている国家戦略特区に今治市が申請を出された段階というのは、2年前の2015(平成27)年6月4日と言うことです。そして加計学園が正式に申請を出したのは今年1月10日。どっちも1月20日ではない。ここからしても、きのうの総理の言った『1月20日に知った』というのは過去の答弁と整合性がとれていない」

 安倍晋三「私は国家戦略特区諮問会議の議長として、国家戦略特区諮問会議にかかる際に、事務方から説明を受けるわけです。国家戦略特区制度が誕生した2年前の11月の段階で、私が議長を務める国家戦略特区諮問会議において、今治市の特区指定に向けた議論が進む中で、私が今治市が獣医学部新設を提案していることを知った。しかしその時点においても、またその後のプロセスにおいても、事業主体が誰かという点について提案者である今治市から説明はなく、もちろん事務方からも説明がなかったのであり、加計学園の計画は承知していなかった。1月20日の特区諮問会議で認定する際に、事務方から事前に説明を受けた」

  安倍晋三は要するに過去の国会答弁との矛盾は急な質問だったことによる「混同」であり、実際に答弁してきたのは「知りうる立場にあった」という意味のことで、「今治市が獣医学部新設を提案していることを知った」ものの、その後のプロセスにおいても、事業主体が誰かという点について提案者である今治市から説明はなく、もちろん事務方からも説明がなかったから、事業主体が加計学園であることは知ることができなかった、知ったのは加計学園が国家戦略特区指定の今治市への獣医学部新設の事業主体として応募し、認められた2017年1月20日の「第27回国家戦略特別区域諮問会議」の場であったということになる。

 蓮舫は「『事業主体が誰かという点について提案者である今治市から説明はな』かったとしても、自分の方から尋ねることはしなかったのか」となぜ聞き返さなかったのだろうか。

 事業主体を想定しない獣医学部新設の議論は先ずあり得ないからだ。

 実際に獣医学部新設に関わるどの「国家戦略特区諮問会議」でも、同趣旨のワーキンググループのヒアリングでも、今治市への獣医学部新設という文脈での議論のみで、なぜか事業主体がどこかについては一切触れていない。

 いわば諮問会議出席者の特区担当の山本幸三も、関係省庁の大臣も、民間有識者議員も、事業主体がどこかを頭に置かずに今治市への新設のみで議論を進め、安倍晋三は諮問会議議長としてそのような議論を見守ってきたことになる。

 このようなプロセスに安倍晋三の政治関与を隠蔽する仕掛けがあったのだろう。なぜなら、内閣府に獣医学部新設の提案書を提出する際、事業主体を先に決めて、その事業主体が主体となってどのような獣医学部を計画しているのか、どのような獣医学部を望んでいるのか、自治体等と共に提案書を作成しなければ、満足な内容を取ることができないからだ。

 同じく国家戦略特区に指定された京都府は内閣府に獣医学部新設を提案する際、最初から事業主体を京都産業大学と決めて、上記のような手続きを踏んだ。

 だが、国家戦略特区諮問会議が今治市への獣医学部新設を認定する際はこのような手続きを踏まなかった。加計学園が新設する獣医学部の事業内容書(事業規模や陣容、募集定員数、学部敷地面積、建物数・階数等々)を提出したのは内閣府が今治市への獣医学部新設の事業主体を公募したことに対して応募した2017年1月10日である。

 そして1月20日に事業主体は加計学園に決定した。

 と言うことは、国家戦略特区諮問会議はどのような獣医学部になるのか事業内容を決めないうちに今治市への獣医学部新設を決めたことになる。

 果たして今治市は事業主体を決めていなかったのだろうか。

 蓮舫が「総理がおっしゃっている国家戦略特区に今治市が申請を出された段階というのは、2年前の2015(平成27)年6月4日と言うことです」と質問していることから、「今治市」のサイトにアクセスして、「2015年6月4日」という日付で紹介しているPDF文書の「国家戦略特別区域提案 国際水準の獣医学教育特区」提案書を開いてみたが、「国際水準の獣医学教育特区」と提案しているものの、加計学園の名前は載っていない。    

 一応、「具体的な事業の実施内容」を見てみる。

 「越境感染症や人獣共通感染症」
 「国際的食の安全」
 「バイオテロ等への危機管理と国際対応の資質を持った人材育成」
 「国際貿易自由化に伴う食品流通等で獣医学的支援の必要な水産、畜産、生物資源利用分野等との連携」
 「創薬研究での医獣連携など分野横断型応用ライフサイエンスの研究・教育と人材育成」(以上)

 但し事業主体を想定していなければ、これだけの詳しい獣医学部の事業内容を書くことはできないはずだ。

 ネットを検索していたら、今治市に関係した次のPDF文書に行き当たった。

 「構造改革特区提案申請説明資料」(平成20年6月)今治市 愛媛県 

別紙

1 特定事業の名称

獣医師養成系大学設置による教育の機会均等確保及び地域再生事業

2 当該規制の特例措置の適用を受けようとする者の名称

学校法人加計学園

3 当該規制の特例措置の適用の開始の日

平成22 年4月1日

4 特定事業の内容

今治市に獣医師養成系大学を設置する。

別紙「愛媛県今治市における大学獣医学部構想」参照。

5 当該規制の特例措置の内容

平成15 年3月31 日文科省告示第45 号「大学、短期大学、高等専門学校等の設置の際の入学定員の取り扱いに関する基準」を今治市の獣医師養成に限って定員増の規制の解除

6 当該規制の特例措置の適用を受けようとする者が行う事業の概要

別紙「愛媛県今治市における大学獣医学部構想」のとおり

 2008年(平成20年)の6月の構造改革特区への提案の際には既に事業主体を加計学園と決めていた。

 と言うことは、国家戦略特区諮問会議でもワーキンググループでも今治市への国家戦略特区を利用した獣医学部新設に関して事業主体を加計学園とする議論は行わなくても、今治市の方は獣医学部の事業主体を加計学園と決めていたことになる。
 
 前者の議論がないことを以って安倍晋三が今治市に新設する獣医学部の事業主体が加計学園であることを知ることができず、知ることができたのは加計学園が事業主体に認定された2017年1月20日だとしていることに正当性を与えることができたとしても、あるいは蓮舫の質問に対して安倍晋三が「業主体が誰かという点について提案者である今治市から説明はなく、もちろん事務方からも説明がなかった」と答弁していることに正当性を与えることができたとしても、国家戦略特区諮問会議やワーキンググループが加計学園を事業主体と想定せずに議論していたとすることに正当性を与えることはできない。

 2016年11月8日「加計学園への伝達事項」なる文書を文科省は作成したことを認めている。

 この文書のことを既にブログで取り上げているが、内容は文科省が加計学園に対して獣医学部の「構想の現状」について聴取したが、それが不十分だからと、十分とすべき様々な注意点を箇条書きで伝えているものとなっている。

 これがいわゆる“加計ありき”ではなかったとしても、文科省は今治市への獣医学部新設の事業主体が加計学園であることを十分に承知していたことになる。

 文部科学省が承知していたことを内閣府が承知していないということは決してあり得ない。翌11月9日の「第25回国家戦略特区諮問会議」には文科相の松野博一も出席して、今治市への獣医学部新設で議論をしてきた各諮問会議に続いて、「現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とするための関係制度の改正を、直ちに行う」とする地域条件の変更を「資料3」の案で示して「異議なし」で全一致で決めている。

 「業主体が誰かという点について提案者である今治市から説明はなく、もちろん事務方からも説明がなかった」としても、今治市も諮問会議メンバーも、加計学園が事業主体であることを前提として今治市への獣医学部新設の議論をしていたことは間違いないことになる。

 導き出すことのできる答はただ一つ。国家戦略特区やWGがその前提を隠して議論していたことも、安倍晋三が知らなかったとしていることの理由付けも安倍晋三の政治関与を隠蔽するための最初からの計画であって、事業主体が加計学園であることを知らなかったとしている国会答弁その他は全て虚偽としなければならない。 

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安倍晋三8月3日改造内閣記者会見:「経済最優先」は次期総選挙で票を釣り上げ、議席を稼ぐ疑似餌

2017-08-04 10:52:59 | 政治
 

 安倍晋三が第3次安倍第3次改造内閣記者会見を行った。 

 NHKのテレビ番組では初めから最後まで原稿を写し出すプロンプターは見えなかったが、首相官邸の動画では安倍晋三が登場する前から、安倍晋三から見て右側のプロンプターがバッチリと写っていた。

 左右にプロンプターを配置して、正面から左右の記者を見渡すように顔を右、左に動かして、原稿を見ずにさも自身の言葉で流暢に喋っているように見せかける。なかなか堂に入っている。

 初っ端から謝罪から入った。

 安倍晋三「先の国会では、森友学園への国有地売却の件、加計学園による獣医学部の新設、防衛省の日報問題など、様々な問題が指摘され、国民の皆様から大きな不信を招く結果となりました。

 そのことについて、冒頭、まず改めて深く反省し、国民の皆様におわび申し上げたいと思います」

 そして不祥事が発覚した会社の社長以下の重役連中が横に並べた長椅子に座って記者会見を開いて、先ず不祥事の説明をしてから一斉に立ち上がって深々と謝罪の頭を下げるように安倍晋三も8秒程、頭を垂れた。

 但し重役連中程には深々とではなかった。7、8分目程度の頭の下げ方となったは総理大臣のプライドがそうさせたのかもしれない。

 頭を上げてから、「国民の皆様の声に耳を澄まし、国民の皆様とともに、政治を前に進めていく」と続けた。

 これで深く反省しているなと感じ入るかどうかである。

 安倍晋三「今回の組閣では、ベテランから若手まで幅広い人材を登用しながら、結果重視、仕事第一、実力本位の布陣を整えることができたと考えています」

 安倍晋三本人の保証付きである。但しである、いつだって「結果重視、仕事第一、実力本位の布陣」でなければならないはずだ。それを改めて言わなければならないところに今まで「結果重視、仕事第一、実力本位の布陣」でなかったことの証明としかならない。

 いわば「結果重視、仕事第一、実力本位の布陣」であった試しはなかった。何人の閣僚が国民を軽視するような発言や不適切な行動で退場していっただろうか。国民の選択を受けて国会議員となり、閣僚としての任に当たる以上、内閣から一人の途中退場者も出してはならないはずだ。

 安倍晋三「最優先すべき仕事は経済の再生です。安倍内閣は、これからも経済最優先であります」

 「経済最優先」を何度言えば気が済むのだろうか。アベノミクスを掲げ、ずっと「経済最優先」を言い続けてきた。

 「4年間のアベノミクスにより、雇用は200万人近く増え、正社員の有効求人倍率も1倍を超えました。正社員になりたい人がいれば、必ず一つ以上の正社員の仕事がある。政治の大きな責任を果たす。やっとここまで来ることができました」と言っているが、相変わらず都合の良い統計しか言わない。総務省調査「2016年の労働力調査(速報)」は役員を除く2016年平均の雇用者は前年比88万人増の5,372万人で4年連続で増加し、その内訳は非正規雇用は前年比36万人増の2016万人。正規雇用は前年比51万人増の3355万人。

 確かに減少傾向にあった正規雇用は増加に転じている。だが、非正規の増加率は1.75%、正規の増加率は1.54%で、非正規の増加率の方が大きい。また正規雇用の増加、正規の有効求人倍率1倍超は人手不足による正規の囲い込みが主な原因で、受動的な理由となっている。そしてこのことが安倍政権下で賃金上昇率を4年連続で2%と押し上げているということだが、個人消費低迷の原因が買い控えの傾向が広がっていることにあるというのは賃上げがあくまでも大企業中心ということであろう。

 例えば年収300万円の家庭で2%の賃上げは年6万円、月に直して5千円に過ぎない。消費を控えてきた家庭が月5千円のプラスでどれ程に心おきない消費に励むことだできることだろうか。

 この2%はあくまでも平均で、少ない収入程、実際の賃金上昇率は数字が小さくなる。多くの家庭が将来不安からついつい貯蓄に回してしまうように思える。

 また賃上げ→消費→モノの価格への転化による製品価格の上昇→企業利益向上→賃上げ→消費という、いわゆるアベノミクスの好循環には現在の賃金上昇率は弱すぎると言われている。

 こういったことが原因しているのだろう、国際通貨基金(IMF)が2017年7月31日に「アベノミクスは目標に達していない」と指摘したと2017年8月1日付「時事ドットコム」記事が伝えている。  

 アベノミクスというスローガンは既に形骸化しているという指摘すらある。

 さらに人手不足による正規雇用の囲い込みによるその分の人件費負担が老後の貯えを少しでも増やすために働きに出ざるを得ない高齢者を非正規で雇用して大幅に賃金を抑制してバランスを取る現象となっている可能性を指摘する記事もある。「ロイター」

 〈日本は欧州各国と比べて、60歳以降の年収の減り方が顕著で、3割程度の賃金カットを実施している企業が多い。高齢者の賃金の3割カットは、すでに「常識化」されつつある。〉

 このような賃金抑制が正規雇用の人件費アップのバランスを取る有効策となっているだけではなく、正規・非正規構わない長時間労働につながっている可能性も否定できないはずだ。

 弱い立場の人間程より安く、より長時間使って、人件費を平均化させていく。要するにアベノミクスで利益を上げたのは円安と株高を受けた大企業と富裕層のみで、ここに来ての円高が主な原因となって大手企業の今年夏のボーナスが平均で昨年より2万円少ない約87万円となったと「NHK NEWS WEB」記事が伝えているような現象が起きる。 

 経団連は「今回の減少は、ことしの春闘で労働組合がベースアップを優先してボーナスの要求額を下げたことも影響した。マイナスにはなったが、金額自体は80万円台の後半を維持していて、引き続き高水準だ」と言っているが、日本では大企業の割合は0.3%、1%にも満他ない状況にあって、中小企業が99.7%と圧倒的に中小企業が上回っている。

 いわば僅かな数の上だけがボーナスが80万円台の後半を維持と言うことに過ぎない。 

 大体が円高で回復していない景気がたちまちダメージを受けるアベノミクスというのは自らの力で景気を回復させる自律性を与えることができていないゆえに海外の様々な要因に簡単に影響を受ける他律性に支配されることになるといったことを以前ブログで書いたが、人間の生命が様々な臓器が働き合って生きるエネルギーを発していく有機性と同様の力学を吹き込むことができていないことからのアベノミクスのお粗末な現状ということなのだろう。

 何よりも問題なのは安倍晋三が2度も消費税増税を延期していることである。1度目は2014年11月18日に首相官邸で記者会見を開いて、2015年10月予定の消費税8%から10%への引き上げを2017年4月に延期することを伝えた。

 そのとき安倍晋三はこう言った。「来年10月の引き上げを18カ月延期し、そして18カ月後、さらに延期するのではないかといった声があります。再び延期することはない。ここで皆さんにはっきりとそう断言いたします」

 ところが、通常国会閉幕に合わせて開いた2016年6月1日の記者会見で舌の根を乾かしてしまったのか、「1年半前の総選挙で、私は来年4月からの消費税率引上げに向けて必要な経済状況を創り上げるとお約束しました。そして、アベノミクスを強力に推し進めてまいりました」、あるいは「年半前、衆議院を解散するに当たって、正にこの場所で、私は消費税率の10%への引上げについて、再び延期することはないとはっきりと断言いたしました」と言いつつ、「日本経済にとって新たな下振れリスク」を何だかんだと持ち出して2019年10月まで30カ月に再延期することを堂々と宣言した。

 消費税を再延期までしていながら、アベノミクスを軌道に乗せることができず、目標未達だ、形骸化しているだと言われている。もし消費税を増税していたなら、アベノミクスはたちまち瀕死の状態に陥り、安倍晋三は既に政権の舞台から消えていたかもしれない。

 消費税増税延期によって安倍晋三が得た利益は第2次安倍政権成立後の3度の選挙での大勝であろう。選挙のたびに「経済最優先」を掲げ、大勝によって得た頭数で景気を確かな形で回復させることではなく、特定秘密保護法(2014年12月施行)や自衛隊の海外派兵と集団的自衛権行使を可能とした新安保法制(2016年3月施行)、テロ等準備罪(2017年7月11日施行)といった国民の意見が大きく別れる政策の強行採決での成立であった。

 そして現在も総選挙に打って出て議席を上乗せして自衛隊明記の憲法改正を狙っている。

 次の選挙でもこれまでと同じくと言うか、相も変わらずと言うか、性懲りもなくと言うか、「経済最優先」を掲げるはずだ。今までと同様に票を釣り上げて、議席を稼ぐ疑似餌、生き餌なら少しはマシだが、疑似餌として最大限に利用するに過ぎない。

 消費税の増税延期によって介護保険の自己負担分が増えることになったり、その他の社会保障関係の負担が増えて、弱い立場の中低所得層にダメージを与えることになってる。

 尤も消費税を上げれば、それだけで負担が増えるという意見もあるが、一定以下の年収生活者には軽減税を設けて8%に抑えておけば、格差是正に少しは役立つ。

 「経済最優先」は言葉だけで、景気は確かな形で回復しないアベノミクスは大企業と富裕層だけに役立って、格差拡大に寄与するのみ。これでは踏んだり蹴ったりである。

 一見深く反省しているように見える「国民の皆様の声に耳を澄まし、国民の皆様とともに、政治を前に進めていく」の文言だが、そうはなっていないことがアベノミクスが既に証明している。

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安倍晋三加計政治関与疑惑:国家戦略特区諮問会議等で加計学園隠しが徹底的に行われていた

2017-08-03 12:33:03 | 政治

 先ず安倍晋三は30年来の腹心の友である加計学園理事長の加計孝太郎から「獣医学部をつくりたい。さらには今治市にといった話は、一切ございませんでした」、獣医学部申請のことを知ったのは「加計学園の申請が正式に決定した(今年の)1月20日だ」と国会で答弁している。

 例えば2017年7月25日の加計学園問題閉会中審査参議員予算委では蓮舫の質問に次のように答えている。「産経ニュース」  

 文飾は当方。

 安倍晋三「国家戦略特区については今治市が提案しておるわけなので、これは国家戦略特区制度が誕生して2年前の11月から私が議長を務める諮問会議において、今治市の特区指定を受けた議論が進む中で、私は今治市が獣医学部を提案していることは知った。

 これはもう答弁した通りだが、しかしその時点においてもまだ、またその後のプロセスにおいても、事業主体が誰かという点について提案者である今治市からは説明がなく、加計学園の計画は承知していなかった。

 最終的に本年1月に事業者の公募を行い、加計学園から応募があったその後、分科会でのオープンな議論を経て1月20日に諮問会議で認定することになるが、その際私は初めて説明を受けて加計学園の計画について承知したところだ

 安倍晋三が言っている1月20日(2017年)というのはその日に開催された「第27回国家戦略特別区域諮問会議」を指す。この会議で内閣府が2017年1月4日に1月11日までの期限で今治市獣医学部新設の事業主体を公募し、1月10日に応募した加計学園の獣医学部が国家戦略特区指定の今治市への新設が認められた。     

 このときに安倍晋三は「加計学園の獣医学部のことを知った」と言っているが、諮問会議の議事録から決定の過程を見てみる。文飾は当方。

 山本幸三「このうち、今治市の『道の駅の設置者に係る特例』は、今月11日に制定した要綱に基づく事業です。

 また、『獣医学部の新設』についても、今月4日に制定した告示に基づくものでありますが、本事業が認められれば、昭和41年の北里大学以来、我が国では52年ぶりの「獣医学部の新設」が実現します。

 全ての項目について、関係大臣の同意を得ております。

 これらにつき、御意見等はございますでしょうか」

 (「異議なし」と声あり)

 山本幸三「ありがとうございました。それでは、速やかに認定の手続きを行いたいと思います」

 獣医学部新設認定についてはこれだけの記述のみである。但しこの決定は諮問会議に提出された「参考資料2」に基いている。

 「国家戦略特別区域区域計画(案)」(参考資料2)に基いている。文飾は当方。    

 (6)名称:獣医師の養成に係る大学設置事業

   内容:獣医学部の新設に係る認可基準特例

  (国家戦略特別区域法第 26 条に規定する政令等制事業)

  学校法人加計園が、獣医学部の設置認可を受けた上で愛媛県今治市において、獣医師が新たに取り組むべき分野における具体的需要対応するための獣医学部を新設する。【平成30年4月開設】

 参考資料に「学校法人加計園」の名前が付されているが、諮問会議自体の議事録ではその名前は記されていない。あくまでも国家戦略特区指定の今治市への新設という体裁を取っている。

 国家戦略特別区域諮問会議の議長を務めている安倍晋三はこの「参考資料2」によって初めて国家戦略特区指定の今治市への獣医学部新設の事業主体が加計学園であることを知ったということなのだろう。

 この点については、「第26回」以前の「国家戦略特区諮問会議議事録」の中には「今治市」の文言はあるが、「加計学園」の文言は存在しないことから、安倍晋三の言っていることは一応の説明がつく。

 但し安倍晋三の国会答弁、「事業主体が誰かという点について提案者である今治市からは説明がなく、加計学園の計画は承知していなかった」と言っていることからすると、この状況は戦略特区担当の山本幸三も、その他の出席大臣も、民間有識者議員も、同じく今治市への獣医学部新設の事業主体が加計学園であることを知らずに議論してきたことを示すことになる。

 と言うことは、「第27回国家戦略特別区域諮問会議」以前は、いわば「第1回」から「第26回」までは出席者は「加計学園」という言葉を一言も発せず、参考資料の中にも「加計学園」なる文言は一切なかったことの証明ということにもなる。

 結構毛だらけ、猫灰だらけ。今治市から事業主体は誰かと説明がなかったからと言って、政府側から誰も尋ねなかったと言うのは常識ではあり得ない。多分、「今治市も事業主体が加計学園であると決まったのは2017年1月20日だから、それ以前は今治市に尋ねたとしても答えることができなかっただろう」と言い逃れるかもしれないが、今治市に自分の所に新設を希望している特殊なケースの、それゆえに一大事業となる獣医学部の事業主体を何ら想定もせずに新設を申請するということはあり得ない。

 2016年9月21日に山本幸三や内閣府、文科省、農水省の関係省庁の役人や民間有識者議員などが出席して行われた「今治市分科会(第1回)」で、元愛媛県知事の加戸守行今治商工会議所特別顧問が「最後に、今治市あるいは愛媛県におきましては、経済界を挙げて獣医学部新設の実現を強く期待しております」との発言を受けて、2016年10月4日開催の「第24回国家戦略特別区域諮問会議」で、今治市への獣医学部新設を認定することを全員一致で了承、山本幸三が認定の手続きを行うとした発言に際しても、「加計学園」なる文言は表に出ていない。    

 要するにどの大学が今治市への獣医学部新設の事業主体になるのかといったことは一切考えずに獣医学部新設のことだけを議論してきたことになる。

 だが、同じく国家戦略特区指定を受けた京都府は獣医学部設置を希望、その事業主体を京都産業大学と決めて、と言っても、京都産業大学の方から京都府に働きかけたのだと思うが、2016年10月17日に内閣府に資料を提出、同じ2016年10月17日にWGでのヒアリングを受けている。

 先ず資料から目次を適宜簡単に拾ってみる。

 《京都産業大学獣医学部設置構想について》 (10 / 17WC 京都府提出資料)  

目次

1 獣医師の現状

2 獣医師への新たなニーズ

3 創薬分野における新たな研究開発の進展

5 新たな獣医学部の設置構想

 (1)ライフサイエンス分野への獣医師の関わり・・・・・・・・・・13
 (2)京都産業犬学が目指す獣医学部
   ア 京都産業犬学獣医学部設置構想に至る経緯・・・・・・・・・T5
   イ 京都産業犬学が目指す獣医学教育・・・・・・・・・・・・・15
   ウ 獣医学鎖域における京都産業犬学の強み・・・・・・・・・・16
   エ ライフサイエンス分野を重視する教育・研究プログラム・・・17
   オ 地域貢献に資する産業勤物獣医学教育の実施・・・・・・・・18
   カ 国際貢献のできる多彩な獣医学教育の実施・・・・・・・・・19
   キ 新たな獣学部設置に伴う経済的社会的効果

 では、同日のWGヒアリングから、提案者や事業主体を見てみる。文飾は当方。

 「国家戦略特区ワーキンググループ ヒアリング」(議事要旨)  

(開催要領)
1 日時 平成28年10月17日(月)11:11~11:43

2 議事 新たな獣医学部・大学院研究科の設置のための抑制解除

<提案者>
中村 繁男 京都府農林水産部副部長
大西 辰彦 京都産業大学副学長
大槻 公一 京都産業大学教授
上村 浩一 京都府農林水産部畜産課長
中路 幾雄 京都府商工労働観光部特区・イノベーション課担当課長

 そして内容から言って要望書なのだろう、京都府は2016年11月25日に内閣府、厚生労働省、農林水産省、文部科学省に対して提出している。一部抜粋してみる。

 「創薬分野等新たなニーズに対応する獣医学部の設置について」(平成28年11月25日 京都府)   

 【担当省庁】内閣府、厚生労働省、農林水産省、文部科学省

 (冒頭)関西圏国家戦略特区における獣医学部の新設

● 国家戦略特区における規制改革事項「先端ライフサイエンス研究や地域における感染症対策など、新たなニーズに対応する獣医学部の設置」について、関西圏での実施を認めていただきたい。

●京都府では、iPS細胞等再生医療の開発を推進するため、国家戦略特区を活用し、健康・医療分野における国際的イノベーション拠点の形成を目指しており、特に創薬分野などの再生医療技術や医薬品開発の加速化には、動物実験を担う獣医師を育成する必要がある。

 ・・・・・・・

<特区の提案状況>

・京都府では新たな獣医学部の設置を提案

 実施主体京都産業大学
 実施場所綾部市(新設キャンパス)、京都市(既存)

 <11月9日開催の国家戦略特別区域諮問会議の状況>

・現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とする関係制度の改正を直ちに行うとされた。

  ・・・・・・・

◎ 京都産業大学獣医学部設置構想について国家戦略特区ワーキンググループのヒアリング(平成28年10月17日) 委員からは、「大変説得力のある構想であり、今後は特区でなければならないというインパクトを高めるよう事務局も含めて協議していきたい。」とのコメント

 ここではっきりと事業主体は実施主体京都産業大学であると謳っている。

 京都産業大学の方は事業主体を京都産業大学として獣医学部の新設を計画し、その詳しい資料を提出してヒアリングを求め、事業主体の京都産業大学の副学長と教授、そして京都府の役人が獣医学部の規模や内容、獣医学教育その他の説明を行っている。

 いわば計画内容を先に提示している。 

 だが、2017年1月4日の告示で「平成30年4月開学」となったために新設を断念、撤退することになった。

 一方の加計学園は内閣府が2017年1月4日に行った今治市新設の獣医学部公募に対する1月10日の応募によって初めて事業主体として顔を表した。そして応募の際に提出し応募用紙に獣医学部の規模や内容、獣医学教育その他の説明を併せて記載している。

 加計学園の場合の順序を改めて振り返ってみる。

 今治市への獣医学部新設決定→内閣府による事業主体の公募→応募の際に獣医学部新設計画内容の説明→事業主体の決定。

 一方の京都産業大学。

 事業主体を京都産業大学とする獣医学部新設の計画内容の内閣府への提出・WGでの説明→決定待ち→「平成30年開学」が告示されて、断念・撤退。

 常識的に考えても、ある地域に獣医学部の新設を決める際、政府が目的とする獣医学教育や規模、体制が決めるに相応しい内容をその獣医学部が提示できているかどうを先に審査するのが順序であるはずだ。

 京都産業大学はその常識的な順序に則った。一方の加計学園の場合は常識的な順序に則らなかった。しかも今治市が想定していないはずはない今治市への獣医学部新設の事業主体として加計学園が顔を出したのは、今治市への獣医学部新設をほぼ決めてから、〈現在、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能とする関係制度の改正を直ちに行う〉としてから2カ月以上も後であった。

 「事業主体が誰かという点について提案者である今治市からは説明がなかった」としても、特殊なケースで、それゆえに一大事業となる獣医学部の事業主体を、今治市が想定していないはずはないという点、要するに安倍晋三を筆頭に戦略特区担当の山本幸三も、その他の出席大臣も、民間有識者議員も、今治市への獣医学部新設の事業主体がどこかの馬の骨である危険性がゼロとは言えないないのにどこの誰とも考えずに議論してきたという点、そして政府側から今治市に対して事業主体は誰かと誰も尋ねもしなかったという点、にも関わらず家計学園に落ち着いたという点、この4点は2017年1月4日の内閣府の事業主体公募に対して加計学園が応募するまで加計学園隠しを徹底的に行ってきたと見る他説明がつかない。

 加計学園隠しではないと言うなら、安倍晋三が言っているが、「事業主体が誰かという点について提案者である今治市からは説明がなかった」ことに対して政府側から今治市に対して事業主体は誰かと誰も尋ねもしなかったことの説明を行うべきだろう。

 少なくとも、「事業主体にどの大学を想定しているのか」と聞かなかったことの説明をすべきだろう。

 あるいは安倍晋三を筆頭に戦略特区担当の山本幸三も、その他の出席大臣も、民間有識者議員も、今治市への獣医学部新設の事業主体がどこかを考えもせずに国家戦略特区諮問会議等で獣医学部新設の議論をしてきたことの不自然さを解消して、自然だと納得のできる説明を行うべきだろう。

 “加計ありき”だったから、今治市への獣医学部新設のみで議論を進め、加計学園についても事業主体についても一切触れずに加計学園隠しを徹底しなければならなかった。

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7月下旬 加計疑惑衆参集中審議、元首相秘書官柳瀬唯夫の「記憶になし」は記憶の問題ではなく、利害の産物

2017-08-02 07:06:44 | 政治

 以前首相秘書官を務めていた柳瀬唯夫の学歴が凄い。天下の東京大学法学部を卒業、通商産業省に入省、その後官僚の公費海外留学なのか、イェール大学大学院国際開発経済学科を修了、現在経済産業省審議官。しかも現在56歳の若さ。

 ずば抜けた頭脳の持ち主に違いない。

 官僚の公費海外留学と言うのは正式名「行政官長期在外研究員制度」と言って、2年間の学費に加えて現地の生活費支給、給料支給とネットで紹介している。その上ハクがつくのだから、至れり尽くせりの制度のようだ。

 加計学園の安倍晋三政治関与疑惑を追及する7月24日(2017年)の閉会中審査衆院予算委員会で民進党の今井雅人が参考人招致された、いわば疑惑に加担していると見られる柳瀬唯夫を疑惑追及の相手に選んだ。
 
 今井雅人は上智大学文学部卒業、55歳。年齢は柳瀬唯夫と1歳下だが、学歴の差が出たのか、全然相手にされなかった。

 質疑応答は「産経ニュース」から。     

 今井雅人「今治市の資料で、黒塗りなのでまだ分からない部分もありますけども、官邸に今治市の企画課長と課長補佐が首相官邸を訪れています。そのときの関係者の証言として、このとき面会したのは経済産業省出身の柳瀬唯夫首相秘書官で、今治市の担当者に『希望に沿えるような方向で進んでいます』という趣旨の話をしています。会って、どんな話をされましたか」
 柳瀬唯夫柳瀬氏「お会いした記憶はございません」

 今井雅人「会った可能性はあるということでよろしいですか」

 柳瀬唯夫「お会いした記憶はございません」

 今井雅人「会っていないと断定できないのですか」

 柳瀬唯夫「記憶にございません」

 今井雅人「会っていないと言えないのですか」

 柳瀬唯夫「覚えておりませんので、これ以上のことは申し上げようがございません」

 今井雅人「今回は、いろんな証言や文書が出てきているんですね。片やちゃんと文書がきっちり残って聞いているのに、政府は内容は定かではないとか、正しいとは思えないとかそういう発言しかない。もう一度聞きます。お会いになった可能性はありますね」

 柳瀬唯夫「覚えてございませんので、何とも言いようが。申し訳ございません」

 今井雅人「官邸の入館記録を提出をしていただきたい。加計学園の学校の建設費なんですが、総額195億円で、坪単価が150万円。高すぎないか。何らかの水増しがあるかどうかということも、しっかりチェックをしなきゃいけない」

 今治市の企画課長と課長補佐が首相官邸を訪れた日は2015年4月2日だそうだ。この2カ月後の2015年6月4日に今治市と愛媛県は第2次安倍政権が進めたアベノミクスの成長戦略の柱「国家戦略特区」に「国際水準の獣医学教育特区」を提案している。

 実際に会っていたなら、教育特区に誘致する獣医学部を前以って予定していなければならない。文科省が獣医学部新設の抑制方針を取っている状況下である上に獣医学部新設となると、早々手を上げる大学など存在しないだろうからだ。

 いわばどこの獣医学部というふうにセットで提案しているはずだ。

 同じ加計疑惑閉会中審査の7月25日の参院予算委員会でも、民進党議員桜井充が柳瀬唯夫を追及している。「産経ニュース」   

 桜井充の経歴を「Wikipedia」で見てみると、東京医科歯科大学医学部を卒業後、一旦東北大学医学部付属病院内科に勤務。その後東北大学大学院医学研究科博士課程修了、国立病院機構岩手病院第2内科医長に就任している。61歳。

 経歴を見る限り、なかなかの秀才のようだ。

 桜井充「柳瀬唯夫参考人にお伺いします。柳瀬さん、久しぶりでございます。柳瀬さんとは特に原発事故のときには大変お世話になった。柳瀬さん、今日久しぶりにお会いするが、前にお会いしたのはいつだか覚えていますか」

 柳瀬唯夫「あの、いつ頃でしたでしょうか。たぶん7、8年前か…。ちょっと正確ではないが」

 桜井充「そうなんですよ。7、8年ぐらい前に、財務省の当時の主計局長さんが会合を開いてくださって、官僚のこの方々が優秀で、これから先は日本の将来を担っていく人だから、副大臣、お付き合いしてくださいと言われてお会いしたのが最初だったと思うが、それでよろしいですよね」

 柳瀬唯夫「財務省の方が当時の桜井副大臣にどうご説明したか、私は存じ上げない。申し訳ない」

 桜井充「でもそのときに宴席一緒にしましたよね」

 柳瀬唯夫「夜お食事をさせていただいてのをよく覚えている」

 桜井充「さあ、7、8年前のことを覚えていらっしゃるのだから、去年、一昨年のことは覚えていらっしゃると思うんですがね。そうなってくると、これは記事でしかないが、今治市(職員)と会ったのが、その当時の柳瀬首相秘書官だと、そういわれているが、これは事実か」

 柳瀬唯夫「当時私は総理秘書官として国家戦略特区、成長戦略を担当していた。その関連で内閣府の担当部局と打ち合わせもしていた。私の記憶をたどるかぎり、今治市の方とお会いしたことはない。私が秘書官をしていた平成27年の前半までは、そもそも50年余り認められてこなかった獣医学部の新設をどうするかという制度論が議論されていて、この後、先生のご指摘のあったよりも後に、石破4原則として日本再興戦略2015というのをまとめ、いわゆる石破4原則というのをそこで書いた。

 それの過程でございまして、制度を具体的にどこに適用するかというような話は全く当時の段階ではなかった。したがって、この段階でどなたにお会いしても、今治市がいいとか悪いとか、そういうことを私が申し上げることはあり得ないと思っている」

 桜井充「簡潔に答えてください。今治市の職員とは会っているか、会っていないか」

 柳瀬唯夫「私に記憶をたどるかぎりお会いしていない」

 桜井充「それは否定されたということでいいんですね」

 柳瀬唯夫「私の記憶するかぎりはお会いしていないということです」

 桜井充「すみませんがそれは事実として否定したということでよろしいんですね」

 柳瀬唯夫「事実として私の記憶のあるかぎりはお会いしていないということだ」

 桜井充「それでは和泉洋人首相補佐官は今治市職員と会っていますか、その日に」

 和泉洋人「私は会ってございません」

 桜井充「今のように会っていない方ははっきりと『会っていない』とおっしゃる。改めて柳瀬参考人、如何ですか」

 柳瀬唯夫「記憶をたどっても会ってないということだ」

 桜井充「総理、首相官邸には先ほど申し上げた通り、誰かとアポイントを取っていないかぎり入れない。総理も違うとおっしゃる。萩生田官房副長官はあの当時は職になかった。菅義偉官房長官からも、違うといわれた。

 会ったとすると、今治市にはこういう記録が残っている。じゃあなぜ、なぜこの1時間半の間、こうやってアポが取れたのか。この点の疑惑を果たさないかぎり、こういう懸念、おかしいじゃないかという疑念は払拭できないと思うが、総理、如何ですか」

 安倍晋三「今治市職員の方が誰と面会したかについては、すでに萩生田副長官が国会で答弁している通り、確認できなかったと承知している」

 桜井充「今回、私は参考人招致で今治市長をお呼びしたいと。要するに今治市には明確な記録が残っているので、今治市の方に来ていただければ、はっきりすることだと思っている。当委員会にぜひ今治市の市長をお招きしたいと思うのでよろしくお願いする。今、福山(哲郎・民進党)理事から言われたのは、与党が否定したということで、真相をちゃんと明らかにしたいのであれば、ちゃんと今治市の方を呼んでやるべきだと私はそう思う。それで、今治市はわりと情報公開は積極的で、今治市から情報提供された資料もある」

 確か7月26日のTBS「ひるおび!」で、桜井充が7,8年前のことを聞いて、その記憶を確かめてから、2年前のことを聞いたのはうまい引掛けだとか言っていたと思うが、結果は前の日の今井雅人と同じである。

 「記憶にないはずはない」という心証を周囲に与えることに成功したとしたとしても、相手にボロを出せることに成功したわけではない。

 「記憶にない」、「覚えていない」と言うだけで、「会った」、「会わなかった」のいずれかを確定的には言わないのは、「会った」と言った場合、自身だけではなく、安倍晋三まで不利な状況に追い込まれるから、「会った」と断言できないのだと誰の目にも予想がつく。

 逆に「会わなかった」と断言した場合、後で会ったことが明らかになった場合、ウソをついたことになるから、そのことを回避するための偽装だということも予想できる。

 「記憶にない」、「覚えていない」と言っておけば、後で会ったことが明らかになったとしても、「記憶になかったものですから」、あるいは「すっかり忘れていて、今以て記憶にはありません」で逃げることができる。

 要するに柳瀬唯夫に「記憶にない」、「覚えていない」と言わせているのは自身の利害からであって、その利害は安倍晋三の利害と深く結びついているために、「会った」、「会わなかった」と断言できずに「記憶にない」、「覚えていない」と曖昧な言い方を選択する道を選ばせているのだろう。

 なぜなら、2年前のことで、今治市の記録にある上に国家戦略特区に関わる獣医学部新設という重要決定の端緒に関わることなのだから、思い出さないことは先ずあり得ないからだ。

 但しこのようなことを相手にぶつけたとしても、柳瀬唯夫は「記憶にない」、「覚えていない」で押し通すだろう。

 経験したことは全てが脳レベルで痕跡として残っていると言われている。但し人間はその全てを覚えている記憶力は有しておらず、脳に痕跡として残っている経験に近い第三者の言葉や映像、行動などの何かのキッカケを与えられることで、脳の無数の経験の引き出しの中からキッカケによって刺激を受けた経験が記憶として引っ張り出されるのだと、フジテレビの「ホンマでっか」にコメンテーターとして出演している生物学者の池田清彦がかなり前にそんな趣旨のことを言っていた。

 テレビドラマで母親に叱られた子どものイタズラを見て、すっかり忘れていて思い出すこともなかった70年も昔の幼い頃の似たような苦い経験をふと記憶に蘇らせることがある。

 柳瀬唯夫が7、8年の桜井充を混じえた宴席のことを思い出したのは桜井充がそのことを話しかけたことがキッカケとなったからで、経験と記憶の同じような関係に基づいているはずだ。

 7、8年のことを思い出しているのだから、ましてや2年前のことである、2017年3月4日初めに週刊誌が加計学園理事長が安倍晋三の友人であることを引っ掛けて加計学園疑惑を報じたとき、もし会っていたなら、その報道が刺激となって、柳瀬唯夫は面会を求めてきた今治市の職員と首相官邸で会ったことを記憶の引き出しから否応もなしに蘇らせたはずだ。

 週刊誌報道に気づかなかったとしても、2017年3月13日の参院予算委で社民党の福島瑞穂が加計学園疑惑に関わる安倍晋三の政治関与があったかどうかで安倍晋三自身を追及している。

 このことは新聞各社が報道しているから、目に触れていないはずはない。このことがキッカケとなって、今治市の職員と会っていたなら、その記憶を鮮やかに思い出すだろうし、会っていなければ、疑惑追及をどういうことなのだろうと訝るぐらいのことはしたはずだ。

 思い出す十分なキッカケを与えられていながら、しかも東京大学法学部を卒業して通商産業省に入省している間にイェール大学大学院国際開発経済学科に通って修了している経歴の持ち主であることを考慮すると、たった2年前のことを「会っていた」、「会っていなかった」、いずれかに断言できないのは、やはり「会った」と言った場合は不都合な事情が生じる自身の利害からであって、その不都合は安倍晋三の利害と共通させているからだろう。

 記憶の道理に照らすと、思い出さなければならない出来事だが、その道理を指摘したとしても、柳瀬唯夫は依然として「記憶にない」、「覚えていない」の態度を変えることはないだろう。

 柳瀬唯夫にとってそれ程にも重大な利害となっていることの証明であり、安倍晋三にとっても重大な利害となっていることの証明そのものであるはずだ。

 要するに安倍晋三は友人の獣医学部新設申請に認定の便宜を与える政治関与を萩生田光一を実行部隊長として行った。

 このような推論を述べるだけでも、相手に与えるダメージは小さくないはずだ。

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稲田朋美は安倍晋共に天皇全体主義等に立っているゆえにその精神性に於いて真の文民と言えるのだろうか

2017-08-01 11:18:21 | Weblog

 日本国憲法は第5章「内閣 第66条2」で、「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」と規定している。

 稲田朋美も安倍晋三も軍人の経歴はない。この意味では文民と言うことになる。だが、その精神性に於いて軍人の姿を取っていないだろうか。

 2017年6月12日付「LITERA」に稲田朋美の戦前の天皇全体主義国家・国家主義国家を今以て信奉している歴史認識に関わる幾つかの発言が載っている。     

 「靖国神社というのは不戦の誓いをするところではなくて、『祖国に何かあれば後に続きます』と誓うところでないといけないんです」(赤池誠章参院議員らとの座談会、「WiLL」06年9月号/ワック)

 「いざというときに祖国のために命を捧げる覚悟があることと言っている。そういう真のエリートを育てる教育をしなければならない」(産経新聞2006年9月4日付)

 「国民の一人ひとり、みなさん方一人ひとりが、自分の国は自分で守る。そして自分の国を守るためには、血を流す覚悟をしなければならないのです!」(講演会での発言)

 「首相が靖国に参拝することの意味は『不戦の誓い』だけで終わってはなりません。『他国の侵略には屈しない』『祖国が危機に直面すれば、国難に殉じた人々の後に続く』という意思の表明であり、日本が本当の意味での『国家』であることの表明でなければならないのです」(渡部氏、八木秀次氏との共著『日本を弑する人々』PHP研究所)

 「『祖国に何かあれば後に続きます』と誓う」にしても、「祖国のために命を捧げる覚悟」にしても、「自分の国を守るためには、血を流す覚悟をしなければならない」にしても、「祖国が危機に直面すれば、国難に殉じた人々の後に続く」にしても、戦死を前提としているところは戦死を以って国への奉公とする戦前の天皇全体主義国家・国家主義国家の古臭い思想の再現であって、そのような思想を民主主義の現代に於いても引きずっている証明に他ならない。

 いくら国のために戦場に赴くにしても、戦死を前提とすべきではなく、それは止むを得ない結果であって、生きて還るという信念を常に前提としなければならないはずだ。

 なぜなら、それ程にも一人ひとりの生命(いのち)は尊いはずだからだ。戦前ならいざ知らず、戦後日本に於いても戦死を前提とした国家への奉仕を説く。

 また、生きて還るという信念が一人ひとりの励みや強さを生み、自他の生命への尊重へと繋がっていく。一般的に言っても、生きて還った兵士の数の多い方が戦争は勝利している。
 
 「祖国が危機」の際の戦死を前提とした国家への奉仕を戦前の言葉で要約すると、戦前に於ける突撃精神と言うことになる。突撃という言葉自体に戦死という意味を含ませている。

 あるいは戦前の日本軍で頻繁に用いられた玉砕戦法自体が戦死を前提としていた。

 安倍晋三にしても自著「美しい国へ」で、特攻隊員の日記を引いたうえで、「たしかに自分のいのちは大切なものである。しかし、(今の国民は)ときにはそれをなげうっても守るべき価値が存在するのだ、ということを考えたことがあるだろうか」と書き、同じく自著「この国を守る決意」で、「(国を)命を投げうってでも守ろうとする人がいない限り、国家は成り立ちません。その人の歩みを顕彰することを国家が放棄したら、誰が国のために汗や血を流すかということです」と書いて、戦前の思想でしかない戦死を前提とした国家への奉仕を説いている。

 稲田朋美にしても安倍晋三にしても、戦前の軍部が最大の体現者として国民に強制していた戦前の天皇全体主義(天皇・国家を全体とする、その利益を第一とし、個人に対しては天皇・国家の全体に奉仕を求め、その奉仕を最大の価値と位置づける政治上の主義)・国家主義(国家をすべてに優先する至高の存在あるいは目標と考え、個人の権利・自由をこれに従属させる思想)に今以ってまみれている。

 このような内閣総理大臣あるいは国務大臣を、その精神性に於いて真の文民に当てはめることができるだろうか。

 2017年3月8日の参院予算委員で社民党の福島みずほが防衛相稲田朋美の過去の教育勅語賛美の発言を取り上げて、現在もその思いに変わりはないのかと問い質した。

 稲田朋美「私は教育勅語の精神であるところの日本が倫理国家を目指すべきである、そして親孝行ですとか友達を大切にするとかそういう核の部分は今も大切なものとして維持していて、そこに流れているところの核の部分、そこは取り戻すべきだというふうに考えております」

 稲田朋美は「教育勅語の精神」を「倫理国家への教導」と見做し、教育勅語はその書だとしている。だから、「親孝行」とか、「友達を大切にする」とかの教えを「核の部分」としていると。

 だが、天皇を国民の頂点に置く天皇全体主義国家であった戦前の日本の天皇が国民を教え導くという体裁を取った「教育勅語」である。当然、天皇・国家の利益を第一としている。

 もし国民の利益を第一としていたらなら、天皇全体主義国家という国家体制も国家主義という国家体制も取らない。戦前も戦後と同様に基本的人権を十分に保障した民主主義体制を取っていただろう。

 「教育勅語」が戦前の日本の天皇が国民を教え導くという体裁を取った天皇・国家の利益を第一とした書であることは次の個所に象徴的に現れている。現代語訳  

 読みやすいように改行を適宜行った。

 「あなたたち国民は、父母に孝行し、兄弟仲良くし、夫婦は仲むつまじく、友達とは互いに信じあい、行動は慎み深く、他人に博愛の手を差し伸べ、学問を修め、仕事を習い、それによって知能をさらに開き起こし、徳と才能を磨き上げ、進んで公共の利益や世間の務めに尽力し、いつも憲法を重んじ、法律に従いなさい。

 そしてもし危急の事態が生じたら、正義心から勇気を持って公のために奉仕し、それによって永遠に続く皇室の運命を助けるようにしなさい」――

 「もし危急の事態が生じたら」との文言で最終的に国家(=公)への奉仕と天皇への奉仕を求めている。天皇・国家の利益を第一と考えているからこその国家(=公)への奉仕であり、天皇への奉仕に他ならない。

 当然、「父母に孝行」も、「兄弟仲良く」も、「夫婦は仲むつまじく」も、「友達とは互いに信じあい」も、「行動は慎み深く」も、「他人に博愛の手を差し伸べ」も、「学問を修め」も、「仕事を習い」も、「知能をさらに開き起こし」も、「徳と才能を磨き上げ」も、「進んで公共の利益や世間の務めに尽力」も、「憲法を重んじ、法律に従いなさい」も、天皇・国家の利益を第一と考えた国家(=公)への奉仕と天皇への奉仕を目的としている。

 ここには子から兄弟、夫婦、友人、同僚や社会の人間へと段階を踏んで、それぞれの段階での道徳を守らせて善き国民に育てて、最終的に天皇・国家への奉仕に仕向ける国民統治の仕掛けがある。

 「教育勅語」を国民統治装置と言う所以である。

 そのための各段階での道徳の教えであって、それを道徳の教えだけ取り出して、「教育勅語の精神であるところの日本が倫理国家を目指すべきである」などと言う。

 「教育勅語」が戦前の天皇全体主義国家・国家主義国家の産物である以上、「倫理」を国家体制の大本に置くはずはない。大本に置いていたなら、もっと国民の命を大切にしたはずだ。

 そして戦前の天皇全体主義国家での最大の天皇・国家に対する国民の奉仕は侵略を性格とした日中戦争・日米太平洋戦争で「祖国のために命を捧げる」こと、「自分の国を守るためには、血を流す」こと、「祖国が危機に直面すれば、国難に殉じた人々の後に続く」ことなどなど、戦死を以って天皇と国に尽くすことであった。

 このような人間類型を形作るのに「教育勅語」が非常に役立った。殆どの誰もが生きて還るという信念をサラサラ持たずに、喜んでかどうか分からないが、「天皇陛下、バンザーイ」と叫び、靖国に祀られることを思い描いて死んでいった。

 稲田朋美は戦前の天皇全体主義国家・国家主義国家の産物ででしかない「教育勅語」を自らのバイブルとする。そして安倍晋三にしても2017年3月31日、「教育勅語」を「憲法や教育基本法等に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」との答弁書を閣議決定している。

 だが、天皇・国家の利益を第一と考えた国家(=公)への奉仕と天皇への奉仕を目的として天皇全体主義・国家主義で覆われている国民統治装置としての「教育勅語」が民主主義と基本的人権と平和主義を精神とする日本国憲法に反していないと誰が言えるだろうか。

 戦前の天皇全体主義・国家主義に取り憑かれている稲田朋美にしても安倍晋三にしても、その精神性に於いて果たして純粋な文民に当てはめることができるだろうか。

 稲田朋美は2016年8月15日は8月13日~16日アフリカ東部ジブチ訪問のために参拝は中止以外、2005年の初当選以降、終戦記念日の8月15日とサンフランシスコ講和条約が発効し、日本の主権が回復した4月28日に欠かさず靖国神社を参拝しているという。

 靖国神社に祀られている日中戦争・日米戦争で犠牲となった軍人・兵士は二つの類型に分けることができる。一つは戦前の天皇全体主義・国家主義を国民統治装置として利用し、国民を支配する側と、もう一つは戦前の天皇全体主義・国家主義を国民統治装置とされて支配される側である。

 後者に於ける日中戦争・太平洋戦争の戦死者の殆どは既に触れたように生きて還るという信念を固く持って戦争をしたわけではない。「生きて虜囚の辱めを受けず、死して罪過の汚名を残すこと勿れ」を兵士のモットーとして、いわば「天皇のため・お国のために戦って死ぬこと」を前提として戦地に赴き、多くの命を無駄死にさせた。

 当然、靖国神社に祀られている後者に属する軍人・兵士の多くは戦前の天皇全体主義・国家主義の力学に心身共に囚われていた。

 いわば靖国神社に祀られている後者に属する多くの軍人・兵士の戦争行為は戦前の天皇全体主義・国家主義と支配される関係の中で切っても切れない関係にあった。

 そうである以上、それを国家のために尊い命を捧げたと顕彰することは戦前の天皇全体主義・国家主義を顕彰することを意味することになる。

 戦前の天皇全体主義・国家主義の力学に基づいて戦前の戦死者を「国のために尊い命を犠牲にした」と顕彰することで、今の時代の若者に「国民の一人ひとり、みなさん方一人ひとりが、自分の国は自分で守る。そして自分の国を守るためには、血を流す覚悟をしなければならないのです」などと戦死を前提とした国家への奉仕・犠牲を靖国神社を装置として求める。

 このようにも戦前の天皇全体主義・国家主義に立っている稲田朋美を、安倍晋三も同類だが、その精神性に於いて真の文民と言えるのだろうか。

 稲田朋美にしても安倍晋三にしても時代が時代なら、たちまち戦前の天皇全体主義者・国家主義者としての顔を見せるに違いない。

 なぜなら、そのような顔こそ、内面と外面、それぞれの思想と何の抵抗もなく一致することになるからだ。

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